居宅介護支援事業所の事務員・ケアマネの配置基準について解説

2024.05.16

居宅介護支援事業所の人員配置基準と言えば、管理者・介護支援専門員が一般的です。
しかし、令和3年度の介護報酬改訂に伴い、事務員の配置基準にも留意する必要が出てきました。

本記事では、居宅介護支援事業所の人員配置基準について、事務員の配置も含めて解説します。

居宅介護支援事業所の人員配置基準

ここでは、居宅介護支援事業所の人員配置基準を解説します。

管理者:常勤の主任介護支援専門員1人

居宅介護支援事業所では、「常勤の管理者を1人配置すること」が義務付けられています。
なお、管理者に該当するのは、原則、主任介護支援専門員の資格を持つ者のみです。

ただし、主任介護支援専門員の確保が難しいことから、令和9年(2027年)3月31日までは、「やむを得ない理由がある場合には、介護支援専門員を管理者に据える」ことが認められています。

参考:介護保険最新情報|厚生労働省 老健局振興課

なお、基本的に管理者は、専従が原則です
しかし、「事業所の介護支援専門員として業務を行う場合」や、管理者業務に支障のない範囲で「同一敷地内にある別の事業所の業務を担当する場合」は、兼務が認められています。

介護支援専門員:利用者44人に対し常勤者1人以上

介護支援専門員(ケアマネジャー)は、「居宅介護支援事業所に1人、常勤で配置すること」と規定されています。
管理者の主任介護支援専門員が、介護支援専門員と兼任することも可能です。

また、「44人の利用者に対して、1人の介護支援専門員を配置すること」が定められています。
仮に利用者が44人を超えた場合には、「利用者数が44人またはその端数を増すごとにさらに1名の配置」が必要です。

なお、1人の介護支援専門員の担当件数が44件以上になると、減算の対象になります。
この仕組みを「逓減制(ていげんせい)」と呼びます。

参考:指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準|厚生労働省

事務員の配置が必要なケース

事務員の配置が必要なケースは、主に以下の2つです。

  • 逓減制の減額対象を回避するため
  • 一人ケアマネ事業所で、常に連絡が取れる体制を構築するため

事務員は介護支援専門員の事務作業の一部を担い、負担を軽減させたり、業務を効率化させたりする役割があります。

次章で詳しく紹介しますが、令和6年度改定に伴い、逓減制の上限を40→45件に引き上げる際に事務員の配置が求められます。
また、一人ケアマネ事業所では、訪問時に事業所への連絡対応ができないため、事務員を配置して対処するよう求められています。

【令和3年度改定】居宅介護支援事業所の逓減制が緩和

令和3年度の介護報酬改訂に伴い、条件の達成により逓減制を緩和できるようになりました。
本章では、逓減制の緩和条件と新設された「居宅介護支援費Ⅱ」を紹介します。

逓減制が緩和されるための条件

令和3年度の介護報酬改定によって、逓減制がこれまでの「40件以上」から「45件以上」へ緩和されました。
緩和のための条件は、「事務職員の配置」または「ICTの活用」です。

条件にあるICTとは、事業所内や利用者の情報を管理、共有できる機能を搭載しているものを指します。

しかし、令和6年度(2024年)4月には緩和条件が下記のように改定されます。

  • 事務職員を配置していること
  • 国の運用する「ケアプランデータ連携システム」を活用していること

上記の2点は、どちらも満たさなければ緩和を受けることができません。 
条件を満たしていれば、1人の介護支援専門員が50件まで担当することが可能です。

新設された「居宅介護支援費Ⅱ」とは?

令和3年度の介護報酬改定で逓減制が緩和され、「居宅介護支援費Ⅱ」が新設されました。
これは逓減制の緩和対象となるICTを活用、または事務職員を配置している事業所が算定可能です。

居宅介護支援費Ⅱは、介護支援専門員1人あたりの取扱件数に応じて、(ⅰ)~(ⅲ)に分かれています。
それぞれの算定単位数は以下のとおりです。

区分取扱件数単位数
(ⅰ)要介護1・2~45件未満1,076単位/月
(ⅰ)要介護3・4・5~45件未満1,398単位/月
(ⅱ)要介護1・245件以上60件未満522単位/月
(ⅱ)要介護3・4・545件以上60件未満677単位/月
(ⅲ)要介護1・260件以上313単位/月
(ⅲ)要介護3・4・560件以上406単位/月
参照:居宅介護支援・介護予防支援|厚生労働省

なお、こちらも令和6年度(2024年度)の介護報酬改定によって取扱件数と単位数がともに変更されます。

区分取扱件数単位数
(ⅰ)要介護1・2~50件未満1,086単位/月
(ⅰ)要介護3・4・5~50件未満1,411単位/月
(ⅱ)要介護1・250件以上60件未満527単位/月
(ⅱ)要介護3・4・550件以上60件未満683単位/月
(ⅲ)要介護1・260件以上316単位/月
(ⅲ)要介護3・4・560件以上410単位/月

今後は条件を満たしていれば、1人の介護支援専門員が担当できる件数が50件未満まで逓減制の上限が引き上げられます。

特定事業所加算を算定している場合の人員配置基準

居宅介護支援事業所では、質の高いケアマネジメントを提供する事業所を評価するための「特定事業所加算」を算定できます。
特定事業所加算は(Ⅰ)~(Ⅲ)および(A)の4区分に分かれます。

