【医療業界動向コラム】第15回 政府による医療DX推進本部の初会合が開かれる。明らかにされたゴール、医療機関は早めのスタートを。

2022.10.18

政府による医療DX推進本部の初会合が令和4年10月12日に開催された。岸田総理を本部長に、関係省庁となる厚生労働省・デジタル庁・総務省・経済産業省による組織横断的な取組を促進すべく、各担当相も出席し、今後の取組について話し合われ、間もなくまとめられる総合経済対策にも盛り込むことが確認された。令和5年春に開催予定の第二回医療DX推進本部にて今後の工程表を策定するべく、下部組織である医療DX推進本部幹事会(議長:木原内閣官房副長官)にて具体的な施策を検討する議論をこれから進め、各省庁の取組状況を適宜確認していくこととなる。

今回の初会合では各省庁の方針と取組内容が明らかにされている。

厚生労働省からは、医療DXの推進で実現される社会像として、PHRの推進による健康増進、保健医療データの利活用によるヘルスケア産業の振興、医療機関における業務効率化への期待が示された。すでに厚生労働省では「医療DX令和ビジョン2030」の実現に向けた初会合を終え、取組もスタートしている(図1)。

医療DXにより実現される社会
図1:医療DXにより実現される社会

デジタル庁からは、先の河野担当相の記者発表にあるようにデジタル化による様々なメリットを感じてもらうためのマイナ保険証の推進が示された(図2)。その翌日、すぐに河野デジタル相は動いた。推進本部初会合の翌日となる10月13日、河野デジタル相は令和6年秋に現行の健康保険証を廃止の上、マイナンバーカードと健康保険証を紐づけマイナンバーカードに一体化する「マイナ保険証」に切り替えることを記者発表で明らかにした。なおこの記者発表について、「マイナ保険証でなければ受診ができないのか」「一体化の期限までにマイナ保険証が間に合わない場合はどうするのか」といった疑問が各所で聞かれたが、加藤厚生労働相からはマイナンバーカードがない人であっても保険料を納めている人が保険診療を受けられるのは当然として、様々な事情を考慮して「丁寧な対応」をしていくことを明らかにしている。

デジタル原則から見た医療DX
図2:デジタル原則から見た医療DX

総務省からは、情報ネットワークのインフラ構築やガイドラインの整備など共に、遠隔医療や高齢社会に伴い増えてくる認知症対策につながる利活用についても示されている(図3)。また、健診情報の利活用に関する民間事業者による取扱ルールの策定についても記載がある。

経済産業省からは、民間活力によるPHRの活用に関する環境整備の方針が示された(図4)。令和5年前半には業種横断的なPHR事業者団体の設立を目指す方針だ。

総務省における医療情報化の取組
図3:総務省における医療情報化の取組
医療DXの促進にむけた経済産業省の取組
図4:医療DXの促進にむけた経済産業省の取組

医療DX推進本部は大きな注目を集め、スタートを切った。その基盤となるのが全国医療情報ネットワークであり、マイナ保険証がそのネットワークに入る鍵になるイメージだ。そして、医療機関には電子カルテによる記録と管理が必須となり、情報の互換性と正確性、そしてセキュリティへの対応が必要となる。一般市民も当然だが、情報を扱う医療従事者にこそ情報リテラシーの学びがこれから重要になるだろう。すでに道筋は示され、ゴールも明らかになった。いち早いスタートを切り、前倒しでゴールを迎えるようにしていきたい。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

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