居宅介護支援事業所の加算の種類とは?2024年改定についても解説
2024.03.06
居宅介護支援事業所の運営を安定させるためには、加算の申請が必要です。
居宅介護支援事業所で申請できる加算の種類は豊富です。
「どの加算を申請できるか」「算定条件がわからない」など、申請する際の悩みはつきません。
本記事では居宅介護支援事業所の加算の種類について、項目別に紹介します。
後半では、令和6年度に実施される介護報酬改定のポイントも解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
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目次
居宅介護支援事業所で申請できる加算の種類とは?
居宅介護支援事業所では、9種類の加算を申請できます。
申請できる加算の種類は、以下のとおりです。
- 特別地域居宅介護支援加算
- 中山間地域等における小規模事業所加算
- 初回加算
- 特定事業所加算
- 特定事業所医療介護連携加算
- ターミナルケアマネジメント加算
- 入院時情報連携加算
- 退院・退所加算
- 緊急時等居宅カンファレンス加算
本章では、各加算の算定単位数・算定要件を紹介します。
今回は厚生労働省の以下の資料を基に紹介します。
特別地域居宅介護支援加算
特別地域居宅介護支援加算とは、厚生労働省が定める地域において、サービスを提供した場合に申請できる加算です。
厚生労働省が定める地域とは、交通の便が悪い地域や高齢者が多い地域などが挙げられます。
算定単位数 | 算定要件 | |
特別地域居宅介護支援加算 | 15/100 | 以下のいずれも満たす場合 ・厚生労働大臣が定める地域(平成24年厚生労働省告示第120号)に所在する ・指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員が指定居宅介護支援を行った場合 |
特別地域居宅介護加算を適用させるには、特定の地域条件を満たしているか確認する必要があります。
適用される地域は限定されているため、所在地が対象地域に含まれているか正確に把握しましょう。
中山間地域等における加算
中山間地域等における加算は、小規模事業加算とサービス提供加算の2種類があります。
算定単位数 | 算定要件 | |
中山間地域等における小規模事業所加算 | 1回につき10/100 | 以下のいずれも満たす場合 ・厚生労働大臣が定める地域(平成21年厚生労働省告示第83号1)に所在している ・厚生労働大臣が定める施設基準(平成27年厚生労働省告示第96号46)に適合する ・指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員が指定居宅介護支援を行った場合 |
中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算 | 1回につき5/100 | 以下のいずれも満たす場合 ・厚生労働大臣が定める地域(平成21年厚生労働省告示第83号2)に居住している利用者に対して、サービスを提供する ・通常の事業の実施地域を越えて、指定居宅介護支援を行った場合 |
小規模事業加算は、山間部、離島など介護サービスの提供が難しい地域において、介護サービスの提供を促進する加算です。
サービス提供加算は、サービスの提供をする際の交通費や移動費に対して申請できる加算です。
初回加算
初回加算は、居宅介護支援事業所が新たに利用者を受け入れた際に適用される加算です。
事業所が初めてケアプランを作成する際に、その利用者に対して特別な配慮が必要と認められる場合に申請できます。
算定単位数 | 1月につき300単位 |
算定要件 | ・新規に居宅サービス計画を作成する ・ 要支援者が要介護認定を受けて居宅サービス計画を作成する ・要介護状態区分が2区分以上変更された利用者に対し居宅サービス計画を作成する ・運営基準減算に該当しない |
申請するメリットとしては、初回のケアプラン作成における品質向上と適切な評価を促進します。
また、申請にはケアプラン作成の詳細な記録保持が必要となるため、文書管理体制を整えておくことが重要です。
詳しい内容については、以下の関連記事をご覧ください。
関連記事:居宅介護支援の初回加算とは?算定要件やポイントを解説
特定事業所加算
質の高いサービスや研修を実施している場合、特定事業所加算を申請できます。
