【医療業界動向コラム】第137回 令和6年度診療報酬改定の影響で、長期処方・リフィル処方の傾向に変化は?
2025.04.30

令和7年4月9日、第72回 中央社会保険医療協議会診療報酬改定結果検証部会が開催された。令和6年度診療報酬改定の影響について、アンケート調査をしたもの(調査実施時期は令和7年1月6日から1月20日<「患者調査(インターネット調査)」は令和7年1月16日から1月24日>)。ここでは、長期処方とリフィル処方箋についてポイントを確認する。
リフィル処方の普及には、薬局薬剤師との連携強化とDX推進も
令和6年度診療報酬改定より、生活習慣病管理料等の慢性疾患に関する評価では長期処方・リフィル処方箋への対応が可能であることをポスター掲示することが求められるようになっている。掲示している医療機関と掲示していない医療機関とでその実績を比較したところ、やはり掲示がある方が実績が高いことがわかっている(図1)。

図1_リフィル処方箋の有無と院内掲示(※画像クリックで拡大表示)
さらに、患者から長期処方・リフィル処方の要望があった場合の対応については、要望があれば検討する、という回答が最も多いという結果(図2)。ただ気を付けたいのは、検討するということであって、確実に長期処方・リフィル処方箋の対応をする、と言うことではないということだ。

図2_リフィル処方に対する意向(※画像クリックで拡大表示)
長期処方ではなく、リフィル処方を選択した医師に対して、その理由を聞いている。薬局薬剤師との連携で患者のモニタリングができることが理由の上位に挙がっていること、そして、薬局薬剤師からの服薬情報等提供書(トレーシングレポート)の内容についての要望をみると、患者の服薬状況が最も多い回答だった(図3)。ここからわかることは、患者からの要望と薬局薬剤師の協力があればリフィル処方の選択は増える可能性がある、ということだ。

図3_トレーシングレポートに求めること(※画像クリックで拡大表示)
令和6年度調剤報酬改定では服薬情報等提供料が見直され、薬局薬剤師によるリフィル処方箋への対応が評価されることとなった。また、医療情報ネット<ナビイ>では、薬局におけるリフィル処方箋への対応実績が表示されるようになっていることを確認しておきたい。
なお、リフィル処方箋の発行に消極的なのは、患者の症状の変化に気づきにくくなることが上位に挙げられていることを考えると、気づきを補完してくれる薬局薬剤師による服薬フォローと結果報告・処方提案となるトレーシングレポートの活用がますます必要になってくる。また医療DXの一つである電子処方箋では、その付加機能としてリフィル処方箋の管理ができるようになり、患者の保管管理の負担の軽減・紛失による患者自己負担を防ぐことにもつながる。DXの普及促進がリフィル処方の推進にもつながってくる。
ところで、リフィル処方箋そのものについて、患者側の認知度はどうだろうか。調査結果からはまだまだ低いこと、利用できるのであれば利用したいということが上がっている(図4)。

図4_病状が安定していればリフィル処方を利用したいか?(※画像クリックで拡大表示)
なお、利用するにあたってはかかりつけ医、かかりつけ薬剤師の存在があることが必要だとの回答があった。今年度より施行される「かかりつけ医機能報告制度」における1号機能を有する医療機関での対応や地域連携薬局や健康サポート薬局などの要件・実績など、今後考えられるではないだろうか。
リフィル処方の積極的な利用が働き方改革に
長期処方及びリフィル処方箋、とりわけリフィル処方箋については、薬局薬剤師によるフォローアップがある長期処方とも言えるもので、第4期医療費適正化計画において、今年度中にも各都道府県で目標数値が設定されていく予定もある。保険者からの啓発活動を保険者努力支援制度などで評価していくことになるだろう。
なお、リフィル処方箋については、薬局との連携で医師の負担軽減にもつながる(図5)。外来医師の負担軽減策の一環としての利用も増えてきている実感がある。外来業務の働き方改革は難しいとされる中で、患者の理解は必要だが、有効な一手になるだろう。

図5_リフィル処方箋と働き方改革(※画像クリックで拡大表示)

山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員
1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。
https://www.hckn.work