看護記録の作成方法とは|保管期間や書き方を例文付きで徹底解説
2024.08.19
看護記録は、実践したケア内容と患者の容態、症状を把握するために、記載が義務付けられている書類です。
看護記録を作成する際には、誰が読んでもわかりやすい表現を意識し、患者への配慮を怠らないことが大切です。
看護記録に費やす業務タスクを軽減するために、正しい書き方と取り扱う際の注意点を確認しておきましょう。
本記事では、看護記録の書き方を例文付きで詳しく解説します。
主な作成方法や押さえておくべきポイントも説明するため、ぜひ最後までご覧ください。
なお、株式会社ワイズマンでは介護ソフトの入れ替えを検討している方に向けて「介護ソフト選びガイドブック」を無料配布しています。
介護ソフトの導入時によくある問題と対策についても記載していますので是非ご活用ください。
目次
看護記録とは
看護記録とは、看護業務を行う際に実施したケア内容や患者の容態を記載する書類を指します。
「公益社団法人 日本看護協会」が定義する看護記録は以下のとおりです。
「看護記録とは、あらゆる場で看護実践を行うすべての看護職の看護実践の一連の過程を記録したものである。」
引用:看護記録に関する指針|公益社団法人 日本看護協会
なお看護記録には、患者の個人情報が含まれるため、守秘義務の保護を遵守しなければなりません。
もし関係者間で情報を共有する際は適切に取り扱い、外部への漏洩を防止してください。
たとえ患者の家族に情報を共有する場合でも、患者本人の承認を得る必要があります。
看護記録の取り扱い方を正しく把握するために、次のポイントを確認しておきましょう。
- 看護記録の目的
- 看護記録の保存期間
各ポイントを確認し、看護記録の取り扱い方を正しく理解しましょう。
看護記録の目的
看護記録を作成する目的は、次のとおりです。
- 看護を実践した記録の証明
- 看護サービスの評価、品質向上
まず看護を実践した記録を証明するために、看護記録を作成します。
看護記録には、実践した看護に関する一連の過程が記載されており、ひと目見ただけでどのようなケアを施してきたか把握できます。
さらに看護記録を関係者間で共有すれば、患者の対応方法やケアの手順を見直すことが可能です。
改善点を見直すことで、より高精度な看護サービスを実現できるため、利用者満足度の向上へとつながります。
看護記録の保存期間【一覧】
看護記録を作成する際には、「いつまで保管しておくべきか」保管期間を理解しておきます。看護記録の保存期間は、法令によって定められており、原則は2年間保管しなければなりません。
記録名 | 保存期間 | 法的根拠 | 保存対象 |
看護記録 | 3年間 | 保険医療機関および保険医療養担当規則 | 保険医療機関が作成した診療録以外の看護記録 |
2年間 | 医療法施行規則 | 医療機関が作成した看護記録 | |
訪問看護等の提供に関する諸記録 | 2年間 | 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準 | 主治医による指示の文書 訪問看護計画書 訪問看護報告書 |
保険医療機関が作成した看護記録は保存期間が3年間であり、なかでも患者の診療録は5年間の保存期間が定められています。
看護記録は医療ミスの疑惑が立てられたときに、無実を証明する書類として使用できるため、保存期間が過ぎても保管しているケースが多いです。
また看護記録は個人情報が記載されているため、関係者以外は閲覧できないよう保管しましょう。
看護記録の基本構成
看護記録の基本構成は、次の4つです。
看護記録の構成 | 記入内容 |
基礎情報(データベース) | 看護を必要とする人の状態・状況 例)病歴・使用薬剤・身体や精神的な側面 |
看護計画 | 看護を必要とする人の健康問題と期待する成果上記、成果を実現するための計画 |
経過記録 | 看護を必要とする人の意向や訴え、治療の経過 |
要約(サマリー) | 経過記録の要約 |
上記の4要素が記載されていない場合、看護記録としての情報が不足しています。
看護記録の基本構成を確認して、内容に不備がないよう各項目を記入しましょう。
基礎情報(データベース)
基礎情報は、患者の容態や病歴などを理解するための基本的な情報です。
基礎情報を記載することで、患者一人一人にあった看護計画を策定できます。
具体的には、次のような項目を記載しておきましょう。
- 患者のプロフィール(氏名、年齢、血液型、住所など)
- 入院・来院の経緯
- 主訴
- 既往歴
- 使用薬剤
- アレルギー
