看護現場におけるバイタルサイン測定とは?基準値や留意点などを解説
2024.08.19
看護現場において、バイタルサインの測定は日常的に行われているタスクです。
患者に適切な看護・治療を行ううえで、バイタルサイン測定は欠かせません。
そのため、看護師はバイタルサインを測定する意義を理解しておく必要があります。
本記事ではバイタルサイン測定の基本的な知識に加え、基準値や留意点などについて解説します。
看護を学ぶ際に役立ててください。
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目次
バイタルサインとは
バイタルサインとは、患者の状態や症状の緊急性を把握するうえで重要な情報です。
バイタルは「生命」、サインは「兆候」を意味しており、合わせて「生命兆候」とも呼ばれます。
看護現場では、バイタルサインは血圧・脈拍・呼吸・体温の4項目で測定することが基本です。
ただし、緊急医療現場や集中治療室(ICU)では、意識レベルや尿量を含めた6項目で測定します。
バイタルサインの測定は、通常1日3回行います。
ただし、患者の容態が急変するリスクの高いケースや、正常な状態から逸脱しているケースでは、測定回数を増やす場合があります。
バイタルサインを測定する目的
バイタルサインを測定する目的は、以下の2点です。
- 基準値・正常値からどれだけ逸脱しているか
- 過去の測定値と比較してどれだけ変化しているか
バイタルサインの基準値・正常値は、患者の健康状態を示す指標です。
看護師は日々の測定を通じて患者の体調を確認し、平常値を記録するとともに、測定値に応じた処置を行います。
また、過去の測定値との比較もバイタルサイン測定の目的です。
過去の測定値を逸脱した結果になった場合は、治療方針の変更を検討しなければなりません。
成人のバイタルサインの基準値・正常値
成人の場合、バイタルサインの基準値・正常値は以下のとおりです。
体温 | 36℃~39℃ |
脈拍 | 50~80回/分 |
呼吸 | 14~20回/分 |
血圧 | 収縮期:120mmHg未満 拡張期:80mmHg未満 |
尿量 | 1回排泄量:約200~400ml 1日総量:約1000~2000ml |
意識レベル | 意識清明:JCS0・GCS15 |
高血圧治療ガイドライン|日本高血圧学会
第10回市民公開講座 (2008) 男女ともに見られる尿漏れ、頻尿|関西医科大学
入院時意識障害がある場合のJCS|厚生労働省
基準値・正常値の数値には幅があるため、看護師は患者ごとの平常値を把握しておかなければなりません。
なお、小児・高齢者では成人と基準値・正常値が異なります。
患者の世代に合わせて参照しましょう。
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バイタルサインの測定方法
バイタルサインの測定は、体温→脈拍→呼吸→血圧の順番で行います。
本章では基本の4項目に加え、尿量・意識レベルの測定方法も解説するので、ぜひ参考にしてください。
体温
体温は測定する場所によって、口腔体温・腋窩動脈・深部体温(直腸体温)の3種類があります。
一般的に看護の現場では腋窩動脈で体温を測定するケースがほとんどです。
腋で体温を測定する手順は以下のとおりです。
- 1.発汗がないことを確認し、脇の中央部に向かって30~45℃の角度で体温計を差し込む
- 2.腋窩動脈の位置に体温計が当たるように位置を調整する
- 3.検温中は患者の腕を軽く曲げてもらい、反対側の手で押さえてもらう
人間の体温は時間帯によって変動するため、正確な体温を測定するなら一定の時間帯に測定しましょう。
慣れてきたら体温の測定と同時に、空いているもう一方の腕で脈拍や血圧を測定する場合もあります。
なお、成人の患者では、自身で体温測定を行ってもらう場合もあります。
ただし、正しい体温測定の方法を知らない患者も多いため、あらかじめ測定方法を説明しておきましょう。
脈拍
脈拍は人体のさまざまな部位で確認できますが、一般的には手首の橈骨動脈で測定します。
脈拍の測定方法は以下のとおりです。
- 1.患者にリラックスできる体勢をとってもらう
- 2.手首の中央部より少し外側にある橈骨動脈の位置に人差し指・中指・薬指を当てる
- 3.15秒か30秒の脈拍数をチェックし、60秒で換算する
基本的に脈拍の測定は15秒か30秒で行いますが、不整脈や脈拍欠損が見られる患者の場合は、60秒間継続して測定します。
また、両手の脈拍を確認する場合もあります。
脈拍が感知しにくい患者の場合は、患者の手を開く・閉じる動作を10~15回程度やってもらいましょう。
本記事では指で測定する方法を解説していますが、医療機関によっては、脈拍の測定ができる電子血圧計を用いる場合があります。
呼吸
呼吸は呼吸回数と呼吸音を測定します。
呼吸は呼息と吸息を1セットとして扱い、腹部や胸部の動きから1分間の呼吸回数をカウントしつつ、呼吸時に音がないかをチェックしましょう。
呼吸を測定する際は、患者に測定を伝えないことが重要です。
呼吸は意識するとリズムが乱れるため、正確な測定結果が得られなくなります。
呼吸パターンに変動があったり、異常音が入ったりしているようなら、肺や脳に異常が発生しているリスクがあります。
血圧
血圧は、電子血圧計による測定が主流です。
なかでも、上腕部にマンシェットを巻きつけて測定するタイプが、多くの医療機関で用いられています。
血圧を測定する手順は以下のとおりです。
- 1.腕が心臓と同じ高さになるようにする
- 2.人差し指・中指・人差し指で上腕動脈の脈拍を確認する
- 3.肘を曲げないように注意しながらマンシェットを指2本が入る程度の強さで上腕部に巻く
- 4.スタートボタンを押し、測定を開始する
