【2025年版】短期入所の医療連携体制加算をわかりやすく解説|報酬アップの方法も
2025.02.28

「短期入所の質を高めたいけど、費用面が心配……」
上記のように考えている方は多いでしょう。
利用者の医療ニーズへの対応強化が求められるなか、短期入所施設においては「医療連携体制加算」の活用が重要とされています。しかし、算定要件や申請手続きが複雑で、なかなか導入に踏み切れない施設も多いでしょう。
本記事では、短期入所の医療連携体制加算における算定要件や報酬額を解説します。他加算との併用による報酬アップの方法や申請時の注意点まで解説しているので、併せて参考にしてください。
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目次
短期入所における医療連携体制加算とは

短期入所における医療連携体制加算とは、短期入所を利用する高齢者および障がい者に対して看護を提供したり、痰吸引などの指導を行ったりした場合に加算されるものです。医療機関との連携体制を強化することで、より質の高い医療と介護サービスを提供できるように支援しています。
具体的には、医療機関との緊密な連絡体制の構築や医師などの訪問による医療処置の実施など、医療ニーズの高い高齢者および障がい者への対応能力を高める取り組みが評価されます。
医療連携体制加算の必要性
高齢化社会の進展に伴い、短期入所を利用する方の医療ニーズはますます多様化・高度化しています。認知症や慢性疾患を抱える利用者も多く、日常的な健康管理や急な体調変化への対応が不可欠です。しかし、多くの短期入所施設では看護師の配置が不足していたり、医療機関との連携体制が不十分だったりするケースが散見されます。
このような状況下において、短期入所の医療連携体制加算は利用者の安全と安心を確保し、質の高いサービス提供を実現するために非常に重要です。加算の算定により、施設は看護体制の強化や医療機関との連携を図り、医療ニーズの高い利用者にも適切な対応が可能となります。
具体的には、日常的な健康管理や緊急時の対応、医療機関とのスムーズな情報共有などが強化され、利用者の健康状態の悪化を防ぎながら生活の質を向上できるでしょう。加算の算定によって施設はより充実した医療体制を構築し、安心して利用できる環境を提供できるうえ、医療事故のリスク低減にも貢献できます。
医療連携体制加算で得られる報酬額
短期入所の医療連携体制加算で得られる報酬額は、算定要件を満たすことで得られる加算点数によって異なります。具体的な点数は、最新の報酬改定情報や施設の規模、配置する職員の資格などによって変動します。そのため、正確な報酬額を知るためには、最新の報酬告示を参照することが重要です。
報酬額の算出は複雑なため、ここでは具体的な数値を示すことはできませんが、加算算定による報酬アップは、施設運営の安定化やサービスの質向上に大きく貢献すると言えるでしょう。より詳細な情報については、管轄の保険者や介護保険事務センターに問い合わせることをおすすめします。
以下は、医療連携体制加算の報酬額に影響を与える可能性のある要素をまとめた表です。
要素 | 報酬額への影響 |
---|---|
看護職員の配置状況(人数・ 資格) | 看護職員の配置状況によって加算点数が変動する |
医療機関との連携体制 | 連携の充実度に応じて加算点数が変動する可能性がある |
施設の規模 | 施設規模によって加算点数が異なる場合がある |
報酬改定 | 毎年度の報酬改定によって加算点数が変更される |
上記以外にも、施設の状況や地域差によって報酬額は変動します。
短期入所における医療連携体制加算の算定要件