- 身体・精神・社会的側面の情報
患者にアレルギーや特筆するべき注意点がある場合は、基礎情報に記載してください。
看護計画
看護計画は、患者の健康問題と期待する成果、目標を達成するために必要な看護実践の計画を記載したものです。
看護の課題ごとに観察する項目と目標、具体的な看護実践の計画を記載しておきます。
なお看護計画は、次の3項目に分類して書き出すケースが多いです。
項目 | 内容 |
観察計画(O-P) | 患者の容態を記載する項目 |
援助計画(T-P) | 患者の課題解決に必要な看護ケアを記載する項目 |
教育計画(E-P) | 患者自身が健康状態を理解するための教育指導を記載する項目 |
経過記録
経過記録は、実践した看護内容や患者の経過を記載する項目です。
患者の意向や訴え、健康問題、看護実践の経過など、看護ケアを実施していく過程で起きたできごとを記載します。
経過記録は、誰が読んでも「どのようなケアを実施し、容態がどう変化していったか」看護の過程を理解できるよう、わかりやすく記載することが大切です。
要約(サマリー)
要約(サマリー)では、患者の健康問題がどのように変化したか、経過情報を要約したものです。
要約は看護サマリーとも呼ばれる項目で、他院への転院や在宅ケアへ移行するときに、継続的な看護ケアを実現するために記載します。
そのため看護記録を作成するごとに、看護サマリーを記載するのではありません。
看護サマリーには、治療中の過程や日常生活における活動状況、現在の看護問題など、転院先で看護ケアを継続できるよう情報を記載します。
また看護サマリーの書き方は、事業所によって異なりますが、他院でも意味が伝わるように専門用語や略語は使用しないよう注意してください。
看護記録の作成方法4選
看護記録の作成方法は、主に次の4種類があります。
- SOAP
- DAR
- POS
- 経時記録
各作成方法を確認して、事業所に適した書き方で看護記録を作成しましょう。
SOAP
SOAPとは、下記の4項目ごとに看護記録を記入する作成方法です。
項目 | 内容 |
S(subjective)主観的情報 | 患者やその家族が、感じたことや話したことをもとに主観的な情報を記載する主に訴えや自覚症状が含まれる |
O(objective)客観的情報 | 検査や診察、観察によって得られる客観的情報を記載する |
A(assessment)アセスメント・評価 | 主観的情報と客観的情報で得たデータを分析した結果を記載する今後の治療方針・看護計画などを決める |
P(plan)看護計画 | アセスメント・評価で決定した方針を具体化する項目今後実施するべき治療法や看護計画を記載する |
SOAPは患者の問題ごとに主観的情報と客観的情報を落とし込み、今後の打開策を記載していく方法です。
情報をわかりやすく羅列でき、関係者間での情報共有をスムーズに行えるメリットがあります。
ただし、SOAPは患者の問題一つ一つに着目するため、問題が多岐に渡る場合には利用しづらい傾向があります。
DAR
DARは、フォーカス・チャーティング(FC)と呼ばれる看護記録の作成方法です。
SOAPが「問題点」に焦点を当てるのに対して、DARは「できごと」に焦点を当てて介護記録を作成します。
具体的には、次の4項目をもとに看護記録の記載をします。
項目 | 内容 |
F(Focus)フォーカス | 患者が抱える問題やケア内容、目標に焦点を当てて、具体的なできごとや懸念点を記載する |
D(Data)データ | Focusをもとに、検査やバイタルサインなどの主観的情報と客観的情報からケアが必要な状態を記載する |
A(Action)アクション | 看護師を含む医療従事者が、Focusに対して行った処置や治療、指導などの行為と、今度の計画を記載する |
R(Response)レスポンス | Actionに対する患者の反応や結果を記載する |
「F(Focus)」で焦点を当てた情報や目標をもとに、「D(Data)」「A(Action)」「R(Response)」で患者の容態や状態を記載します。
またDARは、実施した看護ケアの内容と患者の反応が明確化できるため、看護計画の経過がわかりやすいです。
POS
POSは、「Problem Oriented System」の略称で「問題志向型システム」の意味合いを持ちます。
POSは、経過記録における一般的な書式であり、患者の健康問題を合理的・系統的に解決する手法です。
具体的には、次の4ステップで看護記録を作成します。
- 情報収集
- 問題の明確化
