電子カルテの運用方法|運用の流れや注意点などを解説
2024.11.16
電子カルテは業務効率化やサービスの質向上に役立つ重要なツールです。
そのため、昨今は多くの医療機関で電子カルテが導入されています。
しかし、電子カルテの導入は業務プロセスを大きく変更する可能性があるため、あらかじめ運用方法を検討する必要があります。
また、2025年に開始される電子カルテ情報共有サービスに関する知識も身につけなければなりません。
本記事では、電子カルテの運用方法について解説します。
電子カルテの導入に備えて、ぜひ参考にしてください。
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目次
【基礎知識】電子カルテの概要
まずは電子カルテの概要について解説します。
本章では、2025年に開始される電子カルテ情報共有サービスについても説明します。
電子カルテとは
電子カルテとは、カルテを電子化したソフトウェアです。
従来の紙のカルテのように患者の状況や治療の記録を記載するだけでなく、情報の管理や共有などでも活用できます。
電子カルテは医療機関の業務を効率化するうえで有用なツールですが、意外にも普及率は高くありません。
厚生労働省の発表では、電子カルテの普及率は以下のとおりでした。
2020年段階では、電子カルテの普及率は病院・クリニック全体の半数程度しかありません。
今後も電子カルテの普及は進むと予想されますが、すべての医療機関の導入にはもう少し時間がかかる可能性があります。
電子カルテの種類
電子カルテには、大きく分けて「オンプレミス型」と「クラウド型」の2種類があります。
オンプレミス型はネットワーク機器やサーバーなどを設置してソフトウェアを導入するタイプです。
対して、クラウド型はインターネットに接続してベンダー(販売業者)のサーバーにアクセスして、電子カルテを利用するタイプです。
オンプレミス型・クラウド型には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット | |
オンプレミス型 | ・カスタマイズ性が高い・インターネットに接続しなくても利用できる | ・導入コストが高い・耐用年数を超えると買い替えの必要がある |
クラウド型 | ・導入コストが低い・インターネットに接続できればどの端末からでも使える | ・カスタマイズ性が低い・セキュリティ対策が必須 |
オンプレミス型は導入コストがかかりやすい反面、カスタマイズ性が高く、業務に合った仕様を設定しやすい点がメリットです。
一方のクラウド型はコストが低く、インターネットに接続すれば利用できるため、手軽に導入できます。
予算やスタッフの適性などを吟味して、自院に合った電子カルテを選びましょう。
2025年には電子カルテ情報共有サービスが開始
電子カルテを導入するなら、2025年より開始される電子カルテ情報共有サービスに注意しましょう。
電子カルテ情報共有サービスとは、医療DXの推進を目的とした政策であり、以下のサービスから構成されています。
- 紹介状送付サービス:診療情報提供書などを紹介先の医療機関が取得できるサービス
- 6情報閲覧サービス:傷病名・アレルギー・薬剤禁忌・感染症・検査・処方に関する情報を、医療機関や患者が取得できるサービス
- 健診文書閲覧サービス:各種健診結果を医療機関や患者本人などが取得できるサービス
電子カルテ情報共有サービスは、医療DXによって業務のさらなる効率化を目指すだけでなく、より良いサービスの提供を実現するために実施されます。
また、厚生労働省は電子カルテの普及を促進するために、診療報酬改定に際して、医療DXに関する加算を新設しました。
つまり、電子カルテの導入はサービスの質向上だけでなく、収益にも関係する施策です。
医療機関は2025年に向けて本格的に導入を検討する必要があります。
電子カルテを導入する3つのメリット
電子カルテを導入すると、以下のメリットが期待できます。
- 情報の共有・確認がスムーズになる
- 医療ミスの削減につながる
- 業務を効率化できる
順番に解説するので、ぜひ参考にしてください。
情報の共有・確認がスムーズになる
電子カルテは治療の記録や患者の情報を電子化しているため、スピーディーに情報の共有・確認ができます。
情報の共有・確認がしやすい環境を整えれば、緊急事態の対応がスムーズになり、結果的にサービスの品質が向上します。
クラウド型の電子カルテなら、スマートフォンやタブレットを使うことで、外出先での電子カルテの閲覧も可能です。
