ケアマネ・居宅介護支援システムとは?導入メリット・手順を解説
2023.10.31
ケアマネージャー(ケアマネ)は、ケアプランの作成や給付管理など、多くの業務を抱えています。
なかには、勤務時間内に仕事が終わらず、残業が常態化しているケースも見られます。
こうした課題を解決するべく、システムの導入を検討されている方も多いのではないでしょうか。
これから居宅介護支援システムを導入しようと検討されているのであれば、まずは基本的な機能や事業所での運用イメージを把握してみましょう。
本記事では、居宅介護支援システムの導入前の基礎知識や運用における注意点を解説します。
なお、株式会社ワイズマンでは、介護現場でのリスク管理やスタッフの教育について課題を感じている方に向けて「介護現場のリスク管理とスタッフ教育の重要性についての資料」を無料で配布中です。
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目次
ケアマネ・居宅介護支援システムとは?
居宅介護支援システムとは、ケアマネの業務である「要介護者・要支援者のケアプラン作成」や「介護施設や介護者への情報提供」などを支援するシステムです。
ケアマネ・居宅介護支援システムの基本機能
居宅介護システムの基本機能は以下のとおり。
- ケアプラン作成機能
- 実績管理機能
- 情報共有機能
- 請求管理機能
ここでは居宅介護システムの基本機能について、利用時のメリットを交えながら解説します。
ケアプラン作成機能
ケアマネは、介護サービスの提供内容や頻度などをまとめたケアプランを作成します。
従来は、利用者や家族との面談内容をもとに、ケアプランの原案を作成していました。
新規のプランともなると、入力・設定項目が多く、ケアプランの作成に多くの時間がかかります。
その点、居宅介護支援システムは、ケアプラン作成用のフォーマットを利用できるため、作業時間の短縮が可能です。
フォーマットに従ってパソコンを操作するだけで、ケアプランの大枠を作成できます。
また、細かな支援内容は、これまでの支援事例や入力した利用者情報をシステムが分析し、適切な内容を提案してくれます。
居宅介護支援システムを活用すれば、利用者にあったケアプランを効率良く作成できるでしょう。
実績管理機能
従来、実績の記録は介護施設から提供される介護実績をケアマネが確認し、再度記録する流れになっていました。
居宅介護支援システムでは、介護実績とケアプランのデータが紐づき、そのまま介護記録に反映されます。
つまり、ケアマネ側であらためて記録する業務がなくなるのです。
情報共有機能
介護現場では、状況の変化に合わせた迅速な対応が求められます。
従来の情報共有体制では、部門や施設間のやり取りを電話やメールに頼っており、連携速度の遅さが問題でした。
居宅介護支援システムの情報共有機能を使用することで、一度の連絡で関係者全体へ知らせることが可能です。
従来よりも迅速に情報を共有できるため、容態の変化などにも柔軟に対応できるようになるでしょう。
請求管理機能
居宅介護支援事業所では、介護報酬制度に沿った国保連への請求が必要です。
請求業務に特化した請求ソフトをすでに導入している事業所も多いですが、この場合、ケアプランや介護実績を請求ソフトに再度入力しなければなりません。
請求業務もカバーしている居宅介護支援システムを導入していれば、ケアプランデータや介護実績が請求書に自動反映されます。
適切な請求が可能になることに加え、介護保険請求額の管理も可能です。
居宅介護支援システムの必要性
居宅介護支援システムの導入が求められる理由として、ケアマネの基本報酬の逓減制の問題があげられます。
一般的に、ケアマネ1人あたりの担当件数の上限は、40名未満(39名)です。
40名を超えた場合には、基本報酬が低くなるように設定されています。
これをケアマネの逓減制と呼びます。
2021年度の介護報酬改定では、ICTを導入している、又は事務職員を配置している事業所について、減額される上限件数が「40名以上」から「45名以上」に変更されました。
一事業所でより多くの利用者を受け入れるには、
