有料老人ホームの重要事項説明書とは?記入の仕方や提出について解説
2023.02.13
有料老人ホームの入居契約を行なう際、事業者は契約書とは別に重要事項説明書の内容について入居者やご家族に説明し、交付する義務があります。重要事項説明書は契約時だけでなく、資料請求や施設見学を希望される場合にも開示しなければなりません。
重要事項説明書には施設の実態がこと細かく記載されているため、入居者やご家族が入居先の比較検討をするうえで、重要な決め手となります。入居者やご家族からの疑問や不安を解消するためにも、重要事項説明者の中身を理解しておくことが欠かせません。
この記事では、有料老人ホームの重要事項説明書の記載内容や提出先について、詳しく解説していますので、ぜひ最後までお読みください。
重要事項説明書とは
重要事項説明書とは、有料老人ホームに限らず、住居への入居を希望する方に対して契約事項を説明するための説明書のことです。
先述の通り、重要事項説明書は契約書とは別の書類です。専門用語が並んでいて内容が理解しにくい契約書とは違い、重要事項説明書は平易な文章で分かりやすく書かれている特徴があります。
利用者の有料老人ホーム選びに使われる書類
重要事項説明書は、希望すれば誰でも閲覧することができる書類です。
契約に関する重要事項が記載されているため、利用者の施設選びに大きく関わります。そのため重要事項説明書の開示に応じない施設は、訳ありの施設であると判断されてもしかたありません。
重要事項説明書が掲載される場所
重要事項説明書は、施設や各自治体のホームページに掲載されています。ダウンロードして入手することが可能です。
重要事項説明書のひな形は厚生労働省のホームページにも掲載されていますので、気になる方はご参照ください。
(※)参考:有料老人ホームの設置運営標準指導指針について
有料老人ホームの重要事項説明書の記入事項
有料老人ホームの重要事項説明書には、一定のひな型があります。一般的な記入事項を解説します。
事業主体概要
事業主体概要には、有料老人ホームの運営元に関する情報を記載します。
記入年月日が1年以内であるかどうかを確認し、1年以上前である場合は自治体のホームページの情報公開一覧にあるダウンロードページで掲載されているものと日付が同じか確認してください。
- 有料老人ホームを運営する法人の名称
- 所在地
- 連絡先
- 代表者
- 会社設立の年月日
- 主な実施事業
有料老人ホームの事業概要
有料老人ホームの事業概要には、有料老人ホームに関する情報を記載します。
住まいの概要
- 有料老人ホームの名称
- 所在地
- 主な利用交通手段
- 連絡先
- 管理者名
- 建物の竣工日
- 有料老人ホーム事業の開始日
類型
下記の1から4の類型を選択します。1または2に該当する場合は、介護事業所としての登録内容(事業者番号、指定した自治体名、事業所の指定日、指定の更新日)を記載します。
- 介護付(一般型特定施設入居者生活介護を提供する場合)
- 介護付(外部サービス利用型特定施設入居者生活介護を提供する場合)
- 住宅型
- 健康型
建物概要
入居する建物の規模や構造、所有関係について記載します。居室は全個室か相部屋があるか、一般居室か介護居室かの区分のほか、共用設備や防火設備について記載します。
サービスの内容
サービス内容は、入居者やご家族が特に重視される項目であるため、詳細に記入する必要があります。
全体の方針
運営面において、もっとも力を入れている箇所を記載します。
介護サービスの内容
サービスの提供に関してホームが行なうのか、外部委託業者が行なうのか、入居者自身で行うのかを記載します。
医療連携の内容
- 提携先の医療機関名
- 住所
- 連絡先
- 診療科目
- 医療支援サービスの協力内容
特に医療支援サービスの協力内容は、認識がずれるとご家族と揉める原因になるため、必ず明確にしておく必要があります。
職員体制
有料老人ホームの運営に関わる職種と人数を記載します。夜間帯の介護・看護職員数は、要介護度が高く手厚い医療サービスを必要とする場合、施設を選ぶうえで重要なポイントとなります。
- 職種別の人数
- 介護福祉士の人数
- 機能訓練指導員の人数
- 夜間帯の平均職員数と最小時職員数
- 常勤換算の最低職員数
利用料金
施設の入居時に支払う入居一時金や月額利用料を記載します。サービス内容と同様に、毎月いくらかかるのかは利用者やご家族が気になるポイントであるため、明確にすることが必要です。
入居一時金は0円から1億円を超えるものまでありますが、入居一時金が0円の施設はその分だけ月額利用料が割高になります。
支払方法
支払い方法のパターンについて記載します。
- 全額前払い方式
- (前払いする賃料の総額を算出し、全額前払いする)
