短期入所生活介護とは?利用条件や対象者から運営の注意点まで解説
2025.02.28

「短期入所生活介護の運営に関して基本的なことから学びたいけど、制度の内容が複雑で、どこから手をつければ良いかわからない……」
「質の高いサービスを提供したいけど、具体的に何をすれば良いのかわからない……」
上記のようなお悩みをお持ちではありませんか?
短期入所生活介護とは、在宅で介護を受けている方が、短期間施設に入所して、日常生活上の支援や機能訓練などを受けられるサービスです。
この記事では、短期入所生活介護の制度概要から、利用条件、費用、運営上の注意点まで解説します。
2024年度介護報酬改定による加算・減算項目にも詳しく説明しています。
短期入所生活介護の制度を理解したい方や、運営する際の注意点を把握しておきたい方は、ぜひ参考にしてください。
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目次
短期入所生活介護とは短期的な入所サービス

短期入所生活介護は、要介護者や要支援者が介護施設に短期間入所して、日常生活の介護や機能訓練などのサービスを受けられる制度です。
提供される主なサービスをまとめると、以下のとおりです。
身体介護 | 食事、入浴、排泄、更衣の介助 |
生活支援 | ベッドメイキング、洗濯、居室の清掃 |
健康管理 | バイタルチェック、服薬管理、体調管理 |
機能訓練 | 身体機能の維持・向上のための訓練 |
相談援助 | 介護に関する相談対応、助言 |
例えば、介護者が手術のため数日間入院する場合、この期間を短期入所生活介護で対応すれば、要介護者の生活を支えながら、介護者の治療に専念できる環境を整えられます。
短期入所生活介護は、在宅介護を支える重要なサービスとして機能しています。介護保険制度の中でも特に利用頻度の高いサービスの一つであり、介護の社会化を実現する上で欠かせない制度です。
短期入所生活介護の利用条件と対象者

短期入所生活介護は、誰でも利用できるわけではありません。介護保険制度に基づくサービスであるため、明確な利用条件や対象者が定められています。利用期間にも制限があり、計画的な利用が必要です。
ここでは、短期入所生活介護の以下の項目を説明します。
- 利用対象者
- 利用目的
- 利用期間の制限
それぞれ詳しく説明します。
利用対象者
短期入所生活介護の利用対象者は、要介護・要支援認定を受けた方です。認定区分によって対象となる状態が異なります。
要介護度 | 対象となる状態 |
要支援1・2 | 日常生活に支障がある 介護が必要となる可能性が高い 介護予防短期入所生活介護を利用可能 |
要介護1~5 | 日常生活に著しい支障がある 常時介護が必要な状態 短期入所生活介護を利用可能 |
介護保険の認定を受けていない方(自立の方)は、原則としてサービスを利用できません。ただし、緊急時など特別な事情がある場合は、市区町村にご相談ください。
利用目的
短期入所生活介護の主な利用目的は、以下の4つです。
介護者の負担軽減 | 冠婚葬祭、旅行、病気、休養など一時的な介護困難への対応 |
心身機能の維持・回復 | リハビリや機能訓練による身体機能の維持・向上 |
孤立感の解消 | 他の利用者との交流を通じた社会参加の促進 |
環境変化によるリフレッシュ | 日常と異なる環境での生活による心身の活性化 |
目的に沿ったサービスを提供すれば利用者の在宅生活の継続と、介護者の介護負担軽減を実現できるでしょう。
利用期間の制限
短期入所生活介護の利用期間には、以下の2つの制限があります。
制限の種類 | 内容 | 理由 |
認定期間における制限 | 介護認定期間の半数まで (例:180日の認定期間なら最大90日) | 在宅生活リズムの維持 |
連続利用の制限 | 最大30日まで (月またぎも含む、30日超過で報酬減算) | 施設入所化の防止 |
なお、以下のような場合は連続利用とみなされません。
- 自宅への一時帰宅(30日目に帰宅し、翌日は自宅で過ごす場合)
- 他の介護保険サービスの利用期間
ただし、やむを得ない事情がある場合は、期間超過が認められることがあります。例えば、退院後の在宅準備期間として利用する場合や、介護者の体調不良により在宅介護が困難な場合などです。
期間超過の際は、ケアマネジャーを通じて理由届出書を自治体に提出する必要があります。
短期入所生活介護の30日超え利用の現状と課題
短期入所生活介護は、在宅介護を支えるサービスですが、利用期間には原則として連続30日が制限です。しかし、実際にはさまざまな理由から30日を超えて利用するケースも見られます。
厚生労働省の調査によると、短期入所生活介護の「長期利用減算」の算定割合は年々増加傾向にあり、令和4年には37.0%に達しています。
出典:短期入所生活介護 長期利用減算の算定割合|厚生労働省
また、31日以上連続している利用者数も54.5%占めていることも資料から明らかになっています。
出典:短期入所生活介護・介護予防短期入所生活介護 連続利用日数|厚生労働省
図表は、31日以上連続して短期入所生活介護を利用している方の介護度別の割合を示しています。要介護度が高いほど長期利用の割合が高い傾向にあり、特に要介護3~5の方が多く利用されていることがわかります。
30日を超えて利用する主な要因は、以下のとおりです。
- 特別養護老人ホーム(特養)の入所待ち
- 介護者の負担
- 緊急時の対応
長期利用は、利用者と施設双方に以下のような課題をもたらします。
利用者側の課題 | 施設側の課題 |
在宅復帰の困難化 施設への依存 | ベッドの回転率低下 マンパワー不足 |
上記の課題を解決するためには、在宅サービスの拡充や特別養護老人ホームへの入所支援の強化、短期入所生活介護の利用ルールを明確化するなどの対策が求められます。
短期入所生活介護は、在宅介護を支える重要なサービスです。制度の適切な運用により、必要な人が必要な時に利用できるよう、長期利用問題の解決に向けた取り組みが必要です。
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短期入所生活介護の費用と加算制度

