訪問看護で働く人の職種とは?仕事内容や必要な資格について解説
2023.02.27
訪問看護というと、まず看護師を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。看護師も訪問看護の職種の一つですが、そのほかにもさまざまな職種の方が働いています。看護師に限らず、訪問看護で働く場合には多職種連携が欠かせません。そのためには、ほかの職種の仕事内容や関わり方を知っておく必要があります。
この記事では、訪問看護で働く方の職種や仕事内容、必要な資格について解説しています。すでに訪問看護で働かれている方も、ほかの職種について理解を深めるためにぜひお読みください。
目次
訪問看護とは
訪問看護とは高齢者や障害を持った方の自宅に訪問し、主治医の指示をもとに行う看護のことです。他職種と連携することにより、病気や障害を持った方が住み慣れた家で生活できるように支援を行います。
訪問看護の利用に年齢制限はありませんが、医師の訪問看護指示書が必要です。
訪問看護や訪問看護指示書についてさらに詳しく知りたい方は、下記の記事をご参照ください。
関連記事:「訪問看護とは?利用条件・費用、サービス内容を解説」
関連記事:「訪問看護指示書とは?記載事項や発行してもらえない場合の対処法を解説」
訪問看護の人員基準
訪問看護ステーションの人員基準は以下の通りです。
- 常勤換算2.5人以上の看護職員(保健師・看護師・准看護師・助産師)
- 管理者1人(常勤の保健師または看護師で看護職員との兼務可)
なお令和2年の地方分権改革提案によって、従うべき基準から参酌すべき基準への見直しが検討されています。
(※)参考:介護給付費分科会|訪問看護の報酬・基準について
訪問看護で働く人の職種
訪問看護に携わる職種は、看護スタッフとリハビリテーションのスタッフに分かれます。看護スタッフとリハビリテーションのスタッフは相互連携し、それぞれの観点から提案やケアを行います。
それぞれの職種の仕事内容について紹介します。
看護スタッフ
看護師
看護師は病気や障害など健康状態に不安を持った方に対して、主治医の指示書をもとに必要な医療的ケアを行います。そのほか利用者の健康管理やメンタルケア、生活支援なども看護師の仕事に含まれます。
訪問看護師の勤務場所は、以下の通りです。
- 介護保険施設
- 訪問看護ステーション
- 障碍者支援施設
- 児童福祉施設
- 保健所
- 保健センター
など
看護師として働くには国家試験に合格し、厚生労働省から看護免許の交付を受けることが必要です。
准看護師
准看護師の仕事内容は看護師とほぼ同じです。ただし、准看護師は医師や看護師の指示なしでは業務を行うことができない点で、看護師とは異なります。
また、訪問看護の准看護師の勤務場所は、看護師とほぼ同じです。
准看護師は正社員よりパートやアルバイトの割合が高く、日中のみや短時間勤務など家庭の事情に合わせて働く方が多いです。
准看護師として働くには都道府県試験に合格し、都道府県知事から免許の交付を受ける必要があります。
保健師
保健師の仕事は病気やケガを未然に防ぐ予防医療が主ですが、訪問看護では看護師業務の割合が高くなる傾向があります。
保健師の勤務場所は以下の通りです。
- 保健所
- 保健センター
- 医療機関
- 地域包括支援センター
- 訪問看護ステーション
など
保健師として働くには、看護師資格に加えて保健師資格が必要です。
助産師
助産師といえば、出産時に赤ちゃんを取り上げる仕事をイメージする方が多いのではないでしょうか。助産師の仕事は分娩の介助だけでなく、妊婦や褥婦(じょく婦)や新生児に対して保健指導も行います。
そのほか性教育や妊娠前のご家族に対するケア、更年期女性の体調変化に対してアドバイスを行うこともあります。
助産師の勤務場所は以下の通りです。
- 助産院
- 保健所
- 保健センター
など
助産師として働くには、看護師資格に加えて助産師資格が必要です。
リハビリテーションスタッフ
理学療法士
理学療法士の仕事内容は、身体機能のリハビリテーションを通して「立ち上がる」「座る」「歩く」といった基本動作の向上・維持がメインとなります。
