電子カルテの義務化はいつから?選ぶポイントや導入手順まで徹底解説

2024.11.16

電子カルテの義務化っていつから?
導入コストや業務の混乱が心配……
電子カルテを導入しないと取り残されるのかな?

電子カルテの義務化は、2030年を目途に普及が目指されています。
しかし、多くの施設が導入に不安を抱えているのも事実です。

本記事では、電子カルテ義務化の最新動向から、導入のポイント、予想される課題まで解説していきます。

電子カルテの義務化は避けられない流れです。
適切な準備をしておけば、日常業務の効率化にもつながります。
大切なポイントは、電子カルテ導入の準備をしっかりと整えておくことです。

電子カルテ導入による変化やシステムを選ぶポイント、導入手順をしっかり確認しておきたい方は、ぜひ参考にしてください。

電子カルテの義務化はいつから?【2030年までに普及目指す】

電子カルテは、患者の診療情報をデジタル化して記録・保存するシステムです。
紙のカルテと違い、情報の共有や分析がしやすくなります。

現在、電子カルテの義務化に関しては、明確な期限は定められていません。
しかし、厚生労働省は2030年までの普及を目指しています。
導入は大規模医療機関から段階的に進められる見込みです。

厚生労働省の方針と取り組み

厚生労働省は2030年までに電子カルテの全国普及を目指す方針を発表しました。
この取り組みは、医療・介護分野のデジタル化を推進し、効率的な医療サービスの提供が目的です。

医療DX令和ビジョン2030」では、電子カルテの標準化は段階的に実施される予定で、まずは以下の文書から始まります。

  • 診療情報提供書
  • 退院サマリー
  • 健診結果報告書

その後、対象となる文書や情報は順次拡大されていく見込みです。

義務化の目的と期待される効果

電子カルテの義務化は、少子高齢化が進み、医療従事者の確保が難しくなる中、質の高い医療サービスを維持・向上させるために必要な取り組みです。

電子カルテ義務化の目的には、以下のようなものが挙げられます。

患者の利便性向上複数医療機関での診療情報の簡単な共有
重複検査や投薬の回避による負担軽減
医療の質向上正確で迅速な診断・治療の実現
医療機関間の連携強化
医療費の適正化無駄な検査や投薬の削減
医療資源の効率的な活用
医療サービスの効率化事務作業の簡素化
医療従事者の業務負担軽減

上記の効果は、単に医療機関の業務改善にとどまらず、患者中心の医療の実現にもつながります。

電子カルテ普及の現状と課題

電子カルテの普及は、医療機関の規模によっても差があります。
大規模病院では電子カルテの導入が進んでいますが、中小病院や診療所では普及が遅れているのが現状です。

具体的な数字は以下のとおりです。

出典:厚生労働省「電子カルテシステム等の普及状況の推移

普及に差が出る主な理由は「コスト」です。
電子カルテの導入には、導入や運用のコストがかかります。

特に中小病院や診療所にとって、これらのコストは大きな課題となっています。
また、医療従事者の高齢化も普及を遅らせる一因です。
ITスキルの習得に時間がかかることや、従来の紙カルテでの運用に慣れていることから、変更への抵抗感が強い場合もあります。

電子カルテ導入による介護施設の変化

電子カルテが導入されれば、介護施設には以下のような変化が期待できます。

  • 介護記録の効率化と情報共有
  • 職員の業務負担軽減
  • 請求業務の正確性と効率性向上

それぞれ詳しく説明します。

介護記録の効率化と情報共有

電子カルテの導入は、介護記録の効率化と情報共有の面で、改善が期待できます。
具体的には、以下のような業務の効率化が期待できます。

介護記録の作成時間短縮テンプレートや入力補助機能により、迅速かつ正確な記録が可能
リアルタイムでの情報共有利用者の状態変化や服薬情報の即時更新
過去の記録の即時検索・参照利用者の健康状態の推移を簡単に確認
過去のケアプランや介入効果も検索可能

