【名南経営の人事労務コラム】第7回 明確な運用を心がけたい試用期間

2022.10.13

医療福祉業界では、人材確保が思うように進まないことが多く、採用面接においては受け答えの良さだけで合否を左右させてしまうことがあります。管理職の方は、多忙な日々の中で面接時間を確保して採用面接をするものの、応募者が他の職場での就職が決まる前に採用という結果を伝えなければなかなか人材の確保ができないため、面接から入職までの期間は比較的慌ただしいというのが実態です。

ところが、実際に働き始めてもらうと、採用面接では把握できなかったことが次々に明るみに出て、こんなはずではなかったということで、我々のような社会保険労務士に「何とか上手く辞めてもらう方法はないか」と相談し、辞めてもらう方法を模索することがあります。そして、決まり文句のように「試用期間中なので、問題ないですよね。雇用契約書にも『試用期間 3ヵ月間』と書いています」といったことを元に解雇を正当化させようということがありますが、ここに大きな誤りがあります。

確かに、労働基準法第21条においては「試の使用期間中の者」については同法第20条に定める30日前の解雇予告又は30日分以上の平均賃金の支払いは求められておりませんので、これをもって「試用期間中はいつでも解雇ができる」と認識されているようですが、同法第21条においては但し書きで雇入れから14日経過後はこの限りではない、と定めていますので、ここに落とし穴があります。

実際、職員に辞めてもらいたいと考えるのは、採用後数ヵ月程度経過した頃であり、試みの使用期間と施設独自のルールである「試用期間」とを符合させているようですが、辞めてもらいたいと考えるタイミングは雇入れから14日を超えていることが一般的です。また、仮に雇入れから14日以内のことであったとしても、労働契約法第16条において「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定められていますので、無制限に雇用契約を一方的に解除できるものでもありません。

そもそも、採用された本人からすれば、極めて短時間の採用面接によって採用が決定し、慣れない職場で働き始めるや否や試用期間中であるからということで「辞めてください」と言われることほど理不尽さを感じることはないように思います。

そういった意味では、試用期間という制度を設けているのであればしっかりとそれを活用すべきです。仮に試用期間が3ヵ月間であれば、その後に本採用されるという流れですので、どういったことができないと本採用がされないのか、未達であればどうなるのか、それまでの期間のフォローや教育体制はどうなのか等といったことをしっかりと示し、バックアップ体制を整えながら本採用に向けてサポートしていくことが本人にとっても職場にとってもプラスになるものと思います。また、仮にその試用期間内で求める事項が達成できないのであれば延長することができるルールを予め就業規則において明確化し、それに基づいて延長してサポートやフォローを続ければ、仮に試用期間満了時点で求めることが未達であったとしても、雇用継続されないことに対しての理解は何もされないよりも高くなることは間違いありません。縁があって採用をした職員をしっかりと育て上げていくことこそが雇う側での責任でもあり、お互いに嫌な気分にならないためにも、試用期間という制度はしっかりと運用をしたいところです。

服部 英治氏

社会保険労務士法人名南経営 ゼネラルマネージャー

株式会社名南経営コンサルティング 取締役
保有資格:社会保険労務士

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