短期入所生活介護の利用には、介護保険制度に基づく基本的な費用に加え、さまざまな加算制度があります。2024年度の介護報酬改定では、新たな加算項目が設けられ、より質の高いサービス提供を評価する仕組みが整えられました。
ここでは、基本費用の仕組みと各種加算をわかりやすく解説していきます。
基本費用の仕組み
短期入所生活介護の基本報酬は、利用者の要介護度と利用形態によって異なります。事業所の収益に直接影響となるため、正確な理解が必要です。
基本報酬に影響する主な要素は、以下のとおりです。
要介護度 | 要介護度が高いほど、費用が高くなる |
サービス提供時間 | ・利用時間が長くなるほど、費用が高くなる ・日帰り、宿泊など、サービス提供形態によっても費用は変動する |
施設の所在地 | 地域差によって、介護報酬単価が異なる |
その他費用 | 食事費用や、理美容などの追加サービスを利用した場合は、別途費用が発生する |
利用者負担は介護保険制度に基づき、原則1割(一定以上所得者は2割または3割)です。残りの費用は保険給付として事業所に支払われます。
2024年度介護報酬改定による加算・減算項目
2024年度の介護報酬改定では、短期入所生活介護の加算制度が大きく変更されました。サービスの質の向上と職員の処遇改善を目的とした改定となっています。
主な加算の変更内容は、以下のとおりです。
- 3つの加算制度を統合し、事務手続きを簡素化
- 職員の給与改善に活用しやすい制度設計
- キャリアパス要件や職場環境要件も整理
介護現場の業務効率化を推進するため、以下の新たな加算も設けられました。
医療連携強化加算 | 看護職員による24時間連絡体制の確保 重度化予防の取り組みを評価 |
生産性向上推進体制加算 | ICT機器導入による業務効率化を評価 記録作業の電子化や情報共有の円滑化が対象 |
上記のような改定により、事業所には適切なケア体制の確保がよりいっそう求められています。体制が不十分な場合は、以下の減算対象となるため注意が必要です。
身体拘束廃止未実施 | 基本報酬の1%減算 |
業務継続計画未実施 | 基本報酬の1%減算 |
高齢者虐待防止措置未実施 | 基本報酬の1%減算 |
各加算の算定要件や具体的な手続きに関しては、都道府県の介護保険担当窓口に確認すると良いでしょう。制度改定を適切に理解し、質の高いサービス提供につなげていきましょう。
参考:令和6年度介護報酬改定について|厚生労働省
短期入所生活介護を運営する際の注意点