医療ミスの削減につながる
電子カルテなら手書きで情報を入力する必要がないため、記載ミスを減らせます。
書き間違いはもちろん、記入者の字が読みにくいために、記載内容がわからなくなるようなトラブルも発生しません。
さらに点検チェック機能を活用すれば、内容の整合性が取れるため、より正確に情報を伝達できます。
業務を効率化できる
カルテをデータ化している電子カルテなら、手書きのカルテよりも運用や管理が楽になり、保管の手間もかかりません。
そのため、業務が効率化し、スタッフにかかる負担を軽減できます。
電子カルテで業務を効率化すれば、人件費を削減できるうえに、患者へのサービス提供に集中しやすい環境を構築できます。
電子カルテを導入する3つのデメリット
電子カルテは便利な反面、以下のようなデメリットに注意しなければなりません。
- ランニングコストがかかる
- 運用体制の見直しが必要になる
- 一定のスキルが求められる
導入する前に、電子カルテのデメリットを必ず確認しましょう。
ランニングコストがかかる
紙のカルテと違い、電子カルテはランニングコストが大きくなりやすい点には注意しましょう。
オンプレミス型であれば、導入するだけでも数百万円かかります。
リーズナブルに利用できるクラウド型でも、毎月数万円以上の月額料金が発生するため、費用対効果を見極めなければ収支を圧迫する恐れがあります。
運用体制の見直しが必要になる
電子カルテと一般的な紙のカルテは根本的に運用方法が異なるため、導入する際は運用体制の見直しが必須です。
慣れていた業務プロセスを大きく変更しなければならない場合もあるので、必ず管理者・医師・スタッフで運用体制を再構築しましょう。
一定のスキルが求められる
電子カルテは、パソコンやタブレットなどの端末を利用してアクセスします。
そのため、端末の扱いに慣れていなければ使いこなせません。
紙のカルテに慣れている現場では、パソコンやタブレットの操作に不慣れなスタッフが多いケースは珍しくありません。
現場のスキルが不足していると、どれだけ優れた電子カルテを導入しても、持て余す恐れがあります。
電子カルテを導入するなら、事前にマニュアルを配布したり、研修を開催したりするなど、スタッフのスキル向上に取り組みましょう。
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電子カルテを運用する流れ
電子カルテの運用は以下の流れで実施します。
- 電子カルテの選定
- システムの要件確認
- 試験運用・トレーニング
- 運用開始
それぞれのプロセスをあらかじめ確認しておけば、スムーズな導入が可能です。
電子カルテの選定
電子カルテを導入する際は、まずは導入する製品を選定しましょう。
昨今は、電子カルテの種類が多様化しています。
ベンダーが開催しているイベントなどに足を運べば、製品を比較検討できるうえに、担当者から具体的な説明も受けられます。
電子カルテを選定する際は、料金だけでなく、機能面のチェックも不可欠です。
一般的に安い価格で購入できるのはクラウド型ですが、現場によってはカスタマイズしやすいオンプレミス型が適している場合もあります。
現場の状況やスタッフのニーズを参照しながら、費用対効果が高い製品を選定しましょう。
システムの要件確認
選定する電子カルテが決まったら、ベンダーと共にシステムの要件確認を行います。
カスタマイズできる電子カルテなら、ユーザーのニーズに合わせた機能の設定が可能です。
現場での運用を想定して必要な機能を組み込めば、より電子カルテの導入効果を高められます。
ただし、機能の追加によって料金が高騰する恐れがあります。
要件確認をする際は、予算との兼ね合いを踏まえて慎重に検討しましょう。
試験運用・トレーニング
電子カルテを本格的に導入する前に、必ず試験運用・トレーニングを実施しましょう。
説明段階では好印象でも、実際に導入すると想像より使い勝手が悪いと感じるケースは珍しくありません。
また、電子カルテに慣れていない現場の場合、いきなり導入すると上手く運用できない可能性があります。
そのため、電子カルテを導入する際は必ず試験運用を行い、使用感を確認しましょう。
加えて、端末に慣れていないスタッフに向けたトレーニングも実施すると、必要なスキルを身に付けた状態で電子カルテを導入できます。
運用開始
試験運用・トレーニングが完了したら、いよいよ電子カルテの運用を開始します。
運用開始後は、現場からフィードバックを得つつ、PDCAサイクルを回して運用体制の改善を進めましょう。
