通所介護の人員基準|計算方法や常勤換算の注意点などを解説
2025.02.28

通所介護事業所を運営するうえで、避けて通れないのが「人員基準」です。
利用者の安全を確保し、質の高いサービスを提供するために、人員基準は重要な役割を果たしています。
しかし、計算方法や常勤換算など、複雑な要素が多く、頭を悩ませている事業者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、通所介護の人員基準について解説します。
事業所の運営を安定させるためにも、ぜひ参考にしてください。
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目次
通所介護の人員基準とは

人員基準はより質の高い介護サービスを提供し、業務の適正化を図るうえでも遵守すべきルールです。
通所介護事業所においても例外ではなく、人員基準を遵守することで事業所の運営を維持し、利用者に安全で質の高いサービスを提供できます。
なお、人員基準を守らなかった場合、サービスの質が低下したり、利用者の事故に適切に対応できなかったりするリスクが高まります。
また、基準以下の人員だと、業務がスムーズに進まずスタッフにかかる負担が増加し、休職や離職につながりかねません。
厚生労働省が定めている以上、人員基準を遵守しなければ行政処分を受けるケースもあります。
基本報酬が3割減算される人員基準欠如減算が適用されるうえに、虚偽の人員報告をした際には行政処分の対象となります。
新規利用者の受け入れ停止や指定取り消しなど、事業所の継続が困難になるケースもあるので注意しましょう。
【職種別】通所介護の人員基準

通所介護事業所では、利用者の安全と質の高いサービス提供のため、厚生労働省令で定められた人員基準を満たすことが義務付けられています。
本章では主要な職種別の人員基準を解説します。
管理者の人員基準
管理者は、事業所の運営全般を統括する責任者です。
人員基準では、常勤専従の管理者を1名以上配置することが義務付けられています。
職種 | 人員基準 | 資格要件 | 備考 |
管理者 | 常勤専従1名以上 | なし | 管理業務に支障がない場合、兼務可 |
機能訓練指導員の人員基準
機能訓練指導員は、常時1名以上の配置が義務付けられています。
職種 | 人員基準 | 資格要件 | 備考 |
機能訓練指導員 | 常時1名以上 | 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師等 | 兼務可 |
生活相談員の人員基準
生活相談員は、利用者や家族からの相談に応じ、介護サービス計画の作成や調整を行う職種です。
サービス提供時間に応じて、専従で1名以上の配置が求められ、最低1名は常勤である必要があります。
職種 | 人員基準 | 資格要件 | 備考 |
生活相談員 | サービス提供時間に応じて専従1名以上 | 社会福祉士・精神保健福祉士・社会福祉主事 | 介護職員と合わせて最低1名は常勤 |
看護職員の人員基準
看護職員は、利用者数やサービス提供内容によって人員基準が異なるため注意しましょう。
一般的には、一定の単位数ごとに専従で1名以上の配置が求められますが、外部の医療機関との連携によっても基準を満たせます。
職種 | 人員基準 | 資格要件 | 備考 |
看護職員 | 単位数・サービス提供時間に応じて専従で1名以上(外部医療機関との連携可) | 看護師・准看護師 | 詳細な基準は、法令・ガイドラインを参照 |
介護職員の人員基準
介護職員は利用者数によって基準が大きく異なります。
具体的な人員基準は、利用者数やサービス提供時間に基づいて算出しますが、介護職員または生活相談員のうち、最低1名は常勤でなければなりません。
職種 | 人員基準 | 資格要件 | 備考 |
介護職員 | ・利用者の数が15人までなら1人以上・15人を超える場合:「(利用者数−15)÷ 5+1人」 | 介護職員初任者研修修了者以上が望ましい | 詳細な基準は、法令・ガイドラインを参照、生活相談員と合わせて最低1名は常勤 |
常勤換算の方法と注意点

常勤換算は人員基準を参照するうえで無視できない要素です。
本章では常勤換算について解説します。
常勤換算の方法
通所介護における人員基準は、常勤換算職員数を基準に算出されます。
常勤換算とは、常勤職員(フルタイムで勤務する職員)を基準として、パート・アルバイトなどの非常勤職員の勤務時間を常勤職員の勤務時間に換算する方法です。
異なる労働形態の職員を統一的な尺度で評価し、人員配置基準を満たしているかどうかを判断するために必要となります。
施設の所定勤務時間をフルで働く常勤職員を1とし、非常勤職員の勤務時間をその割合で換算します。
具体的な計算方法は以下のとおりです。
項目 | 説明 |
常勤職員 | ・施設の所定労働時間(例:週40時間)を勤務する職員・常勤換算では「1.0」と計算される。 |
非常勤職員 | ・パート・アルバイトなど、所定労働時間未満で勤務する職員・勤務時間に応じて常勤換算される ※例:所定労働時間が平日出勤+1日8時間勤務の介護事業所の場合、週20時間勤務のパート職員は、常勤換算で「0.5」となる。 |
常勤換算を行うことで、常勤職員と非常勤職員の労働時間を合計し、人員基準を満たしているかどうかを正確に判断できます。
パート・アルバイトの活用方法
通所介護事業において、パート・アルバイト職員は、人員確保や柔軟な人員配置に重要な役割を果たします。
しかし、人員基準を満たすためには、単にパート・アルバイトを多く雇用するだけでは不十分です。
効率的な人員配置を行うためには、それぞれの職員のスキル・経験・勤務時間などを考慮し、適切な人員配置計画を立てることが重要です。
例えば、ピーク時間帯に人員を集中させるなど、利用者のニーズに合わせた柔軟な対応が求められます。
また、パート・アルバイト職員の採用にあたっては、適切な研修や教育を行い、サービスの質を維持することも重要です。
十分な教育と指導を行うことで、常勤職員と同様に高い質のサービスを提供できる体制を構築できます。
常勤換算の注意点
常勤換算を行う際には、以下の点に注意しましょう。
注意点 | 解説 |
所定労働時間の明確化 | 施設の所定労働時間を明確に定め、常勤換算の基準とする必要がある |
勤務時間の正確な把握 | ・パート・アルバイト職員の勤務時間を正確に把握し、常勤換算を行う ・勤務表などを用いて記録管理することが重要 |
休暇の考慮 | 休暇取得時の勤務時間の減少も考慮する |
時短勤務の扱い | 育児休暇明けや介護のための時短勤務の場合、その勤務時間に基づいて常勤換算を行う必要がある |
契約形態の確認 | パート・アルバイトであっても、週40時間勤務する契約であれば「常勤」とみなされる場合があるため、契約内容を正確に確認する |
なお、介護・福祉現場でのリスク管理やスタッフ教育を課題としている方に向けて、「介護現場のリスク管理とスタッフ教育の重要性についての資料」を無料で配布中です。是非ご活用ください。
通所介護の人員基準を遵守する際の3つのポイント

