医事会計システムとは?機能や選び方|電子カルテや介護との連携も可否
2023.08.31
医療現場において最初にシステム化されたものである「医事会計システム」
今ではほとんど全ての医療現場に導入され、なくてはならないものとなっています。
ただ、実は基本的な機能や最新の情報を詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか。
今回は「医事会計システムとは?」に焦点を当てて、機能や導入のメリット、最新の情報までを紹介します。
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目次
医事会計システムとは
医事会計システムとは、医療機関でのレセプト業務をシステム化したものを指します。
レセプト業務を行うことから、レセプトコンピューター(レセコン)とも呼ばれます。
医事会計システムは会計業務を担う
医事会計システム(レセコン)は、医療機関でのレセプト業務を自動化しておこなっています。
レセプトとは診療報酬明細書のことで、医事会計システムが導入される前は手書きでの作成がメジャーでした。
このため、保険制度に関わる専門的な知識と計算力が必要とされます。
会計には長い時間がかかり、また保険制度の変更にともなって計算方法が変わるなど、会計への業務負担は大きなものでした。
医事会計システムによる自動化は、会計への負担を大きく軽減してくれます。
例えば、診療内容の記録と診療報酬、窓口会計の計算、レセプト作成やレセプトチェックなどはシステムにより自動化が可能です。
医事会計システムの普及はほぼ100%
下図は厚生労働省による医事会計システムの実装状況を調査したものです。
(画像引用元:厚生労働省発表「日本における医療情報システムの標準化に係わる実態調査研究」)
2000年代に電子でのレセプト業務が原則義務化になっているため、病院に関しては95.7%の普及率になっています。
医事会計システムの主な機能
ここまででも医事会計システムのメインとなるレセプト業務について述べてきましたが、他の主となる機能について改めて見てみましょう。
ここで紹介する機能は多くの医事会計システムで標準的に導入されている機能ですが、メーカーによってはオプションになっている場合もあります。
レセプト業務
レセプト業務には、レセプト発行、レセプトチェック、会計の計算など細かな業務が含まれています。
診療内容をもとに自動的に診療報酬が計算されるため、不正な請求を防げたり、会計事務の業務負担を軽減できたりします。
医療保険の制度はこれまでも何度も改定されて、自己負担割合が変わってきました。
改定された場合にはシステムをアップデートさせることで算定できるようになります。
レセプトと言っても、労災レセプト、歯科レセプト、福祉医療やDPC適用病院の包括請求などの種類があります。
医事会計システムではそれぞれの算定方法を適用したレセプト作成ができますが、対応するレセプトの種類は一部オプションになるサーバーが多いので注意してください。
レセプトチェック
レセプトチェックは月末月初にまとめて行われることもありましたが、今では都度、自動でチェックされることがほとんどになっています。
請求ミスにすぐ気づけることや、未収金などの管理に役立っています。
レセプトチェックの機能についてはサーバーによってチェックのタイミングが異なります。
また一部、オプションになっているシステムもあるので、確認しておきましょう。
外来の受付
患者の登録や保険証の登録、管理など病院の受付機能も搭載しています。
院外処方箋の発行や診療明細書の発行も医事会計システムで一括操作が可能になります。
診察券の発行・再来機での自動受付によって外来受付もさらにスムーズになっています。
会計案内表示や自動精算機との接続によって、会計業務も人員を削減しつつ、素早い会計が可能になってきました。
予約の管理
多くの医事会計システムには予約の管理もカレンダー機能とともに、搭載されています。
予約患者の氏名を入力するだけで予約状況の確認、保険情報の確認を一度に行う機能が多くの医事会計システムに入っています。
最近ではインターネット予約を医事会計システムの機能として搭載しているものもあります。
入退院の管理
入退院に係わる処理(ADL評価、医療区分)や入院会計、定期請求や退院時の請求などを全て管理できます。
退院時の請求書発行、領収書作成やレセプト(診療明細書)の作成も外来の受付と同様、医事会計システムで行います。
出納業務
未収金や入金の入力、振込入金の登録など、収支業務も医事会計システムの機能に含まれています。
未収金の管理、未収金回収行動管理、督促なども管理できます。
帳票・統計業務
帳票の出力なども、標準仕様から病院ごとの独自の帳票作成もできます。
医師別・科目別といった月報作成も素早く集計できるので、病院の運営に役立つ統計をすぐに作成できます。
データをCSV出力することも多くの医事会計システムで導入されています。
