地域医療連携とは?メリット・デメリットや課題などを解説
2025.01.18
高齢化や医療の高度化が進む現代において、地域医療連携は質の高い医療サービスを提供するうえで不可欠なシステムです。
しかし、地域医療連携の具体的な内容やメリット・デメリット、課題については詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
本記事では地域医療連携の基本的な定義から、地域医療連携を支える組織やメリット・デメリット、今後の課題まで、わかりやすく解説します。
ぜひ参考にしてください。
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目次
地域医療連携とは
地域医療連携とは、地域住民の健康を維持・増進し、質の高い医療サービスを効率的に提供するために、医療機関・介護福祉施設・行政機関などが連携して協働する仕組みです。
昨今は高齢化社会の進展に加え、医療技術の高度化や医療資源の有限性など、さまざまな課題があります。
地域医療連携はそれぞれの機関が持つ資源や専門性を活かし、地域住民にとって最適な医療の提供を目指しています。
地域医療連携の目的
地域医療連携を実施する目的は以下のとおりです。
目的 | 具体的な取り組み |
切れ目のない医療提供 | 急性期医療から回復期医療・慢性期医療・在宅医療まで、患者の状態に合わせたシームレスな医療提供を実現する。そのため、医療機関間の情報共有や患者紹介をスムーズに実施する。 |
医療資源の最適配分 | 限られた医療資源(医師・看護師・医療機器など)を効率的に活用し、地域全体の医療レベルの向上を目指す。高額医療機器の共同利用や、医師の専門性を活かした役割分担などを実施する。 |
地域住民の健康増進 | 健康教育・保健指導・健康相談などを通して、地域住民の健康意識を高め、病気の予防や早期発見・早期治療につなげる。かかりつけ医による継続的なケアも重要な要素となる。 |
医療の質向上 | 医療機関間の連携強化により、医療の質を向上させ、患者満足度の向上を目指す。診療情報の共有、専門医の連携による高度な医療提供などが含まれている。 |
上記の目的を達成することで、地域住民はより質の高い、効率的な医療サービスを受けられるようになります。
さらに、健康寿命の延伸の実現も期待できるでしょう。
地域医療連携を支える組織
地域医療連携はさまざまな組織が連携して活動しています。
それぞれの組織が担う役割を理解することは、地域医療連携の全体像を把握するうえで非常に重要です。
地域医療連携を支える組織には、以下のようなものがあります。
組織 | 役割 | 補足事項 |
地域医療連携推進法人 | 地域における医療機能の分担・連携の推進、医療連携推進計画の策定・実施、医療機関間の情報共有システムの構築・運用支援など。 | 都道府県知事の認定を受けた一般社団法人であり、地域医療構想の実現に重要な役割を果たす。複数の医療機関や介護施設などが連携して設立された組織。 |
地域医療連携室(または部署) | 医療機関内における地域医療連携の窓口となり、他医療機関との連絡調整・患者紹介・情報共有・関係機関との連携などを実施。 | 病院や診療所など、個々の医療機関内に設置され、連携の中核を担う。規模や体制は医療機関によって異なる。 |
地域医療連携センター | 複数の医療機関・介護施設・行政機関などを巻き込み、地域全体の医療連携を推進する拠点となる。情報共有システムの運営、研修会の開催、地域住民への啓発活動などを実施。 | 地域全体を視野に入れた連携を推進するため、広域的なネットワーク構築や情報発信を行う。 |
関係行政機関(例:保健所・市町村) | 地域医療計画の策定・医療資源の配分・地域住民への医療情報の提供・地域医療連携推進法人の支援など。 | 地域医療連携を政策面から支え、円滑な連携体制の構築を支援。 |
その他関係機関(例:介護施設、薬局、訪問看護ステーション) | 患者さんのニーズに応じた適切なサービス提供・情報共有・連携医療機関との連絡調整など。 | 医療機関だけでなく、さまざまな関係機関が連携し、包括的な医療・介護サービスを提供。 |
上記の組織はそれぞれ独立して活動しているわけではありません。
各組織が密接に連携することで、地域住民にとって最適な医療サービスの提供を目指しています。
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地域医療連携の5つのメリット
地域医療連携を実現すると、以下のようなメリットが期待できます。
- より質の高い医療サービスの提供
- 医療の効率化による業務負担の軽減
- シームレスな患者の紹介
- 集患の強化による経営の改善
- 地域住民の健康増進への貢献
それぞれのメリットについて順番に解説するので、ぜひ参考にしてください。
より質の高い医療サービスの提供
地域医療連携では、複数の医療機関が連携することで、それぞれの専門性を活かした質の高い医療サービスを提供できます。
例えば、急性期医療を担う病院と、慢性期医療やリハビリテーションに特化した施設が連携すれば、患者は病状に合わせた最適な治療を受けられます。
さらに専門性の高い医療機関へのスムーズな紹介や、各機関での治療情報の共有など、さまざまな取り組みができる点も魅力です。
医療の効率化による業務負担の軽減
地域医療連携を実践すれば、医療の効率化による業務負担の軽減も可能です。
地域医療連携では医療機関間の情報共有がスムーズになるため、重複した検査や治療を削減できます。
これにより、医療機関全体の業務効率が向上し、医療従事者の負担を軽減できます。
また、患者紹介システムの構築などにより、待ち時間を削減できるなど、患者の負担を減らせる点もメリットです。
シームレスな患者の紹介
地域医療連携では、患者はそれぞれの病状やニーズに合わせて、最適な医療機関へスムーズに紹介を受けられます。
スムーズな紹介を実現すれば、治療の遅延や中断を防ぎ、切れ目のない医療サービスの提供が可能です。
