ケアプランの軽微な変更とは?該当項目や事例・対応方法を徹底解説

2024.11.16

ケアプランを変更する場合は、再度アセスメントを行い、利用者やその家族の意向を確認する一連の手続きを踏まなければなりません。
しかし、軽微な変更の場合は、手続きを簡略化してケアプランに変更を加えられます。

ただし、ケアプランの軽微な変更に該当しない内容で、手続きを簡略化してしまうと事業所にペナルティが課せられるため注意が必要です。
ケアプランの軽微な変更を正しく行うために、該当項目や具体的な対応方法を確認しておきましょう。

本記事では、ケアプランの軽微な変更について詳しく解説します。
軽微な変更の事例や対応方法もあわせて解説するので、ぜひ最後までご覧ください。

ケアプランの軽微な変更とは

ケアプランの軽微な変更とは、厚生労働省が定める項目に該当する場合は、ケアプランの再作成にかかる手続きを簡略化できる制度です。
通常、ケアプランの内容を変更する場合は、次の手続きが必要です。

  1. 再度アセスメントを実施する
  2. ケアプランの原案を再度作成する
  3. 利用者とその家族に説明し同意を得る
  4. サービス担当者会議を実施する
  5. 利用者とその家族に説明し同意を得る
  6. ケアプランを再交付する

ケアプランの変更には、アセスメントの再実施やケアプランの再作成、サービス担当者会議の再実施など手間と時間がかかります。
しかし、厚生労働省が定める「軽微な変更」に該当する場合は、再アセスメントやケアプランの再作成、再交付などの手続きを省けるのです。

ケアプランの軽微な変更に該当する項目

ケアプランの軽微な変更に該当する項目は、厚生労働省の「介護保険最新情報Vol.155」に記載されています。
軽微な変更に該当する項目は、次のとおりです。

項目概要
サービス提供の曜日変更利用者の体調不良や家族の都合など一時的なもので、単なる曜日、日付の変更を行う場合
サービス提供の回数変更同一事業所における週1回程度のサービス利用回数を増減する場合
利用者の住所変更利用者の住所を変更する場合
事業所の名称変更事業所の名称を変更する場合
目標期間の延長課題や期間を変更せず、目標期間を延長する場合
福祉用具の変更福祉用具を機能が変わらないものへ変更する場合
事業所の変更目標やサービスを変えず、利用者の状況以外の原因で事業所を変更する場合
目標を達成するためのサービス内容の変更第一表や第二表が変わらない範囲でサービス内容のみを変更する場合
担当介護支援専門員の変更担当介護支援専門員が、新しい担当者(利用者や各サービス担当者と面識のある者)に変わる場合
参照元:介護保険最新情報Vol.155|厚生労働省 老健局振興課

ただし、上記の項目に当てはまる場合でも、ケアプランの再作成が求められる場合は、軽微な変更に該当しません

ケアプランの軽微な変更の事例

ケアプランの軽微な変更を適用させる条件は、上記でご紹介した9つのいずれかに該当する場合のみです。
しかし、軽微な変更の条件を正しく解釈できていない場合は、条件に該当しない変更を誤って適用させる可能性があります

ケアプランの軽微な変更を正しく適用させるために、「該当するケース」と「該当しないケース」の具体的な事例を確認しておきましょう

軽微な変更に該当する事例

軽微な変更に該当する事例は、次のとおりです。

利用者の親族が亡くなったため、葬式に参列することになりサービス提供日が変わった

上記の場合は、「サービス提供の曜日変更」に該当するため、軽微な変更が適用されます
他には、次の事例では「サービス提供の回数変更」が当てはまるため、軽微な変更として処理できます。

訪問介護サービスの回数を週3回から週4回へ変更した

軽微な変更に該当しない事例

下記のような事例では、軽微な変更が適用されません。

同じ課題と短期目標で何度も目標期間を延長している

同じ短期目標で何度もケアプランを更新して、目標期間を延長している場合は、目標設定が誤っていると判断されます
目標期間の延長は、目標を達成できることが前提なので、何度ケアプランを更新しても達成できない目標は見直す必要があります。

また、次のような事例も、軽微な変更として認められません。

同じケアプランで他の事業所へ移り、ケアマネージャーが変わった

担当介護支援専門員の変更に該当するケースは、同一の事業所内で利用者や各サービス担当者と面識のある者が、新しい担当者に変わった場合のみです。
異なる事業所でケアマネージャーが変わった場合は、ケアプランを再作成する必要があります。

ケアプランの軽微な変更の対応方法

ケアプランの軽微な変更を行う際は、該当箇所を「見え消し」で変更します
別の用紙にケアプランを書き直すのではなく、同一の用紙に変更を加えましょう。

見え消しで該当箇所を削除した後、正しい情報を余白に追記します。

「サービス提供日を変更する場合の対応例」

変更前変更後
2024年10月28日(月)2024年10月28日(月)2024年10月30日(水)