そのほか身体機能の変化や生活環境、福祉用具の有無についての評価を行います。
理学療法士の勤務場所は以下の通りです。
- 訪問看護ステーション
- 特別養護老人ホーム
- 老人保健施設
- 地域包括支援センター
- 障害者福祉施設
- 児童福祉施設
など
理学療法士として働くには、理学療法士資格が必要です。
作業療法士
作業療法士の仕事は、生活するために必要な「歯を磨く」「字を書く」といった応用動作の訓練を行うことです。加えて利用者に手先を使った作業を行わせることにより、社会適応能力の向上を目指します。
作業療法士は身体面だけでなく、リハビリテーション中のメンタルケアやうつ病などの精神面のサポートを行う特徴があります。
作業療法士の勤務場所は以下の通りです。
- 介護老人保健施設
- 特別養護老人ホーム
- デイサービスセンター
- 障害者福祉施設
- 児童福祉施設
など
作業療法士として働くには、作業療法士資格が必要です。
言語聴覚士
言語聴覚士の仕事は、視覚や聴覚に障害を持つ利用者に対して自宅で生活を続けられるように言語訓練を行うことです。個々の利用者に合わせて計画を作成し、単語の聞き取りや絵の呼称、音読を行ったうえで評価します。
言語訓練のほか、認知力低下を防ぐための高次脳機能訓練や摂食・嚥下訓練も仕事に含まれます。
言語聴覚士の勤務場所は以下の通りです。
- 介護老人保健施設
- 特別養護老人ホーム
- デイサービスセンター
- 訪問リハビリテーション
- 障害者福祉センター
- 療育センター
など
言語聴覚士として働くには、言語聴覚士資格が必要です。
訪問看護において連携する職種
訪問看護の職員は適切にサービス提供を行うために、さまざまな職種と情報連携する必要があります。ここでは連携が必要な職種との関わり方について解説します。
訪問介護員
訪問介護員は日常的に利用者と接する機会が比較的多く、健康状態や生活の様子など利用者の詳細情報を管理しています。
訪問看護の職員は1週間の中で訪問時間が限られているため、利用者に関する情報は訪問介護員からのヒアリングが欠かせません。そのため訪問介護員との連携は非常に重要であるといえます。
薬剤師
薬剤師は医師からの処方箋をもとに、内服薬や外用薬を利用者に届ける役割があります。利用者の自宅を訪問した際、薬の保管方法や服薬方法について利用者やご家族に指導を行います。
在宅利用者の場合は服薬管理が難しいため、利用者やご家族に服薬について十分理解してもらう必要があるためです。
訪問看護の職員は、薬の効果が見られない場合や副作用が見られる場合に医師や薬剤師に速やかに報告し、薬の調整を依頼する必要があります。
ケアマネジャー
ケアマネジャーは、利用者が必要とする医療・介護サービスを受けられるようにケアプランを作成します。ケアプランをもとに訪問看護計画書や訪問リハビリテーション計画書が作成されるため、訪問介護における要となる存在です。
利用者の健康状態や身体機能の変化を感じた場合、訪問看護の職員はケアマネジャーに報告したうえでケアプランの修正を求める必要があります。
関連記事:「訪問介護計画書とは?作成の流れや記入例、作成のポイントを解説」
ソーシャルワーカー
ソーシャルワーカーは、利用者の生活するうえで問題となる介護・医療・福祉に関する相談受付・援助・調整を行うプロです。
ソーシャルワーカーは利用者やご家族からの相談をもとに、必要に応じて訪問看護などにサービス提供を要請します。
関連記事:「訪問看護とは?利用条件・費用、サービス内容を解説」
医師
訪問看護の職員は医師の指示書に基づいてケアを行う必要があるため、医師との連携は不可欠です。
医師は訪問看護の職員よりも利用者との関わりが少ないため、看護記録をもとに利用者の健康状態を医師に伝える必要があります。
利用者の急変時には医師に連絡を取り、指示を仰ぐ場合もあります。
病院看護師
退院後に在宅ケアを希望される利用者やご家族もいます。その場合、退院前にカンファレンスを実施する必要があるため、病院看護師との連携が必要です。