特に、高齢者や慢性疾患を持つ患者にとって、このシームレスな連携は非常に重要です。
適切な治療をいち早く受けられるため、健康不安の払拭につながります。
集患の強化による経営の改善
地域医療連携に参加することで、医療機関はほかの医療機関からの紹介患者を獲得しやすくなります。
その結果、集客が強化されるため、患者数の増加、ひいては経営の安定化につながるでしょう。
加えて、医療機関同士の連携によって地域住民への認知度向上も期待できます。
地域住民の健康増進への貢献
地域医療連携は、地域住民の健康増進にも貢献できる施策です。
地域全体で医療情報を共有し、連携することで、地域住民の健康状態をより的確に把握し、予防医療や健康増進のための施策を効果的に実施できます。
高齢化社会の昨今、健康増進は医療費の削減を実現するうえでも重要な課題です。
地域医療連携も、課題解決のうえで高い効果が期待できます。
地域医療連携が抱える3つの課題
地域医療連携の推進は質の高い医療提供に不可欠ですが、以下のような課題があります。
- 医療資源や人材の不足
- 医療機関の機能が不明瞭
- ICTの普及の遅れ
より有効的な地域医療連携を実践するなら、それぞれの課題について理解しましょう。
医療資源や人材の不足
より良い地域医療連携を実現するうえで、医療資源や人材の不足は解決しなければならない課題です。
少子高齢化が加速する日本において、医師・看護師をはじめとする医療従事者の不足は深刻な問題です。
特に地方では、医師不足が地域医療の質を大きく低下させており、地域医療連携の円滑な推進を妨げる要因となっています。
高齢化が進む地域では、慢性疾患を持つ患者の増加に伴い、医療ニーズが高まっているにもかかわらず、医療資源の供給が追いついていないケースも少なくありません。
加えて、効果的な治療に必要な設備や薬品が不足している地域もあります。
医療資源や人材の不足は、地域医療連携における情報共有や患者紹介といった業務にも影響を与え、連携の遅れや治療の質の低下につながる可能性があります。
医療資源や人材の改善には、待遇改善による医療従事者の確保・地域医療の魅力向上・医療技術の効率化などの対策が有効的です。
医療機関の機能が不明瞭
地域医療連携に関与する医療機関の役割・専門性・受け入れ可能な患者の状況などが、明確にされていないケースも少なくありません。
そのため、患者紹介を行う際に、適切な医療機関を選択することが困難になり、連携の遅れや、患者にとって最適ではない医療提供につながることがあります。
各医療機関の機能を明確にし、情報を共有することは、患者の最適な治療の選択を容易にし、地域医療連携の質を向上させるうえで不可欠です。
この課題は、医療機関同士の情報共有システムの構築・医療機関の機能分担の明確化・地域医療連携拠点の設置などによって解決が期待できます。
ICTの普及の遅れ
電子カルテなどのICT技術の普及は、医療情報の共有をスムーズにし、地域医療連携を効率化するための重要な要素です。
しかし、医療情報システムの導入が遅れている医療機関も多く存在します。
以下の表を見てみましょう。
電子カルテシステムは医療ICTの代表格ですが、まだすべての医療機関に普及していないことがわかります。
医療ICTが遅れると、医療情報の共有に時間がかかり、患者紹介や診療連携がスムーズに行えません。
さらに、データ分析による地域医療ニーズの把握や、効率的な医療資源配分も困難になります。
ICT化の推進には、政府による支援・医療機関への技術支援・情報セキュリティ対策の強化などが不可欠です。
より良い地域医療連携を目指すならMeLL+を活用しよう
より良い地域医療連携を目指すなら、弊社ワイズマンの「MeLL+」をご検討ください。
MeLL+は、地域の医療機関や介護施設の連携に役立つ医療・介護連携サービスです。
MeLL+は医療機関はもちろん、介護施設や地域包括支援センターなど多職種間との効率的なコミュニケーションや情報共有に役立ちます。
また、ワイズマンは各機関にICTの重要性を説明し、地域医療連携を促進するお手伝いもさせていただきます。
より多くの患者を助けられる地域医療連携を目指すなら、ぜひワイズマンにご依頼ください。
「2025年問題」というキーワードを耳にされたことがある方も多いのではないでしょうか。これは、いわゆる段階の世代が軒並み75歳以上の後期高齢者となる年であることを意味しています。2025年より高齢者の人口が増加していき、医療や介護の需要が増加していく見込みです。
「2025年問題」を見据えて、2014年に『地域医療構想』が制度化されました。医療需要は地域によって大きく異なります。そこで地域医療構想では、各地域の人口推計を基に必要な医療機能や病床数を推定し、各医療機関の分担(機能分化)や医療機関同士の連携を促しているのです。こうした地域医療構想の概念を細分化し、異業種連携を推し進めているのが地域医療連携です。MCSなどを利用した医療・介護コミュニケーション連携もだいぶ活発になっています。
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医療施設・介護事業所間の連携を実現できますので是非ご覧ください。
地域医療連携は医療ニーズに対応するうえで重要な考え方
地域医療連携は、医療の質の向上や、患者の負担を軽減させるなど、地域住民にとって最適な医療体制の構築を実現する取り組みです。
地域医療連携は、単なる医療機関間の協力関係ではなく、地域住民の健康を支えるための包括的なシステムです。
高齢化が加速する現代において、その重要性はますます高まっており、今後も地域医療連携の推進と課題解決に向けた取り組みが欠かせません。
地域医療連携に参加する際は、ぜひ弊社ワイズマンにご相談ください。
最適なソリューションを提供し、より質の高い医療サービスの実現をお手伝いします。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。