介護加算の仕組みとは?訪問介護加算・減算の種類を解説
2023.12.22
介護施設を立ち上げる際には、介護報酬の仕組みや計算方法を理解しておく必要があります。
介護報酬には加算と減算の項目があり、それぞれの種類を把握しておくことが大切です。
この記事では、訪問介護における介護加算の仕組みと、加算・減算の種類を一覧にして解説します。
加算算定の課題と解決策も併せて解説しますので、最後まで読んでレセプト業務を効率化しましょう。
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介護加算・減算の仕組みとは?
介護施設を立ち上げるためには、介護加算・減算の仕組みを理解しておく必要があります。
介護加算・減算とは、介護報酬を計算する際に必要な項目です。
主に介護報酬は、次の計算式で算出可能です。
「介護報酬=基本報酬+加算-減算」
基本報酬とは、ケアサービスの提供料金を指し、サービス内容・時間・利用者の要介護度などにより決まります。
加算とは「入浴介助」「中重度者ケア体制」「個別機能訓練」など、従来のケアサービスより専門的な知識・スキルや多めの人員が必要なサービスを提供する際にプラスとして算定する項目です。
反対に減算は、従来のサービスより人員が不足していたり基準を満たせていなかったりする場合に、基本報酬からマイナスで算定します。
介護加算・減算は、基本報酬からプラスマイナスの変動があるか介護報酬を算定するために必要な項目です。
【参考例】訪問介護加算・減算の種類一覧
訪問介護における介護加算・減算項目は、次の種類です。
- 特定事業所加算(Ⅰ)~(Ⅴ)
- 2人の訪問介護員等による場合
- 夜間もしくは早朝の場合の加算
- 深夜の場合の加算
- 中山間地域等における小規模事業所加算
- 中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算
- 緊急時訪問介護加算
- 初回加算
- 生活機能向上連携加算(Ⅰ)~(Ⅱ)
- 認知症専門ケア加算(Ⅰ)~(Ⅱ)
- 介護職員等ベースアップ等支援加算
- 介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)
- 介護職員等特定処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)
上記の項目で基本報酬を加算すれば、介護報酬を多く請求できます。
それぞれの項目の特徴と加算・減算の単位数を確認して、介護保険請求を正しく行いましょう。
特定事業所加算(Ⅰ)~(Ⅴ)
特定事業所加算は、(Ⅰ)~(Ⅴ)までの項目があります。
特定事業所加算は、次のような算定要件を満たさなければなりません。
「特定事業所加算の加算算定要件」
- 利用者の情報共有やる従業員の技術指導を目的とした会議を定期的に開催する
- サービス提供責任者が従業員に、文書などの確実な方法で情報共有・報告の連携を行っている
- 従業員に対して、健康診断等を定期的に実施する
- 指定居宅サービス基準第29条第6号に、規定する緊急時等における対応方法が利用者に明示されている
- 介護福祉士の占める割合が30%以上又は、介護職員基礎研修修了者・一級課程を修了した者が50%以上である
- サービス提供責任者が3年以上の実務経験を有する介護福祉士、もしくは5年以上の実務経験を有する実務者や研修修了者・一級課程修了者である
- 前年度、又は前3ヶ月で、利用者の20%以上が、要介護4・要介護5もしくは日常生活に支障を来すレベルの認知症である
各要件を満たして、厚生労働大臣が定める基準(平成27年厚生労働省告示第95号)に適合している事業所として都道府県知事に届け出た場合にのみ、特定事業所加算が適用されます。
なお、特定事業所加算(Ⅰ)~(Ⅴ)で満たさなければならない要件と加算される単位数は、次のとおりです。
特定事業所加算 | 必須の算定要件 | 加算率 |
(Ⅰ) | ・1〜7まですべて ・事業所内のすべての従業員に対する研修計画を作成し、研修を実施している、 又は実施を予定していること。 | 20% |
(Ⅱ) | 1〜4まですべてと、5もしくは6のいずれか | 10% |
(Ⅲ) | 1〜4まですべてと7 | 10% |
