居宅介護支援事業所の立ち上げに使える助成金|資金調達の方法を紹介
2024.05.07
居宅介護支援事業所を立ち上げるには、多くの開業資金が掛かります。
資金調達の方法として、助成金を検討している方も多いのではないでしょうか。
現在、居宅介護支援事業所が対象の助成金は、大きく3つあります。
本記事では、この3つの制度を詳しく解説します。
また、居宅介護支援事業所の収支状況や、その他の資金調達方法も解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
居宅介護支援事業所立ち上げの条件
居宅介護支援事業所を立ち上げる際には、以下の3つの条件を満たす必要があります。
- 法人格の取得
- 人員配置基準を満たす
- 設備基準を満たす
それぞれの条件を確認して、居宅介護支援事業所の開業準備を進めましょう。
法人格の取得
居宅介護支援事業所を立ち上げるためには、法人格が必須です。
法人の種類には規定がないため、現状や事業の方針に合ったものを選択しましょう。
代表的な法人の種類は、次のとおりです。
- 株式会社
- 合同会社
- NPO法人
- 社会福祉法人
株式会社は、株式を発行して資金調達ができる代表的な形態です。
知名度があることで、社会的信用を得やすい傾向があります。
合同会社は、出資者が会社の経営者として運営する組織です。
少しマイナーですが、設立にかかる費用が安く、10万円〜から設立できます。
NPO法人は、ボランティア活動など社会貢献のために活動する組織です。
非営利団体であるため、収益を構成員に分配することを目的としていません。
社会福祉法人は、社会福祉事業を行うことを目的として社会福祉法に基づいて設立される法人格です。
非営利法人であるため、営利目的で事業を展開できません。
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人員配置基準を満たす
居宅介護支援事業所を立ち上げる必須条件として、人員配置基準を満たす必要があります。
居宅介護支援事業所を運営するための人員配置基準は、次のとおりです。
- 主任介護支援専門員の資格を持つ主任ケアマネージャーが常勤している
- 利用者35名ごとに介護支援専門員の資格を持つケアマネージャーが1名勤務している
利用者が増えるごとにケアマネージャーの人数を増やす必要があるため、人員募集・シフト作成の手間がかかります。
居宅介護支援事業所を立ち上げる際には、事業所規模に応じた人員配置を行いましょう。
設備基準を満たす
居宅介護支援事業所を立ち上げるためには、設置基準を満たしていることが必須条件です。
利用者に十分なケアサービスを提供するための設備・スペースがなければ、居宅介護支援事業所を運営できません。
例えば、大阪府東大阪市の場合、以下の要件が定められています。
必要な設備 | 要件 |
---|---|
事務室 | 職員、設備備品が収容できる広さを確保する |
相談室 | 2名以上で利用可能 遮へい物の設置等により相談の 内容が漏えいしない |
会議室 | 4名以上で利用可能 遮へい物の設置等により会議の 内容が漏えいしない ※相談室との兼用が可能 |
備品等 | 事業に必要と考えられるもの 例)机・椅子・鍵付き書庫等 |
なお、自治体によって条件が異なるケースがあります。
立ち上げの際は、開業地域のホームページ等を確認し、設備要件を確認しておきましょう。
居宅介護支援事業所の立ち上げ時に使える4つの助成金
居宅介護支援事業所を立ち上げるためには、まとまった資金を用意する必要があります。
自己資金で賄うのは負担が大きいため、必要に応じて助成金を活用しましょう。
居宅介護支援事業所の立ち上げ時に使える助成金は、次の4つです。
- 受給資格者創業支援助成金
- 地域創業的起業補助金
- IT導入補助金
- ICT導入支援事業補助金
助成金は、年度ごとに要件や受給額が変更されるため注意が必要です。
情報を集める際は、運営機関が公開する最新の情報をご確認ください。
受給資格者創業支援助成金
受給資格者創業支援助成金は、自立就業支援助成金とも呼ばれる助成金制度です。
雇用保険受給資格者のうち、失業して新たに事業を始める人を対象としています。