- 事務職員を配置する
- ケアマネ業務をシステム化する
上記の2つの方法しかありません。
介護業界においては慢性的な人材不足が続いているため、「事務職員を配置する」のは、これから先も実現は厳しいと言えます。
そのため、今後受け入れ人数を増やしていくために、居宅介護支援システムの導入の必要性はますます高まっていきます。
参照:令和3年度介護報酬改定における改定事項について|厚生労働省
ケアマネ・居宅介護支援システムを導入する手順
居宅介護支援システムを導入する場合には、以下の流れを踏まえるとスムーズに実行できます。
- 業務の見える化
- 課題の洗い出しとシステムの導入目標を設定
- 複数の製品を比較し導入するシステムを決定
- 導入後の定着作業
- システムを運用し効果を検証
導入目的を明確にしなかったり、運用後の見直しをしなかったりすると、システム導入~運用がうまく進みません。
導入効果を得られないばかりか、かえって業務効率が悪化する恐れもあります。
こうしたマイナスの影響を防ぐためにも、それぞれのステップを着実に踏むことが大切です。
業務の見える化
まず行うのは、現行している業務の可視化です。
ケアマネの業務は、内容が多岐にわたったり、担当者ごとにやり方が異なったります。
現在の業務状況を把握しないままでは、どこに問題があるのかを把握しづらいため、目指すべき業務フローも見えてきません。
システムの導入に際しては、まずケアマネがどのような業務をどのような手順で行っているかを明らかにしましょう。
より視覚的に捉えやすくするには、マインドマップなどのグラフを利用するのがおすすめです。
課題の洗い出しとシステムの導入目標を設定
業務を可視化したら、改善すべき業務課題を明確にします。
一般的には、以下の課題が多く見られます。
- ケアプランの作成に多くの時間がかかっている
- 利用者情報をうまく管理できていない
- 情報共有に時間がかかりタイムラグが生じている
現場を見渡すと、このほかにも多くの課題がでてくるでしょう。
しかし、たとえシステムを活用したとしても、それらすべてを解決するのは困難です。
そのため、緊急性・重要性を軸に課題を選別し、優先的に解決する課題を絞り込みます。
この優先度の高い課題の解決こそが、システム導入の目的であり、解決策がシステムに求める要件です。
このように、現場の課題を軸にシステムの要件を設定することで、より高い導入効果が期待できます。
また、課題の洗い出しとともに、システムの導入メリットをスタッフに伝えることも大切です。
現場のスタッフの中には、課題を認識していても、現状維持を求める方も一定数存在するため。
システムの導入によるメリットをスタッフに深く理解してもらい、職員全体が一丸となって、システムの導入・運用に取り組むことが大切です。
複数の製品を比較し導入するシステムを決定
導入前の準備ができたら、導入するシステムを選定します。
システムの選定では、以下のポイントで比較すると良いでしょう。
- 導入する事業所の規模に適しているか
- 操作性は優れているか
- 導入・運用費用は適切か
なお、製品の情報を集める際は、ベンダー企業の担当者に確認するのがおすすめです。
自施設の課題や改善点を伝えると、対応機能の有無などを詳しく教えてもらえます。
また、ある程度候補を絞り込んだら、システムのトライアルを利用し、使用感や現場との適用度を確認しましょう。
導入後の定着作業
システムの導入実績が少なく、定着~運用に不安がある場合は、ベンダー企業の導入サポートを利用すると安心です。
システムの操作方法を指導してくれるだけでなく、運用方法やマニュアル整備に関する支援もしてもらえます。
なお、導入後の定着作業では、それまで気づけなかった新たな問題が生じやすい傾向にあります。
例えば、情報の伝達方法を変更したところ、これまでのやりとりを連携するのに多くの手間がかかったなどです。
定着作業ではPDCAを高速で回し、いち早く通常の運用ができよう努めましょう。
システムを運用し効果を検証
実際にシステムを運用し始めたら、数ヶ月から半年、又は1年単位で、システム導入の効果を検証を実施します。
