看護サマリーとは?主な記載事項や書き方のポイントを徹底解説

2024.08.19

看護サマリーは、患者の病歴や治療方法、看護ケアの経過を記載した書類です。
患者が他の施設に転院したり、退院したりする際に事業所における治療・看護ケアの実践を証明する書類として活用します。

患者の容態や治療方法を正確に伝えるために、看護サマリーの書き方と主な記載事項を確認しておきましょう。
本記事では、看護サマリーの書き方と主な記載事項を詳しく解説します。

看護サマリーとは

看護サマリーとは、患者の病歴や入院中の治療内容、容態などを記載した書類です。
看護要約や退院時サマリー、退院時要約とも呼ばれ、退院や他病院への転院時に活用されます。

看護サマリーは、入院中に行った看護記録をまとめたもので、転院先や在宅看護サービスの担当者に情報を共有する役割があります。
患者の看護を引き継ぐ際に、継続的なケアを実施するために、看護サマリーをもとに「どのような患者か」確認することが大切です。

患者サマリーを確認すれば、ひと目で患者の容態や病状を把握できるため、適切な看護ケアを実施できます。

看護サマリーの重要性

看護サマリーの作成方法で悩んでいる方は「なぜ必要なのか」という重要性を理解しておきましょう。
看護サマリーの重要性は、次のとおりです。

  • 他職種連携を円滑化できる
  • 退院後のケアに活用できる
  • 看護実践を証明できる
  • 看護実践の評価・品質を向上できる

各重要性を確認して、看護サマリーが求められる理由を把握しましょう。

他職種連携を円滑化できる

看護サマリーを作成する理由は、多職種連携を円滑化するためです。
患者の転院先である医療施設や、退院後の在宅看護サービスを実施する担当者に、看護サマリーを提出する必要があります。

看護サマリーを提出すれば、関係者間での情報共有を円滑化できるため、スムーズに患者の容態や病状を伝えられます。
転院先の看護師や医師など担当者に看護サマリーを提出して、継続的な看護ケアを実現しましょう。

退院後のケアに活用できる

看護サマリーは、退院後のケアに活用できるため重要です。
退院後に患者の家族や在宅看護サービスの担当者が、適切なケアを実施するために、看護サマリーを活用します。

看護サマリーを読めば、症状に対して実施するべきケア内容を把握できます。
退院後の看護ケアをスムーズに行うために、病状や実施するべきケア内容を記載した看護サマリーの作成が必要です。

看護実践を証明できる

看護サマリーを作成する必要性は、看護実践を証明できることです。
患者の家族や転院先の医療従事者は、看護サマリーがなければ「どのようなケアが行われていたのか」看護実践の具体内容を把握できません。

看護サマリーは、誤ったケアや不適切な対応をしていない証明として提示できるため、看護実践を記載しておく必要があります。
日々の看護実践を記録した看護記録をもとに、看護サマリーを作成しておくことで、看護実践の証明が可能です。

看護実践の評価・品質を向上できる

看護サマリーを作成する理由は、看護実践を評価し品質の向上につながることです。
看護サマリーによって、実践した看護ケアの内容を振り返り、品質向上に向けた改善を行えます。

例えば、看護ケアの実施手順を見直し、よりスムーズに対応できれば患者の負担を軽減し、ニーズに沿ったサービスを実現できます。
看護実践を評価し品質の向上につなげれば、利用者満足度を向上できるため、看護サマリーの活用が重要です。

看護サマリーの記載項目

上記は和歌山県が公表している看護サマリーの記載例です。
看護サマリーを作成するためには、具体的にどのような項目が必要なのかを理解しておく必要があります。

看護サマリーの書式は自治体や事業所によって異なりますが、主に次の記載項目が必要です。

  • 患者の基本情報
  • 病歴
  • 日常生活動作(ADL)
  • 内服薬に関する情報
  • 看護上の問題点
  • 事業所・作成者の情報

各記載項目を確認して、看護サマリーの書式を決める参考にしてください。

患者の基本情報

看護サマリーの記載項目には、患者の基本情報があります。
氏名や生年月日、住所、連絡先など患者の個人情報から、家族構成など身の回りに関わる情報を記載します。

病歴

看護サマリーには、病歴の項目が必要です。
過去にどのような病気を患ったことのあるか、現在患っている病名など既往歴と現病歴の双方を記載しましょう。

他にも入院中の経過や症状、現在の容態などを詳しく記載します。

日常生活動作(ADL)

看護サマリーの記載項目には、日常生活動作(ADL)があります。
日常生活動作(ADL)は、歩行や食事、排泄、更衣、入浴など日常生活で必要不可欠な動作を指し、スムーズに実施できない動作を記載する項目です。