短期入所の医療連携体制加算は、利用者の医療ニーズに対して適切な対応を行っている事業所に支給される加算です。算定要件は複雑であるものの、厚生労働省の告示に基づいているため、しっかりと理解しておく必要があります。ここでは、主要な算定要件を解説します。
要件 | 詳細 | 備考 |
---|---|---|
看護職員の配置 | ・一定の基準を満たす看護職員を配置していること ・看護職員の必要な人数や資格要件などを最新の告示に基づいて確認する | 配置する看護職員の資格(正看護師、准看護師など)や人数に関する規定は、告示によって変更される可能性があるため、最新の情報を確認する |
医療機関などとの連携体制 | ・医療機関や訪問看護ステーションなどと、24時間連絡体制を構築していること ・緊急時における対応マニュアルなどを整備していることもポイント | 単なる連絡先の交換ではなく、具体的な連携内容(例えば、緊急時の連絡手順や情報共有の方法など)を文書化し、関係者間で共有しておく |
医療ニーズへの対応 | 利用者の急変時における対応計画を策定し、適切な医療機関への搬送体制などを整備する | ・対応計画には具体的な手順や担当者、連絡先などを明記する ・定期的な見直しを行い、常に最新の状態を保つこと |
記録の整備 | 利用者の健康状態や医療処置、医療機関との連絡状況などを適切に記録・保存する | 記録は加算算定の根拠となる重要な資料のため、正確かつ詳細な記録を適切な方法で保管する |
その他要件 | ・その他、厚生労働省が定める基準を満たしていること ・具体的な内容は最新の告示を参照する | 都道府県知事への届け出が必要な場合もある |
上記以外にも、具体的な要件は告示によって細かく規定されています。算定要件を満たしているかどうかの判断は非常に複雑なため、社会保険労務士といった専門家に相談することがおすすめです。また、最新の告示や通知を常に確認し、変更点に対応することが重要です。
これらの要件を満たすことで医療連携体制加算の算定が可能となり、施設の収益向上につなげられます。ただし、加算の算定には、正確な手続きと記録の整備が不可欠です。不備のないように、しっかりと体制を整えておきましょう。
医療連携体制は他サービスとの併用で報酬アップが可能

短期入所の医療連携体制加算は、他の加算と併用すると報酬アップを実現できます。特に、介護職員の処遇改善やサービス提供体制の強化に関連する加算との併用は効果的です。ここからは、併用可能な加算とそのメリットについて解説します。
介護職員処遇改善加算との併用
介護職員処遇改善加算とは、介護職員の処遇改善に取り組む施設に支給される加算です。医療連携体制加算と併用することで、質の高い医療連携体制を維持・向上させるための費用を確保しやすいです。
介護職員の確保・定着にもつながり、結果的に医療連携体制の安定化にも寄与します。 より質の高い医療と介護の連携を実現することで、利用者の満足度向上も期待できるでしょう。
特定処遇改善加算との併用
特定処遇改善加算とは、特定の資格や経験を持つ介護職員の処遇改善を目的とした加算です。医療連携体制加算と併用すると専門性の高い医療従事者の確保・育成を促進につながり、より高度な医療ニーズに対応できる体制を構築できます。これにより、重症度の高い利用者への対応力向上にもつながります。
サービス提供体制強化加算との併用
サービス提供体制強化加算とは、サービスの質向上のための体制整備に係る費用を支援する加算です。医療連携体制加算と併用することで、医療連携に関する設備投資や研修費用などを確保しやすくなり、より充実した医療連携体制の構築が期待できます。例えば、遠隔医療システム導入のための費用や医療連携に関する職員研修費用などを賄えるでしょう。
なお、複数の加算を併用すると短期入所の医療連携体制をより強固なものにし、報酬アップしながら利用者へのサービス向上が期待できます。それぞれの加算の算定要件を確認し、施設の状況に合わせて最適な組み合わせを選択することが重要です。
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医療連携体制加算申請における注意点

