グループホームの運営基準は?基本項目や取り組みをわかりやすく解説

2025.01.22

「グループホームを開設したいけど、運営基準がよくわからない……」

高齢化社会が進む中で、グループホームへのニーズはますます高まっています。しかし、いざ開設・運営となると、複雑な運営基準を理解し、クリアしていく必要があります。

基準を満たしていないと、入居者の安全や適切なケアの提供が難しくなるだけでなく、行政処分を受ける可能性もあるため、しっかりと理解しておかなければなりません。

この記事では、グループホームの運営基準の概要や施設・設備基準、人員配置基準、提供サービス内容など、基本的な項目から具体的な取り組みまで、わかりやすく解説します。

この記事を通して、グループホームの運営基準を理解し、適切な運営を目指しましょう。

そもそもグループホームとは?

グループホームは、認知症の高齢者が共同生活を送るための介護施設です。正式名称を「認知症対応型共同生活介護施設」といい、専門スタッフのサポートを受けながら、自立した生活を目指す場所です。

環境の変化は認知症の方にとって大きなストレスとなるため、グループホームでは家庭的な雰囲気づくりを大切にしています。入居条件と施設の概要は以下のとおりです。

入居条件要支援2以上の認知症の方
入居期間特に制限なし
入居一時金0~16万円
月額利用料8.3~13.8万円
入居地域原則として施設がある市区町村に住民票がある方

グループホームの特徴は、5~9人程度の「ユニット」と呼ばれる生活空間で共同生活を送る点です。入居者は能力に応じて家事などの役割を担い、これは生活リハビリの一環となっています。

メンバーが固定された少人数での生活のため、環境の変化が少なく、認知症の方も穏やかに過ごしやすい環境が用意されています。

参照:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等の一部を改正する省令
参照:認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)について|厚生労働省

グループホームと他の介護施設の違い

グループホームと他の介護施設では、サービス内容や入居条件に違いがあります。

主な介護施設との違いは、以下のとおりです。

施設種別入居対象者特徴利用期限
グループホーム要支援2以上の認知症の方5~9人の少人数での共同生活なし
介護付き有料老人ホーム原則として自立~要介護5充実した介護・看護体制なし
介護老人保健施設(老健)要介護1~5リハビリ中心の中間施設リハビリ目標達成まで
特別養護老人ホーム原則要介護3以上公的な長期入所施設なし

グループホームでは入居者自身が掃除や洗濯などの家事を行います。これは自立支援の一環として位置づけられており、他の施設のようにスタッフが全面的にサポートする形とは異なります。

施設選びでは、ご本人の状態や目的に合わせて、それぞれの特徴を見極めることが大切です。特に認知症の方の場合、環境の変化による混乱を避けるため、慎重な選択が必要となります。

グループホームの運営基準に関する基本項目

グループホームの運営には、入居者の安全と適切なケアを提供するために、遵守すべき基準が定められています。

ここでは、施設・設備基準、人員配置基準、提供サービス内容といった主要な運営基準について解説します。

施設・設備基準

グループホームでは、入居者が安心して快適に生活できるよう、施設・設備に関する明確な基準が定められています。

具体的な基準は、以下のとおりです。

施設の規模1ユニットに5~9人の共同生活空間を設置/1事業所は最大3ユニットまで設置可能です。
必要な設備個室は1部屋あたり7.43㎡以上の広さが必要です。
共用の居間、食堂、台所、浴室を設置し、消火設備や災害時対応設備を整備する必要があります。
バリアフリーにも対応しなければなりません。

居室は原則として個室となりますが、夫婦での入居など必要と判断される場合は2人以上での入居も可能です。

人員配置基準

グループホームでは、入居者への適切なケアを提供するため、明確な人員配置基準が定められています。24時間体制での支援を実現するため、役割ごとに必要な人数や資格要件が細かく規定されています。