電子カルテに限らず、新しいシステムを導入すると、検討時点ではわからなかった課題が見つかる場合があります。
新たに見つかった課題を改善すれば、より最適な運用体制の構築が可能です。
なお、電子カルテに新たな機能が追加されたり、バージョンアップしたりした際は、必ず研修や説明会を実施しましょう。
最新の情報を共有する機会を設ければ、スタッフの知識や習熟度を均質化できます。
電子カルテを運用する際の注意点
電子カルテを運用する際は、以下のような注意点を意識しましょう。
- 導入する目的を明確化する
- 電子カルテの運用規定を策定する
- セキュリティ対策を徹底する
- 法改正や省令に注意する
上記の注意点を意識しなければ、優れた電子カルテを導入しても運用に失敗するリスクが高まります。
失敗を避けるためにも、あらかじめ注意点を把握し、適切な対策を講じましょう。
導入する目的を明確化する
電子カルテを導入する際は、目的を明確化しましょう。
「周りがやっているから」のような曖昧な目的では、適切な電子カルテを導入できません。
無駄な機能を付けてしまったり、スタッフのスキルでは扱えない製品を導入したりするなど、結果的に余計なコストを発生させる恐れがあります。
現場の課題を見直し、導入する目的を明確化すれば、より有用な電子カルテを選べます。
スタッフから意見を集めるなどして、最適な電子カルテのイメージを具体化しましょう。
電子カルテの運用規程を策定する
電子カルテは患者の個人情報を入力するツールです。
そのため、導入する際は必ず運用規程を策定しましょう。
運用規程には、電子カルテの管理者・使用する際の注意点・個人情報の扱い方などを明記します。
また、ネットワーク障害などが発生した際の対応方法も記載しておきましょう。
ネットワーク障害で電子カルテが使用できなくなっても、スタッフがスムーズに対応できるようになります。
セキュリティ対策を徹底する
電子カルテを導入するなら、セキュリティ対策は不可欠です。
電子カルテは便利な反面、サイバー攻撃や情報漏洩など、新たなリスクを招きます。
特に、インターネットに接続しなければ利用できないクラウド型は注意が必要です。
外部からの不正アクセスやウイルスを防ぐセキュリティソフトの導入はもちろん、ネットワーク機器もセキュリティ性が高いものを選びましょう。
加えて、「パスワードを定期的に変える」「機密情報を外部メディアにアップロードしない」など、日々の運用に注意することも重要です。
スタッフのリテラシーを変えることも、効果的なセキュリティ対策になります。
法改正や省令に注意する
電子カルテを運用する際は、法改正や省令にも注意しましょう。
2025年の電子カルテ情報共有サービス開始に伴い、厚生労働省が運用方法を提示するなど、電子カルテの導入は国の意向が大きく影響する施策です。
電子カルテの扱い方によって診療報酬が変更される場合もあるので、常に最新情報はチェックしなければなりません。
また、厚生労働省が公開している情報やガイドラインを利用すれば、電子カルテの運用体制の構築に役立てられます。
医療機関同士で患者の情報をやり取りする際「診療情報提供書」が作成されます。現状この診療情報提供書はほとんどが紙媒体でやり取りされており、スムーズに共有できているとは言い難い状況です。電子カルテ情報共有サービスを活用することで、診療情報提供書の印刷や封入、宛名書きなどの作業がなくなるため、格段に業務効率は上がります。また、6情報(傷病名・アレルギー・薬剤禁忌・感染症・検査・処方)閲覧サービスもあり、病院間での情報共有や情報へのアクセシビリティが格段に向上することは間違いありません。医療DX推進体制整備加算が創設されたように、国も加算という「人参」をぶら下げて電子カルテを普及させようとしています。医療・介護業界の人手不足を解消するにはDX化を進めるしかないと国も考えているということなのです。
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2025年に備えて電子カルテの運用体制を整えよう
電子カルテは医療DXの要であり、業務の効率化やスピーディーな情報共有など、さまざまなメリットをもたらすツールです。
国も2025年に電子カルテ情報共有サービスを開始するなど、より本格的な運用を目指しています。
一方で、電子カルテの運用にはいくつかの注意点があります。
適切な運用体制を構築するためにも、導入前に必ず確認しましょう。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。