医事会計システムと電子カルテは連携がおすすめの理由
近年、急速に普及してきた電子カルテシステムとの連携をお考えの方も多いのではないでしょうか。
厚生労働省の調べにもあったように、医事会計システムと電子カルテシステムの両方を導入されている病院は約88%もあります。
この二つのシステム導入は今では切っても切り離せない関係になってきていると言えます。
実際、新規で医事会計システムや電子カルテシステムを導入される病院では連携可能なものを検討されるケースが増えています。
連携させることの具体的なメリットについて見てみましょう。
電子カルテと連携で適切な金額を請求
電子カルテと医事会計システムを連携させていない場合、その日に請求となる診療内容について会計側で会計システムに入力し直すという作業が発生します。
内容が多岐にわたると、入力ミスにつながりやすく、請求漏れが出てしまうリスクもあります。
電子カルテと医事会計システムが連携されていると、診療内容の入力後そのまま計算処理に入るので、医師側が入力した情報が漏れることがありません。
入力の手間が省ける分、待ち時間を減らし、会計の負担を軽減させることもできます。
スムーズな情報共有が可能
次回予約の内容や検査内容、処方の指示などは会計ですべて書類として渡す流れになっている病院が多くあります。
患者様から最後の確認として予約について聞かれたり、会計時に診療内容についての問い合わせを受けたりすることもあります。
そのため、診療内容や処方などについても会計側に情報共有できることは大切です。
メモ機能で、患者データの呼び出し画面で特記事項が分かるようになっている機能などもあり、情報共有がさらにスムーズになっています。
医事会計システムを導入するデメリット
導入が必須とも言える医事会計システムですが、導入にはデメリットももちろんあります。
デメリットについては導入前に知識として知ったうえで、導入後の対策を考えておく必要もでてきます。
費用がかかる
システム導入には初期費用、クラウド型のシステムであれば運用費用がかかってきます。
システムは内容ごとに企業によって料金パッケージになっていることがほとんどですが、使用する端末などにも費用がかかります。
新規開業では端末の費用が一番のネックポイントになるかもしれません。
一般的にクライアントサーバー型よりクラウド型のほうが初期費用は安く済む傾向にあります。
まずはどちらのタイプにも見積もりをとり、長期間でのコストを比較する方がいいでしょう。
災害時には使用できない
停電やネットワークトラブルが起きた時には、システムが使用できなくなってしまいます。
トラブル時にはサーバー会社と連絡をとるための職員がいると、他の業務への影響を少しでも減らせます。
クラウド型サーバーではネットワークトラブルが起きた時のリスクが高いです。
一方で、クライアントサーバー型では停電時の復旧までに時間がかかりやすいデメリットがあります。
いずれにせよ、災害や停電があると使用できない状況になってしまうので、対応策を考えておく必要があります。
運用までに時間がかかる
システムの操作に職員が慣れるまで、病院全体の業務が医事会計システムの機能と合致するまでには時間がかかることもあります。
今導入しているシステムから変更する場合には、入力方法の違い、画面の違いなどにも職員は戸惑うでしょう。
特に、医事会計システムについては医療報酬の知識とパソコンのスキルどちらも必要になります。
全ての職員がパソコン操作に一定のレベルがない場合には、別途研修を設けるといった対策も必要でしょう。
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医事会計システムを選ぶ4つのポイント
1970年代から発展してきた医事会計システムは今では多くの機能が付加され、使いやすさや料金もさまざまです。
ここからは実際に導入・入れ替えする場合に検討しておきたいポイントを解説していきます。
電子カルテや他システムとの連携
電子カルテだけを導入していたり、もしくは導入していた医事会計システムを入れ替えたりといった場合には他のシステムの連携について確認が必要です。
すでに連携させているシステムがある場合には、双方のシステムに連携可能かを確認しておきましょう。
新規開業の場合には電子カルテシステムと一体化させるか、別システムで連携させるのかの検討も必要です。
一体化させていれば、トラブル時の復旧が早くできるなどのメリットがあります。
しかし、一体化させたシステムは費用も高額になりやすいというデメリットもあります。
医事会計システムのみ、電子カルテシステムのみ、といった風に順番に取り入れていくという手もあります。
その場合には、都度、システム同士の連携をとらなければならないことや、部門ごとで業務がストップすることなどのデメリットもあります。
メリット・デメリットはそれぞれにあるものの、電子カルテシステムの導入をすでにしている、または今後導入予定の場合には少なくとも管理を連携できるようにしておくのがおすすめです。