- 解決策の立案
- 計画の実施
「情報収集」のステップで問題を発見し、「問題の明確化」で「なぜ問題が発生しているのか」原因を明確化します。
続いて仮定した原因を解決するために、「解決策の立案」を行い、「計画の実施」によって問題解決を行いましょう。
経時記録
経時記録は、患者の容態や実施した看護ケアの内容を、時系列に沿って記載する方法です。
経時記録は、「5W1H」を意識して看護記録に事柄を記載します。
- When(いつ)
- Where(どこで)
- Who(だれが)
- What(何を)
- Why(なぜ)
- How(どのように)
起きた事柄を時系列に沿って記載するため、医師や患者が看護記録を閲覧した際に「どこまで対応したか」すぐに理解できます。
POSやSOAP、DARでは形式どおりに内容を記載しますが、経時記録は時系列に沿って事柄を書くだけのため、誰でも看護記録を作成しやすいです。
ただし「どのような対応をしたか」など、細かい部分まで記載する必要があるため、看護記録の作成に時間がかかってしまいます。
【例文あり】看護記録の書き方
看護記録の作成方法を把握した後は、「実際に作成する際の書き方」を確認しておきましょう。
先ほど解説した看護記録の作成方法別に、具体的な書き方を例文付きでご紹介します。
看護記録の書き方で悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
SOAP
SOAPの書き方は、次のとおりです。
※以下看護記録は、認知症患者を想定しています。
項目 | 例文 |
S(subjective)主観的情報 | 1.今日お昼ご飯は食べたかな。 2.トイレに行ってきました。お腹の調子は快便です。 3.水は飲まないといけませんか。 |
O(objective)客観的情報 | 12:30病室にてS1.あり。先ほど食べたばかりだと説明するも、覚えていない様子。 13:00トイレにてS2.あり。ブリストルスケール4、朝食分腹痛・吐き気なし、満腹感あり触診にて腹部やわらかく、腸蠕動音5回/分。 昼食後は眠たい様子。 14:00病室にてS3.あり。眠らずにテレビを見ていたので、水を飲むことを勧めるも喉が渇いていないとのこと。本日は暑いため、熱中症予防で口をつけることを勧めると水を飲んだ本日の水分補給量は800ml。 |
A(assessment)アセスメント・評価 | 成果:水分摂取量の増加水分をこまめに摂るよう促すことで、便秘改善へつなげる説明は理解しているが、水を飲むことを忘れるため、こまめに水分摂取を促す必要あり。 先週までは水分摂取量が平均550mlだったため、少しずつ増加している。 成果:週3回の排便、普通便になる自然排便で週3回の普通便が確認できる腸蠕動音は正常。 |
P(plan)看護計画 | 以下、追加・修正してプランを継続1日の水分摂取量を1,000mlに達するよう促す自発的に水分を摂るよう説明する1時間に1度は水筒の水分量を確認し、水分摂取を忘れていないかチェックする。 |
DAR
DARの具体的な書き方は、次のとおりです。
項目 | 内容 |
F(Focus)フォーカス | 12:30 昼食後に記憶障がいあり。 13:00 トイレにて自然排便あり。 14:00 水分摂取量の必要性を説明。 |
D(Data)データ | 12:30に「今日お昼ご飯は食べたかな。」と昼食を食べたことを忘れている。先ほど食べたばかりだと説明するも、覚えていない。 13:00「トイレに行ってきました。お腹の調子は快便です。」とブリストルスケール4、朝食分の普通便を確認。腹痛・吐き気なし、満腹感あり触診すると腹部やわらかく、腸蠕動音5回/分。 14:00「水は飲まないといけませんか。」と水を飲むことを勧めるも喉が渇いていない様子。熱中症予防のため、口をつけることを勧めると水分補給をする。本日は、800mlの水分補給を行った。 |
A(Action)アクション | 患者に昼食をすでに食べたことを説明し、納得してもらう。水分補給量を増やすため、こまめに水筒の中身を確認し、水を飲むよう促した。家族に記憶障がいがあった際の対処法を説明し、水分補給を勧めるよう依頼する。家族の思いや考えも傾聴する。 |
R(Response)レスポンス | 昼食をすでに食べたことを説明すると、初めは不満そうだったが、徐々に納得していった。水分補給を促した際には、熱中症予防の旨を伝えると嫌がらずに水を飲んだ。 |
POS
POSの具体的な書き方は、次のとおりです。
情報収集 | 昼食を食べていないと記憶障がいが起きる問題が見つかった。また水分補給量が少なく、便秘・熱中症のリスクがある。 |