(Ⅳ) | ・2〜4まですべて ・事業所内のすべてのサービス提供責任者に対し、個別の研修計画を作成し、研修を実施又は実施を予定していること。 ・規定通り常勤のサービス提供責任者を配置し、かつ上回る数の常勤のサービス提供責任者を配置していること。 ・前年度、又は前3ヶ月で、要介護3・4又は要介護5である者・認知症である者の割合が60%以上であること。 | 5% |
(Ⅴ) | 1〜4まですべて | 3% |
特定事業所加算は、研修制度や会議・報告制度の充実度や緊急時の対応・利用者の要介護度や配置する有資格者の人数などによって、基本報酬が3〜20%を加算されます。
2人の訪問介護員等による場合
2人の訪問介護等による場合は、1人の利用者に対して2人の従業員が訪問介護を行った際に適用される項目です。
具体的には、次のようなケースに2人で訪問介護を実施します。
- 利用者の身体的理由によって、1人では十分なケアサービスを提供できない場合
- 利用者の暴力行為・迷惑行為などによって、1人では対処できない
他にも従業員が1人で訪問介護サービスを提供できない場合に、「2人の訪問介護員等による場合」の加算が適用されます。
なお「2人の訪問介護員等による場合」で加算される単位数は200/100です。
夜間もしくは早朝の場合の加算
夜間もしくは早朝の場合の加算は、夜間(午後6時から午後10時まで)もしくは早朝(午前6時から午前8時まで)の時間帯に指定訪問介護を行った場合に適用されます。
夜間や早朝に従業員が訪問介護を行う手間を考慮して、基本報酬が加算される仕組みです。
なお「夜間もしくは早朝の場合」は、単位数25/100(25%)が基本報酬に加算されます。
深夜の場合の加算
深夜の場合の加算は、深夜(午後10時から午前6時まで)に指定訪問介護を行った場合に適用されます。
従業員が深夜帯に働くことになるため、基本報酬に加算して利用料金を請求可能です。
なお「深夜の場合」に加算される単位数は50/100と、基本報酬の半額をプラスで請求できます。
中山間地域等における小規模事業所加算
中山間地域等における小規模事業所加算は、中山間地域に小規模な事業所が所在している場合に適用される項目です。
中山間地域とは、法律で定められた豪雪地帯や特定農山村地域・過疎地域など、開発や気候・地形の影響によって訪問介護を実施することが困難なエリアを指します。
また、小規模な事業所とは、1ヶ月に実施する訪問介護の回数が200回以下であることが条件です。
「中山間地域等における小規模事業所加算」が適用されれば、1回につき10/100の単位数が基本報酬に加算されます。
中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算
中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算は、通常より訪問することが困難な利用者へ訪問介護サービスを提供した場合に適用される項目です。
山奥や離島など、従業員が訪問することが困難な場所を訪れる場合には、基本報酬より追加で費用を請求できます。
「中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算」が適用される具体的な場所は、次のとおりです。
- 離島振興法(第2条第1項)によって指定された離島振興対策実施地域
- 奄美群島振興開発特別措置法(第1条)で規定される奄美群島
- 豪雪地帯対策特別措置法(第2条第1項)に規定される豪雪地帯、もしくは同条第2項の規定で指定される特別豪雪地帯
- 辺地に係る公共的施設の総合整備のための財政上の特別措置等に関する法律(第2条第1項)に規定される辺地
- 山村振興法(第7条第1項)の規定によって指定される振興山村
- 小笠原諸島振興開発特別措置法(第4条第1項)に規定される小笠原諸島
- 半島振興法(第2条第1項)の規定で指定される半島振興対策実施地域
- 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律(第2条第1項)に規定される特定農山村地域
- 過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法(第2条第1項)に規定される過疎地域
- 沖縄振興特別措置法(第3条第3号)に規定される離島
事業所にとって訪問介護を提供することが困難な場所を訪れる場合に、基本報酬より5%(加算単位数5/100)が加算されます。
