【名南経営の人事労務コラム】第5回 定めておきたいSNS利用ルール

2022.09.08

今や誰しもがスマートフォン片手に利用するSNS(Social Networking Service)。非常に便利なツールであり、多くの方がその恩恵を受けていることでしょう。かつては、誰かに連絡をするにあたっては、直接電話をしなければならないという時代が長らく続いただけに、瞬時にやり取りができるこうしたツールの発達や普及は隔世の感を受けます。実際、職員自身が勤務シフトの変更をやむを得ない事情によって変更をしたい場合には、これまでは主任等に電話をして、主任等が更に部下に電話でそれぞれ勤務変更の可否を確認していたわけですから、上司のそうした負担も軽減されたことは間違いありません。

同時にSNSについては、情報発信としての側面もあり、多くの医療機関や福祉施設においては、自分の施設のサービスを紹介したり、職員の日常生活等を公開して求人活動に役立てたり、もはや日常生活のみならず、業務の一部としてSNSが活用されているように感じます。

ところが、このSNSの利用を巡っては、トラブルが多いのも事実であり、しばしばマスメディアによって倫理観のない投稿等が話題になっていたり、周りを見渡してもSNSによって人間関係が悪化したといった話は枚挙に暇がありません。特に、医療福祉業界を見渡すと、患者や利用者を虐待して、その光景を自分のスマートフォンで撮影後にSNSで拡散されるといった事件は時折発生しており、大変残念に思います。

このような問題が発生する都度、医療機関や福祉施設関係者からは、お互いに注意をし合おうといったスローガン的な注意喚起が職場内で伝達されることがありますが、この点はもう少し踏み込んだ対応が必要です。前述した患者や利用者の虐待した光景を撮影してSNSに投稿する行為は、倫理観の問題は別として、患者や利用者を特定することができる可能性があることから守秘義務上の問題が発生し、守秘義務違反によって懲戒処分の検討をといった発想となりやすいのですが、実際に投稿をされてしまえば、データの削除は不可能であり、事後のことを考える前に事前対策が必要です。

具体的な事前対策として考えられるのは、SNS利用にあたってのルールを明確に定めることであり、例えば以下のような軸で考えるとよいでしょう。特に、職場貸与のスマートフォンをプライベート利用させたり、個人所有のスマートフォンを業務利用させることは、情報漏えいや倫理観という観点から好ましくなく、禁止させることも視野に入れる必要があります。また、個人所有のスマートフォンでそれがプライベート利用であったとしても、職場や職場関係者の悪口を投稿するといったことも想定されますので、倫理観を軸にした一定のルール整備は必要です。

こうしたルール整備は、規程化するといった考え方もありますが、SNSの進化は非常に早く、より具体性を網羅するためにもSNS利用にあたってのガイドラインといったようなものを定めて随時その内容をアップデートしていくことが現実的です。また、SNSガイドラインの策定にあたっては、事務長等の管理職が細かく考えるよりも現場の若年層に素案を考えてもらうと時流に合ったものが出来上がりますので、現場の職員を上手く巻き込んで策定することが今後の運用という点でも効果があるものと思います。

個人のスマートフォン等職場貸与のスマートフォン等
プライベート利用プライベートのみであれば制限無
ただし倫理観のない投稿等への対策は必要
一定の制限が必要
業務利用一定の制限が必要業務のみであれば制限無
ただし倫理観のない投稿等への対策は必要

服部 英治氏

社会保険労務士法人名南経営 ゼネラルマネージャー

株式会社名南経営コンサルティング 取締役
保有資格:社会保険労務士

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