医療連携体制加算の申請にあたっては、いくつかの注意点があります。場合によっては加算の算定が認められないケースもあるため、事前に注意点を把握しておきましょう。ここからは、具体的な注意点を解説します。
申請に必要な書類と提出先
短期入所における医療連携体制加算の申請には、必要な書類を漏れなく準備し、適切な場所へ提出することが重要です。具体的には、以下の書類が必要となることが多いです。
書類名 | 内容 | 備考 |
---|---|---|
加算申請書 | 施設の名称や申請期間、算定要件を満たしていることの確認など | 様式は各都道府県によって異なる場合がある |
看護職員配置計画書 | 看護職員の配置状況や勤務体制、役割分担など | 計画に基づいた運営がされていることを証明する必要がある |
医師との連携計画書 | 医師との連携内容や連絡体制、緊急時の対応など | 具体的な連携体制が明確に示されている必要がある |
医療機関との連携状況に関する資料 | 医療機関との情報共有や意見交換、緊急時対応などの記録 | 連携内容を具体的に示す必要がある |
その他必要書類 | 加算算定に係る記録や実績報告書など | 都道府県によって異なる |
通常、提出先は各都道府県の介護保険担当部署です。具体的な提出方法や期限については、管轄の保険者にご確認ください。
加算の開始時期と更新手続き
医療連携体制加算の開始時期は、申請が承認された日からです。ただし、遡って加算を算定することはできません。そのため、申請は可能な限り早期に行うことが重要です。また、加算の算定には一定の期間が設定されており、その期間が終了する前に更新手続きを行う必要があります。
更新手続きに必要な書類や提出期限は、加算の算定期間や都道府県によって異なります。更新申請についても、加算の算定要件を継続的に満たしていることを証明する必要がある点に注意が必要です。更新手続きが遅れると加算の算定が中断される可能性があるため、余裕を持って手続きを進めることをおすすめします。
加算の算定期間や更新手続きに関する詳細は、管轄の保険者にご確認ください。
よくある申請ミスと対策
医療連携体制加算の申請において、よくあるミスとその対策をまとめました。
よくあるミス | 対策 |
---|---|
必要な書類の提出漏れ | チェックリストを作成して提出前に確認する |
申請書の記載内容の誤り | 申請書を提出する前に複数人で内容を確認する |
連携体制が不十分 | 医師や医療機関との連携内容を明確に記載する |
記録の不備 | 日々の記録を正確かつ丁寧に作成する |
提出期限の遅れ | 提出期限を事前に把握して余裕を持って手続きする |
これらのミスを防ぐためには、申請前にしっかりと準備を行い、関係者間で情報共有を行うことが重要です。不明な点があれば、管轄の保険者へ問い合わせることをおすすめします。
短期入所の医療連携体制加算に関するよくある質問Q&A

最後に、短期入所における医療連携体制加算に関するよくある質問を紹介します。それぞれの回答を参考に、加算利用時に役立ててください。
准看護師は算定要件に含まれるのか
医療連携体制加算の算定要件における「看護職員」に、准看護師は含まれません。看護師または保健師が、算定要件を満たすための必須要員です。
参考:短期入所における医療連携体制加算に関する資料|厚生労働省
看護職員の人数制限はあるのか
明確な人数制限は設けられていません。しかし、加算の算定には医療機関などとの連携により看護職員を訪問させ、利用者に対して看護を行うことが必要です。
そのため、事業所の規模や利用者の状況に応じて、必要な人数を確保することが重要です。実際の人数については個々の状況と、医療ニーズを十分に考慮して決定する必要があります。
参考:短期入所における医療連携体制加算に関するQ&A|厚生労働省
外部の医療機関との連携は必須なのか
医療連携体制加算は、医療機関などとの連携によって看護職員を事業所に訪問させ、利用者に対して看護を行う体制を構築していることが前提です。単独で看護職員を配置するだけでは、この加算を算定できません。具体的な連携内容や体制については、個々の事業所と連携医療機関との間で協議し、適切な内容を定める必要があります。

超高齢化社会が進む日本は、高齢者を中心とした『多死社会』に突入しています。多死社会とは、高齢化によって死亡数が増加し、人口が減少していく社会です。「最期の時を過ごす場所(死亡場所)」は、病院が64.5%(2022年)と圧倒的多数となっています。しかし、これでも、この数値は年々減少傾向にあるのです。その背景には、国が『病院(病床)を増やさない』方向で政策を進めている事実があります。つまりは、亡くなる場所を病院から介護施設や在宅へシフトさせようとしているのです。ショートステイの医療連携体制加算もこうした大きな流れの中にあります。介護施設での医療ニーズ対応を強化し、ひいては、介護施設や在宅での看取り介護を促進させようとしているのです。ニーズに沿ったサービスがショートステイにも求められているのです。
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まとめ|短期入所における医療連携体制加算で収益向上を目指そう

医療連携体制加算は、適切な医療連携体制を構築することで得られる報酬加算です。高齢化が進む現代において医療との連携は重要視されており、医療連携体制加算は施設の収益向上だけでなく、質の高いサービス提供にもつながります。
算定要件を満たすためには、看護職員の配置基準や医療機関との連携体制の構築が不可欠です。そのため、事前に算定要件をしっかりと確認し、必要に応じて体制整備を進めておきましょう。さらに他の加算との併用も検討することで、より大きな報酬アップを目指せます。
申請にあたっては必要な書類を漏れなく準備し、提出期限を守ることが重要です。医療連携体制加算の取得を目指し、質の高いサービス提供に努めていきましょう。

監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。