電子カルテの導入によりスタッフの業務効率が向上すれば、個々の利用者に対するケアの質も向上するでしょう。

職員の業務負担軽減

電子カルテの導入により、介護施設の職員の業務負担も軽減されます。
職員の業務負担が軽減されれば、以下のような効果が期待できます。

  • 記録作成にかかる時間が減少
  • 情報検索が迅速化
  • 転記ミスのリスクが低下
  • 書類保管用のスペースが不要

職員の業務負担が減れば、職員のストレス軽減や利用者へのサービス向上につながり、介護施設全体の運営改善にもつながります。

請求業務の正確性と効率性向上

電子カルテの導入は、介護施設の請求業務にも影響を与えます。
従来の手作業による請求処理と比べ、電子カルテの利用により、請求ミスが減少し、レセプト作成時間が短縮される効果が期待できます。

電子カルテの導入による改善は、単に業務効率を上げるだけではありません。
請求業務などが効率化されれば、適切な人員配置を可能にしてくれます。

電子カルテを選ぶ3つのポイント

電子カルテを選ぶ際に大切なポイントは、以下の3つです。

  • 操作性を確認
  • 費用対効果を検討
  • 他システムとの連携機能を比較

それぞれのポイントを確認しておきましょう。

操作性を確認

電子カルテを選ぶ際のポイントの一つは操作性です。

操作性を重視すべき理由は主に二つあります。
まず、介護現場では多忙な業務の中で記録を行う必要があるため、複雑な操作は避けたいところです。

次に、スタッフの年齢や IT スキルにばらつきがある場合も多く、誰もが簡単に使えるシステムが求められます。

操作性の良い電子カルテを選ぶことで、導入後のスタッフの抵抗感を減らし、スムーズな運用が可能になります。

費用対効果を検討

電子カルテを導入する際、費用対効果の検討は欠かせません。
費用対効果を評価する際は、以下の点を考慮しましょう。

  • 初期導入コスト(ハードウェア、ソフトウェア、導入支援サービスの費用)
  • 運用コスト(保守料、更新料、トレーニング費用)
  • 業務効率化による人件費削減の可能性
  • ペーパーレス化による消耗品費の削減
  • 請求ミス減少による収益改善

費用対効果を検討する際は、導入時のコストにだけ注目してはいけません。
導入したことにより、削減される費用もあるからです。

電子カルテの導入を検討する際は、詳細な見積もりを取得し、自施設の状況と照らし合わせながら、費用対効果を検討しましょう。

他システムとの連携機能を比較

電子カルテを選ぶ際には、他システムとの連携機能も大切なポイントです。
システムの連携機能を確認する際は、以下の点を確認しておきましょう。

  • 既存のシステムとの互換性
  • データの自動連携機能の有無
  • 地域医療ネットワークへの対応
  • 将来的な拡張性

電子カルテ選びの際は、実際にデモンストレーションを見たり、トライアル版を使用したりして、連携機能の使いやすさや拡張性を十分に確認しておく必要があります。

電子カルテの導入手順

電子カルテの主な導入手順は、以下のとおりです。

  1. 現状分析と導入計画の作成
  2. ニーズに沿ったシステム選定
  3. 職員教育と運用体制の構築

それぞれの具体的な手順を確認していきましょう。

現状分析と導入計画の作成

電子カルテを導入する場合は、まずは現状を分析し、それに基づいた導入計画の作成が必要です。

具体的には、以下のようなポイントを踏まえて現状分析、導入計画を作成しましょう。

  • 現行の業務フローの分析と非効率な作業の特定
  • 電子化による改善点の洗い出し
  • 段階的な導入スケジュールの策定
  • スタッフ教育の時間確保

電子カルテの導入は単なるシステム更新ではなく、業務プロセス全体の変更が必要になる場合もあります。

ニーズに沿ったシステム選定

電子カルテ導入の際には、適切なシステム選定が欠かせません。

システム選定で重視すべき点は、必要な機能の洗い出しと実際の使用感の確認です。
まず、現状分析で明らかになった課題を解決できる機能をリストアップします。
リストを基に、複数の製品を比較検討するようにしましょう。

単に機能が多いシステムではなく、施設の実情に最適なシステムを選定する必要があります。

職員教育と運用体制の構築

電子カルテの導入効果を最大限に引き出すためには、職員教育と運用体制の構築が欠かせません。
具体的な取り組みには、以下のようなものが考えられます。

  • 基本操作から応用機能まで、段階的な研修プログラムの実施
  • 実践的なシミュレーションを通じた学習
  • 具体的な記録入力ルールの策定
  • 情報共有の手順や方法の明確化

