サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の問題点を利用者・事業所目線で解説!対処法とは?
2024.11.16
サ高住(サービス付き高齢者向け住宅)を運営するには、いくつかの問題点を解消する必要があります。
人員や介護体制など事業所側の問題点だけでなく、利用者目線で感じる問題を把握して、対処することが大切です。
しかし、サ高住の問題点を把握しても「どのように対処すればいいか分からない」と、具体的な対処法を思いつかない方もいるでしょう。
本記事では、サ高住の問題点を利用者と事業所双方の目線で詳しく解説します。
サ高住の問題点を解消する対処法もあわせて解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
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利用者目線でのサ高住の問題点7選
サ高住を運営する上で、利用者が感じる問題点を把握しておくことが大切です。
利用者目線の問題点を把握して、より入居者が増えるよう経営戦略を見つめ直しましょう。
利用者目線でのサ高住の問題点は、次の7つです。
- 立地が悪い事業所もある
- 入居できない可能性がある
- サービスの自由度が低い事業所がある
- 賃貸住宅より費用が高い
- 介護サービス費が別途発生する
- 悪質な囲い込みを行っている事業所もある
- 施設の生活に馴染めない可能性がある
事業所内で上記の問題点が発生していないか確認して、利用者が入居したくなるサ高住を運営しましょう。
立地が悪い事業所もある
サ高住は、公共交通機関や医療機関へアクセスしづらい場所に建てられている可能性があります。
立地が悪い事業所は、利用者やその家族がアクセスしにくいため、敬遠されやすいです。
また周囲に医療機関が揃っていない場合は、怪我や事故が起きた際の対応が遅れるリスクがあります。
利用者がサ高住を探す際には、立地の良さを重視するケースも多いため、周辺環境を確認してから事業所を建設する場所を決めましょう。
入居できない可能性がある
サ高住を利用するには、入居条件を満たす必要があります。
サ高住は「一般型」と「介護型」の2種類があり、それぞれ入居条件が異なります。
一般型は、要介護度が悪化した場合に事業所内で対応できないため、退去になってしまうのです。
対して、介護型は要介護度が高くても入居できますが、一定の介護レベルを満たしていないと入居できません。
事業所によっては、認知症や感染症にかかっている方は入居できないケースもあるため、入居条件を満たしているか事前に確認しておく必要があります。
サービスの自由度が低い事業所もある
サ高住は、サービスの自由度が低い事業所もあります。
食事や入浴の際に制限を設けている事業所では、生活する上で不自由を感じる機会が多いです。
居室にトイレや風呂が設けられていない事業所では、自由に排泄や入浴ができず、不自由を感じてしまいます。
また、一般型のサ高住では介護サービスが必要になった場合、外部のサービスを利用しなければなりません。
介護型のサ高住でも、事業所によって対応できるケア内容や範囲が変わるため、必要なサービスを受けられるとは限りません。
入居時に健康でも、サ高住で生活する過程で要介護度が上がると、十分なケアサービスを受けられない可能性があります。
賃貸住宅より費用が高い傾向にある
サ高住は、一般的な賃貸住宅より費用が高い傾向にあります。
月額10万円〜30万円ほどの費用が必要となるため、十分な資金力がない方は利用できません。
しかし、有料老人ホームやシニア分譲マンションなど、他の介護施設よりサ高住は費用が安い傾向にあります。
そのため、サ高住を利用する前に、他の介護施設と費用面を比較しておくことが大切です。
介護サービス費が別途発生する
一般型のサ高住を利用する場合は、介護サービス費が別途発生する可能性があります。
介護型のサ高住であれば、事業所内に常駐しているスタッフから介護サービスを受けられますが、一般型の場合は外部のサービスを利用する必要があります。
そのため、サ高住の利用費用とは別に、外部の介護サービスに支払う費用が発生するため注意が必要です。
囲い込みを行っている事業所もある
サ高住では、囲い込みを行っている事業所もあるため、利用者に不安を抱かせないよう対処する必要があります。
囲い込みとは、利用者が本来必要としないサービスを利用させ、不当に介護報酬を受け取ることです。
利益を重視して悪質な囲い込みをしている事業所があるので、利用者はサ高住選びを慎重に行います。
そのため、サ高住を運営する際は、適切なサービスを提供し、利用者の信頼を獲得する必要があります。