具体的な配置基準は、以下のとおりです。

介護職員入居者3人に対して1人以上の配置が必要/最低1人は常勤職員を配置/日中と夜間で必要人数が異なる入居者の状態に応じて柔軟な人員配置が可能
計画作成担当者事業所に1人以上の配置が必要/実務者研修基礎課程または認知症介護実践者研修の修了が必須/1人以上は介護支援専門員の資格が必要/入居者一人一人のケアプラン作成を担当
管理者ユニットごとに常勤の管理者を配置/特別養護老人ホームなどでの3年以上の実務経験が必要/厚生労働省が定める管理者研修の修了が必須/他の職種との兼務も可能/人事・労務管理から運営管理まで幅広い業務を担当
代表者認知症高齢者介護の実務経験または福祉サービス事業の経営経験が必要/認知症対応型サービス事業開設者研修の修了が必須/グループホーム全体の運営責任を担う

各職種が専門性を活かしながら連携することで、より充実したサービスを実現できるでしょう。特に介護職員の配置については、入居者の状態や介護ニーズに応じて柔軟に対応する必要があります。

常勤換算の計算方法

常勤換算とは、介護施設で働くスタッフの実質的な人数を算出する方法です。

具体的な計算式は、以下のとおりです。

常勤換算人数=常勤職員の数+(非常勤職員の労働時間の合計÷常勤職員の勤務時間)

具体的な計算例として、ある施設の職員体制を見てみましょう。

職員の勤務形態は、以下のとおりです。

  • Aさん(常勤)週40時間勤務
  • Bさん(常勤)週40時間勤務
  • Cさん(非常勤)週25時間勤務

この場合、常勤職員2名に加えて、非常勤職員の25時間を常勤基準(40時間)で割った数を加えます。つまり、2+(25÷40) =2.625人が実質的な職員数です。

常勤換算の考え方は、グループホームの人員配置基準を満たしているかどうかを判断する際の指標となります。

管理者の兼務

グループホームの管理者は、原則として各ユニットに常勤で1名の配置が必要です。ただし、管理業務に支障がない場合は、以下のような兼務が認められています。

  • グループホーム内の計画作成担当者
  • グループホーム内の介護職員
  • 同一敷地内の他の介護事業所の職務

グループホームは比較的小規模な施設のため、実際の現場では管理者が計画作成担当者や介護職員を兼務するケースが多く見られます。
ただし、兼務する場合は管理業務と現場業務の両立による負担増加に注意が必要です。

夜勤体制

グループホームでは、入居者の24時間安全な生活を支えるため、夜勤体制に関する基準が定められています。原則としてユニットごとに1名の夜勤職員を配置することが基本です。

ただし、3ユニット設置の場合は以下の条件をすべて満たせば、2名の夜勤職員での対応が認められています。3ユニット設置の特例条件は、以下のとおりです。

  • 3ユニットが同一階に隣接
  • 職員による状況把握が円滑に行える構造
  • 安全対策マニュアルの整備

夜勤体制の緩和措置は、深刻な人材不足に対応しつつ、入居者の安全確保を両立させるために設けられています。ただし、入居者の安全を最優先に考え、適切な夜勤体制を整えなければなりません。

提供するサービス内容

グループホームで提供されるサービスは、大きく以下の3つに分類されます。

身体介護食事、入浴、排泄の介助など、必要に応じた直接的な支援
生活支援食器洗いや洗濯物たたみなど、日常的な家事を入居者と共に実施
機能訓練散歩やラジオ体操、音楽鑑賞など、心身機能の維持・向上を目指す活動

特にグループホームでは、できることは自分で行うことを基本とし、家庭的な環境の中で自立した生活が送れるよう支援します。

また、認知症の進行を緩やかにするため、日常的な活動を通じて適度な刺激を提供することも重視しています。

グループホームの運営基準を満たすための具体的な取り組み

グループホームの運営基準を満たすためには、日々の運営計画や記録体制の整備、スタッフの役割分担など、多岐にわたる取り組みが必要です。ここでは、具体的な取り組みについて解説します。

日々の運営計画

グループホームでは、入居者一人一人の生活の質を高めるため、個別支援計画に基づいた運営計画を立てます。日常生活の支援からレクリエーション活動まで、きめ細かな計画を立てることで、入居者の自立した生活をサポートします。

日々の運営計画に含まれる主な項目は、以下のとおりです。

日常生活支援食事、入浴、排泄など、個々の生活習慣に合わせた支援
レクリエーションゲーム、音楽鑑賞、園芸など、興味に応じた活動
地域交流住民との交流会、ボランティア活動、近隣施設への訪問
個別支援計画目標や課題に応じた支援内容の設定と定期的な見直し

