看護リーダー業務とは?役割や実習目標を徹底解説

2025.04.18

「看護リーダーとして、どのような業務を担当する?」「リーダーに求められる役割やスキルは何?」など、看護師の方々には、そんな疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。

看護リーダーとは、看護師チームを統括する重要な役割を担う存在です。さまざまな業務を担当し、患者ケアの質やチームの働きやすさを左右します。

この記事では、看護リーダー業務の役割を7つに分けて詳しく解説します。目標設定のコツから必要なスキル、業務を円滑に進めるための秘訣まで、看護リーダー業務について網羅的に解説するので、ぜひ最後までご覧ください。

看護リーダー業務とは

看護リーダー業務とは、看護チームをまとめ、質の高い看護を提供するための重要な役割です。リーダー看護師は、患者さんのケアだけでなく、チーム全体の管理、教育、問題解決など、さまざまな業務を担当します。

具体的には、病棟の状況把握、スタッフへの指示・指導、医師や他部門との連携、患者さんやご家族への対応などを行います。また、チームメンバーが働きやすい環境を整え、モチベーションを維持することも重要な看護リーダー業務の一環です。

リーダー業務は、単に指示を出すだけでなく、メンバー一人一人の能力を最大限に引き出し、チームとして最高のパフォーマンスを発揮できるようにサポートします。

看護現場におけるリーダーシップとは、安全で質の高い医療サービスを提供することを目的に、チームを統率しメンバーを育成する能力です。

リーダー業務を円滑に進めるためには、状況を的確に把握し、適切な判断を下す能力、関係者と円滑なコミュニケーションを図る能力、メンバーを指導・育成する能力などが求められます。

これらのスキルを磨き、看護リーダー業務を効果的に行えば、患者さんへのより良い看護の提供、チームの成長、そして自身のキャリアアップにつなげられます。

新米リーダーの場合、最初は戸惑う可能性がありますが、経験を積んで徐々にリーダーシップを発揮できるよう成長しましょう。積極的に学び、周囲のサポートを得ながら、看護リーダー業務に自信を持って取り組むことが大切です。

看護リーダー業務の7つの役割

看護リーダーは、日々の看護業務が円滑に進むよう、さまざまな役割を担っています。看護リーダーの主な役割は、次の7つです。

  1. 目標設定と研修・勉強会の実施
  2. 医師や部門との橋渡し
  3. ご家族への対応
  4. 進捗管理や早期対応
  5. 教育・指導
  6. 問題解決
  7. モチベーション管理・維持

看護リーダー業務の役割を把握して、適切に業務を遂行できるよう準備しましょう。

役割1:目標設定と研修・勉強会の実施

看護リーダーは、チーム全体の目標を設定し、達成に向けて具体的な計画を立て実行する役割です。

患者ケアの質の向上、チームワークの強化、業務効率の改善など、さまざまな目標を設定します。目標達成のために、研修や勉強会などを企画・実施することも重要な役割です。

実習を実施する際は、チームメンバーに定めた目標を共有し、研修や勉強会に取り組むモチベーションを維持しておきましょう。

役割2:医師や部門との橋渡し

看護リーダーは、医師や薬剤師、リハビリテーションスタッフなど、多職種との連携を円滑に進めるための橋渡し役を担います。それぞれの専門性を尊重しながら、患者ケアに関する情報を共有し、協力体制を築くことが重要です。

部署の代表として、病棟内外の他職種との連絡やスケジュール管理を行いましょう。

役割3:ご家族への対応

患者さんのご家族に対して、病状の説明や治療方針の共有、不安や疑問への対応を行います。ご家族の精神的なサポートも重要な役割であり、患者さんとご家族が安心して治療を受けられるようサポートします。

ご家族が安心して患者さんを任せられるように、密接なコミュニケーションが取れる環境やシステムを構築することが大切です。

役割4:進捗管理や早期対応

チーム全体の業務進捗を把握し、遅延や問題が発生している場合には、早期に対応策を講じます。必要に応じて、人員配置の見直しや業務分担の調整を行い、チーム全体の効率的な業務遂行をサポートします。