特定事業所加算には、特定事業所加算(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)(A)があり、それぞれ異なる要件を満たす必要があります。
特定事業所加算(Ⅰ) | 特定事業所加算(Ⅱ) | 特定事業所加算(Ⅲ) | 特定事業所加算(A) | |
サービスを実施する主任ケアマネージャーを常勤で2人以上割り付けている | 2人以上 | 1人以上 | 1人以上 | 1人以上 |
サービスを実施するケアマネージャーを常勤で3人以上割り付けている | 3人以上 | 3人以上 | 2人以上 | ・常勤1人以上・非常勤1人以上(他事業所と兼務してもOK) |
情報共有・コミュニケーションを目的とした会議を定期的に開催する | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
24時間連絡がつく体制を整え、必要に応じて利用者からの相談に対応できる | ◯ | ◯ | ◯ | ◯(他事業所と兼務してもOK) |
月の利用者の40%が要介護レベル3~5である | ◯ | ー | ー | ー |
従業員に対して計画的な研修を行っている | ◯ | ◯ | ◯ | ◯(他事業所と兼務してもOK) |
地域包括支援センターからサービス提供が難しい事例を紹介された場合でも、的確なサービスを提供している | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
地域包括支援センターなどが開催する事例検討会などに参加している | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
居宅介護支援費にかかわる運営基準減算や特定事業所集中減算を適用していない | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
ケアサービスを受ける利用者の介護支援を行う従業員1人につき40人未満である | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
実務研修科目「ケアマネジメントの基礎技術に関する実習」などに協力している | ◯ | 45人未満 | ◯ | ◯ |
他社と共同して事例検討会や研修会などを実施している | ◯ | ◯ | ◯ | ◯(他事業所と兼務してもOK) |
多種多様な利用者が快適にケアを受けられるような居宅サービス計画を作成している | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
メリットとしては、申請には研修を実施する必要があるため、スタッフの質の向上やサービス提供体制の強化が期待できます。
ただ、加算を受けるための基準は多岐にわたるため、定期的な体制の見直しや評価基準の更新が必要です。
スタッフの配置基準や研修実施状況など、加算の条件を継続的に満たしていることを確認し、関連する証明書類の準備が必要です。
詳しい内容については、以下の関連記事をご覧ください。
関連記事:居宅介護支援の特定事業所加算の算定要件|単位数と算定時の注意点を解説
特定事業所医療介護連携加算
医療機関との連携を強化し、高品質な医療と介護サービスを提供する場合に申請できる加算です。
他の加算を申請していることが、算定要件です。
算定単位数 | 1月につき125単位 |
算定要件 | 以下のいずれも満たす場合 ・前々年度の3月から前年度の2月までの間において退院・退所加算の算定に係る病院、診療所、地域密着型介護老人福祉施設又は介護保険施設との連携の回数の合計が35回以上であること。 ・前々年度の3月から前年度の2月までの間においてターミナルケアマネジメント加算を5回以上算定していること。 ・特定事業所加算(Ⅰ)、(Ⅱ)又は(Ⅲ)を算定していること。 |
医療機関との連携を深めることで、利用者に対する包括的なサービス提供が可能です。
ただ、医療機関との連携には、調整や合意形成のための時間と労力が必要です。
また、連携体制の構築には時間がかかる場合があります。
申請時には、医療機関との連携体制の具体的な証明が求められます。
ターミナルケアマネジメント加算
末期がんなど、終末期にある利用者に対する特別なケアマネジメントを提供する場合に申請できます。
算定単位数 | 1月につき400単位 |