問題の明確化 | 記憶障がいが起きた際に、優しく患者に向き合うことが大切。また患者が喉の渇きを自覚しにくいため、水分補給の重要性を説明する必要がある。 |
解決策の立案 | 「ご飯を食べていない」と訴えられた場合は、真実を伝えて優しく説得する。ただし、それでも納得してもらえない場合は、「私の勘違いでした」と謝るか「すぐに準備しますね」と患者と向き合うよう対処する。1日の水分補給量を1,000mlまで増加させるため、こまめな水分摂取を呼びかける。また患者に水分摂取の重要性を理解してもらうよう、便秘と熱中症のリスクを説明する。 |
計画の実施 | 円滑にコミュニケーションを取れるよう患者との関係性構築を優先する。患者を刺激しないよう、優しく対応することが大切。1日の水分補給量を増やすために1,000mlの飲んだ水分量がわかる水筒を用意し、接種した量をチェックする。また「この1本は飲み切るようにしましょう」と、患者の積極的な水分摂取を促す。 |
経時記録
経時記録の具体的な書き方は、次のとおりです。
12:30に患者が病室で「今日お昼ご飯は食べたかな。」と尋ねてくる。しかし昼食は12:00に食べ終わっており、「先ほど食べましたよ」と説明する。「覚えていないけど、お腹はいっぱいだし、そうなのかもしれないね。」と、記憶はないが満腹感はある様子。 13:00に患者がトイレに行き、「トイレに行ってきました。お腹の調子は快便です。」と報告を受ける。便の状態を確認すると、ブリストルスケール4、朝食分の普通便。患者に腹痛や吐き気の有無を尋ねると、自覚症状はなし。満腹感はあるとのこと。腹部を触診するとやわらかく、腸蠕動音5回/分を確認。昼食後なので、眠たい様子。ベッドで横になりテレビを見ている。 14:00に病室を見に行くと、眠らずにテレビを見ていたので、水を飲むことを勧めるも「水は飲まないといけませんか。」と喉が渇いていない様子。本日は暑いため、熱中症予防で口をつけることを勧めると水を飲んだ。その後もテレビを見て、14:20に入眠。 本日の水分補給量は800ml、先週の平均水分補給量は500mlだったため、300mlの増加。先週までは便秘で週2回の排便だったが、今週は週3回の普通便を確認。便秘を解消できる旨を説明し、こまめな水分補給を促す。また1,000mlの水分量がわかる水筒を用意して、飲み切るように勧める。 |
なお、株式会社ワイズマンではすでに介護ソフトを導入しているが、介護ソフトの入れ替えを検討している方に向けて、「介護ソフト選びガイドブック」を無料で配布中です。ダウンロードしてご活用ください。
看護記録を取り扱う際の注意点3つ
看護記録を取り扱う際には、次の注意点を押さえておく必要があります。
- 情報漏洩対策や個人情報の保護を徹底する
- 診察・看護後すぐに記録する
- 看護記録を削除・処分しない
各注意点を押さえて、看護記録を適切に取り扱いましょう。
情報漏洩対策や個人情報の保護を徹底する
看護記録を取り扱う際には、情報漏洩対策や個人情報の保護を徹底することが大切です。
看護記録には、患者の氏名や生年月日、病歴などさまざまな個人情報が記載されています。
関係者以外に患者の個人情報が流出すると、個人情報の保護に反するため法令違反として罰せられる恐れがあります。
そのため、看護記録を保管する際には、外部の人間が閲覧できないよう情報漏洩対策を徹底しなければなりません。
また個人情報を保護するために、看護記録を関係者間に共有する旨を患者に承認してもらう必要があります。
診察・看護後すぐに記録する
看護記録を取り扱う際の注意点として、診察・看護後すぐに記録することが大切です。
診察・看護ケアを実施した後に、看護記録を記入しないと患者の発言や訴えを忘れてしまう可能性があります。
また診察時間やケアを実施した時間を正確に記録するためにも、診察・看護後はすぐに記録することをおすすめします。
ただし業務に追われている状態では、すぐに記録することが難しいケースも多いです。
メモを持ち歩いて、診察・看護後すぐに起きたできごとや特筆すべき内容を記録しましょう。
看護記録を削除・処分しない
看護記録は、原則的に削除・処分しないようにしてください。
記録を削除・処分した場合は、内容の改ざんが疑われてしまい、看護記録の信用性が低下します。
看護記録は、法律で定められた保存期間を遵守して保管する必要がありますが、期間を過ぎて処分する際にも削除前のデータを電子化するなどして保存しておきましょう。