例えば、一人で食事や排泄が難しい患者の場合は、日常生活動作(ADL)の項目にその旨を記載しておきましょう。

内服薬に関する情報

看護サマリーには、内服薬に関する情報が必要です。
投与している薬の種類や用法容量、服用方法から管理方法まで詳しく記載しましょう。

複数の内服薬を併用している場合は、使用する時間帯やタイミングなど薬の種類ごとに記載してください。

看護上の問題点

看護サマリーには、看護上の問題点を記載する必要があります。
入院中に問題となったポイントや、患者の課題点を記載し、転院先の医療施設でも注意するべき点を伝えましょう。

主に今後看護を継続するうえで必要になる事柄や、想定されるリスクを記載しておくと親切です。

事業所・作成者の情報

誰が作成した看護サマリーか確認できるよう、事業所と作成者の情報を記載しましょう。
作成日と作成者名、事業所名まで記載しておくと、看護サマリーを作成した日時と作成者が瞬時にわかります。

看護サマリー書き方のポイント

看護サマリーを書く際には、次のポイントを押さえておきましょう。

  • 基本情報はできるだけ更新しておく
  • 書けるときにサマリーを作成する
  • 読み手の立場で記載する
  • 端的に明確な表現をする
  • 誰が読んでもわかりやすい内容にする
  • 引き継ぎ先や記載する目的を意識する

各ポイントを押さえて、転院先の医療機関や退院後の自宅療養で役立つ看護サマリーを作成してください。

基本情報はできるだけ更新しておく

看護サマリーを書く際には、基本情報をできるだけ更新しておくことが大切です。
患者の容態や病状は変化するもので、最新の情報を記載しておかないと、適切に情報を共有できません。

患者の情報や看護上の注意点など、看護サマリーを提出する前に最新の情報に更新されているかを確認しておきましょう。

書けるときにサマリーを作成する

看護サマリーは、書けるときに書いておくことが大切です。
看護サマリーを作成するには、時間と手間がかかります。

明日患者が退院するタイミングで患者サマリーを作成しようと考えても、思いどおりに業務が進まない場合は、サマリー作成が難航してしまいます。
書けるときにサマリーを作成して、変更点や更新すべき内容がある場合は、常に最新情報へ更新しましょう。

読み手の立場で記載する

看護サマリーを書くときのポイントは「誰が閲覧するのか」を考えて作成することが大切です。
看護サマリーは、看護師や医師だけでなく患者やその家族も閲覧する書類です。

そのため「主に誰が読むサマリーになるか」と、患者の転院先や退院後に看護ケアを担当する人物像をイメージして、読み手が欲しい情報を記載しましょう。
医療施設に転院する場合は、当事業所で行っていた看護ケアの内容や病状の経過などを詳しく記載する必要があります。

退院して患者の家族や訪問看護サービスを利用する場合は、看護ケアを実施する人に伝えるべき内容を精査して、記載内容を検討しましょう。

端的に明確な表現をする

看護サマリーを作成する際には、端的に明確な表現をするよう意識してください。
看護サマリーを長文で作成しても、読みにくく情報が伝わりにくいため、情報共有が難航してしまいます。

端的に明確な表現を意識することで、読み手の負担を軽減して、スムーズな情報共有を実現します。

誰が読んでもわかりやすい内容にする

看護サマリーを書く際のポイントは、誰が読んでもわかりやすい内容にすることです。
看護サマリーは、患者やその家族など医療知識がない方も読むことがあるため、専門用語や事業所特有の略語を記載しないよう注意してください。

引き継ぎ先や記載する目的を意識する

看護サマリーは、引き継ぎ先や記載する目的を意識することが大切です。
「なぜ看護サマリーが必要なのか」目的と情報を伝達する引き継ぎ先を明確化することで、記載するべき内容が変わります。

引き継ぎ先や記載する目的を意識したうえで、看護サマリーの作成に取り掛かってください。

看護サマリーの作成で生じる課題

看護サマリーを作成する際には、次の課題点を解消する必要があります。

  • 通常業務が多忙で看護サマリーの作成時間を確保できない
  • 記入するべき内容が明確に定められていない
  • 引き継ぎ先での継続を確認できない
  • 患者情報の取得や整理が難しい

各課題に対する対応策もあわせて解説するため、看護サマリーの作成にかかる時間を軽減したい方は確認しておきましょう。

通常業務が多忙で看護サマリーの作成時間を確保できない

看護サマリーの作成で生じる課題は、通常業務が多忙で作成作業に費やす時間を確保できないことです。
看護師の現場は、人手不足や業務量過多によって多忙な業務に追われており、十分な時間を確保できない可能性があります。