- 一部前払い・一部月払い方式(賃料の総額の一部を支払い、残りを入居期間中に毎月支払い続ける)
- 月払い方式(前払いをせず、入居期間中に賃料を毎月支払い)
- 選択式(1~3のうち、該当する方式をすべて選択)
料金プラン
代表的な料金プランを示すことで、入居時にかかる費用や毎月かかる費用の概算金額を提示します。特に入居一時金を設定する際、償却前に退去された場合の返還金に関する取り決めは記載が必要です。
料金内約
ひと月当たり、何に費用がいくらかかるかについて算定根拠を記載します。月額費用に含まれるものは、以下の費用です。
- 賃料
- 食費
- 施設管理費(水道光熱費など)
- 介護保険サービス自己負担額
- 医療費
- 日用生活品代
入居者の状況
施設の入居者数やどのような属性の方が入居されているかを記載します。
入居者の数
現在施設で生活されている方の性別や年齢、入居期間、要介護度などの情報を把握するための項目です。要介護度を見れば、自立した方向けの施設向けなのか介護を必要とする方向けの施設なのかが分かります。
入居者の属性
入居されている方の平均年齢や入居率を記載します。平成28年の調査研究報告書によると、住宅型有料老人ホームの平均入居率は88%、介護付き有料老人ホームでは87%であること(※)が分かっています。
(※)参考:高齢者向け住まい及び住まい事業者の運営実態に関する調査研究報告書
苦情・事故等に関する体制
利用者からの相談窓口の名称や連絡先、受付時間について紹介します。入居者の事故に際して、損害賠償保険加入の有無や事故予防に対する取り組みについて記載します。
苦情・事故に関する体制は、利用者やご家族が必ずチェックされる項目です。
入居希望者への事前の情報開示
入居希望者のために、運営会社の財務諸表など経営状態が分かる資料を掲載します。
掲載される資料が多いほど、利用者やご家族に安心感を与えることができます。
その他
その他の項目では、運営方針やサービス内容などについて管理者と入居者やご家族と話し合う運営懇談会の実施の有無や、入居者の介護度が上がった場合の住み替えが可能かどうかについて記載されます。
重要事項説明書の提出先
令和3年の老人福祉法の改正により、有料老人ホームの設置者は有料老人ホーム情報を所在地の都道府県に報告することが義務付けられました(同法29条11項)。
重要事項説明書は、経営状況が分かる貸借対照表や損益計算書などの財務諸表と合わせて各自治体に毎年提出します。
提出方法は、自治体のホームページ上の電子申請サービスや電子メールでデータファイル形式にて送付します。定められた提出期限までに提出が必要です。
重要事項説明書以外の重要なこと
重要事項説明書の内容が優れているだけでは、入居に結び付きません。契約の締結時はもちろんのこと、施設見学や体験入居に来られた利用者やご家族に対する説明が、重要事項説明書の内容よりも重要となります。
ポイントは、利用者やご家族の関心が高い項目について詳しく伝えることです。それが「利用料・個人情報保護・苦情窓口」です。
利用料については、介護保険適用のサービスは限度額以内であれば料金はかからないこと、賃料以外に管理費や食事代や施設管理費、日用品代が別途必要であることを伝えます。
個人情報窓口については、介護保険の利用に際して必要な機関以外にはご本人の承諾なしに個人情報を伝えないことを説明します。
また、苦情の受付窓口が複数あることも必ず伝えてください。
利用者やご家族の疑問や質問に対して正確に答えるには、重要事項の内容について理解を深めておくことが必要です。そのためには事前にシミュレーションを行っておくことをおすすめします。
まとめ
有料老人ホームの重要事項説明書の項目は非常に多岐にわたり、情報量は膨大です。情報が記載された資料を人の手によって管理する場合、項目の確認や検索に手間が掛かるうえにセキュリティ面での不安も残ります。
数値データを扱う計算や文字入力などの定型業務は、ソフトウェアに任せた方が正確かつ迅速に行なえるのは間違いありません。
そこで「ワイズマンの有料老人ホーム向け介護ソフト」をお使いいただくことで、重要事項説明書の項目の追加や修正を簡単に行なうことができ、スムーズかつリアルタイムに情報共有ができます。さらに有料老人ホームの重要事項説明書の項目の確認や検索が迅速に行うことが可能で、セキュリティ面の問題も払拭できます。
もし、今働いている運営会社に介護ソフトが導入されていないなら、業務効率化を図れるように担当者に導入を相談してみてください。これから有料老人ホームの職員として働くのであれば、運営会社に介護ソフトが導入されているかチェックされることをおすすめします。
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