デイサービスの機能訓練とは?訓練内容や目的、必要な資格や業務内容を解説
2023.04.03
デイサービスとは、主に自宅で生活する高齢者・障がい者(以下、利用者)が施設等に通い、日帰りで食事、入浴、レクリエーションといった日常生活援助が受けられるサービスです。歩行訓練や関節可動域の機能訓練も行われます。
この記事では、デイサービスにおける機能訓練の概要を説明するとともに、リハビリテーションとの違いは何か、働くにあたって必要な資格などを解説します。
目次
デイサービスの機能訓練とは
デイサービスにおける機能訓練とは、何を目的に、誰を対象に行われるサービスなのでしょうか。ここでは、それぞれの目的、対象、内容を解説するとともに、リハビリテーションとの違いについて説明します。
機能訓練の目的
機能訓練とは、利用者の日常生活上の動作や活動の改善・維持を目的とし、より良い日常生活につながることを狙いとして行う訓練です。デイサービスでは主として機能訓練が集団で行われますが、個別の訓練では一人ひとりに具体的な目標や計画が設定され、利用者がこれに沿って訓練を行います。
機能訓練の対象者
機能訓練は、要介護認定で要支援1以上と認定された人が対象となります。厳密には、要支援1・2の人は「介護予防通所介護」に通い機能訓練を受けますが、要介護1以上の人は「通所介護」に通って機能訓練を受けます。
つまり、要介護認定で要支援1・2または要介護1~5に認定されないと、いずれのデイサービ施設も利用することができません。
機能訓練とリハビリテーションの違い
機能訓練とリハビリテーションに共通しているのは、日常生活上の動作・活動の改善・維持を目的とする点で、異なるのは「医師の指示に基づくか否か」です。
リハビリテーションは、医師の指示に基づき理学療法士などのセラピストが患者に対してリハビリテーションを実施するのに対し、機能訓練には医師の指示は必要なく、機能訓練指導員が機能回復のために実施します。したがって、機能訓練はデイサービスに通う利用者にとって、リハビリよりも気軽に取り組める身近な訓練であるといえます。
デイサービス(通所介護)については以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:「デイサービス(通所介護)とは?種類や利用条件・費用、サービス内容を解説」
デイサービスの機能訓練の内容
では、デイサービスにおける機能訓練とはどのような内容なのでしょうか。通っているデイサービスによって機能訓練のメニューは若干異なりますが、一般的には以下の訓練を受けることができます。
- 歩行訓練
- 関節可動域訓練
- 体操
- マッサージ
- 脳トレ(脳機能の活発化を狙いとしたゲーム等)
- 嚥下体操、口腔体操
ほか
一般的なデイサービスでは、最初は集団で機能訓練を行い、それを補完する形で個別の機能訓練を実施しています。個別のプログラムは、下半身に特化した筋力トレーニング、漢字パズル・ロジックパズルの脳トレなど、利用者の好みやニーズに合わせて機能訓練指導員が立案します。
デイサービスで機能訓練をするのに必要な資格
厚生労働省は、デイサービスにおいて機能訓練を行う際には指定された資格を持った専門職を機能訓練指導員として置かねばならない、としています。では、どのような資格が対象となるのでしょうか。
看護師または准看護師
看護師または准看護師は、看護に関わる知識を活かして機能訓練指導を行えます。機能訓練中の利用者の体調を管理しつつ、怪我をしないように注意することが求められます。
理学療法士
理学療法士はリハビリテーションの専門家です。機能訓練においては、リハビリテーションに関する知識を基に、身体に障がいがある人たちに対して、日常生活における基本動作や運動能力の回復・維持のためのマッサージや体操などの理学療法を実施します。
作業療法士
作業療法士もリハビリテーションの専門家です。患者の心身機能を高める訓練のほか、食事動作、入浴、排泄といった日常生活機能(ADL)に関わる機能訓練を行います。
言語聴覚士
言語聴覚士は、言語や嚥下に関するリハビリテーションの専門職で、「話す」「聞く」「飲み込む」といった能力を回復・向上させることを専門とします。デイサービスでの機能訓練においても、嚥下・口腔体操を専門として行います。
あん摩マッサージ指圧師
あん摩マッサージ指圧師は、体の痛みやこりなどの症状を訴える人たちに対して、撫で・揉み・押しなどの刺激を身体に与えたり、マッサージをしたりする専門職です。これらの知識・技術を用いて機能訓練指導も行います。
柔道整復師