施設の生活に馴染めない可能性がある
利用者がサ高住の入居で不安を感じる理由の1つが、施設の生活に馴染めない可能性があるからです。
サ高住は、自宅同様の自由度が高い暮らしができる介護施設ですが、利用者からすると住み慣れた自宅を離れることに抵抗を感じます。
食事が口に合わなかったり、入浴やトイレの介助を依頼することに抵抗を感じたりと、施設の生活に馴染めるか不安になってしまうのです。
他の入居者や介護スタッフとのコミュニケーションに不安を感じる利用者もいるため、事業所としては「誰でも馴染みやすいアットホームな空気づくり」が求められます。
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事業所目線でのサ高住の問題点3選
事業所目線でのサ高住の問題点は、次の3つです。
- 人員不足により従業員の負担が大きい
- 認知症患者が増加している
- 十分な介護体制が整っていない
それぞれの問題点を確認して、事業所の運営に支障をきたさないよう対処しましょう。
人員不足により従業員の負担が大きい
サ高住は、人員不足により従業員の負担が大きいことが問題視されています。
サ高住を運営するには、一定の人員配置基準を満たす必要があり、人員不足の際には十分なサービスを提供できません。
現在は少子高齢化に伴う労働人口の減少が、各業界で問題視されており、介護業界でも人員不足に悩んでいる事業所が多いです。
人員不足に陥った場合は、従業員1人あたりの負担が大きくなり、休職や離職へつながるリスクがあります。
利用者に十分なサービスを提供し、従業員の負担を軽減するために、人員不足の課題を解消する打開策が求められます。
認知症患者が増加している
事業所側の問題点としては、利用者に認知症患者が増加していることです。
認知症患者へのケアを十分に行える環境や設備が整っていない場合は、利用者に適切なサービスを提供できない可能性があります。
また、認知症患者と他の入居者が一緒に生活する上で、トラブルに発展するリスクがあるため、見守り体制を強化しなければなりません。
特に、人員不足が課題の事業所では、認知症患者を受け入れられないリスクがあります。
十分な介護体制が整っていない
サ高住に、十分な介護体制が整っていない場合、利用者が求めるケアサービスを提供できません。
一般型のサ高住では、介護サービスを必要としない高齢者を対象としており、要介護度が高い利用者を受け入れる介護体制が整っていません。
また、利用者やその家族が看取りを希望しても、十分な人員や体制が整っていない場合は対応が難しいです。
サ高住の問題点を解決する方法
サ高住の問題点を解決する方法として、次のようなものが挙げられます。
- 事業所の建設場所を工夫する
- 人員配置を見直す
- 設備を充実させる
- ICTを導入する
利用者満足度を向上させ、事業所の業績アップにつなげるために、それぞれの対処法を実践しましょう。
事業所の建設場所を工夫する
サ高住を運営する際は、事業所の建設場所を工夫することが大切です。
事業所が、市街化調整区域を含む場所に建てられている場合、利用者や従業員がアクセスしづらく不便に感じます。
国土交通省の調査によると、市街化区域内にあるサ高住は全体の3分の2程度で、残りの3分の1の事業所は市街化調整区域や都市計画区域に建設されていました。
交通アクセスの良い場所に事業所を設けなければ、利用者やその家族が訪れにくく、従業員も通勤しづらい課題が生じます。
そのため、利用者や従業員がアクセスしやすく、立地が良い場所に事業所を建設することが大切です。
なお、サ高住を開業する際には、補助金制度を活用することで初期費用を軽減できます。
下記の記事で、サ高住の補助金制度について詳しく解説しているので、事業所を開業する際の参考にしてください。
【関連記事】【令和5年度】サ高住の補助金制度とは?補助要件・上限額・申請手順を解説
人員配置を見直す
サ高住の人員配置を見直すことで、従業員の負担を軽減できます。
適切な人員を確保すれば、利用者に十分なケアサービスを提供できるため、不安や不満の解消につながります。
サ高住の人員を見直すために、一般型と介護型それぞれの配置基準を確認しておきましょう。
一般型サ高住の人員配置基準
一般社団法人の高齢者住宅協会が2024年8月に公表した資料によると、一般型サ高住の割合は90.2%でした。
参照元:サービス付き高齢者向け住宅の現状と分析|一般社団法人 高齢者住宅協会
厚生労働省のホームページでは、サ高住の人員基準について次のように定めていました。
「ケアの専門家が少なくとも日中建物に常駐し、これらのサービスを提供します。」