なお、軽微な変更を行った場合は、利用者とその家族に変更箇所を説明し、同意を得てください。
ケアプランの余白に、利用者とその家族に同意を得た日付と署名を記載しましょう

また、軽微な変更の内容を関係者間に周知する必要があります。
サービス担当者会議の実施は義務付けられていませんが、ケアマネージャーが必要と判断した場合は開催しましょう。

熊本県の御船町と沖縄県の名護市では、軽微な変更の取り扱い方として、次の対応方法を定めています。

  1. サービス担当者会議の実施(必須ではない)
  2. ケアプランの作成(見え消しで対応)
  3. 支援経過の記録(支援経過記録に変更の理由、変更年月日、変更内容等を記録する)

参照元:「介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について」の一部改正等について(介護保険最新情報Vol.958等の再周知)|厚生労働省 老健局振興課

参照元:居宅サービス計画の変更のうち「軽微な変更」の考え方|御船町

参照元:介護予防サービス計画における軽微な変更の取扱いについて|名護市役所

ケアプランの軽微な変更を誤った場合のリスク

軽微な変更の解釈を誤った場合、次のようなリスクが生じます。

  • 運営基準減算による介護報酬返還のリスク
  • 特定事業所加算の全額返還のリスク

それぞれのリスクを確認して、軽微な変更に該当しない変更内容を、誤って適用させないよう注意してください

運営基準減算による介護報酬返還のリスク

軽微な変更に当てはまると勘違いして、サービス担当者会議を実施しなかった場合は、運営基準減算のペナルティが課せられます。
減算される期間は、該当する状態が始まってから解消された時点の前日までです。

減算される単位数は、所定単位数の50%ですが、2ヵ月以上継続している場合は100%の減算となり、介護報酬を全額返還しなければなりません。

参照元:居宅介護支援・介護予防支援の報酬・基準について(検討の方向性)|厚生労働省

軽微な変更を解釈間違えすることにより、長期間にわたる多額の介護報酬返還が起きるリスクがあります。

特定事業所加算の全額返還のリスク

特定事業所加算にはI〜Ⅳまでの4種類ありますが、軽微な変更を誤って解釈していると、全額返還しなければなりません
なぜなら、特定事業所加算の条件には、運営基準減算に該当しないことが含まれているからです。

特定事業所加算の単位数は、次のとおりです。

  • Ⅰ:月500単位
  • Ⅱ:月400単位
  • Ⅲ:月300単位
  • Ⅳ:月125単位

参照元:居宅介護支援・介護予防支援の報酬・基準について(検討の方向性)|厚生労働省

該当する期間中の介護報酬に加え、上記の単位数分を返還しなければならないため、事業所にとって大きな損失が生じます。

ケアプランの軽微な変更は介護ソフトで対応できる

介護ソフトを利用すれば、ケアプランの軽微な変更にも対応できます。
スマホやタブレットに対応している介護ソフトを導入すれば、事業所に戻らなくても、その場で修正することが可能です。

ケアプランの修正や管理をシステム上で行えるため、効率的に事務業務を処理できます。
業務改善のために介護ソフトの導入を検討しましょう。

伊谷 俊宜氏
伊谷 俊宜氏

ケアプランの軽微な変更に関しては、担当者会議の開催が原則不要であり、うまく利用すれば業務負担を軽減できるものです。それにも関わらず、本来軽微な変更で対応可能でも、通常通り担当者会議を開催し、ケアプランを新たに作成しているケースもかなり多いのではないでしょうか。これは、所謂ローカルルールが常態化していることが要因に挙げられます。東京都を例に挙げると、江東区では軽微な変更と認められるものが、お隣の江戸川区では認められなかったなんて事例は枚挙に暇がありません。こうした背景もあり、軽微な変更としたいけど、万が一運営機基準減算になってしまったら大変なので、正規の方法で作成せざるを得ない状況を生み出してしまっているのです。軽微な変更を活用する際には、事前に保険者に確認することが現状では一番確実でしょう。

ケアプランの軽微な変更に対応できるよう該当項目・事例を確認しよう

ケアプランの軽微な変更に対応できるよう、本記事で解説した該当項目と事例を確認しておきましょう。
該当しない変更内容を軽微な変更として処理すると、介護報酬返還のペナルティが発生する可能性があります。

軽微な変更の解釈を間違わないよう、該当項目と事例を確認して、適切に処理してください。
介護ソフトを導入すれば、ケアプランの修正や管理業務を効率化できます

ケアプランの軽微な変更に対応できるよう、介護ソフトを導入して業務改善をしてください。

監修:伊谷 俊宜

介護経営コンサルタント

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。

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