進捗管理や早期対応を効率化するためには、看護システムを導入して、患者さんの容態や治療の進捗をリアルタイムで管理する方法が効果的です。

役割5:教育・指導

新人看護師や経験の浅い看護師に対して、必要な知識や技術を教育・指導するのも、看護リーダーの役割です。OJT(On-the-Job Training)やOff-JT(Off-the-Job-Training)などを通じて、実践的なスキルを育成し、チーム全体のレベルアップを図ります。

また、eラーニングシステムの導入など自己学習を支援する仕組みを構築すれば、チームメンバーが自発的にスキルアップに励める環境を整えられます。

役割6:問題解決

日々の業務で発生するさまざまな問題に対して、原因を分析し、解決策を検討・実施します。チームメンバーからの相談に乗り、適切なアドバイスやサポートを提供することも重要な役割です。

役割7:モチベーション管理・維持

チームメンバーのモチベーションを維持・向上させるために、働きやすい環境づくりに努めます。メンバーの意見を聞き、適切な評価やフィードバックを行い、チーム全体の士気を高めます。

看護リーダー業務における目標設定のコツ

看護リーダーとしてチームを率いる上で、目標設定は非常に重要な要素です。明確な目標を設定することで、チーム全体のモチベーションを高め、効率的な業務遂行を促し、最終的には患者さんへのより質の高いケア提供につながります。

看護リーダー業務における目標設定のコツは、次のとおりです。

  • SMARTの法則を活用する
  • 目標例を参考にする

効果的な目標設定のコツを押さえて、チームの業務効率を向上させる目標設定を行いましょう。

SMARTの法則を活用する

目標設定でよく用いられるフレームワークに「SMARTの法則」があります。SMARTとは、以下の5つの要素の頭文字を取ったものです。

要素内容
Specific(具体性)具体性を持った目標を掲げる必要があります。「患者満足度を上げる」ではなく、「患者満足度調査のスコアを10%向上させる」のように、誰が見ても理解できる内容にしましょう。
Measurable(測定可能性)目標の達成度合いを客観的に測定できる必要があります。数値化できる目標を設定したり、達成状況を評価するための指標を設けたりすることが重要です。
Achievable(達成可能性)現実的に達成可能な目標を設定しましょう。高すぎる目標はモチベーションの低下につながります。チームの能力や資源を考慮し、努力すれば達成できるレベルに設定することが大切です。
Relevant(関連性)目標は、チームや組織全体の目標と関連している必要があります。チームの目標が病院全体の目標達成に貢献するものであれば、メンバーのモチベーションも高まります。
Time-bound(期限)目標達成の期限を明確に設定しましょう。期限があることで、計画的に行動し、目標達成に向けて集中できます。

SMARTの法則を活用することで、曖昧な目標を具体的な行動計画に落とし込み、チーム全体で目標達成に向けて効率的に取り組めます。

目標例を参考にする

目標設定に慣れていない場合は、具体的な目標例を参考にしてみるのも良いでしょう。他社の目標例などを参考にして、事業所の課題やニーズに適した目標を設定すれば、業務効率化や課題解決につながります。

以下に、看護リーダー業務における目標例を3つご紹介します。

目標例1:チーム全体の患者満足度向上

目標:3カ月以内に、患者満足度調査の総合評価スコアを5%向上させる。

具体的な施策:

  • 患者さんへの丁寧な言葉遣いと笑顔での対応を徹底する。
  • 患者さんの訴えを注意深く聞き、共感する姿勢を示す。
  • 患者さんの質問や不安に迅速かつ適切に対応する。

目標例2:新人看護師の育成

目標:6カ月以内に、新人看護師全員が基本的な看護技術(静脈注射、点滴管理、創傷処置など)を自立して実施できるよう支援する。

具体的な施策:

  • OJT(On-the-Job Training)を充実させ、先輩看護師による指導体制を強化する。
  • 定期的な技術チェックを実施し、習熟度を評価する。
  • 新人看護師向けの研修プログラムを開発・実施する。

