訪問看護の特別管理加算とは?1と2の違いを徹底解説!
2024.03.02
訪問看護サービスを提供する事業所は、特別管理加算を正確に加算する必要があります。
特別管理加算とは、看護現場において特別な管理が必要な利用者に対して、適切な管理を行っている場合に加算される制度です。
しかし特別管理加算には(Ⅰ)と(Ⅱ)の2種類があり、それぞれ加算項目によって算定条件や点数が異なります。
そこで本記事では、訪問看護の特別管理加算における(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いを詳しく解説します。
加算算定を正確に実施するコツも併せて紹介しますので、最後まで読んで訪問看護ステーションを運営する際の参考にしてください。
なお、株式会社ワイズマンでは、介護現場でのリスク管理やスタッフの教育について課題を感じている方に向けて「介護現場のリスク管理とスタッフ教育の重要性についての資料」を無料で配布中です。
介護・福祉現場の効率化とサービスの質向上を図るための実践的なアプローチを提案しておりますので、ぜひダウンロードしてご活用ください。
訪問看護における特別管理加算とは?
訪問看護における特別管理加算とは、医療的な管理が求められる利用者に対して、適切な処置・管理を行っている場合に加算される制度です。
月に1度、加算額を計算して保険料に上乗せし、レセプト請求できます。
訪問看護における特別管理加算を詳しく理解するために、次のポイントを紹介します。
- 特別管理加算とは?
- 医療保険・看護保険の両方にある
- 特別管理加算は(Ⅰ)と2の2種類がある
加算算定を正確に行いたい事業所は、しっかりと確認しておきましょう。
特別管理加算とは?
特別管理加算とは、訪問看護を含む次のサービスを提供する事業に対して、適用される制度です。
- 訪問看護(医療保険、介護保険)
- 看護小規模多機能型居宅介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
それぞれ提供するサービス内容によって算定条件・加算額が異なります。
訪問看護サービスを提供する事業所は、利用者の容態や状態に応じた適切な処置・管理を行うことで、定められている金額・点数が加算されます。
医療保険・介護保険の両方にある
訪問看護における特別管理加算は、医療保険だけでなく介護保険にも適用されます。
利用者が医療保険・介護保険のどちらでサービスを受けていても、条件に適用した場合は加算可能です。
なお、医療保険の特別管理加算を受ける場合は、管轄の地方厚生局長に届け出を申請しなければなりません。
さらに訪問看護サービスを24時間提供できる体制を整えている場合のみ、医療保険の特別管理加算が適用されます。
特別管理加算には(Ⅰ)と(Ⅱ)の2種類がある
特別管理加算には、以下の2種類があります。
- 特別管理加算(Ⅰ)
- 特別管理加算(Ⅱ)
それぞれ加算条件や、適用される利用者条件が異なるため注意しなければなりません。
さらに特別管理加算(Ⅰ)と(Ⅱ)では、加算される料金形態が異なるため、違いを把握しておくことが大切です。
それぞれの違いについては、次章で詳しく解説します。
特別管理加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違い
特別管理加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いを把握するために、それぞれの概要と対象者の条件を確認しておきましょう。
さらに特別管理加算の医療保険と介護保険で異なるポイントについても解説します。
参照:訪問看護|厚生労働省
参照:特別管理加算の対象者|岡山県訪問看護ステーション連絡協議会
特別管理加算(Ⅰ)とは?
特別管理加算(Ⅰ)の対象者は、次の条件に当てはまる利用者です。
- 在宅悪性腫瘍患者指導管理を受けている
- 在宅気管切開患者指導管理を受けている
- 気管カニューレを使用している
- 留置カテーテルを使用している
上記の条件どれかに当てはまる利用者は、特別管理加算の対象であり、状態によって加算額が決定します。
まず特別管理加算(Ⅰ)に当てはまる利用者は、重症度が高い患者です。
在宅悪性腫瘍患者指導管理を受けている状態とは、末期がん患者が口から鎮痛剤を服用できず、注射による投与が必要な状態を指します。
座薬や貼付剤でのがん治療は対象外で、あくまで注射による鎮痛療法のみ特別管理加算(Ⅰ)に当てはまります。
気管カニューレを使用している状態とは、外科的気管切開術や経皮的気管切開術を行った患者が、気管切開孔に留置する管(カニューレ)を通している状態です。
カニューレがなければ空気の通り道が塞がって呼吸ができない状態で、極めて重症な状態を指します。
留置カテーテルを使用している状態とは、胃管や腎ろう・膀胱留置カテーテルのように、常にカテーテルを使用していることが条件です。
点滴のように一時的な使用では、特別管理加算(Ⅰ)には当てはまりません。
特別管理加算(Ⅱ)とは?
