居宅介護支援事業所は儲かる?立ち上げ前に知っておくべき収支状況

2024.05.07

居宅介護支援事業所の立ち上げを検討していると、「黒字経営ができるのか?」「開業してどのくらい儲かるのか」と収支状況が気になる方もいるでしょう。
事業を始める際に収支の目処を立てなければ、開業後に赤字経営をしてしまうリスクがあります。

居宅介護支援事業所の立ち上げを検討している方は、収支目安を確認して黒字経営をするための対策を講じましょう。
本記事では、居宅介護支援事業所は儲かるのか、立ち上げ前に知っておくべき収支状況について詳しく解説します。

黒字経営にするためのポイントも併せて解説しますので、最後まで読んで居宅介護支援事業所を立ち上げる参考にしてください。

居宅介護支援事業所とは?

居宅介護支援事業所とは、自宅で介護を受ける利用者に対し、ケアマネージャーが関連施設に連絡したり、適切なケアプランを立てたりするための施設です。

具体的な業務内容として、まずは利用者の自宅を訪ねて心身状態や生活環境をヒアリングし課題分析を行います。
次に課題を解決するためのケアサービスを利用者や家族と話し合い、自宅で自立した生活を送れるよう適切なケアプランを作成します。

居宅介護支援事業所は、利用者が快適で自立した生活を送れるように、ケアサービスを提供して現状の課題を解決する仕事です。

居宅介護支援事業所の現状と今後の動向

居宅介護支援事業所を立ち上げる際には、事業の将来性を確認しておくことが大切です。
将来性を確認するために、まずは業界の現状を把握しておきましょう。

少子高齢社会が加速している日本では、65歳以上の高齢者が増加し続けています。
実際、総務省が公表した「統計からみた我が国の高齢者」によると、2040年には3,928万人・総人口の36.3%を占める予測がされました。

そのため、ケアサービスが必要な高齢者は増え続け、居宅介護支援事業所の需要も増加する見込みです。
ただ、厚生労働省が実施した「令和3年度 介護サービス施設・事業所調査」によると、居宅介護支援事業所数は39,047事業所と、前年比より減少傾向にあります。

この要因はさまざまですが、特に考えられるのは、居宅介護支援事業所の大規模化です。
より多くのサービスを提供できる施設へと統合され、施設数が減少しているのだと考えられます。

新たに居宅介護支援事業所を開業する方は、今後の市場動向を考慮した事業計画を策定していきましょう。

居宅介護支援事業所は儲かる?収支状況の目安

居宅介護支援事業所は儲かるのか気になる方は、次の収支状況を把握しておいてください。

  • 居宅介護支援事業所の運営にかかるコスト
  • 居宅介護支援事業所の支出は給与が8割
  • 居宅介護支援事業所の収支差率

それぞれのポイントを解説しますので、居宅介護支援事業所を立ち上げてからの収支状況の目安を確認しましょう。

居宅介護支援事業所の運営にかかるコスト

居宅介護支援事業所の運営にかかるコストは、約100〜200万円ほどです。
事業所を始める際に、事務スペースや相談スペース・洗面所など、最低限の設備があれば運営できます。

同業のデイサービスを開業するには、約800万円ほどの初期費用が必要なことをふまえると、居宅介護支援事業所は低コストでの運営が可能です。
居宅介護支援事業所を立ち上げる際の具体的な初期費用として、次のようなコストが挙げられます。

費用項目コスト目安
法人設立費30万円
賃貸契約費20〜50万円
光熱費5,000〜2万円
設備費5〜30万円

他にも人件費や車購入費・カーリース代なども発生します。

居宅介護支援事業所の支出は給与が8割

居宅介護支援事業所の支出は給与が約8割です。
厚生労働省が公表した「令和4年度介護事業経営概況調査結果」によると、各介護サービスの収支差率及び給与費割合は、次のとおりでした。

介護サービス種別令和2年度の給与費割合 令和3年度の給与費割合
介護老人福祉施設63.9%64.2%
訪問介護72.4%73.1%
訪問リハビリテーション71.5%71.4%
居宅介護支援事業所79.6%78.1%
地域密着型通所介護62.0%62.7%
看護小規模多機能型居宅介護67.1%67.6%
参照元|厚生労働省「令和4年度介護事業経営概況調査結果」