算定要件 | 以下のいずれも満たした場合 ・利用者が在宅で死亡した(末期の悪性腫瘍の患者に限る)。 ・死亡日及び死亡日前14日以内に2日以上、利用者又はその家族の同意を得て居宅を訪問し、心身の状況等を記録し、主治医及び居宅サービス計画に位置付けた居宅サービス事業者に提供した。 ・ターミナルケアマネジメントを受けることに利用者、またはその家族が同意した。 ・24時間連絡ができる体制を確保しており、かつ、必要に応じて指定居宅介護支援を行うことができる体制を整備している。 |
ターミナルケアに特化したサービスを提供することで、事業所の専門性が高まります。
申請時には、ターミナルケアの実施実績や研修記録を適切に管理し、申請時に提出できるようにしておきましょう。
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入院時情報連携加算
入院中の利用者に関する、情報の提供や連携を行った場合申請できます。
入院してからの日数で、2種類の加算に分かれています。
算定単位数 | 算定要件 | |
入院時情報連携加算(Ⅰ) | 1月につき1回200単位 | 利用者が病院又は診療所に入院してから3日以内に、当該病院又は診療所の職員に対して当該利用者に係る必要な情報を提供している |
入院時情報連携加算(Ⅱ) | 1月につき1回100単位 | 利用者が病院又は診療所に入院してから4日以上7日以内に、当該病院又は診療所の職員に対して当該利用者に係る必要な情報を提供している |
メリットとしては、 入院時の情報連携を通じて、利用者のスムーズな入院をサポートできます。
医療機関との連携強化が、事業所の評価向上につながるでしょう。
留意点としては、入院時の情報連携の実施実績を正確に記録し、管理する必要があります。
連携の具体的な手順が求められるため、事前に体制を整えておくことが重要です。
退院・退所加算
病院や施設から退院・退所する利用者に対して、スムーズに移行するためのサービスに対しての加算です。
カンファレンスの回数や内容により、3種類に分かれます。
算定単位数 | 算定要件 | |
退院退所加算(Ⅰ) | カンファレンスへの参加あり:600単位参加なし:450単位 | ・病院、診療所、地域密着型介護老人福祉施設又は介護保険施設の職員から利用者に係る必要な情報の提供をカンファレンス以外の方法により1回受けていること。 ・病院、診療所、地域密着型介護老人福祉施設又は介護保険施設の職員から利用者に係る必要な情報の提供をカンファレンスにより1回受けていること。 |
退院退所加算(Ⅱ) | カンファレンスへの参加あり:750単位参加なし:600単位 | ・病院、診療所、地域密着型介護老人福祉施設又は介護保険施設の職員から利用者に係る必要な情報の提供をカンファレンス以外の方法により2回以上受けていること。 ・病院、診療所、地域密着型介護老人福祉施設又は介護保険施設の職員から利用者に係る必要な情報の提供を2回受けており、うち1回以上はカンファレンスによること。 |
退院退所加算(Ⅲ) | カンファレンスへの参加あり:900単位 | 病院、診療所、地域密着型介護老人福祉施設又は介護保険施設の職員から利用者に係る必要な情報の提供を3回以上受けており、うち1回以上はカンファレンスによること。 |
申請時には、退院後のケアプランに関する具体的な実施例や退院支援の流れを示す資料の準備が必要です。
関連する医療機関や施設との協力体制を証明する書類も求められます。
緊急時等居宅カンファレンス加算
緊急事態や重要な変化が生じた際に、サービス提供者間での連携の強化を目的とした加算です。
算定単位数 | 200単位(利用者1人につき1月に2回を限度) |
算定要件 | 以下のいずれも満たした場合 ・病院又は診療所の求めにより、当該病院又は診療所の医師又は看護師等と共に利用者の居宅を訪問し、カンファレンスを行うこと。 ・必要に応じて、必要な居宅サービス又は地域密着型サービスの利用に関する調整を行う。 |
申請時には、緊急時におけるカンファレンスの開催記録や参加者リストなど、具体的な実施証明が求められます。
緊急時の対応手順やカンファレンスの開催頻度、内容を明確にしておきましょう。
通院時情報連携加算
利用者の通院時における情報連携を強化するための加算です。
利用者の同意を得た上で、連携を行う必要があります。
算定単位数 | 利用者1人につき1月に1回50単位 |
算定要件 | 以下のいずれも満たした場合 ・利用者が医師の診察を受ける際に同席し、医師等に利用者の心身の状況や生活環境等の必要な情報提供を行うこと。 ・医師等から利用者に関する必要な情報提供を受けた上で、居宅サービス計画等に記録する ・利用者の同意を得る。 |
