ケアプランの作成を効率化するアセスメントツール|様式や導入のコツを解説

2024.12.23

ケアプランの作成を効率化するには、アセスメントツールの導入がおすすめです。
アセスメントツールを活用すれば、ケアプランの作成におけるアセスメントを効率化し、従業員の負担を軽減できます。

業務負担を軽減し、アセスメントの精度を向上させたい事業所は、アセスメントツールの導入を検討しましょう。

本記事では、ケアプラン作成を効率化するアセスメントツールについて詳しく解説します。
アセスメントツールの主な様式や介護ソフト導入のコツをあわせて解説するため、ぜひ最後までご覧ください。

アセスメントとは

そもそもアセスメントとは、介護サービスを受ける利用者の情報を収集することです。
利用者一人ひとりの情報を収集し、パーソナライズしたケアサービスを提供するために、ケアマネジャーがケアプランを作成します。

ケアプランを作成する際に、利用者や家族と面談を実施し、必要な情報を収集することをアセスメントと呼びます
アセスメントについて理解を深めるために、次のポイントを確認しておきましょう。

  • アセスメントの重要性
  • モニタリングとの違い

アセスメントの重要性

アセスメントは、利用者や家族の情報を収集するだけでなく、得られた情報をもとにケアプランの方向性や課題を可視化する重要な行為です。

アセスメントによって、利用者や家族の要望や現在の課題を把握し、より良いケアサービスを実施できます。
さらにアセスメントでは、利用者の性格や価値観を把握し、快適に日常生活を送れるよう対処法を考案することが大切です。

利用者や家族がケアプランに納得できない場合、他の事業所へ移ってしまう可能性があるため、アセスメントを重要視する必要があります。

アセスメントは、適切なケアプランを策定し利用者の要望に応えるために重要な作業です。

モニタリングとの違い

アセスメントと混同されやすい用語として、モニタリングが挙げられます。
アセスメントは、ケアプランを作成するために現状の課題や要望などの情報を収集する行為です。

対してモニタリングとは、作成したケアプランに基づいてケアサービスが提供されているかをチェックすることです。

さらに提供しているケアサービスが、利用者や家族のニーズと乖離していないかを確認します。
アセスメントはケアプランを作成する前に実施するのに対して、モニタリングはケアプラン作成後に実施する行為です。

ケアプランを効率化するアセスメントシートとは

アセスメントシートとは、アセスメントを実施する際に利用者や家族の要望や現状の課題をまとめる書類です。
ケアマネージャーが、ケアプランを作成する際に使用するツールであり、アセスメントの結果をまとめるために活用します。

アセスメントシートには、利用者の基本情報や生活状況など、ケアサービスを提供するために必要な項目が用意されています
そのため、アセスメントシートを確認すれば、関係者間で情報共有をスムーズに行えて便利です。

下記の記事では、アセスメントシートの書き方や作成時の注意点を解説しているので、ケアプランの作成業務を効率化するためにチェックしておきましょう。

フェイスシートと違い

アセスメントシートと混同されやすい書類として、フェイスシートが挙げられます。

フェイスシートは、介護現場で使用される利用者のプロフィール書類です。
フェイスシートに記載する主な情報は、次のとおりです。

  • 氏名
  • 性別
  • 生年月日
  • 要介護度
  • 住所
  • 電話番号
  • 家族構成
  • 既往歴
  • 職歴
  • 服薬歴

フェイスシートは、「利用者がどのような人物か」を可視化する書類であるのに対して、アセスメントシートは現状の課題や要望を可視化する書類です。

フェイスシートは、利用者の基本情報だけに限定した書類であり、アセスメントシートとはまとめる項目と使用する目的が異なります。

アセスメントの項目

アセスメントシートを作成する際は、厚生労働省が定める23の課題分析標準項目に沿って、アセスメントの結果をまとめましょう

厚生労働省が定める23の課題分析標準項目は、次のとおりです。

  1. 基本情報(受付、利用者など基本情報)
  2. これまでの生活と現在の状況
  3. 利用者の社会保障制度の利用情報
  4. 現在利用している支援や社会資源の状況
  5. 日常生活自立度(障がい)
  6. 日常生活自立度(認知症)
  7. 主訴・意向
  8. 認定情報
  9. 今回のアセスメントの理由
  10. 健康状態
  11. ADL
  12. IADL
  13. 認知機能や判断能力
  14. コミュニケーションにおける理解と表出の状況
  15. 生活リズム
  16. 排泄の状況
  17. 清潔の保持に関する状況
  18. 口腔内の状況
  19. 食事摂取の状況
  20. 社会との関わり
  21. 家族などの状況
  22. 居住環境
  23. その他留意すべき事項・状況

参照元:介護保険最新情報Vol.1286 令和6年7月4日|厚生労働省老健局

アセスメントシートの主な様式

アセスメントシートの主な様式は、次のとおりです。

  • 居宅サービス計画ガイドライン
  • MDS-HC方式
  • 包括的自立支援プログラム
  • 日本介護福祉会方式
  • ケアマネジメント実践記録方式
  • 日本訪問看護振興財団版方式
  • 全老健版ケアマネジメント方式R4システム