特別管理加算(Ⅱ)の対象者は、次のどれかの状態に当てはまる方です。
- 在宅自己腹膜灌流指導管理を受けている
- 在宅血液透析指導管理を受けている
- 在宅酸素療法指導管理を受けている
- 在宅中心静脈栄養法指導管理を受けている
- 在宅成分栄養経管栄養法指導管理を受けている
- 在宅自己導尿指導管理を受けている
- 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理を受けている
- 在宅自己疼痛管理指導管理を受けている
- 在宅肺高血圧症患者指導管理を受けている
- 人工肛門また人工膀胱を使用している
- 真皮を越える褥瘡の状態
- 点滴注射を週3日以上行う必要がある
特別管理加算(Ⅱ)は(Ⅰ)より、医療的な容態が軽症な場合に加算されます。
家で腹膜灌流(殺菌した透析液を腹腔に注入し不要物を除去する腎臓の治療法)を行う患者に適切な指導管理を行っている場合、特別管理加算(Ⅱ)の対象です。
他にも、自宅で血液透析(ダイアライザーと呼ばれる血液透析器を使って不要な老廃物や水分を除去する治療法)を行う必要がある利用者に、適切な指導管理を実施している場合などにも適用されます。
さらに酸素療法・中心静脈栄養の治療など、特定の治療を自宅で行う必要がある利用者に対して、適切な管理・治療を行っている場合は特別管理加算(Ⅱ)の加算対象です。
また人工肛門や人工膀胱の使用や、真皮を越えるような褥瘡(床ずれ)の治療が求められる利用者に対して処置を行えば、特別管理加算(Ⅱ)が適用されます。
点滴注射は週に3日以上実施する場合のみ加算対象となり、週3日未満の注射は対象外です。
特別管理加算の医療保険と介護保険で違うポイント
特別管理加算の医療保険と介護保険では、料金形態が異なります。
特別管理加算の種類 | 介護保険 | 医療保険 |
(Ⅰ) | 500単位/月 | 5,000円/月 |
(Ⅱ) | 250単位/月 | 2,500円/月 |
特別管理加算(Ⅱ)より(Ⅰ)の方が、加算単位・金額が多いです。
介護保険の場合は単位数が加算され、医療保険では金額が月ごとに加算されます。
医療保険・介護保険のどちらも、算定条件はほぼ同じにあるため、大きな違いは加算される料金形態のみが異なります。
なお、介護・福祉現場でのリスク管理やスタッフ教育を課題としている方に向けて、「介護現場のリスク管理とスタッフ教育の重要性についての資料」を無料で配布中です。是非ご活用ください。
特別管理加算(Ⅰ)・(Ⅱ)に関するよくある質問
特別管理加算(Ⅰ)・(Ⅱ)について理解を深める過程で、次のような質問がよく挙がります。
- 特別管理加算(Ⅰ)・(Ⅱ)の両方を併用できのか?
- 加算対象か確認する方法とは?
- 医療保険から介護保険に切り替えた場合は?
- 利用者が複数の事業所を併用している場合は?
それぞれの質問に対する回答を確認して、訪問看護事業を運営する際の参考にしましょう。
特別管理加算(Ⅰ)・(Ⅱ)の両方を併用できる?
特別管理加算(Ⅰ)と(Ⅱ)は、どちらかのみ加算できます。
例えば、人工肛門を使用している利用者が在宅悪性腫瘍患者指導管理を受けている場合、特別管理加算の両方が加算対象です。
しかし特別管理加算は(Ⅰ)と(Ⅱ)を併用できず、どちらか一方しか加算できません。
(Ⅰ)の方が加算単位・金額が多いため、両方に該当する場合は(Ⅰ)を加算しましょう。
加算対象か確認する方法は?
特別管理加算の加算対象か確認するには、利用者の状態を見て判断するしかありません。
特別な検査や病院側が指導管理料を算定しているかは関係なく、利用者の状態を見て加算対象に該当する状態かを判断します。
特別管理加算に該当する条件を把握して、利用者が加算対象であるか判断できるようになりましょう。
医療保険から介護保険に切り替えた場合は?
月の途中に医療保険から介護保険に切り替えた場合は、介護保険が優先されます。
医療保険と介護保険の双方を請求することはできないため、月の途中で保険が切り替わった際には注意しましょう。
医療保険を利用していた患者が、月の途中で介護保険に切り替えた場合は、医療保険を適用せず介護保険の特別管理加算で請求してください。
利用者が複数の事業所を併用している場合は?
訪問看護の特別管理加算は、1人の利用者に対して1つの事業所のみ適用されます。
そのため、利用者が複数の事業所を併用している場合は、どこか1つの事業所で特別管理加算を行う必要があります。
複数箇所の事業所を併用している場合は、事業所同士が話し合って、どこで特別管理加算を適用させるか相談しなければなりません。
特別管理加算を正確に算定するには?