緊急時訪問介護加算
緊急時訪問介護加算は、居宅サービス計画に位置付けられていない訪問介護を行った場合に適用されます。
利用者から緊急の要請があった場合に、基本報酬に加えて100単位が加算されます。
ただし緊急時訪問介護加算は、利用者もしくはその家族から要請を受けて24時間以内に訪問介護を行った場合にのみ加算されます。
初回加算
初回加算は、新規に訪問介護計画を作成した利用者に対して、初回の指定訪問介護を行った場合に適用されます。
新規の利用者に対してのみ適用される加算項目で、1ヶ月につき200単位が加算対象です。
なお初回加算は、利用者が過去2ヶ月間に対象の事業所から指定訪問介護の提供を受けていた場合は適用されません。
生活機能向上連携加算(Ⅰ)~(Ⅱ)
生活機能向上連携加算は、(Ⅰ)~(Ⅱ)の2項目があります。
生活機能向上連携加算とは、利用者の生活機能を向上させる目的で訪問介護を行った場合に適用される加算項目です。
ただ訪問介護を行うだけでなく、指定訪問リハビリテーション事業所や医療施設の医師、理学療法士などの専門家の助言をもとにケアサービスを提供する必要があります。
生活機能向上連携加算の単位数は、1ヶ月あたり(Ⅰ)が100単位、(Ⅱ)が200単位です。
認知症専門ケア加算(Ⅰ)~(Ⅱ)
認知症専門ケア加算は(Ⅰ)~(Ⅱ)があり、利用者の認知症治療を行った際に加算されます。
日常生活自立度のランクⅢ・Ⅳ又は、Mに該当する認知症患者の訪問介護が適用条件です。
日常生活に支障を来すレベルの認知症を治療する目的で訪問介護を行う必要があり、従業員には一定レベルの専門知識が求められます。
なお、認知症専門ケア加算は1日につき3〜4単位が加算される項目です。
介護職員等ベースアップ等支援加算
介護職員等ベースアップは、令和4年10月から新たに定められた加算項目です。
介護職員等ベースアップ等支援加算は、介護職員の待遇改善・能力育成を目的として定められました。
以下のキャリアパス要件を満たした職場環境の改善を行った事業所のみ適用されます。
- 職位・職責・職務内容などに応じた昇給制度・給与体系を整えること
- 従業員の能力・知識向上のため、計画的に研修のの機会を確保すること
- 経験や資格に応じて昇給する仕組みをつくること
介護職員等ベースアップ等支援加算は、介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)に上乗せして加算される項目です。
具体的には介護職員1名につき月額平均9,000円相当が基本報酬に加算されます。
詳しくは、厚生労働省が公表している「令和4年度介護報酬改定について」で要件を確認できますので、加算算定をスムーズに行うためにチェックしておきましょう。
介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)
介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)は、介護職員の給与体系を向上させようと改善を行っている事業所に対して適用される加算項目です。
介護職員処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)が適用されるには、具体的な賃貸改善を行う方法や内容・期間を記載した介護職員処遇改善計画書を作成し、すべての介護職員に周知する必要があります。
作成した介護職員処遇改善計画書を都道府県知事に提出し、介護職員処遇改善加算が認められれば、(Ⅰ)~(Ⅲ)の内容に応じて55/1000〜137/1000(単位数5.5%~13.7%)が基本報酬に加算されます。
介護職員等特定処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)
介護職員等特定処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)は、勤続年数10年以上の介護福祉士について月額平均8万円相当の処遇改善を行うことで適用される加算項目です。
介護職員等特定処遇改善加算が適用されれば、42/1000〜63/1000(単位数4.2〜6.3%)が基本報酬に加算できます。
さらに勤続年数が長い介護福祉士の処遇改善を行えば、従業員のモチベーションを向上させて定着率の向上が期待できます。