紙媒体の看護記録を処分しても、看護システム上にデータを保管しておけば、改ざんが疑われたときに潔白を証明できます。
看護記録を作成する際に押さえておくべきポイント
看護記録を作成する際に押さえておくべきポイントは、次のとおりです。
- 患者の容態や病状を把握しておく
- 事実を明確に記録する
- 誰が読んでもわかりやすい表現を使う
- 患者への配慮を怠らない
上記のポイントを押さえて、読みやすく内容を理解しやすい看護記録を作成しましょう。
患者の容態や病状を把握しておく
看護記録を作成する際には、患者の容態や病状を把握しておくことが大切です。
対象の患者がどのような病状で入院しているかを把握しておけば、看護記録をスムーズに作成できます。
身体機能や精神面での異常を理解し患者ごとの特徴を把握すれば、特筆するべき内容が瞬時にわかるため、看護記録の作成スピードが向上します。
また必要な情報を漏れなく記載できるため、正確な看護記録を作成できます。
事実を明確に記録する
看護記録には、事実を明確に記録します。
記録者の解釈で事実と異なる内容を記載してしまうと、正確な容態や経過を把握できないため、事実だけを明確に記録してください。
患者の発言や訴えは簡略化しても問題ありませんが、できるだけ事実をそのまま記載しておくと、発言の意図や患者の心理状態を把握しやすいです。
実施したケアや会話の内容を正確に記録することで、看護記録を読んだ人に看護経過と患者の容態を明確に伝えられます。
誰が読んでもわかりやすい表現を使う
看護記録は、転院先の病院や患者の家族にも読まれるため、誰が読んでもわかりやすい表現を使いましょう。
自施設内でのみ使われる用語や略語は、使用しないようにしてください。
また、看護記録は、医療知識がない患者の家族が読んでも、内容を理解できるようわかりやすい表現を使う必要があります。
使用する用語・略語は、事業所内で統一しておくと、看護記録の作成業務をスムーズに行えます。
患者への配慮を怠らない
看護記録を作成する際には、患者への配慮を怠ってはなりません。
人格や人権を侵害するような表現は避けるために、下記のような言葉には注意が必要です。
NG例 | OK例 |
外人 | 外国人 |
阿呆症 | 認知症 |
障害 | 障がい |
知恵遅れ | 知的障がい |
精神異常 | 精神障がい |
また「やらせる」「指示に従わない」などの表現は、医療者が優位になるため、使用を避ける必要があります。
看護記録の書き方|時短化のコツ5選
看護記録を作成するには、膨大な時間と手間がかかり、看護師に負担がかかります。
他の業務もあるなかで、看護記録の作成にかかる時間を少しでも削減するためには、次のコツを実践しましょう。
- オープンクエスチョンを意識して聞き上手を目指す
- バイタルは測定後すぐに記録する
- 目標記録数を明確にする
- わかりやすく簡潔に書く
- 看護システムを活用する
看護記録の作成を時短化するために、上記のコツを確認しましょう。
オープンクエスチョンを意識して聞き上手を目指す
オープンクエスチョンを意識して聞き上手を目指すと、看護記録の作成にかかる時間を短縮できます。
「はい」「いいえ」だけで終わる質問をするのではなく、「気になっている症状はないか」などオープンクエスチョンを意識することで、患者の要望を明確に引き出せます。
聞き上手になれば、患者の意見や訴えを引き出しやすく、わかりやすい内容で看護記録を作成できます。
バイタルは測定後すぐに記録する
看護記録の作成を効率化するためには、バイタルを測定後すぐに記録することが大切です。
バイタルを測定後すぐに数値を記録しておけば、後からメモを見返して看護記録に転記する手間がかかりません。
バイタルを測定する際には、看護記録への記載もセットで行いましょう。
目標記録数を明確にする
業務を効率的に行うには、作成する看護記録の目標記録数を明確にすることも大切です。
「勤務中にできるだけたくさん記録を書く」など抽象的な目標では、達成率が低いです。
「勤務時間中に記録を4冊書く」など、数値を明確化することで、達成に向けて適切な時間を配分できます。
また「何時までに記録を1冊書く」など、スケジュールを指定することで、目標達成率を向上できます。
わかりやすく簡潔に書く
看護記録の読み手を意識して、わかりやすく簡潔に書くことが大切です。
長文の看護記録は読み手に負担がかかるうえに、記録に多くの時間がかかります。
わかりやすく簡潔に書くことで、記録業務にかかる時間を短縮でき、なおかつ読みやすい看護記録を作成できます。
看護システムを活用する