血圧は体温と同様に時間帯によって数値が変わるため、適切な数値を測定できる時間帯に測定しましょう。
また、看護師が血圧測定をする場合、患者が意識するため、血圧の数値が若干上昇します。
測定時は、平常値より数値が変動することを踏まえておかなければなりません。
尿量
尿量は1時間ごとの数値を記録し、正確に管理する必要があります。
周手術期の患者の場合、尿量の管理は特に重要です。
周手術期の患者は、侵襲の影響で体液バランスが乱れています。
尿量の維持ができていない状態では、腎機能不全や泌尿器の疾病などが疑われるため、早急な対処が必要です。
尿量の正確な管理は膀胱留置カテーテルが不可欠です。
設備が整った病室でなければ、尿量の管理が難しくなる点には注意しましょう。
意識レベル
意識レベルの測定では、JCSかGCSのスコアを使います。
JCSは「Japan Coma Scale」・GCSは「Glasgow Coma Scale」の略称であり、段階に応じて意識レベルの状態を示しています。
それぞれの基準は以下のとおりです。
【JCS】
0 | 意識清明 | |
Ⅰ桁 | 刺激をしなくても覚醒している状態 | 1:おおむね意識清明だが、今ひとつはっきりしない 2 :見当識障がいがある 3:自分の名前、生年月日が言えない |
Ⅱ桁 | 刺激すると覚醒する状態 | 10 :普通の呼びかけで容易に開眼する 20 :大きな声または身体をゆさぶることにより開眼する 30:痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと、かろうじて開眼する |
Ⅲ桁 | 刺激をしても覚醒しない状態 | 100:痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする 200:痛み刺激で少し手足を動かしたり、顔をしかめる 300:痛み刺激に反応しない |
【GCS】
JCSはスコアが大きくなるほど、GCSは小さくなるほど意識レベルが低いことを示しています。
JCSのスコアが0、GCSのスコアが15であれば、意識レベルに問題がないと認められます。
看護現場でバイタルサインを測定する際の留意点
看護現場でバイタルサインを測定する際は、以下の留意点に気を付けましょう。
- 小児では測定の順番が異なる
- 患者を不安にさせない
- 測定時は丁寧に説明する
- 記録・報告は正確に行う
上記の留意点を意識するだけでも、バイタルサインの測定はスムーズに進みます。
小児では測定の順番が異なる
小児のバイタルサインを測定する際は、順番が変わります。
具体的には、以下のとおりです。
- 1.呼吸
- 2.脈拍
- 3.体温
- 4.血圧
成人と違い、小児は知らない大人との接触を拒んだり、測定の途中で泣き出したりする可能性があります。
そのため、小児に接触する頻度が少ない測定から行わなければなりません。
患者を不安にさせない
バイタルサインを測定する際は、まず患者を不安にさせないようにしましょう。
コミュニケーションが難しい状態になっている患者は珍しくありません。
無理に測定しようとするとトラブルに発展しかねません。
測定時は、まず患者に寄り添い、安心させましょう。
特に、高齢者や小児の患者には配慮が必要です。
測定時は丁寧に説明する
バイタルサインの測定時は、必ず患者に丁寧な説明をしましょう。
バイタルサインを測定する際は、説明をしたうえで患者から同意を得なければなりません。
意識がない患者や、コミュニケーションが難しい患者の場合は、同席している家族に説明をしましょう。
測定中も声かけを積極的に行い、患者の不安を取り除いてください。
記録・報告は正確に行う
バイタルサインの記録・報告は正確に行わなければなりません。
バイタルサインは患者の容態を把握し、治療方針を決めるうえで欠かせない情報です。
間違いがないよう、正確な記録を心がけましょう。
測定結果を報告する際は、ただ数字を述べるだけでなく、そこから把握できる情報を同僚の看護師に共有しましょう。
「基準値と比べてどうなのか」「気になる変化はないか」など、測定から得られる情報を共有すれば、より効果的な看護ケアを実践できます。
バイタルサインに関してはその重要性を十分理解し実践されているでしょう。病院では他看護師の目もあり、それほど大きなトラブルには繋がりにくいですが、看護師の配置が手薄な介護施設等では、バイタルを測定していても、それが『活きた情報』とならずに状態悪化に繋がってしまうことも散見されます。バイタルサインの変遷に如何に気付けるか?という部分が非常に重要なので、この辺りを看護師より介護スタッフへ教育していく必要があるケースは多いでしょう。また、介護施設では緊急時に救急車を要請するケースも多いと思います。そうした際に、意識レベル低下を伝える際JCSなどを活用し事前に救急隊に情報を伝えておくことは非常に重要です。どうしても感覚的な言葉で伝えてしまいがちですが、JCSなどを積極的に活用していきましょう。
なお、株式会社ワイズマンでは、病院のICT化をワンストップで実現したいとお考えの方に向けて「医療向け製品総合パンフレット」を無料で配布中です。
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バイタルサインは健康状態を示す重要なサイン
バイタルサインは患者の健康状態を示す重要な指標であり、体温や血圧などのような複数の項目があります。
看護師は患者ごとの平常値を把握しつつ、日々の変化を正確に測定しなければなりません。
バイタルサインを測定する際は、正しい測定方法を身につけることが重要です。
また、患者を不安にさせないよう、説明や声かけを積極的に行いましょう。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。