看護手順書とは?テンプレートや作成するときのポイントについても解説
2024.09.19
看護手順書は、医療と介護が連携するうえで重要な書類です。
看護手順書をどのように作成すれば良いかお悩みの方も多いでしょう。
この記事では、看護手順書の書き方と良い看護手順書の作り方について解説します。
テンプレートもありますのでぜひご覧ください。
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看護手順書とは
看護手順書とは、看護を行う中でケアの手順や使用する物品・環境などの情報を記載した資料のことです。
病院の場合、医師から看護師に診断補助を行ってもらうために作成されて、患者の病状や診断補助の内容が記載されることがあります。
- 患者の病状
- 診療補助の内容
- ケアの方法
- 感染症対策について
- 医師と連絡を行うときの連絡体制
医師からの伝達事項や患者の情報が記載されているため、取り扱いに注意しましょう。
看護手順書の重要性
看護手順書は、医師と看護師が連携して安全な医療を行うために、とても重要なものです。
看護師が触れるケアの中には、点滴や感染症対策のように、看護手順書に沿ったケアを行わないとアクシデントや院内感染につながる場合もあります。
看護師全体で手順書を把握しておくことで、事前に起こりうるトラブルを想定でき、対処ができるようになります。
ここでは看護手順書について、以下3つに分類して解説します。
- ケアに関する基本的な知識を共有するため
- 他職種と連携するため
- 看護技術を統一するため
ケアに関する基本的な知識を共有するため
看護手順書は、看護サービスの手順や使用する物品を、看護師全員に共有するために使用するものです。
初めて業務にあたる際は、「どうやったら良いの?」「何か使用するものはなかった?」など、作業を行う前に戸惑ってしまうことが多いです。
現場経験が浅い看護師は、実習などで経験していないケアに遭遇することが多く、なおかつ手順や準備物を忘れてしまっているケースもあります。
看護手順書を整備することで、新しく病棟に配属された看護師でも業務内容やその手順を把握でき、短い期間で現場へ定着することができます。
他職種と連携するため
病院や施設などで働いているのは、看護師だけではありません。
医師やリハビリ職員・厨房で勤務する栄養士さんと連携することで、より良いケアを患者に提供できます。
看護手順書で共有する情報は、リハビリの進行状況や医師の考える治療計画を知り、患者の状態回復に向けたケアを提供するために欠かせない情報です。
患者の状態回復を目指したケアを行うためにも、他職種と情報を共有しましょう。
看護技術を統一するため
一人一人ケアのやり方が異なることで、大きなアクシデントにつながるケースがあります。
やり方によっては不適切なケアになってしまうものや、一つひとつのケアの積み重ねが大きなミスにつながる場合があります。
また、ケアの手順を省くことで容態変化の兆候を見逃してしまうこともあるので、看護手順書を作成して看護師全員の看護技術を一つにすることが大切です。
看護技術を統一することで、看護師間で問題点を共有することができ、患者の病状が回復することにつながります。
看護手順書の作り方
ここでは、看護手順書の作り方について解説します。
看護手順書を作成する流れは、以下のとおりです。
- ケアの手順を最初から記載
- 準備や後片付けについて記載
- ポイントを記入する
- 看護師全体で見直す
それぞれ解説していくのでぜひご覧ください。
ケアの手順を最初から記載
看護手順書では、作業手順を最初から最後まで記載しましょう。
具体的に記載することで、初めて見る人でもスムーズにケアを行うことができて、正しい方法でケアを覚えられます。
順番が違うと間違ったケア方法を教える看護手順書になってしまうので、他の看護師と手順を確認し合うことも大切です。
また、ケアによっては、経管栄養やたん吸引など、資格がないと行えないケアも存在します。
手順書を通じて、資格のある看護師でないとできない作業を把握することが大切です。
準備や後片付けについて記載
ケアで行う手順だけではなく、準備作業や後片付けについてもまとめましょう。
ケアによって準備物や環境が異なるため、物品を保管している部屋や、「ケアを何曜日・何時に行っているか。」などを詳しく記載しましょう。
通常、オムツ交換や入浴介助はスケジュールが決まっていますが、看護手順書に記載することで、一日の流れを把握してスムーズに動きやすくなります。
