訪問介護とは?利用条件・費用、サービス内容を解説
2022.12.12
訪問介護は、訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を訪問し、生活の支援(生活援助)をするサービスです。この記事では、訪問介護で受けられるサービス・受けられないサービス、利用条件や必要な費用、利用するまでの流れなどを解説します。
目次
訪問介護とは?
訪問介護とは、訪問介護員(ホームヘルパー)が自宅を訪問し、食事・排泄・入浴などの介護(身体介護)や、掃除・洗濯・買い物・調理などの生活支援(生活援助)をするサービスです。利用する方が可能な限り自分の家で自立した日常生活を送ることができるようにすることが目的です。サービスの中には、通院などを目的とした乗車・移送・降車の介助サービスを提供する事業所もあります。
訪問介護で受けられるサービス内容
訪問介護で受けられるサービス内容として主に以下の3つのサービスがあります。
- 身体介護
- 生活援助
- 通院等のための乗降介護
以下の項目より、これらのサービス内容について具体的に解説していきます。
身体介護
身体介助とは、実際に体に触れて行う介護サービスのことです。
身体介護の具体例としては以下があります。
- 食事介助:食事をする際に必要な調理・配膳・食べる・歯を磨くなど食事をするうえで必要な支援
- 入浴介助:入浴をする際の準備・全身または部分の洗体・お湯につかる際の身体介助・衣服の着脱などの支援
- 身体整容:衣服の着脱・清拭など着替えの際に必要な支援
- 更衣介助:衣服の着脱の支援。就寝の際のパジャマ更衣などの支援
- 外出介助:通院や買い物をする際に付き添いをするなど、必要な外出に対する支援
- 排泄介助:トイレの介助・おむつ交換・着脱・片付け・消臭など排せつの際に必要な支援
生活援助
生活援助とは、日常生活の援助を行うサービスのことです。身体機能が低下し、自力で生活に必要な家事ができない方は、ホームヘルパーに依頼して援助を受けます。
具体的な支援内容については以下があります。
- 掃除:家の中の掃除をする支援
- ゴミ出し:収集日に合わせてゴミ出し
- 洗濯:洗濯から収納まで行う支援
- 料理:献立を考え、買い出しから片付けまで行う支援
- 買い物:生活用品の買い出し代行(一緒に買いに行くケースもあり)
通院等のための乗降介護
訪問介護には、通院をするときに必要な乗車・降車を介助するサービスがあります。いわゆる「介護タクシー」といわれるサービスです。通院が必要だが自力でできない人に対し、ホームヘルパー等が介助を行います。
介助内容は、病院への送迎だけではありません。病院に到着した後の屋内への移動介助や、次回の受診の手続きをするなどもサービスに含まれています。要介護者がスムーズに通院が行えるように支援をします。
※これらのサービスを利用ができるのは要介護者のみとなっております。また、費用は自己負担になるためご注意ください。
訪問介護で受けられないサービス内容
訪問介護で受けられないサービスには以下があります。
- 利用者本人以外のサービス(子どもの面倒を見る、家族の食事を作る、子どもの部屋の掃除など)
- 日常的な家事の範囲を超えた行為(留守番、子ども(孫)の世話、布団干しなど)
- 医療行為(インスリン注射、たんの吸引、胃ろうの管理など)
これらのサービスについて、掘り下げて解説します。
利用者本人以外のサービス
訪問介護のサービスを受けられるのはあくまで本人です。利用者の家族に関わる支援や家事などは、ホームヘルパーが請け負うことはできません。
そういったサービスを受けたい場合は、介護保険外サービスを利用することで受けられる可能性があります。
日常的な家事の範囲を超えた行為
訪問介護は、要介護者が日常生活を送るための援助をするサービスです。ホームヘルパーが援助しなくても生活に差し支えないものは、サービスの内容には含まれません。上記したサービス以外にも草むしり、郵便物の投函、家具の修理などもサービス内容に入っていません。
医療行為
ホームヘルパーは医療の専門資格を持っているわけではないので、医療行為を訪問介護で受けることはできません。医療行為を受けたい場合は病院に行くようにしましょう。
訪問介護の利用条件
訪問介護を受けることができる人は「要介護1〜5」の要介護認定を受けた方です。
また、「要支援1〜2」の要介護認定を受けた方も「介護予防訪問介護」のサービスを利用できます。
※「要支援1の場合は週2回まで」といった利用制限もあります。介護予防はあくまで要介護状態にならないための予防という目的のため、身体介護ではなく生活援助が中心となります。
訪問介護の利用にかかる費用
1日の訪問介護にかかる費用(自己負担額)は、「サービスの種類別料金 × 利用時間 + その他料金(加算)」 で計算できます。
介護保険の自己負担額は基本的に1割負担です。なお、一定以上の所得がある場合は2~3割負担になりますのでご注意ください。