目標例3:業務効率化による残業時間削減

目標:3カ月以内に、チーム全体の月間平均残業時間を10%削減する。

具体的な施策:

  • 業務フローを見直し、無駄な作業を削減する。
  • 電子カルテの活用を促進し、情報共有をスムーズにする。
  • チーム内で協力し、業務を分担する体制を構築する。

上記3つの目標例はあくまで参考として、チームの状況や課題に合わせて、より具体的な目標を設定してください。また、目標設定後も定期的に進捗状況を確認し、必要に応じて目標を修正することも大切です。

看護リーダー業務に必要なスキル

看護リーダーは、日々の業務を円滑に進め、質の高い看護を提供するために、さまざまなスキルが求められます。特に重要なスキルは、次の5つです。

  • リーダーシップ能力
  • 素早い判断能力
  • コミュニケーション能力
  • マネジメント能力
  • 看護の知識・スキル

それぞれのスキルを確認して、看護リーダー業務に必要な能力を身につけましょう。

リーダーシップ能力

看護チームをまとめ、目標達成に向けて牽引するリーダーシップ能力は、看護リーダーにとって必要不可欠です。メンバーの個性や能力を理解し、それぞれの強みを活かせるように導く必要があります。

また、困難な状況でも冷静に判断し、チームを鼓舞する力も必要です。リーダーシップ能力を発揮すれば、チーム全体のモチベーションを高め、より質の高い看護を提供できます。

素早い判断能力

看護現場では、患者さんの急変や予期せぬトラブルが発生するため、素早い判断能力が必要です。看護リーダーは、患者さんの状態を正確に把握し、過去の経験や知識、医療チームとの連携を通じて、もっとも適切な対応を判断する必要があります。

素早い判断能力は、患者さんの命を守るだけでなく、チーム全体の安心感にもつながります。

コミュニケーション能力

看護リーダーは、医師、看護師、医療スタッフ、患者さんやご家族との間で、円滑なコミュニケーションを図る必要があります。正確な情報を伝え、相手の意見を丁寧に聞き取ることで、誤解を防ぎ、スムーズな連携を促進できるのです。

コミュニケーション能力は、チーム医療を成功に導く重要なスキルであり、患者さんとの信頼関係を築くうえでも非常に重要です。

日々の業務においては、必要な情報を分析し、相手に理解してもらえるよう伝達することで、チーム内でスムーズな連携を実現できます。

マネジメント能力

看護チーム全体の業務を効率的に管理し、質の高い看護を提供するためには、マネジメント能力が必要不可欠です。人員配置、業務分担、物品管理など、さまざまな業務を適切に遂行する必要があります。

また、チームメンバーの能力を最大限に引き出し、育成することも重要な役割です。効果的なマネジメントは、チームの生産性を高め、残業時間の削減や業務効率化にもつながります。

看護の知識・スキル

看護リーダーは、高度な看護知識とスキルを持ち合わせている必要があります。最新の医療知識や技術を常に学び続け、チームメンバーに指導・教育することで、質の高いサービスを提供できるのです。

また、看護リーダー自身が模範となり、チーム全体のスキルアップを促進し、患者さんにより安全で質の高い看護を提供しましょう。

看護リーダー業務を円滑に進めるコツ

看護リーダーとして、チームをまとめ、質の高い看護を提供するためには、日々の業務を円滑に進めることが大切です。看護リーダー業務を円滑に進めるため、下記のコツを実践しましょう。

  • 積極的にコミュニケーションを取る
  • 業務の優先順位を明確化する
  • チームメンバーの強みや弱みを把握する
  • タスクを平等に振り分ける
  • チームの見本となる行動を心がける

具体的な5つのコツを確認して、看護リーダー業務を円滑に進めましょう。

積極的にコミュニケーションを取る

看護リーダーは、チームメンバーとの積極的なコミュニケーションを心がけましょう。日々の業務報告だけでなく、悩みや不安を聞き出す機会を設けることも重要です。

定期的なミーティングや個別面談を実施し、風通しの良い職場環境をつくることで、チーム全体のモチベーション向上につながります。

業務の優先順位を明確化する

多岐にわたる看護業務の中で、何が重要で、何が緊急を要するのかを優先順位を明確化することが大切です。患者さんの状態、治療の進捗、緊急度などを考慮し、優先順位を決定しましょう。