作業を終えた後にチェックすることなどをまとめると、作業に慣れていない方でもスムーズに行うことができます。
ケアを行うときには、ベットの高さや胃瘻カテーテルの流す量など、守らなくてはいけないこともあるため、必ずこれらを記載しておきましょう。
ポイントを記入する
ポイントや重要な部分を記入することで、看護手順書を見たときに、ポイントを再度理解してケアを行うことができます。
これは、手順書を見ることで、注意点を再度確認することができ、気を付けて業務に臨めるためです。
以下の3点を看護手順書に記載することで、看護手順書を見た方はポイントを理解してケアを行うことができます。
- これまでのアクシデントやヒヤリハットの経験からどういうことに気を付ければ良いか
- ケアを行うときに無理せず実行することができ、手順書を見ることで作業が行いやすくなるか
- 作業は上手くいき、患者は満足しているか
なお、これから起きるアクシデントの防止にもつながるため、、リスク軽減が期待できます。
看護師全員で見直す
現場に看護手順書の内容を定着させるためには、作成者一人ではなく勤務している看護師全員が、手順書を見てケアを行うことができる状態を目指すことが大切です。
ミーティングや朝礼など全体で集まる機会で看護手順書を確認することで、他の看護師から意見を取り入れて、よりわかりやすい看護手順書を作成することができます。
また、手順書作成後も、実施している中で改善点を共有することが大切です。
看護手順書作成後も、実施していく中で新たに発見されたリスクや、やりにくいケアなどが出てくるため、看護手順書を更新し続けることで、より良い看護手順書になり、患者に満足してもらえるケアにつながります。
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看護手順書テンプレート
ここでは、看護手順書のテンプレートを紹介します。
以下では普段の業務の中でも、比較的イメージしやすい「食事介助」を例に、看護手順書のテンプレートをまとめています。
①患者の座っているテーブルにしょくじを配膳する | 食事を患者に配膳します。視覚に障がいのある方には触って食器の配置がわかるように、クロックポジションで今日の献立を知らせましょう。本人の状態に合わせて、食事用のエプロンや自助具を使用して一人でも食事ができるような工夫も大切なため、場合に応じて検討しましょう。配膳は必ず名前を確認して行いましょう。間違って配膳すると、誤嚥の原因になる危険やアレルギーなどを含む、食べれないメニューが提供されるので注意しましょう。 |
②声掛けをして食事を患者の口に運ぶ | 患者の口の大きさに合わせ、スプーンで食べ物を運びます。また、食事をするときには患者の姿勢や介護するポジションに注意しましょう。介護者は、必ず患者の横に座って、患者と同じ目線で介助を行いましょう。 ベッド上で行う場合には、ベットの頭の高さを上げましょう。座っている状態に近くなり、むせ込みや誤嚥がなく介助をすることができます。また、イスや車椅子に座っている場合でも長い間座ることで腰が痛くなり、姿勢が崩れてしまうことがあります。座る姿勢は、深く腰掛けた状態で足がきちんと床についていることを確認してください。誤嚥の原因になりますので、食事介助のときにはベットの角度や利用者の状態に注意して行いましょう。 |
③咀嚼を確認する | 食事介助をするときには必ず患者が飲み込んだか確認してから次の一口を提供しましょう。急いで介助してしまうことで他の気管に入って、誤嚥してしまうことがあるので、飲み込み確認は一口ごとに行いましょう。また、途中にお茶を提供することで食べ物が飲み込みやすくなり、口腔内に残食せず食事介助をすることができます。 |
④ ②と③を繰り返す | 食事を患者の口に運び、嚥下を確認してから再び患者の口に食事を運ぶことを繰り返します。 |
食事がもたらす効果 | 食事介助は、「美味しいね。」「今日のメニューはカレーです。」など看護師の声掛けが重要です。 声掛けにより患者の食欲が増し、毎回の食事を楽しみにすることができます。 活力が沸き自立心や前向きな気持ちになりますのでリハビリや日々の生活動作の向上にもつながります。 |
手順だけでなく、危険な場面を赤字で記載するなど工夫することでで見やすくなります。
また、食事介助の場合、服薬がある方や食事形態が異なる患者を表にまとめることで、一日の中で食後の配薬や食事形態を確認することができます。