これらの計画は、入居者の意向を尊重し、主体的な生活を支援する視点で作成します。また、定期的な評価と見直しを行うことで、より良い支援の実現を目指します。

記録体制の整備と監査への準備

グループホームの運営基準を満たすためには、適切な記録体制の整備が不可欠です。

必要な記録の種類と内容は、以下のとおりです。

健康記録バイタルサイン、服薬状況、通院記録
サービス提供記録提供内容、日時、担当者
事故発生記録発生状況、対応内容、再発防止策
人員配置記録勤務シフト、常勤換算の管理

これらの記録は、法令で定められた期間、適切に保管する必要があります。特に個人情報の取り扱いには十分な注意を払い、記録の保管方法や開示手順についても明確なルールを設けましょう。

スタッフの役割分担とチーム運営

グループホームの運営は、さまざまな専門職がチームとして協力することで成り立っています。主なスタッフの役割には、以下のようなものがあります。

管理者施設運営の統括、職員の指導監督、運営方針の決定
介護職員日常生活の支援、健康管理、入居者との相談対応
看護職員健康状態の観察、服薬管理、医療機関との連携
栄養士栄養管理、献立作成、食事に関する指導

専門職が効果的に連携できるよう、定期的な会議や研修を実施する必要があります。情報共有を密にし、それぞれの専門性を活かしながら、入居者一人一人に寄り添った支援を実現していきましょう。

施設全体でチームワークを高め、スタッフ一人一人がやりがいを持って働ける環境づくりも、より良い介護サービスの提供につながります。

運営基準に違反したらどうなる?

グループホームの運営基準は、入居者の安全と適切なケアを保証するために定められた規則です。これらの基準に違反した場合、厳しい処分が下される可能性があります。

運営基準違反の主な事例には、以下のようなものが挙げられます。

  • 日中の介護職員数が基準を下回る
  • 必要な資格を持つ職員が不在
  • 施設設備が基準を満たしていない

違反が確認された場合、まず市区町村による指導が入ります。改善が見られない場合は、より厳しい処分として指定取り消しなどの行政処分を受ける可能性があります。

運営基準の違反を防ぐため、日頃から人材の確保と定着に努め、基準を遵守した運営を心がけましょう。特に人員配置基準については、余裕を持った採用計画と職場環境の整備が欠かせません。

伊谷 俊宜氏
伊谷 俊宜氏

グループホーム(以下GH)の利用率は平均で95%を超えており(独立行政法人福祉医療機構資料より)、非常に人気のある業態です。空室だらけのGHというのは、あまり目にしたことがありません。一方で、GHはユニット制で、1ユニット最大9名までとなっています。2021年介護報酬改定にて、GHは3ユニットでの開設が可能となりました。定員が増える(18名⇒27名)ので、収益性の向上が期待されましたが、昨今人件費の高騰などもあり、2ユニットのGHが現状一番収益性が高い状況となっています。GHは地域密着型のサービスでもあり、尚且つ小規模な事業形態であるため、その経営は決して楽ではありません。2023年度のGH赤字施設割合は35.6%とかなりの高水準となっています。参入の際は入念な事業計画が必須です。

まとめ|グループホームの運営基準を理解し適切な運営をしよう

グループホームの運営基準は、入居者が安心して快適な生活を送るための指針です。施設・設備面では個室の広さや必要な設備が定められ、人員配置では介護職員の配置基準から夜勤体制まで、きめ細かな基準が設けられています。

それぞれの基準を満たしながら、入居者一人一人に寄り添った支援を実現するためには、適切な記録管理やスタッフの役割分担、チーム運営など、日々の取り組みが欠かせません。特に認知症の方が安心して生活できる家庭的な環境づくりは、グループホームならではの重要な要素です。

運営基準の違反は行政処分につながる可能性もあります。基準を正しく理解し、確実に遵守することで、入居者の尊厳ある暮らしを支える、質の高い介護サービスを提供していきましょう。

監修:伊谷 俊宜

介護経営コンサルタント

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。

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