訪問看護ステーションの経営は難しい?廃業率や成功のポイントなどを解説
2024.03.06
昨今、介護・看護需要の高まりから、訪問看護ステーションが増加しています。
新たに施設を立ち上げようとお考えの方も、多いのではないでしょうか。
ただ、一般的に「訪問看護ステーションの経営は難しい」と言われています。
実際、施設数こそ増加していますが、なかには廃業している事業所も少なくありません。
本記事では、訪問看護ステーション経営が難しいとされる要因と、その対処法を解説します。
これから施設を立ち上げようとお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
訪問看護ステーション経営の現状
昨今は、訪問看護ステーションを始めとする介護福祉施設の利用者が増加しています。
これに伴い、事業所数も増加傾向にあります。
一見すると業界全体が活性化している印象もありますが、実は、廃業に追い込まれているケースもあります。
まずは、訪問看護ステーションを取り巻く状況についておさらいしましょう。
訪問看護ステーションの利用者数は年々増加
高齢化の影響により、訪問看護ステーションの利用者数は年々増加しています。
以下のグラフを見てみましょう。
出典:訪問看護|厚生労働省
要支援・要介護ともに、訪問看護の利用者数が年々増加していることがわかります。
この傾向は今後も続くと考えられており、団塊世代が後期高齢者となる2025年、団塊ジュニア世代の高齢化が本格化する2030年以降は、さらなる利用者の増加が想定されています。
同時に要支援・要介護者の数も増加し続けると想定されるため、今後も訪問看護ステーションは高齢者の受け皿として重視されるでしょう。
参照元:令和5年版高齢社会白書|内閣府
事業所数の増加が顕著
利用者の増加と比例するように、訪問看護ステーションの事業所数も増加しています。
出典:訪問看護|厚生労働省
上記のグラフでわかるように、訪問看護ステーションの事業所数は2002(平成14)年以降、著しく増加しました。
訪問看護ステーションの増加は、高齢化によるニーズの高まりだけでなく、病床数の減少も関係しています。
昨今は医療の効率化のために、国が病院の病床数の削減を推進しており、その受け皿として、自宅で医療ケアが受けられる訪問看護や在宅医療が注目されるようになりました。
なお、訪問看護ステーションは、医療・介護サービスの不足を防ぐための施設でもあります。
地域包括ケアシステムを維持するうえでも、一定数以上の訪問看護ステーションは欠かせません。
ただし、廃業率は決して低くない
利用者や事業所数が増加している一方で、廃業に追い込まれる訪問看護ステーションも一定数存在します。
2021年の時点で、全国の訪問看護ステーションの廃業数は490件でした。
これは稼働している事業所の総数の、約3%に当たる数字です。
一見すると小さい数字のように感じますが、わずか1年間で数百件もの事業者が廃業していると考えれば、決して低い割合とは言えないでしょう。
実際、同年度の他業種の廃業率と比較してみましょう。
- 建設業…3.1%
- 製造業…3.0%
- 金融・保険業…3.6%
- サービス業…3.1%
- 宿泊業・飲食サービス業…5.9%
上記のとおり、他業種と比較しても、訪問看護ステーションの廃業率は低くないことがわかります。
そのため、経営者は常に廃業するリスクに注意したうえで、経営に取り組まなければなりません。
訪問看護経営が難しいと言われる5つの理由
訪問看護ステーションの経営は、さまざまな理由から難しいとされています。
本章では、訪問看護ステーションの経営を難しくさせている5つの要因について解説します。
人手不足により人員配置基準を満たせない
訪問看護ステーションの経営において、人手不足は深刻な課題のひとつです。
そもそも、訪問看護ステーションには、人員基準が設けられています。
これは、健康保険法で規定されているため、経営者は必ず順守しなければなりません。
なお、訪問看護ステーションに課せられている人員基準は、以下のとおりです。
看護職員 (保健師・助産師・看護師又は准看護師) | 2.5人以上 ※内、1人は常勤であること |
理学療法士・作業療法士又は言語聴覚士 | 実情に応じた適当数 |
