有料老人ホームの経営状況とは?市場の動向と成功のポイント
2024.04.08
昨今、介護施設の需要はますます高まっており、有料老人ホームの数も増加しました。
他方で、なかには経営状況が芳しくなく、さまざまな課題を抱えているケースがあります。
有料老人ホームを経営しようとお考えの方は、収益構造や経営リスクが気になるのではないでしょうか。
本記事では近年の有料老人ホームの経営状況に加え、注意すべきリスク・成功のポイントなどを解説します。
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目次
有料老人ホームは儲かる?経営状況はいかに
そもそも有料老人ホームは儲かる施設でしょうか。
有料老人ホームは介護施設であるため、一般的な企業と収支構造が異なります。
そのため、構造を正確に把握しなければ収支のシミュレーションはできません。
本章では有料老人ホームの収入と支出のメカニズムについて解説します。
有料老人ホームの収入
有料老人ホームにおいて、収入に該当するものは以下のとおりです。
項目 | 収入の目安 |
一時入居金 (入居時のみ) | ~1000万円 |
家賃 | 月額5~30万円 |
管理費 | 月額3~20万円 |
食費 | 月額4~10万円 |
介護報酬 (介護サービスを提供している場合) | 要支援・要介護度や人数によって変動 |
その他サービス費 | 施設によって変動 |
有料老人ホームは利用者が入居した時点で、一時入居金を収入として得られます。
他方で、利用者が入居しやすいように入居一時金を設定していない施設も多く、代わりに家賃や管理費を高く設定しているケースもあります。
なお、一時入居金は償却が完了していない時期に退去が発生すると返還しなければなりません。
月々の収入となる家賃・管理費・食費・その他サービス費は、設備や提供するサービスによって金額が変動しますが、介護報酬は介護保険制度の規定で金額が決まる収入であるため、注意が必要です。
介護報酬は介護サービスを提供する場合に発生する報酬であり、総額の1~3割を利用者に、残額を自治体に請求するものです。
介護報酬の金額は利用者の要支援・要介護度によって変動し、単位が高いほど報酬が増加します。
有料老人ホームの支出
有料老人ホームで発生する主な支出は以下のとおりです。
項目一覧 | |
初期費用 | 土地購入費 施設建設費 会社設立費用 備品・設備費用 販管費 求人費 人件費 租税公課 |
管理費用 | 人件費 施設・設備の維持管理費 サービス関係費 販管費 広告宣伝費 事務費用 租税公課 その他各種経費 |
有料老人ホームをゼロから立ち上げる場合、課題となるのが初期費用です。
地域にもよりますが、一般的に土地の購入や施設の建設を行う場合、初期費用が数億円に達するケースは珍しくありません。
また、毎月発生する管理費用は、入居者の数・設備の規模・施設が提供するサービスによって変動します。
規模が大きい有料老人ホームは、その分管理費用も増大するため、収益を確保するなら、収支は念入りに確認しましょう。
有料老人ホーム経営の収支シミュレーション
以下の設定で有料老人ホームの収支シミュレーションをしてみましょう。
入居者数 | 30人 |
収入 | 家賃:20万円 各種サービス費用:10万円 |
支出 | 管理費用総額:月収入の3割 |
上記の設定の場合、月の収入の総額は30万円×30人で900万円となり、支出の総額を差し引くと900万円-270万円になるため、利益は630万円です。
ただし、この金額はあくまで粗利益であり、人件費・設備の保守管理費・各種経費などが、さらに差し引かれます。
そのため、最終的な収益は、月の収入に対し、1~2割程度になるでしょう。
有料老人ホーム経営の現状
本章では有料老人ホーム経営の現状について解説します。
有料老人ホームの経営をするなら、昨今の社会情勢と有料老人ホームの関係性を把握しましょう。
有料老人ホームの需要が拡大
現在の日本は、有料老人ホームへの需要が年々拡大しています。
内閣府より発刊されている高齢社会白書によると、日本の65歳以上の人口は3624万人を超え、総人口の約29%を占めるほどになりました。
高齢者の人口は今後も増加すると予測されており、2030年以降は総人口に対する高齢者の割合は30%を超えると見られています。
他方で、高齢者の増加により、要介護者等(要介護・要支援の認定を受けた人)の数も増え続けています。
2010年から2020年度の間に、要介護者等の数は約170万人以上も増加しており、有料老人ホームをはじめとする介護施設のニーズが高まるきっかけとなりました。
参照元:令和5年版高齢社会白書|内閣府
有料老人ホームの数も増加傾向
高齢化による高齢者・要介護者等の増加により、有料老人ホームの数も増加傾向にあります。
参照元:有料老人ホームの概要|厚生労働省
平成元年から25年の間で、有料老人ホームの施設数は8000以上も増加していることがわかります。
ニーズの高まりもあり、有料老人ホームをはじめとする介護施設の市場の成長は活発です。
サ高住やグループホームなど、さまざまな形態の介護施設も増加傾向にあり、業界内での競争が激化しています。
有料老人ホーム経営のリスク
高齢者や要支援者等の増加により、有料老人ホームのニーズは高まり、介護市場も成長を続けています。
しかし、有料老人ホームの経営にリスクがないわけではありません。
有料老人ホームを経営するにあたって想定されるリスクは、いずれも施設の存続を左右するものです。
施設数増加に伴う競争の激化
有料老人ホームの施設数の増加は、同時に同業者との競争の激化を意味します。
有料老人ホームの競合相手は、同種の施設だけでなく、ケアハウス・サ高住・グループホームなど多種多様です。