アフターフォローの手厚さ
医事会計システムはパソコン操作になるため、操作に不慣れなうちは業務が遅くなってしまうこともあります。
また医事会計の知識があるだけでシステム操作ができるわけでもありません。
導入後に操作方法の指導を受けたり、トラブルが起きた時に電話で問い合わせたりできるなど、アフターフォローについても聞いておきましょう。
クラウド型の医事会計システムでは、自動的にクラウドサーバーにバックアップをとってくれる機能もあります。
災害時には自院の端末が使用できないといった状態になった時、記録の破損もありません。
一方で、クラウド型ではサポートが遠隔によるものがほとんどなので、パソコンに詳しくない小規模の医院ではトラブル時に困ることもあります。
介護保険請求など特化した機能の有無
地域包括ケアシステムの構築により、今後ますます他システムとの連携が欠かせなくなってきました。
たとえば、介護保険請求にも対応していれば、医療保険と介護保険を一元管理でき、提携施設への連携もスムーズに図れます。
提携している介護施設などがあれば、そちらとの連携も確認しておきましょう。
他施設と連携が可能になることで、提携している機関での患者IDを統一させることも可能になります。
メモ機能などの充実(操作性)
医事会計は多くの患者の医療費計算を同時に行い、待ち時間削減のためにもスピードも求められます。
確認事項がさっと確認できる、入力が簡素化されていたり、選択式になっていたりするなど、高い操作性も大事な比較ポイントです。
導入を検討している場合は、実際の操作画面をタブレットやパソコン画面で見てみて、画面の見やすさも確かめておきましょう。
入力方法についても、マウスを使わずにキーのみで入力が可能なタイプや、マウスでドラッグ&ドロップで入力しやすくなっているタイプなどがあります。
主にはレセプト業務等を円滑に進めるために、ほとんどの医療機関で活用されているシステムです。2年毎の診療報酬改定にスムーズに対応できるシステムを導入することもポイントのひとつでしょう。また、現在国は医療と介護それぞれの情報共有をシステム上で円滑に進められるよう誘導しています。近い将来、ケアマネジャー等が持つ情報と病院のカルテに記載の情報等、重複している情報を一元管理し、双方がアクセスできるようになっていくでしょう。そういった流れへの対応も加味しながら、こういったシステムを活用していきましょう。
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ワイズマンの医事会計システムは介護保険請求に対応
弊社の医事会計システム「レセプトコンピュータΣ」では、オプションとして「メディカル介護システム」を導入することで、介護保険請求にも対応します。
介護予防サービス、居宅サービス、施設サービスを利用した患者様の介護給付費明細書と介護給付費請求書を自動作成できます。
居宅介護支援事業所や介護医療院など、地域包括支援事業者との間の提供票のやりとり(作成や取り込み)も自動で作成、取り込みができます。
予定作成や実績転送がスムーズになることで、事業者間での情報共有が円滑に進めやすくなるでしょう。
対応している介護保険請求の対応範囲は以下のとおりです。
・介護医療院
・訪問リハビリステーション
・訪問看護(みなし)
・居宅療養管理指導
・通所リハビリテーション
医事会計システムと電子カルテシステム、介護請求システムはそれぞれ別の人が管理・運営するものと捉えられがちです。
しかし同じ患者様を管理していくことを考えると連携がとれる方が便利と言えるでしょう。
院内のICT化をワンストップで実現
介護との連携でなく、中小規模の病院に必要となるシステム作りを行い、院内のシステムを連携し合えるようになっています。
・電子カルテシステム
・オーダリングシステム
・リハビリ支援システム
・看護支援システム
・臨床検査システム
・医用画像システム
・医事会計システム
・薬剤情報管理
以上全てのシステムが連携できることでよりスピーディーで正確なサービスを提供できる体制につながります。
まとめ
病院運営には必須である「医事会計システム」について基本的な機能や他システムと連携させることのメリットについてお話ししてきました。
医事会計システムは会計業務の効率化だけが機能ではありません。
病院の他の部門の業務や他の医療機関との連携にも役立つ機能を持ち合わせています。
電子カルテの導入率も大型病院では90%を越えるなど、院内のICT化は今後もよりすすんでいくと見られています。
医事会計システムについても、他システムとの連携や介護や福祉との連携を強化できるといったポイントに注視してみてください。
活用しやすい医事会計システムの導入に、こちらの記事が参考になれば幸いです。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。