電子カルテの耐用年数とは?減価償却や買い替えについて解説
2024.11.16
近年、多くの医療施設で電子カルテが導入されるようになりました。
電子カルテは患者の情報を手軽に入力したり、共有できたりするため、業務の効率化にも役立つツールです。
しかし、電子カルテには耐用年数があり、一定の期間が経過すると定期的に買い替えが必要になるなど、運用面で注意すべきポイントがあります。
本記事では、電子カルテの耐用年数について解説します。
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目次
電子カルテにおける耐用年数とは
まずは電子カルテにおける耐用年数の定義を確認しましょう。
耐用年数を理解すれば、電子カルテの適切な運用が可能です。
本章では、耐用年数の意味や、実際の年数について解説します。
そもそも耐用年数は2種類に分けられる
耐用年数は、大きく分けて以下の2種類があります。
- 電子カルテを故障がない状態で使用できる期間
- 国税庁が定めた会計上の耐用年数(法定耐用年数)
一般的にイメージされる「耐用年数」は前者ですが、会計上の耐用年数は意味が異なる点に注意しましょう。
会計上の耐用年数は、「減価償却の対象となる資産が利用できる年数」を意味します。
一般的に電子カルテの耐用年数は、会計上の耐用年数を前提にしており、保証期間や買い替え時期もそれに合わせて設定されています。
電子カルテの耐用年数は3〜5年
国税庁で定められている電子カルテの耐用年数は以下のとおりです。
電子カルテの種類 | 耐用年数 |
「複写して販売するための原本」または「研究開発用のもの」 | 3年 |
「その他のもの」 | 5年 |
10万円以上の電子カルテはソフトウェアに分類される資産であり、医療機関で利用されるものは「その他のもの」として扱われます。
そのため、医療機関で一般的に使用される電子カルテの耐用年数は5年です。
耐用年数を踏まえた電子カルテの減価償却
電子カルテは取得価額(購入代金)が10万円以上に達すると、減価償却をしなければなりません。
減価償却は、電子カルテの取得価額(購入代金)を耐用年数で割った金額を産出する方法が一般的です。
例えば、100万円の電子カルテを購入した場合、減価償却の計算方法は以下のとおりです。
1,000,000円(取得価額)÷5年(耐用年数)=200,000円(減価償却額)
このように耐用年数の間に同じ金額を毎年償却する方法は定額法と呼ばれます。
なお、医療機関によっては、一定の掛け率をかけて償却率を算出する「定率法」を利用する場合があります。
電子カルテの耐用年数が過ぎた際に必要な対応
耐用年数が過ぎた場合、電子カルテは以下のような対応が必要です。
- 電子カルテの買い替え
- 保守契約やリース契約などの更新
それぞれの対応について、順番に解説します。
電子カルテの買い替え
オンプレミス型の電子カルテの場合、耐用年数を超えると買い替えを行う必要があります。
オンプレミス型とは、ソフトウェアを購入する際にサーバーやネットワーク機器などを合わせて設置する導入形態です。
オンプレミス型は耐用年数を過ぎるとバージョンアップしたり、別の製品に買い替えたりする必要があります。
なお、買い替えをしなくても電子カルテは続けて使用できます。
しかし、劣化によってエラーが発生するリスクが高まるため、電子カルテを問題なく利用するなら、なるべく買い替えましょう。
また、電子カルテの買い替えやバージョンアップはコストがかかる施策です。
特にオンプレミス型は導入費用が数百万円に達するケースが多く、医療機関にとっては多大な負担となります。
コストを抑えるなら、オンプレミス型とは異なる形態の電子カルテへの買い替えも検討しましょう。
保守契約やリース契約などの更新
耐用年数を過ぎると、保守契約やリース契約などの更新も必須です。
オンプレミス型の場合、保守期間が過ぎるとベンダーから保守を受けられないため、エラーが起きやすくなります。
また、電子カルテをリースしている場合、リース契約の更新が不可欠です。
ただし、各種契約の更新は手間がかかるうえに、ベンダーによっては追加料金を請求されます。
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電子カルテの買い替えを避ける方法
医療機関にとって、電子カルテの買い替えは大きな負担です。