また先輩看護師も多忙であるため、看護サマリーの作成方法を尋ねる時間も確保できないケースがあります。
通常業務に追われてリソースを確保できない場合は、事務業務にかける時間を別途設けるか看護システムの導入を検討してください。

部署全体で看護サマリーの作成方法を指導する時間をつくり、事務業務に充てる時間を確保することが大切です。
また看護システムを導入すれば、テンプレートや定型文を活用してスムーズに作成できるため、サマリーの作成にかかる時間を短縮できます。

記入するべき内容が明確に定められていない

看護サマリーは、記入するべき内容が明確化されていません。
何を記入するべきかわからない場合は、サマリーの作成に時間がかかってしまいます。

特に新人の看護師は、どこまで詳しく記載するべきかを判断できず、正しく情報を伝達できない可能性があります。
看護サマリーを書く際には、先輩看護師に記載方法を尋ねることが大切であり、OJTを交えて知識のある看護師と一緒にサマリーを作成しましょう。

また看護システムを導入すれば、テンプレートから記入するべき内容をスムーズに把握できるため、初めてサマリーを作成する新入社員でも安心です。

引き継ぎ先での継続を確認できない

看護サマリーは、引き継ぎ先でケアが継続されているか確認できないため、適切な内容で作成する必要があります。
サマリーを提出した転院先の医療施設や患者の自宅で、適切に看護ケアが実施されているかを確認できません。

そのため、自分が記入した内容についてのフィードバックを受ける機会が少なく、看護サマリーの改善点を見つけにくい課題があります。
看護サマリーを作成した後は、提出前に先輩看護師へのチェックを依頼し、改善点をフィードバックしてもらいましょう。

患者情報の取得や整理が難しい

看護サマリーの作成で生じる課題は、患者情報を取得し適切に整理しにくいことです。
患者情報は個人情報に該当するため、情報漏洩対策が必要不可欠です。

関係者以外に閲覧できる場所に保管できず、看護サマリーの紛失や処分には十分注意しなければなりません。
また看護師が常に同一の患者に対応できないため、情報の取得や伝達が難航するケースもあります。

看護サマリーは、情報漏洩に注意する必要があるため、保管場所や情報取得、伝達方法を工夫しなければなりません。
看護システムを活用すれば、システム上でサマリーを管理、伝達できるため、スムーズな情報伝達を実現できます。

伊谷 俊宜氏
伊谷 俊宜氏

コロナ禍においては入院中の面会は殆どの病院でNGでした。現在だいぶ緩和されてきましたが、まだまだ制限が残っているケースが多々あります。このように入院中の様子を病院外の人間が、自身の目で見ることが困難な状況下において、看護サマリーの重要性は以前と比較して増しているといえます。看護サマリー記載のポイントは『点で終わらせない』ことではないでしょうか。病院は疾患や怪我を治療する場であり、何よりそれが最優先されます。一方で、退院後の患者にとっては『生活』が主となり、治療はそれを補完するためのものになるでしょう。したがって、『治療』と『生活』というそれぞれの点を如何に結びつけていくかという視点を、病院と病院外それぞれの関係者間で共有することが重要です。入院時より外部との関係を構築していきましょう。

看護サマリー作成業務の効率化には「病棟看護支援システムER」がおすすめ

看護サマリーの作成を効率化したい場合は、「病棟看護支援システムER」の導入を検討しましょう。
病棟看護支援システムERは、患者様情報を可視化しスムーズな情報伝達を実現します。

またシステム上でサマリーを作成できるため、従業員の業務負担を軽減し、限られたリソースでサマリーの作成を完結できます。
テンプレートや定型文機能を活用すれば、サマリーの作成に不慣れな看護師でも、簡単に文書を作成することが可能です。

他にも病棟看護に必要な機能が備わっているため、全体の業務効率を向上させられます。

看護サマリー作成を効率化したいなら看護システムを導入しよう

看護サマリーの作成を効率化したいなら、看護システムの導入がおすすめです。
看護システムを導入すれば、看護サマリーの作成で生じる課題を解消し、従業員の負担を軽減できます。

さらに業務効率を向上させることで、高精度な看護ケアを実現し利用者満足度の向上につながります。
看護サマリーを作成する際には、本記事でご紹介した書き方のポイントを参考に、誰が読んでもわかりやすい内容を意識しましょう。

監修:伊谷 俊宜

介護経営コンサルタント

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。

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