管理者 | 1人 ※保健師、助産師又は看護師であること。 |
もし、人員基準を満たせなければ、指導や改善勧告の対象になり、最悪の場合は介護事業所の指定を取り消される恐れがあります。
しかし、訪問看護を始めとする介護福祉施設では、年々人手不足が深刻化しています。
これは、労働人口が減少する一方で、介護事業所数が増加しているためです。
今後もこの傾向が続くと予測されており、人員を確保する際は、多角的な方法で人材を募集しなければなりません。
競合との競争の激化
訪問看護ステーションの増加は、事業所間の競争の激化を意味します。
同地域内に多くの訪問看護ステーションが乱立すると、利用者・職員の取り合いが発生します。
利用者や職員を安定的に獲得するには、自施設ならではの強みを打ち出さなければなりません。
資金繰りの悪化
資金繰りの悪化も、訪問看護ステーションの経営が失敗する大きな要因です。
そもそも、訪問看護は利益率があまり高くない業種です。
実際、2022年度に厚生労働省が算出した訪問看護の収支差率は5.8%と、前年度より1.3%減少する結果になりました。
訪問看護ステーションの経営ではさまざまな経費が発生しますが、なかでもスタッフにかかる人件費は、訪問看護ステーションのコストの大半を占めるものです。
人件費はサービスの質を左右するため、うかつな削減ができません。
他方で、利用者の数を一定以上確保できていないと、人件費だけで収益が圧迫される恐れがあります。
昨今は、最低賃金の向上や物価高によってコストが高騰しています。
したがって、訪問看護ステーションは一層適切な資金繰りが求められるでしょう。
多職種との連携
訪問看護では利用者にケアを行う過程で、多職種との連携が求められます。
訪問介護施設・居宅介護支援事業所・医療機関など、複数の施設と話し合いながら、ケアプランを作成する場面もあります。
多職種との連携は、現場で働くスタッフにとって大変な取り組みです。
職種が異なれば、当然ケアに対する方針や価値観も違うため、コミュニケーションの過程で齟齬が生まれたり、衝突したりする可能性もあります。
慣れていないスタッフであれば、多職種との連携が負担になる場合もあるでしょう。
もし連携がうまくいかない状況が続けば、スタッフが疲弊するだけでなく、サービスの品質が低下しかねません。
そのため、多職種とスムーズに連携できる体制作りを実践する必要があります。
スタッフへの負担が大きい
訪問看護は、基本的にスタッフが1人で利用宅を訪問し、サービスを提供します。
そのため、1日の訪問回数が多いと、スタッフへの負担が大きくなります。
加えて、利用者の自宅は看護や介護に適した環境でない場合も多く、施設に比べて作業の難易度が高い傾向があります。
精神的・肉体的な負担が大きいため、スタッフのケアも必要です。
業務の負担が大きい状況を放置すると、スタッフが消耗し、離職するリスクが高まります。
人員基準を順守するためにも、スタッフが働きやすい環境を構築しなければなりません。
【失敗しないために!】訪問看護ステーション経営を成功させる4つのポイント
訪問看護ステーションの経営を成功させるには、さまざまな課題をクリアする必要があります。
本章では、訪問看護ステーションの経営を成功させるうえで、意識すべきポイントについて解説します。
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適切な資金繰りとコストの抑制
訪問看護ステーションの経営を安定させるには、やはり資金が欠かせません。
施設の立ち上げ時には、2~3年先を見据えた事業計画を作成し、経営を継続できるだけの資金を用意しましょう。
自己資金だけで賄えない分は、融資・補助金・助成金など、さまざまな調達方法を検討します。
なお、どれだけ資金を確保しても、コスト管理ができなければ利益率が悪化します。
昨今は物価高の影響もあり、備品費や水光熱費などが高騰しやすい状況です。
無駄なコストは極力排し、適切な支出を維持しましょう。
利用者を獲得するための営業の強化
利用者を獲得するには、ただ募集をかけるだけでなく、外部への営業やマーケティングが必要です。
利用者は、広告やWebで募集するだけでなく、地域包括支援センター・居宅介護支援事業所・医療機関など、地域の施設から紹介を受ける方法でも集められます。