居宅介護支援事業所の給与費割合は、令和2年・3年ともに約8割と高い数値でした。
他の介護サービスと比較しても、居宅介護支援事業所は支出のうち給与支払いが占める割合が多いです。

居宅介護支援事業所の収支差率

居宅介護支援事業所を含む介護サービスの収支差率は、次のとおりです。

介護サービス種別令和2年度の収支差率令和3年度の収支差率
介護老人福祉施設1.6%1.3%
訪問介護6.9%6.1%
訪問リハビリテーション0.0%0.6%
居宅介護支援事業所2.5% 4.0%
地域密着型通所介護4.0%3.4%
看護小規模多機能型居宅介護5.2%4.6%
参照元|厚生労働省「令和4年度介護事業経営概況調査結果」

居宅介護支援事業所の収支差率は、令和3年度決算で4.0%・税引き後は3.1%でした。
前年と比較すると他の介護サービスの収支差率は減少傾向にありますが、居宅介護支援事業所のみ上昇しています。

居宅介護支援事業所の収支シミュレーション

居宅介護支援事業所の収支目安を把握するために、シミュレーションを行っておきましょう。
シミュレーションとして、厚生労働省が公表した「令和5年介護事業経営実態調査結果の概要」をもとに収支を計算します。

収支項目令和4年度決算(月額)
介護料収入1,350,000円
給与費1,039,000円
補助金収入1,000円
その他の支出206,000円
利用者数104.7人
常勤換算職員1人当たり利用者数 40.2人
常勤換算職員数2.6人
介護支援専門員常勤換算数2.4人
常勤換算1人当たり給与費(常勤職員)389,196円
常勤換算1人当たり給与費(非常勤職員)333,944円
参照元|厚生労働省「令和5年介護事業経営実態調査結果の概要」

単純計算で収入から支出を差し引いた月額収支は約66,000円、常勤換算で常勤職員1人当たりの給与費は389,196円でした。
上記のデータをもとにシミュレーションを実施して、居宅介護支援事業所を立ち上げて得られる収支を計算しておきましょう。

居宅介護支援事業所で使える補助金・助成金

居宅介護支援事業所を立ち上げる際には、補助金や助成金を活用することをおすすめします。
初期費用で約100〜200万円ほどのコストがかかるため、補助金や助成金を活用することで必要資金の一部を賄えます。

居宅介護支援事業所で使える補助金・助成金は、次のとおりです。

  • 受給資格者創業支援助成金
  • 地域創業起業補助金
  • IT導入補助金
  • ICT導入支援事業補助金

それぞれの補助金・助成金の概要を確認して、居宅介護支援事業所の立ち上げに活用しましょう。

関連記事:居宅介護支援事業所の立ち上げに使える助成金|資金調達の方法を紹介

受給資格者創業支援助成金

受給資格者創業支援助成金は、自立就業支援助成金とも呼ばれる助成金制度です。
雇用保険の受給資格者が事業を始める際に、初期費用を支援してもらえます。

支給される対象となる項目は、次の2種類です。

  1. 創業に要する経費に対する助成 
  2. 開発地域進出移転経費

事業を始めるにあたってかかった経費や、法人等を設立するために移転した際の費用が助成されます。
受給資格者創業支援助成金は、失業者が新たに居宅介護支援事業所を立ち上げる際に有効活用できる助成金制度です。

参照元|厚生労働省「雇用保険の受給資格者が創業した法人等の事業主の方への給付金 」

IT導入補助金

IT導入補助金は、ITツールを導入する際の費用を助成する補助金制度です。
主に次の枠を設けて、ITツール導入にかかるコストを補助しています。

  • 通常枠
  • デジタル化基盤導入類型
  • 複数社連携IT導入類型
  • セキュリティ対策推進枠
  • 商流一括インボイス対応類型

居宅介護支援事業所を立ち上げる際にも、さまざまなITツールを導入するでしょう。
下記のIT導入補助金公式ホームページから、詳しい申請方法や補助対象をチェックして、居宅介護支援事業所の立ち上げ時に活用しましょう。

参照元|IT導入補助金2024

ICT導入支援事業補助金

ICT導入支援事業補助金は、ICT機器の導入費用を助成する補助金制度です。
団塊世代の高齢化によって介護業界の人材不足が見込まれるために、ICT機器の導入が推奨されています。