(計算例)
要介護3の利用者が週3回、1日30分の身体介助の訪問介護サービスを利用した場合。
396円/回×3回×4週=4,752円
訪問介護を利用するまでの流れ
訪問介護を受ける際の大まかな流れは次の通りです。
1.要介護認定の申請
要介護認定申請書に記入し、市区町村の担当窓口に申請します。原則として本人が申請しますが、家族による申請代行も可能です。
2.介護認定の通知
申請日から30日以内に、市区町村から本人へ郵送で通知されます。
3.介護支援専門員(ケアマネジャー)の決定
要介護1以上の要介護認定を受けた場合は、居宅介護支援事業所にケアマネジャーを選んでもらうように依頼をします。 居宅介護支援事業所は、市区町村の担当窓口や地域包括支援センターでも紹介してくれるので相談しましょう。ケアマネジャーが決定しても、利用者本人や家族の意向によって変更することもできます。
関連記事:「居宅介護支援とは?事業所の特徴や利用条件、サービス内容を解説」
4.ケアプランの作成
ケアマネジャーが自宅へ訪問し、面談を行います。面談後、ケアマネジャーが面談から得た情報をもとに必要なケアをまとめた「介護サービス計画書(ケアプラン)」を作成します。
5.事業者の選定と契約
ケアプランに基づき、サービスを受ける訪問介護事業所と直接契約を結びサービスを利用します。
訪問介護の人員基準
訪問介護を提供する事業所には、以下の3つの職種が配置されています。
- サービス提供責任者
- ホームヘルパー
- 常勤管理者
それぞれの職種について詳しく解説します。
サービス提供責任者(サ責)
サービス提供責任者は「サ責」と呼ばれており、現場で働くホームヘルパーの支援や利用者の支援を行います。
訪問介護サービスを提供する事業者は、常勤職員で訪問介護業務に従事する者として一人以上のサービス責任提供者を配置することが義務付けられています。
サービス提供責任者は、次のいずれかの資格を保有している必要があります。
- 介護福祉士
- 実務者研修修了者
- 旧介護職員基礎研修課程修了者
- 旧ホームヘルパー1級課程修了者
なお、利用者の人数が40人を超えるごとに1人以上追加する必要があります。
訪問介護員(ホームヘルパー)
訪問介護員とは、利用者宅にて訪問介護を行う職員のことです。訪問介護員は、次のいずれかの資格を保有している必要があります。
- 介護福祉士
- 実務者研修修了者
- 初任者研修修了者
- 旧介護職員基礎研修課程修了者
- 旧ホームヘルパー1級課程修了者
- 旧ホームヘルパー2級課程修了者
- 看護師・准看護師
これらの資格を保有した訪問介護員を、常勤として2.5人以上配置しなければなりません。
常勤管理者
常勤管理者とは、事業所の責任者で管理の職務に従事する者を指します。常勤で1人配置する必要があります。
【利用者向け】訪問介護を利用するメリット
利用者にとって、訪問介護を利用するメリットはどんな点があるのか確認しておきましょう。
住み慣れた自宅でサービスを利用できる
訪問介護を利用する最大のメリットは、自分の住み慣れた家で介護サービスを受けられることでしょう。高齢になってくると、新しい居住環境や人間関係の変化によってストレスを抱えてしまうケースも少なくありません。訪問介護ならそのような心配はないため、安心して介護サービスを受けることができます。
施設に比べ費用が安い
訪問介護は施設介護と比べて費用が安くなることが多いです。施設介護では居住費などの費用がかかりますが、訪問介護は自宅で介護サービスを受けられるので、そのぶん節約することもできます。
話し相手ができる
利用者が一人暮らしの場合は、訪問介護を利用することでホームヘルパーが話し相手になってくれるのもメリットの一つです。身体機能が落ちてくると人との関わりが少なくなってしまう高齢者は少なくありません。訪問介護を使うことでコミュニケーションの場を作ることができます。
【利用者向け】訪問介護を利用するときの注意点
訪問介護は自宅で受ける介護サービスなので、自宅に訪問介護員を招き入れる必要があります。しかし、中には訪問介護員が自宅に入ることに利用者や家族が拒否反応を起こすこともあります。いくら介護のためといっても、自宅に知らない人が入ることになるためストレスを感じてしまいます。あらかじめ家族と本人の間で話し合っておくことが大切です。
訪問介護は自宅で行うことから、介護に適したリフォームが必要になることがあります。介護施設は最初から介護をすることを目的としているため介護環境は整っていますが、自宅の場合はそうではないことが多いでしょう。在宅介護を考える場合は、リフォーム費用のことも一緒に考えましょう。
【訪問介護員向け】訪問介護で働くメリット
訪問介護員として働くメリットは以下があります。
- 時間の融通が効きやすい
- やりがいを感じられる
- 人間関係で悩むことが少ない