手順書に、「食事がもたらす効果」を記載することで、食事がただの生活動作ではなく、リハビリや他の生活動作にも影響していることを客観的に把握できます。
これにより、食事介助への意識が変わり、患者に食事を楽しんでいただくための工夫にもつながります。
他にも感染症対策や手洗いなど、ケアを行う中で必ず守らなければならないこともマニュアルにまとめましょう。
良い看護手順書の作り方
ここでは、良い看護手順書の作り方について解説します。
安全なケアを行うためにどのような看護手順書を作成したら良いのかを詳しく解説するのでぜひご覧ください。
危険なケアや一日の中で作業回数が多い作業を優先して作成する
危険なケアや一日の中で作業回数が多い作業を、優先的に手順書へ落とし込むのがおすすめです。
例えば、転倒転落リスクがある入浴や、毎日行うオムツ交換などです。
特に、日々の状態観察で皮膚トラブルやすりむき傷などのアクシデントにつながる作業についても記載しましょう。
看護師全員が手順書の内容を意識して業務ができて、アクシデント報告が減少します。
みんなの意見を反映した看護手順書を作成する
作成者だけでなく、病院内の看護師全員の意見を反映させた看護手順書を作成することで、作業順序に付け加えなくてはいけないポイントや記載されていなかった注意点に気づけます。
また、より効率的なやり方や病院ごとのケア方針に合った看護手順書を作成でき、作業がしやすい内容にブラッシュアップできます。
ケアを行う中でも、看護手順書の改善点や新たなリスクを看護師全員が解消することで、安全にケアを行うための看護手順書を作成することができて、新しい患者を対応するときにも看護手順書に記載されている内容で対応することができます。
手順書を作業ごとに分けるなど見やすさを意識する
看護手順書を作成する際は、対象とする業務範囲を明確にすることが重要です。
仮に、看護手順書の内容が複数の業務にまたがると、必要な情報を探すのに手間取ったり、使いづらさから従業員が活用しなくなったりする恐れがあります。
一方、作業や担当者など、細かな区分で分けて看護手順書を作成すれば、必要な情報を瞬時に見つけられるでしょう。
また、重要な箇所をマーカーで示すほか、図形やイラストを入れることでより見やすく、なおかつ情報を把握しやすくなります。
看護手順書の目的は、知識の共有や業務フローの統一であるため、単に作成するのではなく、「新人看護師にとって活用しやすいか?」を意識してみてください。
患者に対応した看護手順書を作成する
患者は一人一人状態が違い、体が動かない部分やC型肝炎ウイルスなどの感染症を持っている患者も存在します。
感染症や対応する方法は一人一人異なるので、患者の状態に対応した看護手順書を作成することも大切です。
対応した過去の手順書を基に同じような患者の対応をすることができて、今後の看護の質を向上するための看護手順書を作成することができるので、特例の患者を対応する場合に作成しましょう。
診療報酬はもちろんのこと、介護報酬に於いても、その報酬体系のもとで提供したサービスはサービス提供者が変わろうと、(あってはいけませんが)サービス内容が大きく異なろうとも貰える報酬は一緒です。患者や利用者からしてみれば、同じお金を払っているのにサービスのクオリティが異なってしまうという困った状況になってしまいます。『サービスクオリティの標準化』というのが手順書の大きな役割となります。手順書は看護に限らず、訪問介護や介護施設でも取り入れられています。看護手順書に関しては、傷の処置や点滴、投薬など看護師でなければできず、なおかつ患者・利用者への影響が大きい内容が含まれるケースも多く、慎重に作成をする必要があります。こうした事情から看護手順書を作成するシステムは関係者と共有しやすいものを選びましょう。
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看護の質を向上するために看護手順書を作成しよう
看護手順書は病院の看護師全員が看護技術を統一するために大切なマニュアルです。
新しく配属された看護師や看護学生でも、「どうやったら良いの。」と悩まずにケアを行うことができます。
安全で無理のないケアを行うためには、看護師全員が看護技術を統一して患者の状態回復に向けたケアを提供することが重要です。
病院全体の看護の質を向上するためにも、正しい手順で看護手順書を作成してみてください。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施設づくり」を積極的にサポートしている。