減算措置を避けるためには、適切な人員配置を維持することがもっとも重要です。
本章では通所介護の人員基準を遵守する際のポイントについて解説します。
解説するポイントは以下のとおりです。
- 人員配置計画を策定する
- 働きやすい環境づくりに取り組む
- 業務の効率化を進める
それぞれのポイントについて、順番に解説します。
人員配置計画を策定する
適切な人員配置を実現するうえで、人員配置計画の策定は不可欠です。
事業所の規模・利用者の人数・提供するサービスの内容を踏まえたうえで、適切な人員配置計画を策定すれば、必要なスタッフの人数や人員を確保するプロセスを明確にできます。
計画を策定する過程で人員基準を下回るリスクが発見された際は、パート・アルバイトの活用や外部委託を検討しましょう。
特にスタッフの採用は時間もコストもかかるため、スピーディーに実践することが重要です。
働きやすい環境づくりに取り組む
人員基準を遵守するうえで、スタッフの離職を防ぐためにも、働きやすい環境づくりは重要です。
産休・育休制度を設けたり、業務で悩みがあるスタッフ向けに相談窓口を設置したりするなど、働きやすい環境づくりを進めれば、スタッフの定着率を引き上げられます。
加えて、資格取得のための研修の開催など、キャリアアップの支援を実施する方法も有効的です。
業務の効率化を進める
人員基準を満たせるスタッフの人数が限られているなら、ICTによる業務の効率化も率先して進めましょう。
煩雑になりがちな事務作業や、情報共有・申し送りを効率化すれば、少ない人数でも業務を回しやすくなります。
昨今は通所介護に限らず、介護業界全体で人手不足が深刻化しています。
人手不足に対応するうえでも、ICTによる業務の効率化は厚生労働省も積極的に推進している取り組みです。
利用者が増加した際にも対応しやすくなるため、ICTは積極的に導入しましょう。
ICTで業務の効率化を目指すならすぐろくタブレットを活用しよう

ICTで業務の効率化を目指するなら、弊社ワイズマンのすぐろくタブレットの導入をご検討ください。
すぐろくタブレットは通所サービスの業務に合わせて開発された介護ソフトです。
スマートフォンやタブレットで手軽に操作できるうえに、情報共有や申し送りなどの作業をスムーズに実践できます。
また、翻訳機能も搭載しているため、日本語が不得意なスタッフとのコミュニケーションが容易になる点も魅力です。
すぐろくタブレットを導入すれば、スタッフの人数が少ない状況でも、安定的にサービスを提供できる可能性が高まります。

2024年12月の介護サービスの有効求人倍率は3.84倍でした。同時期の有効求人倍率(全職種)が1.25倍なので、実に3倍以上の倍率であることがわかります。これだけ倍率が高い中で人材採用を進めなければならず、尚且つ介護職員(正社員)の平均採用単価は30万~50万と言われています。更に追い打ちをかけるように、介護職員の平均給与も上昇しています。介護職員の給与が上がるのは喜ばしいことですが、処遇改善加算が拡充されたとはいえ、介護報酬がこういった情勢に見合う単価にはなっていません。支出(人件費)が増え、収入(介護報酬)は対して変わらないため、非常に厳しい経営を強いられています。デイサービスは、人員基準ギリギリの人員配置で、利用者を満足させ、尚且つADLの改善など具体的な成果も求められているのです。
人員基準を遵守して質の高い通所介護サービスを提供しよう

人員基準の遵守は、質の高い通所介護サービスを提供するうえで不可欠です。
厚生労働省が定めた基準を下回れば、提供するサービスの質が低下するだけでなく、スタッフの負担増加や減算措置などのリスクも招きます。
人員基準を遵守する際は、定められた基準や常勤換算の方法を理解するだけでなく、人員配置を適正化するための取り組みも積極的に実施しましょう。
その際はぜひ弊社ワイズマンのすぐろくタブレットをご活用ください。

監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。