地域の施設と積極的にコミュニケーションを取り、自施設が受け皿になることを積極的にアピールしましょう。
自施設の強みや提供できるサービスが評価されれば、地域の施設から利用者の紹介を受けやすくなります。
もし自施設に営業やマーケティングの経験者がいない場合は、外部から人材を採用したり、スタッフを教育したりしましょう。
多職種とのスムーズな連携を実現する
多職種とのスムーズな連携は、利用者に最適なサービスを提供するためにも、必ず実現しなければなりません。
多職種と連携する際は、まず共通の目標を定めましょう。
目標が定まっていれば、利用者や、その家族が望む生活を実現するために、それぞれの職種が何に取り組むかが見据えられます。
また、実際に業務に取り組む際は、当事者間で綿密なコミュニケーションを取りましょう。
意思疎通が取れていないと、必要な情報の共有が遅れ、トラブルにつながりかねません。
多職種とのスムーズな連携ができれば、互いの専門性を生かした理想的なサービスを提供できます。
サービスの品質が高まれば、利用者をより多く確保しやすくなります。
効率化による業務負担の軽減
訪問看護ステーションにおいて、業務の効率化は必須です。
なかでも、ICTを活用した業務の効率化が注目されています。
例えば、電子カルテやチャットツールなどを導入すれば、情報共有や記録作業の手間がなくなり、事務作業の負担を軽減できます。
事務作業の負担が減れば、スタッフが訪問看護に集中しやすくなるでしょう。
さらに、データ管理を電子化すれば、情報共有を円滑化できます。
情報を迅速にやり取りできれば、トラブルへの対応力やサービス品質を向上させられます。
感覚値ですが、訪問看護は「100件開業し、100件廃業している」ような業態です。間違いなくニーズはあるのですが、その経営は決して簡単なものではありません。廃業してしまう訪問看護事業所に多い特徴として、「経営ノウハウのない看護師が仲間と立ち上げたものの途中で資金がショートしてしまう」ケースが挙げられます。看護のスキルと経営のスキルは当然別物です。訪問看護に限ったことではないですが、介護事業ではこのように事業所としてとても優秀なのに、経営スキルが欠けているためうまく経営できない事業者が数多くあります。看護師の採用計画も当然重要ですが、そこも含めて事前のマーケットリサーチが非常に重要です。専門家のコンサルティングを利用する等、事前の事業計画を入念におこなったうえで開業することをお勧めいたします。
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訪問看護の業務効率化には「訪問看護ステーション管理システムSP」を使おう
業務の効率化を目指するなら、弊社「ワイズマン」の訪問看護ステーション管理システムSPをご検討ください。
訪問看護ステーション管理システムSPは、その名のとおり、訪問看護ステーションでの業務支援を目的としたソフトです。
スタッフの負担になりがちな、医療保険療養費明細・訪問看護計画・各種集計帳票などの作成作業を簡略化するため、業務負担の削減・業務の効率化に役立ちます。
また、ワイズマンでは多職種との連携を強化するソフト「MeLL+(メルタス)」も提供しております。
法人内施設のデータを一元管理し、施設間の連携度を高められます。
訪問看護の経営は難しいからこそポイントを押さえよう
訪問看護ステーションはニーズの高まりもあって、昨今は業界全体が活気づいています。
しかし、廃業率が低くない点や、事業所数の増加により、競合との競争が激しくなった点には注意しなければなりません。
また、資金繰り・営業やマーケティング・多職種との連携・業務負担の増加など、経営が失敗する要因が多い点にも注意が必要です。
訪問看護ステーションを経営する際は、さまざまな課題を想定し、綿密に準備をする必要があります。
業務の効率化によって働きやすい環境を作ることも、継続的な経営を実現するうえで有効な施策になるでしょう。
もし、訪問看護ステーションの経営を改善するなら、ぜひワイズマンにご相談ください。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。