共生型訪問介護を行う場合
共生型訪問介護を行う場合は、基本報酬から減算されます。
共生型訪問介護とは、高齢者と障がい者を一緒にケアするサービス体制です。
高齢者と障がい者を共同で介護するには、従業員と利用者の双方に負荷がかかるため、共生型訪問介護を行うと1回につき単位数70〜93%を算定します。
3人の介護職員による場合
利用者に身体的影響を与えるリスクがない場合に、3人の介護職員が訪問介護サービスを提供した場合は基本報酬の減算対象です。
具体的には、指定訪問入浴介護事業所の介護職員が3人がかりで訪問入浴介護を提供した場合に、単位数95%を算定します。
必要以上の人数で訪問して介護サービスを提供しても、基本報酬が減算されるため注意しましょう。
清拭又は部分浴を実施した場合
利用者が入浴できない場合に、清拭又は部分浴を行った場合は基本報酬から減算されます。
入浴ではなく清拭(身体を拭き洗うこと)や部分浴(シャンプーや足・腕だけの洗浄)を行う労力は、全身を入浴させる労力に比べると軽いものです。
そのため、清拭又は部分浴を行った場合は基本報酬から単位数95%を減算して介護報酬額が算出されます。
加算算定の課題とICTによる解決策
介護報酬の計算、加算算定には多くの手間がかかります。
加算・減算項目を熟知し、的確に点数計算を行う必要があるため、どうしても人的ミスが発生するリスクを避けられません。
ミスによっては行政指導の対象となり、事業所の運営や存続に関わる事態にも発展する可能性があります。
加算算定でミスを生じさせないためには、ICTによる課題解決が効果的です。
介護請求ソフトなどのICTを導入すれば、加算算定で生じる入力ミスや計算ミスを防ぎ、正確に介護請求を算出できます。
加算算定で生じるリスクを軽減して、レセプト業務を効率化したい事業所は、ICTによる課題解決を検討しましょう。
「介護保険報酬は確実に減っていく」。ある公の場での厚労省関係者の発言です。社会保障費抑制を目的に国も本気で介護保険報酬単価を見直し始めています。具体的にどのように減算していくのでしょうか。これは非常にわかりやすく、『加算報酬単価を上げて、本体報酬単価を下げる』という手法をとっています。2021年の介護報酬改定を例に挙げると、全体では0.54%のプラス改定でした。しかし、その内訳をみると、新設、拡充された加算のみで約1%のプラス改定となっています。その他通所介護の時間区分変更や同一建物減算の拡大など所謂『適正化』で-0.5%減算されているのです。つまりは、“加算を算定できなければ減算”となってしまうということです。このような流れは今後も加速していくでしょう。加算は確実に算定していきましょう。
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加算算定の効率化にはワイズマンソリューションがおすすめ
加算算定を効率化したい事業所には、ワイズマンソリューションがおすすめです。
ワイズマンソリューションは、介護請求に関わる業務を効率化する機能が豊富に備わっています。
実施した訪問介護サービスの内容を選択すれば、自動的にシステム上で加算・減算項目が選択されます。
介護報酬の計算を自動化できるため、人的ミスを減らし従業員の事務手間も軽減することが可能です。
まとめ
介護事業所を運営するためには、介護報酬における加算・減算項目を把握しておく必要があります。
基本報酬から加算・減算される項目内容を理解しておかなければ、正確な介護報酬額を算出できません。
加算算定は項目の煩雑さから計算ミスや入力ミスなどの、人的なミスが生じやすいです。
場合によっては、事業者が行政による指導対象となるリスクが生じます。
そのため、介護事業所としては人的ミスを軽減するための対処法を実施しなければなりません。
加算算定を効率化するためには、ICTを活用した業務の自動化・人的ミスの軽減が推奨されます。
ワイズマンソリューションを活用すれば、加算算定を効率化して人的ミスが生じるリスクを軽減可能です。
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介護・福祉現場でのリスク管理やスタッフ教育を課題としている方を対象に作成しておりますので、ぜひダウンロードしてご活用ください。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。