アプリやタブレット端末などコミュニケーションを目的としたICT機器を活用すれば、業務効率を向上させて人材不足の課題を解消できます。
ICT導入支援事業補助金は、介護保険法に基づくケアサービスを提供するすべての介護事業所が支給対象であり、居宅介護支援事業所を立ち上げる際にも活用可能です。

なおICT導入支援事業補助金で、助成される補助上限額は事業所で働く従業員数によって異なります。
従業員数ごとの補助上限額は、次のとおりです。

従業員数補助上限額
1〜10人100万円
11〜20人160万円
21〜30人200万円
31人〜260万円

各自治体によって補助率は異なるため、居宅介護支援事業所を立ち上げる際には、対象の自治体ホームページをチェックしておきましょう。

居宅介護支援事業所を黒字化させるためのポイント

居宅介護支援事業所の収支を黒字化させるために、次のポイントを押さえておきましょう。

  • 特定事業所加算を目指す
  • 業務の効率化

それぞれのポイントを押さえれば、収支を黒字化させることが可能です。
居宅介護支援事業所の立ち上げを検討している方は、収支を黒字化させるために各ポイントを実践してください。

特定事業所加算を目指す

居宅介護支援事業所の収支を黒字化させるには、特定事業所加算を目指すことが大切です。
特定事業所加算とは、質の高い介護サービスを提供している事業所に対して、加算算定を行って介護請求に上乗せして支払う制度です。

特定事業所加算を取得すれば、従来の介護請求額より多く加算でき収益につながります。
加算要件と単位数は項目によって異なるため、事前に厚生労働省のホームページを確認しておきましょう。

参照元|厚生労働省「居宅介護支援・介護予防支援」

業務の効率化

居宅介護支援事業所の収支を黒字化させるポイントは、業務を効率化させることです。
業務を効率化させれば、残業を削減でき収支の黒字化につながります。

ペーパーレスやデータの一括管理など、業務を効率化させる施策を実施することで、従業員の負担を軽減できます。
業務の効率化は、生産性を向上させるだけでなく、従業員の負担を軽減して離職率の低下にもつながるため重要なポイントです。

人材不足が課題の介護業界で収支を黒字化させるためにも、業務の効率化に注力しましょう。

伊谷 俊宜氏
伊谷 俊宜氏

居宅介護支援事業所(以下居宅)数は2018年の40,065事業所をピークに年々減少し、2023年には37,197事業所と5年間で約3,000事業所も減少しています(介護給付費等実態調査各年4月審査分データより)。一方で、令和4年度の収支差率は4.9%と前年度と比較して1.2%向上しています(令和5年経営実態調査より)。これらの要因として、統廃合が進んだことによる居宅の「大規模化」と「特定事業所加算算定事業所の増加」が挙げられるでしょう。新たに居宅の立ち上げを検討する際には、この2点を踏まえた事業設計が必要です。令和5年10月のケアマネ有効求人倍率は4.54倍というデータもあるように、ケアマネ採用のハードルは上がり続けています。ICTやテレワークの活用など働きやすい環境整備は必須といえます。

居宅介護支援事業所の業務管理はワイズマンにお任せ

居宅介護支援事業所の業務管理は、ワイズマンにお任せください。
ワイズマンでは、居宅介護支援事業所の業務管理を効率化する介護ソフトを取り扱っています。

ワイズマンが提供する「ワイズマンシステムSP」を活用すれば、あらゆる業務データを一元管理できます。
各施設や利用者への連携も可能なので、従来よりもスムーズに情報を共有できます。

また、複雑な介護請求に対応した機能も搭載。
管理データの自動入力もでき、事務作業を効率良く進められます。

まとめ

居宅介護支援事業所を立ち上げる際には、収支目安をシミュレーションしておきましょう。
収支目安をシミュレーションすることで、黒字化させるために必要な課題と対策が可視化されます。

居宅介護支援事業所を立ち上げる際に活用できる補助金・助成金を使えば、初期費用を抑えて開業することが可能です。

居宅介護支援事業所の業務効率を向上させる際には、ワイズマンが提供するワイズマンシステムSPがおすすめです。
ワイズマンシステムSPを活用すれば、居宅介護支援に関わる事務計算や業務管理をシステム上で一元管理できます。

これから開業をお考えの方は、ぜひご検討ください。

監修:伊谷 俊宜

介護経営コンサルタント

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。

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