それぞれの様式を確認して、事業所に適したアセスメントシートを活用しましょう

居宅サービス計画ガイドライン

居宅サービス計画ガイドラインとは、2000年に創設された介護保険制度に向けて、1998年に全国社会福祉協議会が開発したアセスメントシートの様式です。

利用者が持つ長所や強みを理解し、自身の能力によって課題を解決して自信をつける「エンパワメント支援」を採用しています

居宅介護サービス向けのアセスメントシートの様式として構築されており、居宅介護支援事業所の37.7%が利用しています

参照元:(4)介護保険制度におけるサービスの質の評価に関する調査研究事業(速報値)(案) |厚生労働省

MDS-HC方式

MDS-HC方式(インターライ方式)は、「Minimum Data Set-Home Care」の略称で、国際的な研究者団体InterRA(インターライ)が開発した在宅と施設どちらでも利用できるアセスメントシートの様式です。

機能面、精神面、感覚面、健康問題、ケア管理、失禁管理の領域を包括的に把握できます。

利用者の状況を記号で細かくチェックでき、使いこなせばアセスメントの精度を向上させられます

包括的自立支援プログラム

包括的自立支援プログラムは、1995年に以下の3団体が開発したアセスメントシートの様式です。

  • 全国老人保健施設協会
  • 全国老人福祉施設協議会
  • 介護力強化病院連絡協議会

厚生労働省の調査によると、介護老人福祉施設の49.7%が包括的自立支援プログラムを使用しています

参照元:(4)介護保険制度におけるサービスの質の評価に関する調査研究事業(速報値)(案) |厚生労働省

内容としては、実際に提供しているケアを見直すために、利用者の生活を細かく分析するチェック項目が設けられています。

主に介護施設のケアプラン作成に活用されますが、在宅復帰を目的とした利用もでき、入居から退去まで一貫したプラン作成が可能です。

日本介護福祉会方式

日本介護福祉会方式は、要介護者の衣食住、健康、家族関係、社会関係を7領域で分析できます
7領域をさらに46項目に細分化し、利用者が抱える問題を整理しています。

ホームヘルプサービスの実績から作られており、利用者の価値観や意思、環境などの項目を重視していることが特徴的です。

ケアマネジメント実践記録方式

ケアマネジメント実践記録方式は、1996年に公益社団法人日本社会福祉会によって開発したアセスメントシートの様式です。

在宅介護支援センターの事例を中心に情報を収集し、作成した様式であり、利用者や家族のニーズだけでなくアセスメント担当者が考える課題にも対処しています

在宅介護を中心にした支援を目的としており、基本調査の82項目を取り入れたアセスメントが可能です。

日本訪問看護振興財団版方式

日本訪問看護振興財団版方式は、日本看護協会が開発した「看護協会版高齢者訪問看護アセスメント用紙」とアメリカで開発された「MDS・RAPs」をもとに作成されたアセスメントシートの様式です。

30の課題領域についての項目を設けており、高齢者に限定せず幅広い利用者の状態や課題を可視化するために活用できます

3回目までのアセスメントを並列に記入できるため、ケアサービスの経緯をスムーズにチェックできます。

全老健版ケアマネジメント方式R4システム

全老健版ケアマネジメント方式R4システムは、公益社団法人全国老人保健施設が介護老人保健施設での支援を目的に作成したアセスメントシートの様式です。

R4と老健(Roken)の頭文字である「R」から取っており、以下のように4つの括りでアセスメントを実施します。

  • 入所後のアセスメントを4段階に分けている(A1、A2、A3、A4)
  • ケアマネジメントを4段階に分けている(S1、S2、S3、S4)
  • 利用者評価(ICF Staging)は4つの指標で5段階に絶対値を客観的に評価する
  • 4つの視点でのモニタリングを提唱している

参照元:全老健版ケアマネジメント方式R4システム – 公益社団法人 全国老人保健施設協会

ケアプランのアセスメントシートは介護ソフトがおすすめ

ケアプランのアセスメントを効率化したい事業所は、介護ソフトを導入しましょう。
介護ソフトを導入すれば、アセスメントからモニタリング、ケアプランの作成までを効率化できます

紙媒体のアセスメントシートでは、持ち運びや保管の手間がかかりますが、介護ソフトではクラウド上でデータを保管できます。
また、あらゆる様式に対応している介護ソフトも存在しており、事業所の運用にあわせてアセスメントシートの様式を選択することが可能です。

利用者や家族、医療機関など関係者との情報共有をスムーズに実施できるため、ケアサービスの質と利用者満足度の向上につながります。

アセスメントツールとして介護ソフトを導入する際のコツ

アセスメントツールとして介護ソフトを導入する際のコツは、次のとおりです。

  • 導入目的や現状の課題を明確化する
  • 必要性を組織内に周知する
  • 導入から運用まで中長期的な計画を立てる
  • サポート体制を確認しておく
  • 選定基準を決めておく

