短期入所生活介護における人員基準は?設備や運営の基準も詳しく解説
2025.02.25

短期入所生活介護(ショートステイ)の運営には、利用者の安心と安全を確保するための厳密な人員配置基準が定められています。
しかし、基準を正しく理解し、適切に対応するのは簡単ではありません。
「基準が複雑で何から手をつければいいかわからない」「適切な対応ができているか不安」と悩んでいませんか?
この記事では、介護保険法で定められた短期入所生活介護における人員基準を職種ごとにわかりやすく解説し、具体的な対応策や効率的な運営方法を紹介します。
基準を守れば、介護報酬の減算や人員基準違反によるリスクを回避し、質の高いサービス提供と安定運営が実現できます。
短期入所生活介護の基準がわからない方や、基準を満たした効率的な運営方法を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
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目次
短期入所生活介護の人員基準早見表【一覧でわかりやすく解説】

短期入所生活介護(ショートステイ)の運営には、介護保険法で定められた人員基準の遵守が不可欠です。
人員基準は、利用者が安心して質の高いケアを受けられるようにするために設けられています。適切な人員配置により、利用者一人一人に寄り添ったケアが可能となり、安全で快適な環境を提供できるからです。
また、基準を満たすことで適正な介護報酬の請求が可能になり、事業運営の安定化にもつながります。
介護保険法で定められている基本的な人員配置基準は、以下のとおりです。
職種 | 必要数 | 備考 |
医師 | 1名以上 | – |
生活相談員 | 利用者100人につき1名以上 | 常勤換算方法による必要数利用定員20人以上の場合、1名以上は常勤必須 |
介護職員・看護職員 | 利用者3人につき1名以上 | 常勤換算方法による必要数利用定員20人以上の場合、1名以上は常勤必須 |
栄養士 | 1名以上 | 利用定員40人以下の場合は、一定の条件で不要 |
機能訓練指導員 | 1名以上 | – |
調理員その他の従業者 | 適当数 | 実情に応じて配置 |
上記の人員配置基準は最低限必要な数であり、より良いサービスを提供するためには、基準以上の人員配置が必要な場合もあります。各職種には具体的な資格要件があり、適切な職員の配置が求められます。
基準を満たしていない場合は、人員基準欠如減算として介護報酬が減算されるため注意が必要です。
短期入所生活介護の職種別の人員配置要件

