【介護業界動向コラム】第4回 介護事業者の事業拡大の近年の潮流について③ 「新規顧客に新たなサービスを提供する(1) 障害福祉サービス領域への展開」
2022.10.31
前回の記事では以下の図を元にして、新たなサービスを展開していく際の視点をお示しした所です。(図1)
今回は、以下の事例のうち(B)について取り上げ内容を確認していきたいと思います。
既存利用者 | 新規利用者 | |
---|---|---|
新しいサービス | (A)既存顧客に新たなサービス | (B)新規顧客に新規サービス |
既存サービス | (C)既存顧客に既存サービス(維持) | (D)既存サービスを新規顧客 |
(B)新規顧客に新たなサービスを提供する事例
介護事業者が新規顧客に新たなサービスを提供する事例については、ある程度範囲を絞って以下の3区分に分けご紹介したいと思います。利用ターゲットを「高齢者以外に拡大する」点が大きなポイントです。
区分 | 主な事例 |
---|---|
①障害福祉サービス | ・放課後等デイサービス ・障害グループホーム ・生活介護(障害の通所事業) ・就労継続支援、就労移行支援事業 ・重度訪問介護サービス ・居宅介護(障害の訪問事業)等 |
②医療・理容系サービス | ・鍼灸・マッサージサービス ・自費リハビリサービス ・理美容、整体サービス ・フィットネスサービス |
③その他サービス | ・葬祭事業 ・配食サービス ・不用品買取サービス ・学童保育、保育園、幼稚園 ・学習塾、カルチャーセンター・飲食デリバリーサービス |
障害福祉サービス領域への進出が加速
介護事業を主としていた事業者が比較的展開し易く馴染み易いのが障害福祉サービスです。中でも放課後等デイサービスへの参入ケースと障害グループホームへの増加は顕著で、2012年を1とした場合に、放課後デイは5.78倍、障害グループホームは2.5倍に増加しています。勿論、展開を進めているのは介護事業者のみではありませんが、2018年以降の共生型サービスの開始により障害と介護の垣根が低くなってきており、今後も参入の傾向は継続するものと見られます。
ある程度、介護サービスの領域で類似した事業モデルがあり、イメージが湧き易い面もあるものと思います。
就労継続支援A型、B型は通所介護の未来形?
一方、介護保険の領域に類似したサービスが無いものの注目を集めているのが就労継続支援A型、B型といったサービスになります。就労継続支援A型は2012年から2.86倍に増加しています。
介護事業者側の視点からすると、「通所介護の未来形」として着目され、進出を検討されている面もあるように考えられます。つまり「就労型デイサービス」です。現在介護保険では、自立支援介護の先に、「社会参加としての高齢者就労」や「有償ボランティア」等が想定されていますが、現状、その点を介護保険上で評価する仕組みは限られています。(社会参加支援加算等)。こうした背景の中で、仕組みとしては先行している障害領域に進出・展開し事業構築を検討されている介護事業者も現れ始めています。
次回は、図3の②、③の動向について触れていきます。
大日方 光明(おびなた みつあき)氏
株式会社日本経営 介護福祉コンサルティング部 参事
介護・在宅医療の経営コンサルティングを専門。直営訪問看護ステーションの運営本部を兼任。
東京都訪問看護ステーション管理者・指導者育成研修講師。その他看護協会、看護大学等における管理者研修(経営部門)の実績多数。