短期入所生活介護の運営には、利用者の安全確保や快適な環境づくり、効率的な業務運営など、さまざまな観点からの配慮が必要です。
ここでは、運営上のポイントと具体的な対応策を詳しく説明します。
感染症対策を整える
短期入所生活介護施設では、高齢者の健康を守るため、適切な感染症対策が不可欠です。特に、免疫力が低下している利用者が多いため、慎重な対応が求められます。
感染対策の基本は、病原体の排除、感染経路の遮断、利用者の抵抗力向上の3つです。これらを実現するためには、組織的な体制づくりが必要です。
まず、施設内に感染対策委員会を設置し、具体的な対策方針を定める必要があります。委員会では施設長をはじめ、医師、看護職員、介護職員など、多職種でのメンバー構成が望ましいです。
感染対策のポイントには、以下のようなものが挙げられます。
対策項目 | 具体的な対策 |
手洗い・手指消毒 | 入口に手指消毒液を設置し、職員・利用者共に徹底した手洗い・手指消毒を励行する |
換気 | 定期的な窓の開放や換気扇の使用による十分な換気を実施する |
清掃・消毒 | 共用部分や接触頻度の高い箇所の定期的な清掃・消毒を徹底する |
感染症発生時の対応 | ・感染症発生時の迅速な対応マニュアルを作成し、職員への教育・訓練をする ・保健所への報告体制も確立しておく |
健康管理 | 利用者や職員の健康状態を把握し、発熱などの症状がある場合は、適切な対応をとる |
感染症対策は継続的な取り組みが大切です。感染対策委員会を定期的に開催し、対策の見直しや職員研修を実施し、効率的な予防体制を整えましょう。
特に職員研修は年2回以上の実施が求められており、新人研修でも必ず感染対策を取り上げる必要があります。
参考:高齢者介護施設における感染対策マニュアル(改訂版)|厚生労働省
事故防止策を準備する
短期入所生活介護施設での事故防止は、利用者の安全を守る上で重要課題です。効果的な事故防止のためには、まず発生した事故やヒヤリハットを「防ぐべき事故」と「防げない事故」に区分けする必要があります。
区分けは、事故の性質を正確に把握し、適切な対策を講じるための基本となります。特にヒヤリハット事例の収集・分析は、重大な事故を未然に防ぐための取り組みです。
例えば「つまずきそうになった」という事例から、床材の状態や動線の見直しにつなられます。
高齢者の転倒・転落事故や、誤嚥性肺炎などの事故は、短期入所生活介護事業所において深刻な問題です。事故を未然に防ぐためには、3つの観点からの準備が必要です。
【未然防止策】
未然防止策は、職員の確認不足による事故や重大なリスクがある事故への予防的対策です。ヒヤリハット事例の分析結果を活かし、業務手順の見直しや環境整備、定期的な職員研修を実施しましょう。
【直前防止策】
直前防止策は、目の前で起こりうる事故への即時対応力を高める取り組みです。職員の観察力や技術向上のための勉強会、情報共有体制の整備が必要です。日々の申し送りでヒヤリハット情報を共有し、類似事故の防止に活かしましょう。
【損害軽減策】
事故発生時の被害を最小限に抑えるための対策です。転倒時の衝撃を緩和する床材の使用や、センサー設置などの環境整備を行います。個々の利用者の状態に応じた個別対策も検討しましょう。
3つの対策を組み合わせ、ヒヤリハット事例の分析結果も活用すれば、より効果的な事故防止体制を構築できるでしょう。分析結果を利用者家族と共有し、必要な福祉用具の使用について理解を得ることも大切です。
介護現場での事故の完全防止は難しい
介護現場での事故の完全防止は難しいのが現状です。利用者の多くは、疾病や障がい、高齢による心身機能の低下により、転倒や転落のリスクを抱えています。
特に認知症の方は危険認識が難しく、予期せぬ行動をとる場合もあります。限られた職員数で多くの利用者のケアを行う必要があり、同時に発生する複数のリスクへの対応には限界があるでしょう。
また、介護職員は常に細心の注意を払っていても、体調や環境の変化により、一瞬の判断の遅れや対応ミスが起こり得ます。
さまざまな要因から、介護現場での事故リスクをゼロを目指すのは現実的には困難です。そのため、防げる事故と防げない事故を見極め、適切な対策を講じることが大切です。
介護事故予防策が利用者を抑制するリスク
介護事業所では、事故予防のためにさまざまな対策を講じています。事故報告書やヒヤリハット報告書を活用し、事故の原因分析と再発防止に努めています。
しかし、事故予防への意識が強すぎると、以下のような問題が生じかねません。
- 転倒リスクのある方を常に職員の近くに座らせる
- 一人での歩行を制限する
- 夜間のベッドからの移動を制限する
過剰な対策は、利用者の尊厳を損ない、自立支援の妨げとなる可能性があります。介護の本質は利用者の安全確保だけではなく、その人らしい生活を支援するためのサービスでもあります。
適切な事故予防は必要ですが、それが利用者の生活の質を低下させることがないよう、バランスの取れた対応が必要です。施設の活気を保ちながら、利用者の自立を支援する環境づくりを心がけましょう。
システム導入による業務効率化
短期入所生活介護事業所では、日々の業務において介護記録や勤怠管理、煩雑な請求業務など、多岐にわたる事務作業が発生します。それぞれの業務を効率化し、職員の負担を軽減するためには、システムの導入が効果的です。
具体的には、以下のようなシステム導入が有効です。
システム導入による効果 | 具体的なシステム例 |
介護記録の効率化 | タブレット端末による記録システム |
勤怠管理の効率化 | 勤怠管理システム/指紋認証システム |
請求業務の効率化 | 介護請求ソフト |
情報共有の促進 | 情報共有システム |
業務の見える化 | 業務管理システム |
システム導入は、単に業務を効率化するだけではなく、深刻化する人材不足問題の解消や利用者の方々へより質の高い介護サービスを提供する環境づくりにもつながります。
例えば、介護記録をタブレットで入力できるようにすれば、記録にかかる時間を大幅に短縮できます。その結果、職員はより多くの時間を利用者のケアに費やせるようになり、サービスの質も向上するでしょう。
利用者の安全を確保するため、ベッドセンサーなどのICTを活用した業務効率化も効果的です。
導入にあたっては、自施設の規模やニーズを詳細に分析し、最適なシステムを選択する必要があります。導入後のサポート体制や、他システムとの連携可能性も考慮すると、より効果的なシステム導入ができるでしょう。
短期入所生活介護向けシステムを導入する際に押さえるべきポイント
短期入所生活介護事業所では、スタッフの負担を軽減しながらの業務効率化が課題の一つとなっています。解決策の一つとして、請求業務やケア記録の電子化など、多機能な介護ソフトの導入をすすめる事業所が増えています。
しかし、数多くのソフトが存在し、システムであればなんでもいいわけではありません。
自施設に最適なソフトを選ぶには、以下のポイントを押さえる必要があります。
入居退去管理機能 | 入退去情報を迅速かつ正確に把握できるか | ☐ |
空き部屋状況をリアルタイムで確認できるか | ☐ | |
介護記録管理機能 | 食事や排泄、入浴などの記録を簡単に行えるか | ☐ |
記録情報を介護日誌へ自動転記できるか | ☐ | |
サポート体制 | トラブル発生時に、電話やメールで迅速に対応してくれるか | ☐ |
リモート操作でのサポートは可能か | ☐ | |
ソフトのタイプ | クラウド型(APS型)か、パッケージ型か | ☐ |
自社のニーズに合ったタイプを選択できるか | ☐ |
上記のポイントを参考に、自施設に最適な介護ソフトを選びましょう。