医療機関間、また介護サービス提供者間で情報が共有されることで、患者さんの健康状態や治療歴に関する情報が一元管理され、より適切な治療やケアが提供されます。
患者さんからの情報共有に関する同意を適切に取得し、その範囲内で情報を共有することが重要です。
【厚生労働省】令和6年度 居宅介護支援事業所の加算改訂
令和5年12月19 日に、厚生労働省が公表した「令和6年度介護報酬改定に関する審議報告」によると、以下の改訂が審議されたようです。
- 特定事業所加算の見直し
- 入院・通院時情報加算の見直し
- ターミナルケアマネジメント加算の見直し
今回は、3点の加算改定について解説します。
本章は以下の厚生労働省の資料を基に解説します。
特定事業所加算の見直し
介護支援の質を高めるために、特定事業所加算の要件が見直されます。
以下の変更が実施される予定です。
変更ポイント | 変更内容 |
多様化・複雑化する課題への対応 | ヤングケアラー、障がい者、生活困窮者、難病患者などに関する知識を持つことが必要とされ、事例検討会や研修への参加が要件に加わります。また、これらの評価方法も充実されます。 |
(主任)介護支援専門員の専任要件の明確化 | 居宅介護支援事業者が介護予防支援や地域包括支援センターの委託を受ける場合、これらの事業との兼務が可能であることが明確にされます。 |
運営基準減算に関する要件の削除 | 事業所の毎月の確認作業などの手間を減らすため、運営基準減算に関する要件が削除されます。 |
介護支援専門員が担当する利用者数の見直し | 居宅介護支援費の見直しに基づき、介護支援専門員が担当する一人当たりの利用者数について対応が行われます。 |
入院・通院時情報加算の見直し
病院との連携を図るために、入院・退院時の要件が見直されます。
現行制度と改正後の変更点は以下の通りです。
現行 | 改生後 | |
入院時情報加算 | 現行入院後3日以内又は入院後7日以内に病院等の職員に対して利用者の情報を提供した場合 | 入院当日中又は入院後3日以内に情報提供した場合 |
通院時情報加算 | 医師の診察を受ける際の介護支援専門員の同席 | 先ほどのに加えて利用者が歯科医師の診察を受ける際に介護支援専門員が同席した場合を対象 |
ターミナルケアマネジメント加算の見直し
利用者の意向を尊重する方向に、内容が見直されます。
主な変更ポイントと変更内容は以下のとおりです。
変更ポイント | 変更内容 |
利用者の意向の重視 | 自宅で最期を迎えたいと考える利用者の意向を尊重し、人生の最終段階における利用者の意向を適切に把握することを要件とする。 |
対象疾患の範囲拡大 | 末期の悪性腫瘍に限定せず、医師が回復の見込みがないと診断した患者を対象にする。 |
特定事業所医療介護連携加算の要件見直し | ターミナルケアマネジメント加算の算定回数の要件に関しても見直しを行う。 |
2024年介護報酬改定は1.59%のプラス改定となりました。このうち0.98%が介護職員の処遇改善に充てられています。居宅は処遇改善対象外なのですが、その分基本報酬と特定事業所加算の単価が増え補填されるような形となっています。特定事業所加算はそれぞれ14単位増加しており、仮に特定事業所加算Ⅲを算定した場合、毎月の報酬単価は25%程度アップします。かなりインパクトのある数値ではないでしょうか。更に今回の報酬改定で、ケアマネ1人あたり44名(条件付きで49名)まで担当可能となったため、特定事業所加算算定の重要性は更に高まったといえるでしょう。このように国は報酬単価アップというニンジンをぶら下げて、特定事業所加算算定へ誘導しています。特定事業所加算算定が当たり前の時代が目の前まで来ているのです。
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居宅介護支援事業所の施設運営には在宅ケアマネジメントSP支援システムがおすすめ
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算定条件を確認して、正確に加算を申請しよう
居宅介護支援事業所の加算の種類についてまとめました。
加算の種類は多種多様なため、すべての算定要件を満たすことは難しいかと思います。
自施設でできる範囲で、要件を満たせるようにしていきましょう。
令和6年度には、介護報酬改定が実施されます。
算定要件の変更を確認して、より充実した施設づくりを目指していきましょう。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。