引用元:サービス付き高齢者向け住宅について | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」
また、ケアの専門家として、次のような職種を定めています。
- 社会福祉法人、医療法人、指定居宅サービス事業所等の職員
- 医師
- 看護師
- 介護福祉士
- 社会福祉士
- 介護支援専門員
- 介護職員初任者研修課程修了者
なお、2022年9月の高齢者住宅関連法案が改正され、入居者の事前承諾を得て、以下の3つの条件を満たす場合は、日中のスタッフの常駐が不要となりました。
- 毎日1回以上、適切な方法で状況把握サービスを提供する
- 各居住部分に緊急通報装置を設置する
- 夜間を除き、適切な方法で生活相談サービスを提供する
参照元:国土交通省・厚生労働省関係高齢者の居住の安定確保に関する法律施行規則の一部を改正する省令等の施行等について|厚生労働省
介護型サ高住(特定施設)の人員配置基準
介護型サ高住(特定施設)の人員配置は、特定施設入居者生活介護と同様の基準です。
具体的な人員配置基準は、次のとおりです。
管理者 | 1人(兼任可) |
生活相談員 | 要介護者100人に対して1人 |
看護、介護職員 | 要介護者10人に対して1人 要介護者3人に対して1人 要介護者30人を超える場合は、50人ごとに1人 |
機能訓練指導員 | 1人以上(兼任可) |
計画作成担当者 | 介護支援専門員1人以上(兼務可) ※要介護者100人に対して1人が標準 |
設備を充実させる
十分な設備と環境を整えることで、利用者満足度の高いサ高住を実現できます。
利用者が求めるサービスを提供するために、サ高住の登録基準を満たしておきましょう。
- 専有面積が原則25㎡以上(共同面積は18㎡以上)
- 台所、水洗便所、収納設備、洗面設備、浴室を備えている
- バリアフリー構造
参照元:サービス付き高齢者向け住宅について | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」
例えば、各居住スペースに専用の浴室やトイレがあれば、利用者はプライベートを確保した状態で自由に入浴や排泄ができます。
その他、手すりやスロープなどバリアフリーに配慮した設備を設けることで、利用者が不自由なく暮らせる住環境を提供できます。
ICTを導入する
人員不足の課題を解消し、サービスの質を向上させるために、ICTの導入が効果的です。
ICTを導入すれば、業務効率化により人員不足の課題を解消できます。
介護システムや見守りシステムなどICTを導入すれば、夜間の見守りやレセプト業務を効率化し、従業員の負担を軽減できます。
また、システム上で利用者の情報を一元管理すれば、スマホやタブレット上で確認作業を完結できるため、事務所に戻る手間がかかりません。
利用者情報の更新や介護請求業務をシステムで行えるため、書類作成や保管にかかるリソースを軽減できます。
『2025年問題』が目前に迫っています。これは人口のボリュームゾーンである団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となることを指しています。団塊の世代は、高度経済成長の真っただ中に社会人となり、バブル経済期の頃は40歳前後の働き盛りで、日本の「右肩上がり」を実感している世代です。つまりは非常に『目が肥えている』世代なのです。介護業界では今後団塊の世代がメインターゲットとなっていきます。サ高住も三等立地への新規開設案件はほぼなく、一等立地での開設を目指す法人も増えています。また、サービス内容も幼稚なプログラムでは選ばれないので趣向を凝らしていく必要があります。介護サービスにおいて団塊の世代へのアプローチというのは重要なキーワードとなっており選ばれる施設になるための創意工夫が一層求められているのです。
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サ高住の問題点を解消するためにICTの導入を検討しましょう
サ高住の問題点を解消するために、ICTの導入が効果的です。
ICTを導入すれば、業務の効率化により人員不足の課題を解消できます。
空いたリソースを他業務に回し、質の高いサービスを提供できるため、利用者満足度を向上できます。
サ高住の問題点を解消し、安定した運営を実現するために、介護システムや見守りシステムの導入がおすすめです。
本記事で解説したサ高住の問題点を解消する対処法を参考に、事業所の運営を安定させましょう。
監修:伊谷 俊宜
介護経営コンサルタント
千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。