訪問看護の職員は、診療情報提供書をもとに利用者のADL、既往歴、かかりつけ医、投薬内容などについて確認を行う必要があります。
訪問看護で働く人の平均給与
訪問看護で働く職員の職種別の平均給与(月額)を表で表すと、以下の通りになります。
看護師(常勤) | 看護師(非常勤) | 准看護師(常勤) | 准看護師(非常勤) |
422,652円 | 375,894円 | 382,542円 | 349,664円 |
訪問看護で働く看護師の1日の流れ
訪問看護で働く看護師の1日の流れの一例を紹介します。
(1件あたりの訪問時間を60分、移動時間を30分と想定)
9:00 | 朝礼(訪問スケジュールの確認、申し送り) |
9:30 | 午前1件目の訪問(体調確認・清潔ケア) |
10:30 | 移動 |
11:00 | 午前2件目の訪問(体調確認・胃ろう処置) |
12:00 | 食事休憩 |
13:00 | 移動 |
13:30 | 午後1件目の訪問(介護指導や相談などのご家族ケア) |
14:30 | 移動 |
15:00 | 午後2件目の訪問(体調確認・リハビリテーション) |
16:00 | 移動 |
16:30 | 午後3件目の訪問(体調確認・排泄ケア) |
17:30 | 移動 |
18:00 | 帰所(記録の提出・報告)、退社 |
利用者の都合により訪問がキャンセルになった場合、事業所への報告や看護記録の記入時間に当てます。
訪問看護師になるには
訪問看護師になるには、資格正看護師は看護師資格、准看護師は准看護師資格が必要です。
また、事業所によりますが、看護師経験があった方が就職・転職に有利となるのは間違いありません。しかし、人材不足が深刻化していることから新卒や経験の浅い看護師を採用する事業所が増加している傾向にあります。
訪問看護師として働くのに役立つ資格
訪問看護師として働くうえで、役に立つ資格を紹介します。
認定看護師
認定看護師とは、特定の看護分野で熟練した看護技術・知識を持ち、日本看護協会の認定を受けた看護師に与えられる資格です。
認定看護師を取得すると、以下の業務を行うことができます。
- 組織での役割を持てるようになる
- 一般看護師の指導を行うことができる
- 看護師やその他の職員からの相談に対して、解決策や改善策を提示できる
専門看護師
専門看護師は看護師資格の上位資格に当たります。
専門看護師の定義は以下の通りです。
“複雑で解決困難な看護問題を持つ個人、家族及び集団に対して水準の高い看護ケアを効率よく提供するための、特定の専門看護分野の知識・技術を深めた専門看護師”
専門看護師を取得すると、以下の業務を行うことができます。
- 患者のご家族や集団に対しても卓越した看護が実践できる
- 看護者を含むケア提供者に対する援助ができる
- 保健医療分野に携わる方人々の間の調整ができる
- 個人、ご家族および集団の権利を守るために倫理的な問題の解決が図れる
- 看護者に対してケアの向上を図るための指導ができる
- 専門知識や技術の向上、開発を図るために実践の場で研究活動ができる
ケアマネジャー(介護支援専門員)
ケアマネジャーは、介護保険のプロフェッショナルに当たる資格です。
ケアマネジャーの定義は以下の通りです。
“要介護者や要支援者の人の相談や心身の状況に応じるとともに、サービス(訪問介護、デイサービスなど)を受けられるようにケアプラン(介護サービス等の提供についての計画)の作成や市町村・サービス事業者・施設等との連絡調整を行う者”
ケアマネジャーは、実務の面でデイサービスや福祉用具、リハビリテーション、訪問介護などの関連部署との連携が必要です。
訪問看護で働く場合にも多職種連携が必須となるため、ケアマネジャーの資格を取得すると実務に活かせます。
まとめ
訪問看護の事業所では、さまざま職種の方が働いており、一人の利用者のケアのために多くの職種の方が関わっています。それだけに訪問看護で働く職員は、多職種連携を欠かすことができません。
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