【医療業界動向コラム】第128回 本年4月から施行されるかかりつけ医機能報告制度について、報告事項等について確認する
2025.02.25

令和7年1月31日、第2回となるかかりつけ医機能報告制度に係る自治体向け説明会が開催され、資料が公表されている。
かかりつけ医機能報告は、医療機関側の自主的な取り組みによるものであって、報告しなくても罰則があるわけではなく、地域で不足する医療機能を担ってもらうための強制力が働くことはない。しかし、地域住民(患者、医療従事者、介護従事者)の高齢化はどこの地域でも進み、周りの協力なしには事業を継続していくことは難しくなる。また、地域住民にも地域の実状を理解していただき、可能な範囲での受診行動の変容を促していくことも必要になっていると考える。かかりつけ医機能報告はそうした地域における、協力体制に参加するという意思表示だと言える。
目次
〇令和7年10月頃から報告依頼開始。診療報酬に関する実績はNDBより取り込み
実際の報告は令和8年1月からとなる。1号機能及び2号機能の「具体的な機能」「医療機関からの報告事項」を報告する。「具体的な機能」、かかりつけ医機能を有する医師の有無(1号機能)に関する具体的な報告事項は以下の通り。1号機能有りとなった場合には2号機能について報告することになる。(図1、図2)。

図1_1号機能の報告事項(※画像クリックで拡大表示)

図2_2号機能の報告事項(※画像クリックで拡大表示)
1号機能の報告事項では、「具体的に有する機能と報告事項の院内掲示」・「17診療領域ごとの一次診療対応可否の有無及び対応できる一時診療を対応できる領域の明示(図3)」・「医療に関する患者からの相談対応」の3項目が「かかりつけ医機能有り/無し」の要件を判別するものとなる。

図3_一次診療に関する報告できる疾患(※画像クリックで拡大表示)
なお、かかりつけ医に関する研修の修了者数について報告することになっているが、要件の判別には影響はしない。ただ、5年後の見直しでは要件の判別に入る可能性もあるので意識しておきたい。
2号機能の「具体的な機能」「医療機関からの報告事項」は、医療機関としての機能を表すもので、緊急時の対応や連携のHUBになっているか、在宅医療を提供しているかなどを報告するもの。1号機能有りとなった医療機関が報告するものとなる。なお、2号機能の報告に当たっては該当する診療報酬の算定実績を報告することとなっているが、こちらはNDBのデータからシステムへ取り込みを行うこととなる。
〇かかりつけ医機能報告で期待されるのは、外来・在宅医療の可視化と役割分担の可能性
かかりつけ医機能、というと地域住民に向けてどのように周知していくか、という発想になるだろうが、本格的に地域住民に周知していくのはもう少し先のことになるだろう。まずは、地域医療の現状を正しく把握し、地域で不足する医療サービスは何か、過剰になっているサービスがあれば適正化し、リソースを不足する領域にどれだけ振り分けるか、といった話し合いの素材と素地が必要だ。環境もできていないのに周知しても、地域住民が困ってしまう。ゆえに今回のかかりつけ医機能報告とは、まずは地域の医療環境を可視化することが第一といえる。そのうえで、令和8年4月からはじまる「協議の場」に臨み、話し合いを通じて役割分担を図っていく、という流れになる。
1号機能の報告を行いつつ、主に地域住民に選んでもらうかかりつけ医でいくか、主に同業者に選んでもらう専門医療機関でいくか、自院の地域における在り方を明確にすることが今回のかかりつけ医機能報告にあたっては重要になる。中長期的視点では、以下の点についても意識しておきたい。
・医療DXへの対応
今後様々な実績が求められてくることや、連携の観点からDXの環境整備は必須だといえる。ここでいうDXとは、オンライン資格確認・電子カルテ及び電子カルテ情報共有サービス・電子処方箋の3つ。報告事項には全国医療情報プラットフォームへの参加も入っているが、現時点では要件には入っていない。5年後は必須になっている可能性が高い。
・地域医療情報連携NWへの参画
ACPに関する情報共有やワクチン接種の有無なども地域で共有し、重症化対策と患者の思いを共有して、いざというときに迷わない環境を作る。
令和8年度診療報酬改定に向けた議論も間もなくはじまる。義務ではないかかりつけ医機能報告ゆえに、報告をすることが要件となる診療報酬も出てくると考えられる。地域包括診療料・地域包括診療加算、生活習慣病管理料などの要件の見直しの可能性を意識した対応を検討しておきたい。

山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員
1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。
https://www.hckn.work