システム導入の効果を検証するにあたっては、以下の流れで確認してみましょう。
- 当初の導入目標をどの程度達成できているか確認する
- 達成率が低い場合には、原因を特定する
- 業務プロセスやシステムの運用方法を見直し、改善案を考える
- システムの運用方法を最適化し、目標の達成度を高める
システムの規模にもよりますが、導入〜目標の達成には中長期的な時間がかかります。
ただ、その間も通常の業務を遂行しなければならないため、入念に準備をするなどして導入期間の短縮を図りましょう。
ケアマネ・居宅介護支援システムを導入するメリット
居宅介護支援システムを導入するメリットについて、漠然と「業務の効率化」と考えているかもしれません。
以下のようなメリットがあげられます。
- 電子保存によるコスト削減
- 転記が不要になることで作業負担とミスの発生を軽減
電子保存によるコスト削減
居宅介護支援事業所では、介護サービス事業所へ、作成したケアプラン(サービス提供票や居宅サービス計画書)を送らなければなりませんでした。
これまで、多くの事業所ではファックスや郵送でのやりとりがメインとなっており、印刷代や輸送費もかかっていました。
国民健康保険中央会が発表したデータによると、ケアプランデータ連携システムの活用によって以下のような項目の費用削減が見込まれます。
- 人件費
- 印刷費
- 輸送費
- 交通費
- 通信費(FAX)
以上の費用をすべて合算すると、年間81万6千円ものコストカットが見込まれるとのこと。
このほか、ファイルや棚などの備品や保管場所を削減できることを考えると、さらに多くのコストカットが期待できます。
参照:国民健康保険中央会「ケアプランデータ連携システムについて」
転記が不要になることで作業負担とミスの発生を軽減
利用者の情報や状態などを一度入力すれば、同じ情報がすべての書類に反映されるため、転記ミスを防ぐことができます。
また、転記している時間や負担の軽減にもつながります。
特に、サービス実績の記録などは請求業務にも大きく関わっており、転記ミスが後になって大きなミスにつながりかねません。
転記ミスや転記漏れといったケアレスミスを防げることは、システム導入の大きなメリットです。
ケアマネ・居宅介護支援システムの選び方
自施設にあったシステムを選ぶには、以下のポイントで製品を比較しましょう。
- 導入する事業所の規模に適したシステムを選ぶ
- 運用時の使いやすさを確認して選ぶ
- 費用から導入システムを選ぶ
それぞれのポイントをよく理解し、システム選びの際に役立ててください。
なお、介護・福祉現場でのリスク管理やスタッフ教育を課題としている方に向けて、「介護現場のリスク管理とスタッフ教育の重要性についての資料」を無料で配布中です。是非ご活用ください。
導入する事業所の規模に適したシステムを選ぶ
居宅介護支援システムでは、システムごとに適した事業所の規模があります。
同一法人内で介護施設や医療機関も運営していて、他施設とも連携をしたいのであれば、大規模事業所向けのものがいいでしょう。
他施設でのシステムとの連携が可能になっていれば、転記の手間を削減できるだけでなく、利用者や患者の容態をいつでも介護スタッフや医療スタッフへ共有できます。
医療面と介護面でのサポートを一貫して行えることは、サポートする側にも、利用者側にとっても、より良い環境と言えるでしょう。
一方で、小規模な事業所では、特定の業務に特化したシステムが良いでしょう。
仮に、大規模施設向けのシステムを導入すると、オーバースペックになる恐れがあるためです。
必要な機能を厳選して、システムの費用対効果を高めましょう。
運用時の使いやすさを確認して選ぶ
システム選びでは、システムの使いやすさを確認することも重要です。
多くのベンダー企業では、製品のトライアルやデモを用意しています。
要件にあったシステムを絞り込んだのち、現場のケアマネージャーたちに使用してもらい、操作性の良い悪しを判断してもらいましょう。
この時、単に操作性を試すだけでなく、実際の業務を想定して運用することが大切です。
こうすることで業務との乖離を防止でき、より適合度の高いシステムを選定できます。