導入後の対策も立てておくことで、職員全体のスキルアップと統一された運用が可能となります。

電子カルテは道具にすぎません。
それを使いこなす職員のスキルが、適切な運用には必要です。

電子カルテ導入の課題

電子カルテ導入は、義務化が目指されていますが、いくつかの課題も存在します。
主な課題は、以下の3つです。

  • 初期費用と運用コストの負担
  • ITスキル不足による業務効率低下
  • データ移行と新旧システムの併用

それぞれの具体的な課題内容を確認していきましょう。

初期費用と運用コストの負担

電子カルテ導入による課題の一つは、初期費用と運用コストの負担です。
具体的にかかるコストには、以下のようなものが挙げられます。

  • ハードウェア(サーバー、端末機器など)の購入費用
  • ソフトウェアのライセンス料
  • システム導入時の設定や調整にかかる費用
  • 保守費用(年間契約が一般的)
  • 定期的なシステムアップデート費用

上記の費用は、施設の規模や導入するシステムの機能によっても変動します。

導入を検討する際は、初期費用だけではなく、長期的な運用コストも含めた総合的なコストを算出しておきましょう。

ITスキル不足による業務効率低下

電子カルテ導入の課題の一つは、ITスキル不足による業務効率低下です。
具体的な課題には、以下のようなものが挙げられます。

  • 高齢職員のIT操作スキル習得の困難さ
  • 非常勤職員への継続的な研修機会の確保
  • 新システムへの抵抗感や不安による導入の遅れ
  • 操作ミスによるデータ入力の誤りや遅延

課題に対処するためには、具体的な対策が必要です。
例えば、年齢や雇用形態に配慮した段階的な研修プログラムの実施や、操作に不安のある職員向けのサポート体制の構築が効果的でしょう。

データ移行と新旧システムの併用

電子カルテ導入で直面する課題の一つが、データ移行と新旧システムの併用です。
適切に対処しなければ、データの不整合や業務効率の低下を招く恐れがあるからです。

データ移行と新旧システム併用の具体的な課題には、以下のようなものが考えられます。

  • 紙カルテから電子データへの変換作業の煩雑さ
  • 過去の記録の正確な電子化
  • 移行期間中の二重入力による職員の負担増

上記のような課題に対処するためには、綿密な計画と段階的な導入が必要です。

伊谷 俊宜氏
伊谷 俊宜氏

そもそも国はなぜ2030年を目途に電子カルテの普及を目指すのでしょうか。その理由は、急速に進む高齢化と人口減少にあります。日本の高齢者数が最大化する2040年には5人に1人が医療・介護従事者として必要と試算されています。現時点でも人手不足なのに、超高齢化社会を迎える日本では、今後さらに医療・介護従事者が必要になるわけです。つまりは、医療・介護業界のDX化は最早必須であるため、国も電子カルテだけではなく、様々な業務効率化策を練っているわけです。確かにこれまでのやり方を大きく変える必要があるため、現場は一時的に混乱するかもしれません。しかしながら、上述のような未来がみえているわけなので、待ったなしで施策を進めていく必要があることが言うまでもないでしょう。変化を恐れずチャレンジしていきましょう。

電子カルテ義務化に向けた準備を進めよう

現時点で電子カルテの完全義務化は決定されていませんが、2030年までの全国普及を目指す方針が示されています。
この流れは、介護現場に大きな変化をもたらすでしょう。

確かに、初期費用や運用コスト、ITスキルの向上、データ移行など、課題は少なくありません。
しかし、電子カルテ導入によって得られるメリットは計り知れません。
業務効率の向上や情報共有の円滑化、利用者へのケアの質向上など施設と利用者にとっても必要な変化です。

段階的な導入計画、適切なシステム選定、職員教育を丁寧に進めることで、電子カルテの導入をスムーズに進められるでしょう。

義務化が決まって焦ることのないように、今のうちから必要な準備を進めていきましょう。

監修:伊谷 俊宜

介護経営コンサルタント

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。

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