【2025年1月時点】電子カルテ導入の際に活用できる補助金は?申請要件や導入の流れを徹底解説

2025.01.18

「電子カルテの導入を検討しているけど、費用がネックでなかなか踏み切れない……」

医療機関の経営において、電子カルテシステムの導入は患者サービスの向上や業務効率化に不可欠な投資です。しかし、導入費用は大きな負担となる場合も少なくありません。そこで活用したいのが、国や自治体が提供する電子カルテ導入のための補助金です。

この記事では、電子カルテ導入時に活用できる主な補助金の種類や概要、申請要件、導入までの流れを分かりやすく解説します。

補助金を活用して電子カルテを導入を進めたい方は、ぜひ参考にしてください。

電子カルテ導入にはどれぐらいのコストがかかる?

電子カルテの導入を検討する際、気になるのが費用の問題です。システムは大きく「オンプレミス型」と「クラウド型」の2種類があり、それぞれ費用が異なります。

オンプレミス型は、院内にサーバーを設置して運用するタイプです。初期費用は高額になりますが、自院でシステムを管理できます。一方、クラウド型は初期費用を抑えられ、サーバーの設置も不要です。

どちらのタイプも、PCやタブレットなどの端末費用が別途必要になることがあります。診療所の規模や運用方針に合わせて、最適なシステムを選びましょう。

電子カルテの導入に活用できる補助金の種類

電子カルテシステムの導入費用を補助する主な制度には、以下の3つがあります。それぞれの特徴を理解し、自院に最適な補助金を選びましょう。

IT導入補助金

IT導入補助金は、経済産業省が2017年から実施している支援制度です。

医療機関も中小企業・小規模事業者として申請が可能です。

申請を検討する際は、必ず最新の交付規程や公募要領で詳細を確認するようにしましょう。

参照:経済産業省|IT導入補助金2025

電子カルテ情報共有サービスの導入に係る補助金

2024年3月から、20床以上の病院を対象とした新しい補助金制度が始まりました。厚生労働省が運営する「医療機関等向け総合ポータルサイト」で申請が可能です。

申請期限は2031年9月30日までですが、補助金の申請には2031年3月31日までにサービスの導入を完了している必要があります。

ただし、新規に電子カルテを導入する場合は注意が必要です。実施要領に記載された標準規格準拠対応機能以外の導入費用は、補助対象外となります。また、カスタマイズによる改修費用が補助金の上限を超えた場合、超過分は自己負担となります。

参照:医療機関等向け総合ポータルサイト|電子カルテ情報共有サービスの導入に係る補助金

補助金の適用範囲

電子カルテ関連の補助金は、システムの導入費用だけではなく、さまざまな関連費用にも適用される可能性があります。

補助金の対象となる主な費用には、以下のようなものが挙げられます。

  • 電子カルテシステムの導入費用
  • スタッフ向けの研修・教育費用
  • 既存システムとの連携に関わる費用
  • 運用サポート費用
  • データ移行費用

ただし、これらの費用がすべての補助金で対象となるわけではありません。補助金によって適用範囲は異なり、同じ費用項目でも補助対象外となる場合があります。

補助金を受けるための主な要件

電子カルテ導入補助金の申請を検討する前に、必ず確認しておきたいのが「補助金を受けるための要件」です。

要件を満たしていない場合、申請が却下される可能性があります。それぞれの要件を詳しく見ていきましょう。

申請者の条件

電子カルテ導入の補助金を申請するには、各制度で定められた申請者の条件を満たす必要があります。条件に該当しない場合は、申請自体ができません。

主な申請条件は以下のとおりです。

事業規模従業員数、病床数などの規模要件
資本金定められた資本金額の範囲内であること
所在地日本国内で事業を営んでいること

また、以下のような場合は基本的には申請対象外となります。

  • 任意団体(法人格がない組織)
  • 過去に不正行為があった事業者
  • 創業予定で未開業の事業者(補助金により異なる)

特に注意が必要なのは、不正行為に関する条件です。申請時に不正が発覚した場合、不採択になるだけではなく、次回以降の申請も制限される可能性があります。

補助事業の条件

補助金の申請では、事業内容と経費の両面で厳密な条件が設けられています。これらの条件を満たさない場合、申請が不採択になるだけでなく、交付後の返還リスクもあります。

補助対象となる事業の条件は以下のとおりです。

事業要件補助金の目的や趣旨との一致事業計画の自主的な作成と実施
経費要件指定された経費項目への該当補助事業に必要な経費であることの明確化対象期間内での契約と支払いの完了

電子カルテ導入では、システムの選定や関連機器の購入において、どの費用が補助対象となるか慎重な確認が必要です。

申請手続きの要件

補助金の申請には、厳格な手続き要件があります。提出期限や必要書類の不備は申請却下の原因となるため、慎重な準備が求められます。

申請手続きの基本要件は以下のとおりです。

申請方法電子申請システムの利用郵送での書類提出
必要書類申請書事業計画書見積書経費明細書など
提出期限指定された期日までに必着
申請様式所定のフォーマットを使用

電子申請システムを利用する場合は、事前にアカウント登録が必要です。また、システムの操作方法や入力項目についても、事前に確認しておきましょう。

補助金を活用した電子カルテ導入の流れ

電子カルテ導入を補助金でよりスムーズに進めるためには、事前の準備や計画的な手順が大切です。補助金を活用した電子カルテ導入の流れを順に説明します。

情報収集と電子カルテ選定

電子カルテ導入を効率的に進めるためには、情報収集と慎重な製品選定が不可欠です。選定時の主なチェック項目は、以下のとおりです。

基本機能診療科別の対応機能予約管理システムとの連携会計システムとの連動
使いやすさ画面構成の分かりやすさ入力のしやすさカスタマイズ性
コスト初期導入費用月額利用料保守費用
サポート導入時の研修体制運用開始後のサポート緊急時の対応