特定事業所加算についても令和6年(2024年)度に新要件や単位数への変更が決定しました。
ここでは、各加算の算定要件にある人員基準と改定前後の単位数について紹介します。

特定事業所加算(Ⅰ)

特定事業所加算では、下記の単位数を算定できます。

改定前改定後
505単位/月519単位/月

人員基準は以下のとおりです。

  • 専ら指定居宅介護支援サービスの提供に当たる常勤の主任介護支援専門員:2名以上
  • 専ら指定居宅介護支援サービスの提供に当たる常勤の介護支援専門員:3名以上

このほか、「利用者の総数のうち、要介護状態区分が要介護3、要介護4または要介護5である者の占める割合が40/100以上であること」といった要件が特定事業所加算(Ⅰ)のみに設けられています。

特定事業所加算(Ⅱ)

特定事業所加算(Ⅱ)での単位数は下記のとおりです。

改定前改定後
407単位/月421単位/月

また、人員配置について以下の基準が定められています。

  • 専ら指定居宅介護支援サービスの提供に当たる常勤の主任介護支援専門員:1名以上
  • 専ら指定居宅介護支援サービスの提供に当たる常勤の介護支援専門員:3名以上

特定事業所加算(Ⅰ)と比較すると、介護支援専門員の基準に変わりはないものの、主任介護支援専門員が1名で算定可能と、算定しやすくなっています。

特定事業所加算(Ⅲ)

特定事業所加算(Ⅲ)でも、単位数が増加予定です。

改定前改定後
309単位/月323単位/月

算定要件については人員基準以外に特定事業所加算(Ⅱ)の算定要件と変わりはありません。
特定事業所加算(Ⅲ)での人員配置基準は以下のとおりです。

  • 専ら指定居宅介護支援サービスの提供に当たる常勤の主任介護支援専門員:1名以上
  • 専ら指定居宅介護支援サービスの提供に当たる常勤の介護支援専門員:2名以上

特定事業所加算(A)

特定事業所加算(A)は、令和3年(2021年)に新設された区分です。
算定要件がゆるい分、単位数はそれほど多くありません。

改定前改定後
100単位/月114単位/月

人員基準については以下のとおりです。

  • 専ら指定居宅介護支援サービスの提供に当たる常勤の主任介護支援専門員:1名以上
  • 専ら指定居宅介護支援サービスの提供に当たる常勤の介護支援専門員:常勤1名以上、非常勤1名以上

なお、非常勤の介護支援専門員については他事業所との兼務も可としています。

参照:居宅介護支援・介護予防支援|厚生労働省 老健局

伊谷 俊宜氏
伊谷 俊宜氏

居宅介護支援事業所の人員配置基準は利用者35名に対し1名となっており、2021年介護報酬改定において、逓減制が緩和され44件となった際に整合性が取れない状況となっていました。2024年介護報酬改定で人員配置基準も正式に利用者44名に対し1名の配置となり解決されています。また、逓減制のさらなる緩和に注目が集まっていましたが、2024年3月15日に要件の解釈通知が出され、①事務職員:勤務時間の定めなし(配置していればOK)②ケアプランデータ連携システム:利用申請&ソフトのインストールでOK(利用実績不要)と正式に決定しました。①に関してかなりゆるい要件となりました。②に関しても21,000円(税込)/年の費用がかかりますが、それを遥かに上回る売上増が見込まれるため積極的な算定をお勧めいたします。

居宅介護支援事業所の運営にはシステムの導入がおすすめ

介護支援専門員1人あたりの担当する利用者数は、令和4年度で平均31.8人でした。
また、1事業所あたりの利用者数は、平均で95.0人です。

参照:居宅介護支援・介護予防支援|厚生労働省 老健局

多くの利用者のケアマネジメントを行うには、利用者の情報管理や記録を適切に管理・共有することが大切です。
こうした情報管理や共有に役立つのが、居宅介護支援事業所向けのシステムです。

居宅介護支援事業所向けのシステムを導入することで、下記のようなメリットがあります。

  • 逓減制の緩和が可能になる
  • 介護報酬の請求がスムーズになる

それぞれのメリットについて見てみましょう。

逓減制の緩和が可能になる

前述のとおり逓減制を緩和するには、「ケアプランデータ連携システム」の活用が求められます。

これから居宅介護支援事業所向けシステムを導入する場合には、ケアプランデータ連携システムを搭載しているかも検討の際に確認しましょう。

介護報酬の請求がスムーズになる

居宅介護支援事業所では、特定事業所加算など、算定可能な加算があります。
加算要件は定期的に改定されていきます。

システムを導入していれば、介護報酬の自動算定が可能となるため、制度改定時の混乱を防止できます。
毎月の介護請求も、記録から自動で算出できるため、職員の業務負担を大きく軽減できるでしょう。

弊社では、介護事業所向けのシステムとして「ワイズマンシステムSP」を提供しております。
事業所のデータを一元管理し、事務作業効率化を支援します。

居宅介護支援事業所の人員配置基準を押さえよう

本記事では、居宅介護支援事業者の人員基準について解説しました。
まとめると、以下のとおりです。

  • 常勤の管理者を1人配置すること
  • 44人の利用者に対して、1人の介護支援専門員を配置すること

また、事務職員が必要なケースは、以下の2つです。

  • 逓減制の減額対象を回避するため
  • 一人ケアマネ事業所で、常に連絡が取れる体制を構築するため

居宅介護支援事業所の人員配置基準を守り適切な施設経営を目指しましょう。

監修:伊谷 俊宜

介護経営コンサルタント

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。

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