これらのメリットについて解説します。
勤務時間の融通が利きやすい
訪問介護員として働くメリットの一つとして、勤務時間の融通を利かせやすい点があります。
日勤だけの事業所もあれば、最近では夜間対応を行なっている事業所もあります。時短勤務などもできる事業所もあるので、自分の生活のサイクルに合った働き方ができるのは大きな特徴です。
やりがいを感じられる
訪問介護員は施設介護と違って1対1で介護をするため、利用者により寄り添った介護をすることができます。
自分のした仕事が、そのまま目の前の利用者の生活に影響します。そのぶん責任感がある仕事ではありますが、とてもやりがいのある仕事といえます。
人間関係で悩むことが少ない
訪問介護の仕事は利用者と1対1の仕事であり、施設介護のように大勢の職員との人間関係に悩むことも少ない傾向にあります。
利用者やその家族との人間関係はありますが、それでも多方面での人間関係に疲弊することは少なく、自分の担当する利用者のケアに集中できる環境が整っています。
訪問介護は職人気質な人ほど働きやすく、やりがいの感じられる仕事だといえます。
スキルの幅が広がる
訪問介護ではさまざまな介護度の利用者と関わり、それぞれに異なる対応をするためスキルアップできる環境が整っています。
訪問介護で得たスキルは、訪問介護以外の介護の仕事に転職をする際にも即戦力として重宝される可能性が高いです。
【訪問介護員向け】訪問介護で働くときの注意点
所属する事業所や派遣先のスタッフが少ない場合は、必然的に一人あたりの業務量が増えてしまうことがあります。業務量は事業所によって違いがあるため、就職する際には担当者に確認しておくことが大切です。
訪問介護の仕事は基本的には1対1の仕事になります。もちろんチームとして動くこともありますが、細かな業務について教えてくれる人は通常の介護施設と比べると少なくなります。そういった意味では訪問介護は玄人向けの仕事といえるでしょう。日々働きながら自力で知見を広げていく必要があります。そのうえで介護サービスにおける質の向上を常に求められていると頭に入れておきましょう。
また、訪問介護中に利用者の急変などのトラブルやアクシデントが起こった場合でも、基本的に一人で訪問しているため自分で対応をしなくてはいけません。対応一つで利用者からの信用を得ることもあれば、逆に信用を失うこともあります。
事業所では考えられるトラブルに対するマニュアルがありますので、しっかり確認して常にトラブルに備えておきましょう。
訪問介護とその他のサービスの違いは?
訪問介護とよく比較されるその他のサービスとの違いを紹介します。
デイサービス(通所介護)との違い
訪問介護とよく比較されるデイサービスとの違いを解説します。
訪問介護は、ホームヘルパーが利用者の自宅に訪問して介護サービスを提供します。一方でデイサービスは介護施設に通いながら、施設に勤務する介護スタッフによる介護サービスを受けるという大きな違いがあります。
関連記事:「デイサービス(通所介護)とは?種類や利用条件・費用、サービス内容を解説」
訪問看護との違い
訪問看護のサービス内容は、自宅療養や在宅介護をするうえで必要な療養的ケアと診療補助です。訪問介護と同様に、食事・入浴・排泄介助は含まれますが、掃除・洗濯・買い物・調理といった家事は含まれていません。
訪問看護のスタッフは専門の資格を持つ医療従事者なので、訪問介護ではできない医療処置を行うことができます。
たとえば訪問看護師なら、
- 点滴や胃ろう
- 傷口の消毒
- 床ずれの措置
- 人工呼吸器の管理
をすることが可能です。
訪問看護のサービス内容は医師の「訪問看護指示書」に従い、医療機関や医師と連携しながら行われます。
関連記事:「訪問看護とは?利用条件・費用、サービス内容を解説」
まとめ
多くの高齢者は、自分の住み慣れた家で生活を続けたいという想いを持っています。その想いに応えるのが訪問介護の仕事です。ホームペルパーは、利用者一人ひとりに寄り添った、丁寧な介護サービスを提供できるように心がけましょう。
なお、実際に働くにあたっては、業務が効率化された事業所であることは非常に重要なポイントといえます。介護以外の業務が効率化されていれば、利用者へのケアに集中することができ、より良い介護サービスを提供することにもつながります。
訪問介護のような柔軟な対応が求められる事業所では、介護ソフトを導入し効率化に役立てているケースも見られます。
当記事を執筆している私の働く施設でも、「ワイズマンの介護ソフト」を導入して記録業務を大幅に効率化し、利用者のケアに集中できるようになりました。
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これから訪問介護で働く予定のある方は、記録業務をどのような方法を取っているのかをチェックすることをおすすめします。また、すでに働いている方は、勤務先の事業所の担当に導入を依頼してみましょう。