失業者が事業を立ち上げて、労働者を雇用する場合に助成金が給付されます。
支給される対象となる項目は、次の2種類に分類されます。
- 創業に要する経費に対する助成
- 開発地域進出移転経費
詳しい受給条件・対象費用は、次のとおりです。
創業に要する経費に対する助成 | 開発地域進出移転経費 | |
支給対象項目 | ・雇用保険の適用事業主 ・法人を設立し、3カ月以上事業を継続する ・法人設立後、1年以内に従業員を雇用する ・管轄労働局に「法人等設立事前届」を提出する | ・「創業に要する経費に対する助成」を受給できる事業者 ・特定地域進出事業主である ・住所を変更する ・法人設立後、3カ月以内に移転を完了している |
受給条件 | ・経営コンサルタント等の相談費用 ・職務に必要な知識や技能を習得するための講習・相談費用 ・法人の設立に要した費用 ・雇用した労働者の講習・相談費用 ・雇用管理の改善に関する事業に要した費用 ・法人の運用に要した費用 | ・交通費 ・引越等経費 |
支給対象費用 | ・対象費用の3分の1(上限200万円) ・創業受給資格者が特定地域進出事業主の場合は、対象費用の2分の1(上限300万円) | 法人までの距離、引っ越しにかかった費用によって異なる |
支給額 | 1.法人等設立事前届の提出 2.支給申請 | 「創業に要する経費に対する助成」の申請をする際に、新住所を証明できる必要書類を所在地管轄労働局長に提出 |
詳しい申請方法や支給条件は、下記の厚生労働省の資料から確認できるので、チェックしておきましょう。
参照元|厚生労働省「雇用保険の受給資格者が創業した法人等の事業主の方への給付金 」
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者のITツール導入を支援するための補助金制度です。
主に次の4種類の枠で、補助金を支給しています。
項目 | 支給対象 | 補助額 |
通常枠 | DX化を目的としたソフトウェアやシステムの導入費用 | ・A類型(補助率の2分の1以内) 5万円以上150万円未満 ・B類型(補助率2分の1以内) 150万円以上450万円以下 |
・デジタル化基盤導入類型 ・複数社連携IT導入類型 | ・会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトの導入費用 ・複数社が連携してITツールを導入する場合の費用 | ソフトウェアなど ・「補助率4分の3」0~50万円以下 ・「補助率3分の2」50万〜350万円以下 ハードウェア ・「補助率2分の1」30万円以下 |
セキュリティ対策推進枠 | サイバーインシデントを防止するセキュリティ対策強化費用 | サービス利用料の2分の1以下 5万円以上100万円以下 |
商流一括インボイス対応類型 | インボイス制度に対応し、受発注機能を有するITツール導入費用 | ・中小企業・小規模事業者等が申請する場合の補助率は3分の2以内 ・その他の事業者等が申請する場合の補助率は2分の1以内0〜350万円以下 |
ICT導入支援事業補助金
ICT導入支援事業補助金は、ICT機器の導入を支援する補助金制度です。
ICT機器とは主に、アプリやタブレット端末など情報伝達を目的とした機器を指します。
介護保険法に基づくケアサービスを提供するすべての介護事業所が支給対象であり、居宅介護支援事業所を立ち上げる際にも活用可能です。
従来の書面や対面で行っていたコミュニケーションを、インターネットを活用してオンライン上で行うことで、従業員の負担を軽減できます。
なおICT導入支援事業の補助上限額は、事業所で働く従業員数によって異なります。
従業員数ごとの補助上限額は、次のとおりです。
従業員数 | 補助上限額 |
1〜10人 | 100万円 |
11〜20人 | 160万円 |
21〜30人 | 200万円 |
31人〜 | 260万円 |
各自治体によって補助率は異なるため、居宅介護支援事業所を立ち上げる際には、対象の自治体ホームページをチェックしておいてください。
なお、介護・福祉現場でのリスク管理やスタッフ教育を課題としている方に向けて、「介護現場のリスク管理とスタッフ教育の重要性についての資料」を無料で配布中です。是非ご活用ください。
居宅介護支援事業の収支状況とは?