柔道整復師は、スポーツや日常生活の中で生じた打撲、捻挫、脱臼及び骨折などの各種損傷に対して外科手術や薬品の投与、手を用いた応急的もしくは医療補助的方法によってその回復を図る専門職です。それらの知識・技術を活かし、機能訓練指導を行います。
鍼灸師
鍼灸師は、整体院などで鍼灸(はりきゅう)の施術を行う専門職です。鍼灸に関する知識・技術を用いて機能訓練指導を行います。ただし、デイサービスで機能訓練を行うには、資格を保有していることに加えて機能訓練指導員を配置した事業所で6ヵ月以上勤務するなどの実務経験が必要となります。
リハビリテーションに特化した「リハビリ特化型デイサービス」とは
リハビリ特化型デイサービスは通常のデイサービスに比べリハビリテーションに力を入れている施設です。比較的介護度の低い利用者を対象としています。機能訓練指導員が中心となり、利用者の心身機能の維持・回復のためのリハビリテーションを行いながら、利用者の社会的交流の場としても機能します。
ただし、「リハビリ特化型デイサービス」という介護保険法上の位置付けはありません。あくまで法令上は「通所介護」の位置付けです。運営には、医療法人や社会福祉法人、民間企業やNPO(非営利活動法人)など、さまざまな機関が行っています。
それぞれの違いを表にまとめると、次の通りとなります。
項目 | 通常のデイサービス | リハビリ特化型 |
目的 | 日常生活における心身機能の維持 ・改善、日常生活の介助 | 身体の機能の改善・維持、 リハビリテーション、介護予防 |
特徴 | 食事・入浴の介助と機能訓練のほか、レクリエーションなどのサービスが受けられる。 | 機能訓練・リハビリテーションに重きを置き、専用マシンを使った訓練や個別の訓練を行う。 |
主な 利用者 | 要介護1以上 | 要支援1・2 |
利用時間 | 6時間~8時間の1日型 | 3時間~4時間の半日型 (午前・午後の二部制) |
規模 | 通常規模 | 小規模 |
食事 入浴 | 有 | 無 |
以下、詳しく見ていきましょう。
概要
リハビリ特化型デイサービスでの機能訓練は、機能訓練指導員の指導のもと、主に介護予防を目的した運動・体操を行います。理学療法士や作業療法士といった専門職員のリハビリテーションの指導のもと、利用者に適したプランに基づき訓練が行われます。
午前と午後の半日単位で利用者が入れ替わり、食事や入浴のサービスは提供しない施設が多くなっています。
対象者
リハビリ特化型デイサービスは介護予防を目的とした運動・体操を行う施設であるため、対象となるのは主に要支援1~2と認定された人です。つまり、比較的介護度の低い利用者が多く、ほかの施設と比べると利用者に対する身体介護などの業務は少ないといえます。
内容
利用者は主に次のようなプログラムに参加します。
- 体調確認・バイタルチェック
- 準備体操、ストレッチ
- 専用マシンを使ったトレーニング
- 個別での機能訓練
ほか
スタッフ
リハビリ特化型デイサービスでは、次の人員が配置されています。
- 生活相談員
- 看護師
- 介護職員(介護福祉士や介護職員初任者研修修了者など)
- 機能訓練指導員(理学療法士や作業療法士など)
機能訓練に特化した「機能訓練型デイサービス」とは
機能訓練型デイサービスは、前述のリハビリ特化型デイサービスと大きな違いはありません。どちらも介護保険法上では通所介護に位置付けられますが、その名の通り機能訓練やリハビリテーションに重点を置いたサービスが行われます。
能訓練型デイサービスは介護予防を目的とした運動・体操を行う施設であるため、比較的介護度の低い人が主な対象となります。また、午前・午後の2部制に分かれており、短時間で利用することが多い施設です。
訓練内容は以下の通りです。リハビリ特化型デイサービスと大きな差はありません。
- 体調確認・バイタルチェック
- 準備体操、ストレッチ
- 専用マシンを使ったトレーニング
- 個別での機能訓練
ほか
看護師や理学療法士、作業療法士などが機能訓練指導員として集団での訓練を実施するとともに、それを補完する形で個別プログラムに基づく訓練を行います。介護職員については、利用者の身体介護を行うというよりは、コミュニケーションを取りながら安全確認・体調確認を行うのが主な仕事です。
まとめ
近年、介護事業者は利用者・求職者から選ばれる時代であり、各施設ではそれぞれに特色を打ち出して魅力あるサービスを展開しています。また、労働環境に配慮する施設も増えています。特に、介護ソフトを導入しているデイサービスは、利用者のケアと同時進行で効率よく記録業務ができたり、機能訓練の加算算定に必要な帳票作成を効率よく行えたりするため、働きやすい環境要因の一つとされています。
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