しかし、コストを意識するあまり、耐用年数を超えて電子カルテを使用すれば、業務中にトラブルが起こるリスクが高まります。
電子カルテの買い替えを避けるなら、クラウド型電子カルテの導入を検討しましょう。
本章ではクラウド型電子カルテについて解説します。
クラウド型電子カルテを利用する
買い替えを避けるなら、クラウド型電子カルテを利用する方法がおすすめです。
クラウド型は、ベンダー(販売業者)のサーバーにアクセスして利用するタイプの電子カルテです。
インターネットに接続していれば利用できるうえに、端末を選ばないため、手軽に導入できます。
何より、クラウド型電子カルテはベンダーが自動でバージョンアップするため、耐用年数を気にせずに利用できます。
バージョンアップの費用はすでに月額料金に含まれているため、追加で料金が発生しない点もメリットです。
なお、クラウド型電子カルテは、会計上では資本投資としては扱われません。
運用費用として計上できるため、減価償却をする必要がありません。
そのため、会計の業務負担も減らせます。
クラウド型電子カルテのメリット
クラウド型電子カルテには、以下のようなメリットが期待できます。
- 買い替え不要
- 種類によっては減価償却が不要
- 料金が安い
買い替え・減価償却が不要なうえに、料金が安い点もクラウド型電子カルテのメリットです。
オンプレミス型はソフトウェアに加え、ネットワーク機器やサーバーのようなハードウェアも購入する必要があります。
製品によっては端末も指定されるため、導入費用が大きくなりやすい点がデメリットです。
しかし、クラウド型電子カルテはインターネットに接続さえできれば、任意の端末でアクセスできます。
タブレットやスマートフォンを使えば、外出先でも電子カルテにアクセスできるため、利便性が大きく向上します。
また、クラウド型電子カルテは既存のシステムと連携しやすい点も特徴です。
そのため、導入しても業務プロセスを大きく変更する必要がありません。
クラウド型電子カルテのデメリット
クラウド型電子カルテはメリットが多い一方、無視できないデメリットもあります。
クラウド型電子カルテのデメリットは以下のとおりです。
- インターネット接続が必須
- カスタマイズ性が低い
クラウド型電子カルテは、常時インターネットに接続しなければ利用できません。
しかし、インターネット接続にはサイバー攻撃や不正アクセスを招くリスクがあります。
そのため、クラウド型電子カルテを導入する際は、セキュリティ対策の強化も進めなければなりません。
また、クラウド型電子カルテはカスタマイズ性が低い傾向にあり、機能やインターフェースが業務とマッチしない場合もあります。
追加でオプションをつけられる製品もありますが、カスタムするとコストが増加するので注意しましょう。
電子カルテに限らず、クラウド化というのは医療・介護業界における帳票管理のキーワードでしょう。クラウドと聞くと真っ先にセキュリティの問題で二の足を踏んでしまう方も多いのではないでしょうか。サイバー攻撃による大企業の情報漏洩などのニュースをみてしまうとそういったお気持ちになるのも無理ないでしょう。しかしながら、昨今のクラウドサービスはセキュリティ強度が格段に高まっています。セキュリティの心配は杞憂に終わるケースの方が圧倒的に多いのです。
クラウドサービスのメリットは、何と言っても「コストが安い!」ことです。カルテの電子化を長期的な視野で考えるとき、これは非常に大きいメリットでしょう。また、情報へのアクセシビリティもクラウドのメリットです。情報を『活用』する観点でよいシステムを選んでいきましょう。
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電子カルテは耐用年数を踏まえて運用しよう
電子カルテは耐用年数を踏まえて運用しなければなりません。
耐用年数は減価償却に大きく関わるうえに、電子カルテが安定して機能することを保証する期間でもあります。
もし、耐用年数を無視して利用すれば、予期せぬタイミングでエラーが発生し、運用に支障をきたすリスクが高まります。
しかし、耐用年数が過ぎた電子カルテの買い替えは、医療機関にとって大きな負担になるものです。
耐用年数が終わりそうな際は、買い替えが不要なクラウド型電子カルテへの切り替えを行うなど、対策を検討しましょう。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。