居宅介護支援事業を立ち上げる際には、収支状況を確認しておく必要があります。
居宅介護支援事業の収支状況を確認するために、次のポイントをチェックしておきましょう。
- 居宅介護支援事業所の立ち上げにかかるコスト
- 居宅介護支援事業所の収支差率(利益率)
それぞれのポイントを確認して、居宅介護支援事業を立ち上げるために必要な資金目安を把握してください。
居宅介護支援事業所の立ち上げにかかるコスト
居宅介護支援事業所の立ち上げは、事務スペースと相談スペース・洗面所など必要な設備があればできます。
自宅で開業することも可能なため、居宅介護支援事業所の立ち上げにかかるコストは安く抑えられます。
例えば介護施設であるデイサービスを開業するには、約800万円ほどの初期費用が必要とされていますが、居宅介護支援事業所の立ち上げにかかるコストは100〜200万円ほどです。
立ち上げにかかる費用の内訳は以下のとおりです。
費用項目 | コスト目安 |
法人設立にかかる費用 | 6〜30万円 |
賃貸契約にかかる費用 | 20〜25万円 |
光熱費 | 5,000〜2万円 |
設備購入にかかる費用 | 5〜30万円 |
他にも人件費や車購入費・カーリース代などが発生するため、必要資金を細かく計算しておくと良いでしょう。
居宅介護支援事業所の収支差率(利益率)
居宅介護支援事業所の収支差率は、厚生労働省が公表している「令和4年度 介護事業経営概況調査」によると税引きで3.1%でした。
収支差率とは、売上金額に対する利益の割合を指します。
前年と比べても居宅介護支援事業所の収支差率は、1.3ポイント上昇しており、介護事業のなかでも利益率が高い事業です。
他の介護事業所の収支差率は、前年から比べて減少傾向にあるなか、居宅介護支援事業は上昇傾向にあります。
居宅介護の開業の資金調達方法
居宅介護支援事業所を立ち上げる際には、開業資金を調達する必要があります。
開業資金を調達するには、次の方法が効果的です。
- 金融機関の融資
- 日本政策金融公庫の融資
- ビジネスローン
それぞれの方法を確認して、事業所を立ち上げるための資金調達を行いましょう。
金融機関の融資
資金を調達する際には、金融機関から融資を受ける方法が効果的です。
金利の目安として、銀行であれば年利1〜3%程度、信用金庫は1〜5%程度で融資してもらえる可能性が高いです。
また創業して間もない事業者や実績がない場合は、保証付き融資を勧められる傾向にあります。
保証付き融資を受ける場合は、信用保証料を支払う必要があるため、事前にどの程度の資金を用意しておくべきか確認しておきましょう。
日本政策金融公庫の融資
居宅介護支援事業所を立ち上げる際の資金を調達する方法として、日本政策金融公庫の融資があります。
日本政策金融公庫とは、政府系の金融機関で民間の金融機関が担えない創業融資にも積極的です。
また金利目安も年利で1〜3%と低い傾向にあります。
ビジネスローン
居宅介護支援事業所を立ち上げる開業資金を調達するには、ビジネスローンを活用する方法があります。
ビジネスローンとは、法人経営者や個人事業主のみが申し込める事業用のローン制度です。
ビジネスローンは申し込みから融資までの期間が1週間と短く、すぐに開業資金を調達したい場合に向いています。
しかし金利が年利で15%前後に設定されているケースが多く、金融機関や日本政策金融公庫から融資を受けるより返済負担が大きいです。
「居宅介護支援事業所(以下居宅)は儲からない」というのがこれまでの定説でした。実際に同一法人内で他の介護保険サービス事業所をもたない『単独居宅』の数が非常に少ないことも居宅の採算性に由来しています。また、管理者の要件が主任ケアマネとなったため、新規立ち上げのハードルも非常に高いものとなりました。このように逆風ばかりが吹いているように見える居宅ですが、令和4年度の収支差率は4.9%と前年度と比較して1.2%向上しています(令和5年経営実態調査より)。この要因として「特定事業所加算の算定」と「大規模化」が挙げられます。この2点を意識した具体的な事業計画を練ることで、助成金の活用や融資も受けやすくなるでしょう。特に特定事業所加算の算定は非常に重要なので、必ず見据えておくことをお勧めいたします。
なお、株式会社ワイズマンでは「介護現場のリスク管理とスタッフ教育の重要性についての資料」を無料で配布中です。
介護・福祉現場でのリスク管理やスタッフ教育を課題としている方を対象に作成しておりますので、ぜひダウンロードしてご活用ください。
居宅介護支援事業所の立ち上げ時にはICTの導入を検討しよう
居宅介護支援事業所を立ち上げる際には、ICTの導入を検討しましょう。
開業の際にICTを導入する場合、ICT導入支援事業補助金やIT導入補助金が適用されます。
助成金制度を受けて従業員の負担を軽減できるICTを導入すれば、開業後の人材不足による問題を解消できます。
居宅介護支援事業所を立ち上げる際には、ICTを導入して従業員の負担を軽減しましょう。
まとめ
居宅介護支援事業所を立ち上げる場合は、助成金制度を活用して資金調達を行いましょう。
事業所を立ち上げるためには、100〜200万円程度の開業資金が必要です。
助成金制度を活用すれば、開業にかかる必要経費やICT導入費用を助成してもらえるため、自己負担を軽減して居宅介護支援事業所を立ち上げられます。
まずは事業所を立ち上げるために必要な資金を算出して、資金調達の方法を検討しましょう。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。