看護記録の作成業務を効率化するには、看護システムの活用が効果的です。
看護システムでよく使う文章や用語を定型化すれば、看護記録の作成にかかる時間を短縮できます。
また、作成した看護記録をリアルタイムで共有できる点も魅力です。
関係者間での情報共有を円滑化するシステムを導入すれば、コミュニケーションにかかる時間を短縮化して、業務の効率化につながります。
看護システムには、テンプレート機能も備わっているため、記録業務に不慣れな方でもスムーズに看護記録を作成することが可能です。
看護記録に限らず、医療・介護保険等にまつわる記録は、報酬を得るためのエビデンスという側面があります。しかしながら、それは二次的な目的であり、記録そのものは利用者・患者に対しての看護(介護)サービス力を向上させるためのものです。こうした帳票の類はどうしても前者の対策として作成されることが多く、非常に事務的でつまらない『作業』となりがちです。もちろん法令遵守のための帳票作成は重要ですが、敢えて誤解を恐れずに言うと、この方向での帳票作成は必要最小限で良いと考えています。記録は本来『手段』です。法令遵守のための帳票作成は、それ自体が目的となってしまうのです。患者・利用者がより良い生活を送れるよう支援するため、また、皆さんの提供しているサービスを更にブラッシュアップするための手段が本来の記録なのです。
なお、株式会社ワイズマンでは「介護ソフト選びガイドブック」を無料で配布中です。
すでに介護ソフトを導入していている方も、介護ソフトの入れ替えを検討している方も、自身に最適なプロダクトを選ぶために重要な4つのポイントを解説していますので是非ご活用ください。
看護記録の記載業務を効率化したいなら「病棟看護支援システムER」がおすすめ
看護記録の記載業務を効率化したいなら、「病棟看護支援システムER」の活用を検討してみてください。
ワイズマンの病棟看護支援システムERを使用すれば、下記の機能により、看護記録をスムーズに作成できます。
- 文書機能
- 職員間情報共有機能
- 看護管理機能
ここでは、病棟看護支援システムERの代表的な機能を紹介します。
文書機能
文書機能は、文字どおり看護業務に欠かせない各種文書の作成・管理を支援するための機能です。
例えば以下の文書の作成をシステム上で完結できます。
- 依頼指示箋
- 同意書
- 各種書類(看護計画や看護記録など)
- ラベル印刷(オーダー箋、スピッツラベル、点滴)
- LIFE帳票
- リストバンド
作成した文書は、システム上で一元管理できます。
書類の種類・患者別に必要なデータを検索できるため、関係者への情報共有を円滑化できるでしょう。
また、病棟看護支援システムERでは、入院患者の医療区分評価やADL区分評価の入力・参照も手軽に実施できます。
データが蓄積すれば、患者の容態などの変化を可視化でき、より質の高いケアにつながります。
職員間情報共有機能
病棟看護支援システムERの職員間情報共有機能では、関係者間の情報共有を円滑化するために、次のような機能を使用できます。
- 掲示板
- 患者メモ
- 指示連絡機能
- 指示簿指示
- 院内メール機能
院内メール機能で、職員間のコミュニケーションを円滑化します。
例えば、関係者全体へ周知する場合は、掲示板機能が便利です。
全体へ瞬時に情報を共有できるだけでなく、ログを残せることで共有漏れ・確認漏れの防止につながります。
また患者メモ機能を活用することで、特筆するべき情報を関係者間で連携して、適切なケアを実施できます。
看護管理機能
看護管理機能は、従業員の勤務実績、日誌などの管理をするための機能です。
具体的には、次のような機能が備わっています。
- 病棟日誌
- 看護管理日誌
- 勤務予定
- 勤務実績
- 様式9
看護師の人数や勤務時間、患者数などを記録する「様式9」もシステム上で作成できるため、管理業務の効率化を実現できます。
看護記録を適切に記載・保管するために看護システムを導入しよう
本記事では、看護記録の作成方法を紹介しました。
看護記録は、誰が読んでもわかりやすく事実を明確に記載することが大切です。
ただし、日々の業務に追われるなかで、正確な看護記録を作成するにはリソースが不足する恐れがあります。
その点、看護システムを活用することで、看護記録の作成にかかるリソースを削減でき、業務効率化が期待できます。
看護記録の書き方に不安を抱える方は、ぜひ本記事の内容をご参考にしていただき、今後の参考にしてみてください。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。