それぞれのコツを確認して、事業所に適した介護ソフトを導入しましょう

導入目的や現状の課題を明確化する

介護ソフトの導入を検討する際には、まず目的を明確にする必要があります
具体的な目的として、次のようなものがあります。

  • 業務効率化を図りたい(例:記録業務の簡略化)
  • 利用者の状態をより正確に把握したい
  • ケアプランの質を向上させたい

さらに、従業員間の情報共有不足やミスの多発など、現場の課題を洗い出すことが大切です。
導入目的と現状の課題を可視化することで、どのような機能を備えた介護ソフトを導入するべきか、選定基準を明確にできます。

必要性を組織内に周知する

新たな介護ソフトを導入し、適切に運用するには、現場の理解と協力が不可欠です。
ソフト導入の必要性を組織全体に周知し、次のような点を共有しましょう。

  • 導入の目的や期待される効果
  • 現場の課題解決につながる具体的なメリット
  • 従業員の負担軽減や業務改善への影響

組織全体が導入意図を理解すれば、介護ソフトの導入に対する抵抗感を軽減し、スムーズな運用ができます。

導入から運用まで中長期的な計画を立てる

介護ソフトを選ぶ際は、導入から運用まで中長期的な計画を立てることが大切です。
介護報酬制度は定期的に改正されており、新たな法令に対応できるよう、介護ソフトをアップデートしなければなりません。

そのため、将来的な法改正に対応できるアップデート機能が備わっているかを確認し、中長期的に利用できる介護ソフトを選びましょう。

サポート体制を確認しておく

介護ソフトを選ぶ際は、搭載されている機能や操作性だけでなく、サポート体制を確認しておきましょう。
事業所にICTの知見やノウハウを持つ人材が不足している場合、介護ソフトを開発したベンダーの協力が不可欠です。

導入支援や運用にあたっての不明点や疑問点を相談できる体制が整っていると、トラブルが発生した際にも安心です
サポート体制が充実した介護ソフトを選ぶことで、万が一のトラブルにも対処でき、アセスメントをスムーズに実施できます。

選定基準を決めておく

介護ソフトは多種多様なベンダーが開発しており、事業所に合う適切なソフトを見極めることが難しいです。
そのため、事業所にとって重要な選定基準を決めておくことで、介護ソフトの選定をスムーズに行えます。

介護ソフトの選定基準は、事業所によって異なりますが、主に次のようなものがあります。

  • 必要な機能が備わっているか(アセスメント機能、記録管理機能など)
  • 操作性が簡単で、現場の負担が増えないか
  • 導入コストやランニングコストが予算内で収まるか
  • 法改正や制度変更への対応が可能か

複数のソフトを比較検討し、事業所に適した介護ソフトを見極めることが大切です。

伊谷 俊宜氏
伊谷 俊宜氏

アセスメントの様式は数多くありますが、正直どれも「帯に短し襷に長し」というのが現状です。誤解を恐れず申し上げると、23の課題分析標準項目全てを作成してから、ケアプランを作成できているケアマネは極少数でしょう。国としても『すべての情報収集を行うことを求めるものではない。』と見解を述べています。加えて『なお、各保険者においては実地指導等において、「項目の主な内容(例)」に記載されている内容が把握されていないことのみをもって、アセスメントが適切に行われていないと判断し、基準違反とすることが無いよう留意されたい。』とまで触れています。項目が抜けてしまっていてもそれだけで、運営基準減算などの対象にしないように注意喚起をしてくれているのです。まずは細部はともかく確実にアセスメントは作成しておきましょう。

ケアプラン作成にはアセスメントツールとして事業所に適した介護ソフトを導入しよう

アセスメントシートを利用すれば、ケアプランの作成業務を効率化できます。

アセスメントに必要な項目をまとめたアセスメントシートを活用すれば、利用者の課題や要望を可視化し、より質の高いケアサービスを提供することが可能です。

アセスメントシートの項目は、厚生労働省が定める23の課題分析標準項目を参考にすれば、アセスメントで必要な情報を収集できます。

アセスメントツールの利用を検討している事業所は、事業所に適した介護ソフトを導入しましょう。
介護ソフトを活用すれば、クラウド上でアセスメントシートを作成し、関係者間で共有できます。

情報共有を円滑化し、アセスメントの業務効率を向上できるため、従業員の業務負担を軽減できます。
本記事で解説した介護ソフトを導入する際のコツを参考に、事業所に適した介護ソフトを導入しましょう。

監修:伊谷 俊宜

介護経営コンサルタント

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。

介護・福祉に関連するコラム

資料をダウンロード

製品・ソリューションの詳細がわかる総合パンフレットを無料でご覧いただけます

ダウンロードはこちら
検討に役立つ資料をダウンロード

製品・ソリューションの詳細がわかる総合パンフレットを無料でご覧いただけます

ダウンロードはこちら