加えて、昨今は有料老人ホーム以外にも介護サービスを充実化させる施設が増加しています。
また、近年は国が在宅医療・介護の推進を実施しており、有料老人ホームのような施設介護の需要低下が危惧されています。
そのため、入居者の確保や他の介護サービスとの差別化が重要な課題となるでしょう。
介護スタッフの人手不足
介護スタッフの人手不足は、介護業界全体の課題です。
少子化の影響もあって、日本の労働人口は減少の一途をたどっており、介護業界でも人材の確保に苦戦しています。
人手不足は施設の維持や業務の遂行だけでなく、入居者の確保にも影響を及ぼすものです。
そもそも有料老人ホームを含めた介護施設は、国から人員配置基準が設定されており、基準を下回ると処罰の対象になるため、必ず順守しなければなりません。
また、入居者の数が増加すると配置すべき人員の数も増えます。
つまり、介護スタッフを採用する見込みがなければ、入居者を増やせない状況に陥るリスクが発生します。
赤字による倒産のリスク
昨今は有料老人ホームの倒産件数が増加しており、倒産のリスクの高さに注意しなければならない状況です。
有料老人ホームの倒産件数の増加は、コロナ禍や物価高はもちろん、競争の激化や人手不足などによる影響も無視できません。
ただでさえ、物価高の影響で介護サービスを維持するためのコストが高まっているなかで、入居者や介護スタッフを確保できなければ、経営の安定化は難しいでしょう。
とりわけ小規模な有料老人ホームは倒産のリスクが高く、何らかの手立てを講じる必要があります。
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有料老人ホーム経営を成功させるためのポイント
有料老人ホームの倒産リスクが高まっている以上、経営者は経営を成功させるために対策を講じなければなりません。
本章では有料老人ホーム経営を成功させるポイントについて解説します。
特定施設の指定を目指す
有料老人ホームを経営するなら、特定施設の指定を目指しましょう。
特定施設とは、介護保険法で設定された基準を満たし、自治体からの事業指定を受けた施設を指します。
特定施設に認定されると介護保険適用・対象外のサービス両方を提供でき、サービスの多様化を実現できます。
加えて行政の認定を得ているため、利用者からの印象もよくなり、入居希望の増加につながるでしょう。
介護スタッフの採用活動に注力
介護スタッフの採用活動も経営の成功には欠かせない取り組みです。
介護サービスの質を維持し、入居者をさらに増やすうえでも介護スタッフは常に一定数以上確保する必要があります。
昨今は介護業界の人手不足の影響もあり、人材確保のためにさまざまな施策が実施されています。
外国人労働者の受け入れ・介護専門の人材派遣の活用・介護に特化した求人サイトでの募集など、多角的な取り組みを実践しましょう。
ICTの活用・業務改革による効率化
ICTの活用・業務改革による効率化は、介護サービスの質の向上や介護スタッフの確保に役立つ取り組みです。
ICTを活用して介護に必要なデータを電子化したり、利用者のバイタルチェックや見守りなどの業務を効率化したりすれば、より質が高いサービスを提供できます。
さらに、ICTの活用は働きやすい環境づくりにも貢献します。
情報共有や事務作業などの負担を軽減すれば、スタッフがケアに集中しやすい環境を実現できるでしょう。
業務の効率化による働きやすい環境の実現は、スタッフの定着率を向上させるうえに、採用する際の強みにもなります。
住宅型有料老人ホーム(以下住宅型)やサービス付き高齢者向け住宅(以下サ高住)を経営する際に多くの企業が、まず特定施設入居者生活介護(以下特定施設)の許認可を視野にいれるでしょう。しかしながら、総量規制により指定数が決められているため、特定施設の指定は非常にハードルが高くなっています。また、従来安定した収益を得られていた特定施設も、令和5年の収支差率は2.9%と前年度と比較して1%も数値を下げています(令和5年度経営実態調査より)。特定施設といえど、その経営が難しくなっていることがわかります。住宅型やサ高住の生き残り策として、『外部へのサービス提供』がキーワードとなってくる可能性が高くなっています。入居者だけではなく、近隣高齢者へのサービス提供も視野にいれ、収益チャネルを増やしていきましょう。
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有料老人ホームの業務管理にはワイズマンシステムSPがおすすめ
弊社「ワイズマン」では、有料老人ホームをはじめとする介護施設の業務効率化に役立つシステムやソフトを提供しています。
業務の効率化を目指すなら、ワイズマンシステムSPをご検討ください。
ワイズマンシステムSPは導入実績も豊富であり、煩雑な事務作業の削減や、効率化によるサービスの質向上など、多くの施設の業務改善に貢献しました。
また、導入サポートも万全なため、初めて介護システムを導入する施設でも安心してご利用いただけます。
課題を把握して適切な有料老人ホームの経営を実現しよう
有料老人ホームは昨今の高齢化や介護のニーズ高まりにより、年々施設数を増やしています。
適切にニーズに応えられる経営を行えば、高い収益を実現できるでしょう。
他方で有料老人ホームの経営には施設数の増加による競争の激化や人手不足など、さまざまな課題があります。
そのため、特定施設の指定や介護スタッフの確保などの取り組みが不可欠です。
とりわけICTの推進による業務の効率化は、サービスの質の向上や、スタッフの定着率を上げる働きやすい環境づくりなどに役立つ施策です。
ワイズマンシステムSPを活用し、ぜひ実践してください。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。