【医療業界動向コラム】第116回 新たな地域医療構想、4+1類型の医療機関機能報告が求められる方針
2024.11.26
令和6年11月8日、第11回新たな地域医療構想等に関する検討会が開催されている。今回の検討会で注目されるのは、新たに設定される医療機関機能の内容について。これまでの議論では、「高齢者救急の受け皿となり、地域への復帰を目指す機能」・「在宅医療を提供し、地域の生活を支える機能」・「救急医療等の急性期の医療を広く提供する機能」の3つの機能を構想区域で整備していくことを必須として、「その他の機能(専門医療機関や回復期リハビリテーションなど)」を必要に応じて設定を検討していく、というものだった。今回はその設定区分の考え方について、やや整理が進んでいる。また、新たな地域医療構想では外来・在宅との連携が重要なポイントの一つとなっているが、その点についても検討されている。
〇外来・在宅等との連携はデータに基づいて整備を
今回の議論では、これまで行われてきた議論をベースに、現状の課題の明確化を行うとともに、すでに施行されている外来医療計画や医療計画における在宅医療計画などをデータ等に基づいて、地域にあった推進をしていく方針が明確にされた(図1)。
外来機能報告のデータ、令和7年度から施行・令和8年6月以降にも医療情報ネットで公表される「かかりつけ医機能報告制度」のデータなどを活用した地域での協議から始まっていく。かかりつけ医機能報告制度における2号機能について話し合われる協議の場を活用していくことになるだろう。
〇医療機関機能の報告の大まかな方針は定まるが…高齢者救急等と急性期拠点の名称問題
今回の議論では、新たに設定される医療機関機能の大まかな内容が示された。これまでは、3つの機能と必要に応じて設定するその他の機能、そして広域に対応する診療や医育機能の役割を担う大学病院本院を示す機能で検討が進められてきていたところ。今回は、厚生労働省より2分類(「地域ごとの医療機関機能」と「広域な観点の医療機関機能」)・4+1類型が提示された(図2)。
あくまでも私の勝手な推測だが、現状の施設類型、施設基準・診療報酬項目に当てはめてみると、以下の図のように区分できるのではないかと思われる。ここで課題となってくるのが、急性期拠点機能と高齢者救急等機能の違いなど名称から受けるイメージのインパクトだろう(図3)。
それぞれの機能は、病床機能報告と同様に、医療機関が基準に合致しているかを検討した上で報告する、ということになる。ここでまずポイントになるのが、基準、について。この基準については、今後策定される新たな地域医療構想策定のためのガイドラインを基にして、各地域の実情に合った「地域ごとの基準」がベースとなる。そのため、名称は全国共通でも地域ごとに考え方は変わってくるということだ。また、急性期拠点機能と高齢者救急等機能等、機能の重複報告は構わないとのことだ。
新型コロナ禍で起きた患者受け入れキャパシティ不足、主に地方都市で起きている医師不足を考えると、ある程度急性期を集約化していくことは必要だと感じる。また、医療の質を上げていくためにも、集中して経験値を積み上げ、繰り返し、精度を上げて、標準化して、さらなる効率化を実現していくべく急性期の拠点化が必須だ。
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員
1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。
https://www.hckn.work