訪問看護の特別管理加算の算定を正確にするには、ICTの導入がおすすめです。
特別管理加算の算定を手作業で行う場合、どうしても入力ミスや記入漏れなどの人的ミスが生じてしまいます。
ICTを導入すれば、加算項目に該当する利用者をシステム上で一括管理し、加算算定業務の一部を自動化できます。
システム上で入力・計算・管理を一括で行えるため、人的ミスを軽減して正確な加算算定を実現できます。
訪問看護の特別管理加算に関わる業務を効率化させたい場合は、ICTの導入を検討しましょう。
特別管理加算Ⅰの算定率は70.67%と高い数値となっています(第220回介護給付費分科会資料3より)。特別管理加算Ⅰの算定要件に当てはまる利用者はかなり重度の方なので、多くの事業所が重度者対応を実施していることがわかります。国も訪問看護に対して重度者対応を強化させる方向で政策誘導しているので、当然の流れとも言えます。訪問看護を含め、訪問系のサービスは、スタッフ1名が1日に提供できるサービス量は大体決まってきます。1日の売上を増やそうと考えた場合、スタッフを増やすか、サービス単価を上げるかの二者択一となるのです。前者が容易にできれば問題ないのですが、看護師も深刻な人材不足で採用難易度は上がり続けています。特別管理加算Ⅰを含めて、加算算定率を向上させ、利用単価を上げる工夫が重要な業態なのです。
なお、株式会社ワイズマンでは「介護現場のリスク管理とスタッフ教育の重要性についての資料」を無料で配布中です。
介護・福祉現場でのリスク管理やスタッフ教育を課題としている方を対象に作成しておりますので、ぜひダウンロードしてご活用ください。
加算算定にはワイズマンの「訪問看護ステーション管理システムSP」がおすすめ!
ワイズマンが提供する「訪問看護ステーション管理システムSP」を活用すれば、加算算定をスムーズに実施できます。
訪問看護ステーション管理システムSPでは、医保療養費明細書や訪問看護計画書・利用実績表・訪問看護ステーション票・利用者一覧票・個票、看護体制強化加算など、さまざまな書類作成をシステム上で行えます。
医保療養費明細書を作成できる
ワイズマンの訪問看護ステーション管理システムSPを導入するメリットは、医保療養費明細書を作成できることです。
介護保険サービスと医療保険サービスの両方を合わせて、一連の予定・実績として管理できます。
特別指示書や難病認定などによって、介護保険から医療保険に切り替わった利用者を判別できるように、対象の利用者情報をピンク色で表示されます。
また、利用者台帳や実績の登録内容が反映された療養費明細書の作成が可能です。
訪問看護計画書を作成できる
ワイズマンの訪問看護ステーション管理システムSPを導入すれば、訪問看護計画書を作成できることです。
訪問看護指示書、訪問看護計画書、訪問看護記録書Ⅰ・Ⅱ、訪問看護報告書、訪問看護情報提供書などの医療文書をシステム上で作成・管理できます。
また、定められた帳票イメージに合わせた入力画面を採用しているため、手書き作成する時と同じような感覚で入力が可能です。
さまざまな集計帳票を出力できる
ワイズマンの訪問看護ステーション管理システムSPを導入することで、さまざまな集計帳票を出力できます。
利用実績表、訪問看護ステーション票、利用者一覧票・個票、看護体制強化加算などを出力可能です。
システム上で月ごとの集計を一目で確認でき、事業所や利用者の状況管理に役立ちます。
ワイズマンの訪問看護ステーションSPは、加算算定を含むさまざまな事務業務を効率化できるため、業務効率の向上が可能です。
まとめ
訪問看護の特別管理加算を行う際には、(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いを把握しておく必要があります。
それぞれ、加算対象となる利用者の条件が異なり、加算単位・金額も違います。
特別管理加算(Ⅰ)の方が(Ⅱ)より重症度が高い利用者を対象としているため、加算単位・金額が高いです。
さらに訪問看護の特別管理加算には、医療保険と介護保険の両方が存在するため、どちらの保険を利用するか確認しておく必要があります。
医療保険と介護保険の双方に請求することはできませんので、月の途中で保険が切り替わった場合は注意が必要です。
ICTを導入して入力・管理業務を自動化させれば、特別管理加算を正確に実施できます。
ワイズマンが提供する「訪問看護ステーション管理システムSP」を利用すれば、訪問看護における特別管理加算を効率化できます。
さらにシステム上で利用者情報・ケアの進捗情報を一括管理できるため、業務を効率化し生産性の向上が可能です。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。