優先順位を明確にすれば、チーム全体が効率的に業務に取り組め、質の高い看護を提供できます。

チームメンバーの強みや弱みを把握する

チームメンバー一人一人のスキルや経験、得意分野、苦手分野を把握すれば、業務を適切に分担できます。

例えば、採血が得意な看護師には採血業務を多く割り当てる、新人看護師には先輩看護師が指導役としてサポートするなど、個々の能力を最大限に活かせるように配慮しましょう。

タスクを平等に振り分ける

業務が特定のメンバーに偏らないように、タスクを平等に振り分けることが大切です。公平な業務分担は、チーム全体の不満を軽減し、協力体制を築くために必要です。

ただし、個々のスキルや経験を考慮し、無理のない範囲で業務を割り当てるように注意してください。

チームの見本となる行動を心がける

看護リーダーは、常にチームの見本となる行動を心がけましょう。患者さんへの丁寧な対応、迅速な判断、責任感のある行動など、日々の業務を通して模範を示すことで、チーム全体の意識向上につながります。

また、困難な状況に直面した際には、率先して解決に当たる姿勢を見せることで、チームからの信頼を得られます。

斉藤 圭一氏
斉藤 圭一氏

看護リーダーは、チームを統括し質の高い看護を提供する中心的な存在です。本記事は、看護リーダーの役割や業務内容を具体的に解説しており、現場での実践に役立つ内容となっています。主な業務は、目標設定と研修実施、多職種との連携、家族対応、進捗管理、教育、問題解決、モチベーション維持の7つ。特に目標設定にはSMARTの法則を活用し、具体性・測定可能性・達成可能性・関連性・期限を明確にすることが重要です。また、業務効率化や人材育成を図るために、実践的な目標例や具体策も紹介されています。必要なスキルとしては、リーダーシップ、判断力、コミュニケーション力、マネジメント能力、専門知識が求められます。これからリーダーを目指す方にとっても、すでにリーダーとして活躍している方にとっても、日々の実践を見直すきっかけとなる内容であると思います。

まとめ:看護リーダー業務の役割とコツを押さえるには

看護リーダーは、日々の看護業務を円滑に進めるだけでなく、チーム全体の成長を促す重要な役割を担っています。

看護リーダーとして成功するためには、リーダーシップ能力、判断能力、コミュニケーション能力、マネジメント能力、高度な看護知識・スキルが必要です。それぞれのスキルを磨きながら、積極的にコミュニケーションを取り、業務の優先順位を明確化し、チームメンバーの強みや弱みを把握し、タスクを平等に振り分けるなど、具体的な行動を心がけましょう。

この記事が、看護リーダーとして活躍される方や、これから看護リーダーを目指す方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。日々の業務の中で、この記事でご紹介した知識やスキルを実践し、より良い看護ケアの提供とチームの成長に貢献していきましょう。

監修:斉藤 圭一

主任介護支援専門員、MBA(経営学修士)

神奈川県藤沢市出身。1988年に早稲田大学政治経済学部政治学科を卒業後、第一生命保険相互会社(現・第一生命保険株式会社)に入社。その後、1999年に在宅介護業界大手の株式会社やさしい手へ転職。2007年には立教大学大学院(MBA)を卒業。 以降、高齢者や障がい者向けのさまざまなサービスの立ち上げや運営に携わる。具体的には、訪問介護・居宅介護支援・通所介護・訪問入浴などの在宅サービスや、有料老人ホーム・サービス付き高齢者住宅といった居住系サービス、さらには障がい者向けの生活介護・居宅介護・入所施設の運営を手がける。 また、本社事業部長、有料老人ホーム支配人、介護事業本部長、障害サービス事業部長、経営企画部長など、経営やマネジメントの要職を歴任。現在は、株式会社スターフィッシュを起業し、介護・福祉分野の専門家として活動する傍ら、雑誌や書籍の執筆、講演会なども多数行っている。

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