選定と並行して、活用可能な補助金の情報も集めておきましょう。システムの選定と補助金の申請要件を照らし合わせることで、より効果的な導入計画を立てられます。

補助金申請

補助金の申請は、計画的な準備と正確な書類作成が求められます。特に事業計画書は審査の重要なポイントとなるため、丁寧な作成が必要です。

申請の基本的な流れは、以下のとおりです。

①事前確認補助金要件との適合性チェック申請スケジュールの確認
②書類作成申請書の作成事業計画書の作成見積書など添付資料の準備
③申請提出必要書類の最終確認期限内での確実な提出
④審査対応必要に応じた追加資料の提出質問への対応

申請内容の不備は不採択の原因となるため、慎重に準備を進めましょう。

補助金受領後の契約と導入準備

補助金の交付が決定したら、電子カルテ導入に向けた具体的な準備を開始します。契約から導入までの手順を計画的に進めることで、スムーズな移行が可能になります。

特に以下の点については、入念な確認と準備が必要です。

  • 契約内容と補助金申請内容の整合性
  • データ移行における個人情報の取り扱い
  • スタッフへの操作研修スケジュール

導入までの期間を有効に活用し、運用開始後のトラブルを最小限に抑えられるよう、準備を進めていきましょう。

システム導入と運用開始

電子カルテの導入は、段階的に進めることが大切です。導入から運用開始までの流れは以下のとおりです。

導入作業システムのインストール初期設定の実施データ移行の確認
テスト運用基本機能の動作確認データ連携の確認操作性の確認
本稼働段階的な利用開始運用状況の確認

ベンダーとの連携を保ちながら、システムを最適な状態に保っていくことで、長期的な運用の安定性を確保できます。問題が発生した場合は、早めに対応することをおすすめします。

補助金申請の際の注意点

電子カルテ導入補助金の申請は、綿密な準備と計画が大切です。補助金を確実に受給し、スムーズに電子カルテ導入を進めるために、以下の注意点に留意しましょう。

他の補助金や助成金との併用制限

電子カルテ導入に関する補助金は、他の支援制度との併用に制限がある場合があります。適切な活用のためには、事前に詳しい確認が必要です。

具体的には、以下の点を確認しておきましょう。

  • 同一の経費に対する重複申請は不可
  • 補助金によって対象経費が異なる場合がある
  • 申請時期や審査期間の違いによる導入スケジュールへの影響

複数の補助金の活用を検討する場合は、それぞれの担当窓口に詳細を確認し、計画的に申請を進めることをおすすめします。

計画的なスケジュール管理

補助金を活用した電子カルテ導入では、申請から運用開始まで長期的な視点でのスケジュール管理が不可欠です。特に審査期間は数ヶ月から1年以上かかる場合もあるため、事前に確認しておきましょう。

導入までの主な段階と注意点は、以下のとおりです。

段階期間の目安注意点
情報収集・準備1~2ヶ月補助金情報の確認必要書類のリストアップ
申請~審査3ヶ月~1年書類作成の期間確保審査状況の確認
導入準備2~3ヶ月契約手続きの開始システム環境の整備
導入~運用1~2ヶ月スタッフ研修の実施試験運用期間の確保

不測の事態に備えて、できるだけ余裕を持ったスケジュールを組むことをおすすめします。

申請が却下される場合は?

補助金申請は、要件を満たしていても却下される可能性があります。しかし、適切な対応を取ることで、次の機会につなげることができます。

却下された場合の対応手順は、以下のとおりです。

  1. 却下理由の確認
  2. 再申請の可否確認
  3. 必要な修正事項の整理
  4. 他の補助金制度の探索
  5. 導入計画の見直し

却下された場合でも慌てることなく、状況を冷静に分析し、最適な対応策を検討しましょう。

伊谷 俊宜氏
伊谷 俊宜氏

ガソリン価格の高騰対策として、国はトリガー条項の凍結解除ではなく、補助金の延長を決めたことに対し、批判の声が多く挙がったのは記憶に新しいところです。このように、日本に於いてあまり印象の良くない補助金ですが、医療・介護分野では、国が事業者にばら撒く『ニンジン』としての役割が顕著です。事業者の大規模化や生産性向上のためのICT化というのは、高齢化社会を迎え、社会保障費の抑制が至上命題になっている日本に於いては喫緊の課題です。本来、基本報酬を上げて、各事業の収益性を向上させるべきなのですが、国は社会保障費抑制の観点で頑なにそれをやろうとはしません。代わりにこうした補助金というニンジンをばら撒くのです。何とも口惜しい環境ではありますが、残念ながら現状はこうした補助金に頼らないわけにはいかないのです。

まとめ|補助金を活用して電子カルテ導入をスムーズに進めよう

電子カルテの導入には、IT導入補助金や電子カルテ情報共有サービスの導入に係る補助金など、さまざまな支援制度が用意されています。これらの補助金を活用すれば、導入にかかる費用負担を大きく軽減できるでしょう。

ただし、補助金の申請には各種要件の確認や計画的なスケジュール管理が欠かせません。申請から導入までの流れを十分に理解し、余裕を持った準備を進める必要があります。

まずは自院に適した補助金制度を探し、申請要件や手続きについて詳しく確認することから始めましょう。

監修:伊谷 俊宜

介護経営コンサルタント

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。

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