短期入所生活介護の人員配置は、職種によって必要な資格要件や配置基準が細かく定められています。人員配置要件を正確に理解し、遵守しなければなりません。
医師から調理員まで、それぞれの職種に求められる具体的な要件を確認していきましょう。
医師の配置基準
短期入所生活介護における医師は、利用者の健康管理や医療相談の役割を担う重要な職種です。主な配置基準は、以下のとおりです。
必要人数 | 1名以上 |
勤務形態 | 常勤 |
兼務 | 可能(市町村により判断が異なる場合あり) |
主な業務 | ・利用者の健康管理 ・医療相談 ・健康指導 |
医師の配置は必須ですが、ほとんどの市町村では他の施設や診療所との兼務が認められています。そのため、近隣の医療機関との連携により、効率的な人員配置が可能です。
管理者の資格要件と配置
利用者へ質の高いサービスを提供するため、管理者は職員の育成指導から運営管理まで、幅広い業務を担います。日々の業務管理や職員教育を通じて、施設全体のサービスの質を高める重要な役割を果たしています。
主な配置基準は、以下のとおりです。
必要人数 | 1名以上 |
勤務形態 | 常勤・専従 |
兼務 | 管理上支障がない場合は他事業所との兼務可 |
主な業務 | ・事業所の運営管理 ・職員の育成・指導 ・サービス提供体制の管理 |
管理者は原則として専従での配置が求められますが、事業所の運営に支障がない場合は、他の事業所の管理者との兼務が認められています。
生活相談員の配置要件と兼務
生活相談員は利用者の受け入れから支援計画作成まで、サービス提供の中核を担う職種です。主な配置基準は、以下のとおりです。
必要人数 | 利用者100名につき1名以上 |
勤務形態 | 1名以上は常勤必須 |
主な業務 | ・予約管理・日程調整・施設利用に関する調整全般 |
資格要件 | ・社会福祉主事 ・精神保健福祉士 ※市町村により要件が異なる場合あり |
生活相談員の資格要件は市町村によって異なりますが、一般的には社会福祉主事または精神保健福祉士の資格が求められます。適切な資格を持つ職員を配置すれば、専門的な相談支援体制を確保できます。
介護職員と看護職員の人員基準
介護職員と看護職員は、利用者の食事や入浴、服薬管理から健康管理まで、生活全般を支える役割を担っています。主な配置基準は、以下のとおりです。
必要人数 | 利用者3名につき1名以上 |
勤務形態 | 1名以上は常勤必須(定員20人以上の場合) |
資格要件 | ・介護職員:資格不要 ・看護職員:看護師または准看護師 |
定員20人未満の併設型事業所では、常勤職員の配置は必須ではありません。人員基準は介護職員と看護職員を合わせた数で満たすことができるため、施設の実情に応じて柔軟な人員配置が可能です。
その他の職種(栄養士、機能訓練指導員など)
質の高い短期入所生活介護サービスを提供するためには、医療・介護職員以外にも専門職の配置が欠かせません。配置基準は、各都道府県の条例や事業所の状況に応じて判断されます。
具体的には、以下のような資格の方が配置されます。
職種 | 配置基準 | 配置の主な要件 |
栄養士 | ・定員40人超:常勤1名以上必須 ・定員40人以下:他施設と連携で不要 | 療養食加算には専従の配置が必要 |
機能訓練指導員 | 1名以上 | 機能訓練加算には個別計画作成などが必要 |
調理員その他 | 施設の実情に応じた人数 |
機能訓練指導員には、以下のいずれかの資格が必要です。
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- 看護職員
- 柔道整復師
- あん摩マッサージ指圧師(一定条件あり)
専門職の適切な配置により、利用者の栄養状態の改善や身体機能の維持・向上が期待できます。各種加算の算定により、より手厚いサービス提供体制を整えることもできるでしょう。
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短期入所生活介護におけるその他の基準

短期入所生活介護では、人員配置以外にも満たすべき基準があります。特に設備や運営に関する基準は、利用者の安全性と快適性を確保するためにも、しっかり把握しておきましょう。
設備基準
短期入所生活介護事業所では、利用者の安全で快適な生活を保障するため、建物の構造から居室の広さまで、詳細な設備基準が定められています。
建物構造 | 原則として耐火建築物(2階以上に生活空間がない場合は準耐火建築物可) |
利用定員 | 20人以上(併設事業所は20人未満可) |
居室 | 定員4人以下 ・1人当たり10.65㎡以上 ・採光・換気等に配慮 |
食堂・機能訓練室 | 合計面積は3㎡×利用定員以上 ・条件付きで同一空間利用可 |
構造設備 | 廊下幅:1.8m以上(中廊下2.7m以上) ・常夜灯の設置 ・非常災害設備の設置 |
その他、浴室、便所、洗面施設は身体の不自由な方が使用しやすい構造が求められます。医務室や静養室、面談室なども必要ですが、他の社会福祉施設等との共用が可能な場合もあります。
運営基準
短期入所生活介護事業所は、利用者へ質の高いサービスを提供するため、さまざまな運営基準の遵守が求められます。特に利用開始時の説明から緊急時の対応まで、適切な運営体制の構築が重要です。
介護サービス | 重要事項説明書の交付と説明 サービス内容と利用期間の同意取得 |
介護サービス | 利用者の自立支援 週2回以上の入浴介助 適切な排泄介助 |
食事提供 | 栄養と嗜好への配慮 食堂での食事摂取支援 |
相談援助 | 利用者・家族からの相談対応 必要な助言の実施 |
緊急時対応 | 急変時の医師への連絡 協力医療機関との連携 |
各事業所は運営規程を定め、事業目的や職員体制、利用料金、緊急時対応など、運営に関する重要事項を明確にする必要があります。基準を満たすことで、利用者が安心してサービスを受けられる環境を整えられるでしょう。
基準を満たしていない場合は、違反と見なされ指定取り消しや停止処分、介護報酬の返還命令をしなければいけなくなる可能性もあります。「知らなかった」ではすまされないため、それぞれの基準はしっかりと理解しておきましょう。
人員・設備・運営基準を満たすためのポイント