ショートステイは、一昔前は特養待機者の利用がメインで、所謂ロングステイが当たり前におこなわれていました。しかし、ここにメスを入れる形で30日ルールが設けられ、以降ショートステイの平均稼働率は一気に下がってます。ただお預かりするレスパイトサービスでは、もはや選ばれないサービスとなっています。実際、地域のケアマネジャーからは「ショートステイ利用後、ADLが下がって帰ってきた」といった声が以前より聞かれていました。『特養待機』という目的を果たせているうちはそれでも稼働率は高かったのですが、その梯子を外された結果、中途半端サービスとなってしまったのです。『利用前より元気にする!』など特色を打ち出し、具体的なサービス内容と結果を出していかないとショートステイの経営は確実に厳しくなっていくでしょう。
なお、株式会社ワイズマンでは「医療・介護連携サービスMell+(メルタス)製品に関する情報をまとめた資料」を無料で配布中です。
医療施設・介護事業所間の連携を実現できますので是非ご覧ください。
まとめ|短期入所生活介護のサービス内容を理解し必要な体制を整えよう
この記事では、短期入所生活介護のサービス内容から利用条件や費用、運営上の注意点まで幅広く解説しました。短期入所生活介護は、在宅での生活を支えるために、高齢者の方々が一時的に施設に入所し、介護サービスを受けられる制度です。
適切なサービス提供のためには、利用対象者や利用目的、利用期間の制限などを理解する必要があります。費用面も、基本料金や加算制度を把握すれば、適切な運営ができるでしょう。
施設運営においては、感染症対策や事故防止策に加え、業務効率化のためのシステム導入も考慮する必要があります。自施設に最適なソフトを導入し、安全で質の高いサービスを提供できる体制を整えましょう。
詳細な情報やご不明な点については、お近くの地域包括支援センターや介護保険事業所までご相談ください。

監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。