費用から導入システムを選ぶ
システム選びでは、導入コスト・運用コストも大切な比較ポイントです。
費用面を考える際には、イニシャルコストとランニングコストを合算して計算することを覚えておいてください。
また、介護報酬制度が数年ごとに変更されることや、ケアプランデータ連携システムの導入のように、新しい施策が始まった時のアップデートの有無についても確認しましょう。
改定時のアップデートが無料の場合と、都度料金がかかる場合があります。
介護報酬制度の改定は毎年決まっておこなわれるわけでもないため、確認を怠っていると、改定時に思わぬ費用が発生してしまうケースもあります。
今後の改定に備えて、選定時から、費用の確認は必要です。
介護保険サービス利用者が増えているにも関わらず、その要となるケアマネが不足しています。ケアマネの有効求人倍率は4倍を超えました(2022年12月時点)。これは1人のケアマネを4事業所で奪い合っているということです。ケアマネ不足の要因は色々あるのですが、その一つに“煩雑な業務内容”が挙げられるでしょう。ケアマネは仕事の性質上他事業所とのやり取りが非常に多いのですが、やり取りのメインは未だにFAXとなっています。特に給付管理において毎月、月末月初に大量のFAXを受け取り、それらを精査し国保連へ伝送するだけでも相当な業務負荷であることは容易に想像できます。ケアマネに逓減制の最上限までプラン件数を持ってもらい売上をキープするためにもシステムを活用した業務整理は必要不可欠でしょう。
なお、株式会社ワイズマンでは「介護現場のリスク管理とスタッフ教育の重要性についての資料」を無料で配布中です。
介護・福祉現場でのリスク管理やスタッフ教育を課題としている方を対象に作成しておりますので、ぜひダウンロードしてご活用ください。
ケアマネ・居宅介護支援システムはワイズマンの「すぐろくケアマネ」がおすすめ
ケアマネ業務の効率化には、ワイズマンの「すぐろくケアマネ」がおすすめです。
ワイズマンでは、電子カルテシステムをはじめとする医療システムと介護システムの両方を手がけているため、利用者のサポートに役立つ情報の共有がよりスムーズにできるようにシステムを提供しています。
「すぐろくケアマネ」には、以下のような特徴があります。
- 利用者ごとのケアプランとその進捗状況を可視化
- タブレットの利用で訪問先でも記録入力が可能
利用者ごとのケアプランとその進捗状況を可視化
利用者ごとに必要な業務内容や進捗状況が一覧となって表示されます。
進捗状況が明確になると、業務の漏れを防止できるでしょう。
業務の進捗状況は、ケアプランに関連した業務が確認できるようになっているため、利用者によってケア内容が異なる、などといったことも防げます。
タブレットの利用で訪問先でも記録入力が可能
「すぐろくケアマネ」では、タブレット端末を利用することで、モニタリング・介護支援経過の入力が可能です。
タブレットを持ち運べば訪問先でも入力作業が可能なため、手書きメモを転記する手間を省けます。
また、タブレット端末では、ケアプランや利用者情報の閲覧も可能です。
必要情報を素早く確認できるうえに、従来のように書類を持ち運ぶ必要がありません。
まとめ
ケアマネージャーの業務負担を大きく削減し、より良いケアマネ業務につながる居宅介護支援システムの概要や導入手順について解説してきました。
基本的に搭載されている機能は、どのシステム会社でも大きな違いはありませんが、タブレット端末の有無や入力補助、他システムとの連携などには各社の特徴が見られます。
まずは、自施設の課題を見直し、現場のケアマネージャーが必要としている機能を見直すところから始めてみましょう。
費用や評判だけで選んでしまうと、大きな失敗につながってしまいます。
システムの導入には時間、労力、費用と大きな負担がかかりますが、今後の介護業界でシステムの導入は不可避とも言える状況です。
居宅介護支援システムの導入に向けて、本記事を参考に活用してください。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。