短期入所生活介護事業所の運営では、人員・設備・運営の各基準を確実に満たすことが求められます。
それぞれの基準は、単なる規則ではなく、利用者の安全と満足度を確保するための指標です。ここでは、各基準を効率的に満たすための具体的な取り組みについて解説します。
人員確保の工夫と効率的な配置
介護業界での人材確保は、深刻な課題の一つです。短期入所生活介護事業所でも、人員基準を満たしながら効率的な運営を行うためには、さまざまな工夫が求められます。
効果的な人員確保と配置のポイントとしては、以下のようなものが挙げられます。
柔軟な勤務形態の導入 | 短時間勤務の活用 シフトの多様化 週単位での調整 |
資格取得支援 | 介護福祉士資格取得の支援 実務者研修の費用補助 |
効率的な人員配置 | 常勤換算での適切な配置 職種間での兼務活用 |
キャリアパスの整備 | 段階的な昇進制度 給与体系の明確化 |
特に常勤換算による人員配置では、以下の計算式を活用して効率的な職員配置を検討します。
- 常勤換算数=常勤職員数+(非常勤職員の週間総勤務時間÷常勤職員の週間勤務時間)
人材確保と効率的な配置を組み合わせることで、基準を満たしながら質の高いサービス提供が可能となります。職員の働きやすさにも配慮すれば、長期的な人材定着にもつながるでしょう。
基準遵守のための取り組み
介護現場では、人員基準を確実に満たしながら、サービスの質を向上させることが求められます。近年は、テクノロジーを活用した効率的な運営方法が注目されているため、まだ導入されていない場合は、以下のような機器の導入を検討してみましょう。
見守り機器 | 夜間の見守り業務効率化 職員の負担軽減 |
インカム | 職員間の迅速な情報共有 緊急時の素早い対応 |
記録ソフト | 介護記録の効率化 情報の一元管理 |
移乗支援機器 | 介護負担の軽減 安全な介助の実現 |
機器を導入する際には、慎重に進める必要があります。
まず、3か月ほど試験的に導入し、実際に使用する職員から意見を集めます。その後、さまざまな職種のメンバーで評価を行い、安全性やケアの質、職員の負担軽減といった点を総合的に確認しましょう。
夜勤中の見守りなど、これまで人手に頼っていた業務の効率化が期待できるでしょう。

短期入所生活介護に限らず、介護サービスは正式名称より通称が馴染みやすいサービスはそれなりに利用される傾向にあります。短期入所生活介護とだけ聞いてしまうとよくわからない方も、ショートステイ聞くと「あー!」となるのではないでしょうか。認知症対応型共同生活介護もグループホームという通称により、一気に馴染み深いサービスとなりました。このように、マーケティングの視点で視ると、本来ネーミングは非常に重要なのですが、厚労省は当然のようにそういった配慮はしてくれませんので、介護経営には事業所側の努力が必要不可欠です。一昔前、ショートステイは特養の待機者を囲うサービスとして隆盛を誇っていました。ここにメスを入れる形で30日ルールが適用され、その後ショートステイの運営難易度は一気に跳ね上がっているのが現状です。
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医療施設・介護事業所間の連携を実現できますので是非ご覧ください。
まとめ|基準を理解し質の高いサービスを提供しよう
短期入所生活介護における人員基準は、安全で質の高いサービスを提供するための指標です。医師や生活相談員、介護職員など、各職種の適切な配置により、利用者一人一人に寄り添ったケアが実現できます。
居室の広さや設備の整備など、設備基準の遵守も利用者の快適な生活に直結します。運営基準に関しては、サービス提供の手順から緊急時の対応まで、きめ細かな体制づくりを構築しなければなりません。
それぞれの基準は、単なる規則ではなく、より良いサービス提供のためのガイドラインです。テクノロジーの活用など新しい取り組みも積極的に検討しながら、利用者の満足度向上と職員の働きやすさの両立を目指していきましょう。

監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。