【医療業界動向コラム】第17回 第4期医療費適正化計画の議論から読み解く 病院経営への影響は?
2022.11.01
令和6年度に行われる様々な医療制度改革の一つに「医療費適正化計画」がある。特定健診・特定保健指導の実施率や糖尿病重症化予防プログラムの実施などを通じた予防・重症化予防による将来の医療費抑制効果に取組むことや、後発医薬品の使用促進などを通じた今の医療費抑制、医療費の地域差解消などが目的である。6年後のあるべき姿を目標に据え、国と各都道府県が主体となって取り組む。
この医療費適正化計画が令和6年度からは第4期に入る。令和4年10月13日、次期医療費適正化計画に関する議論が行われたところなので、医療機関の経営に関するところを確認してみたい。
まず、現行の第3期について。後発医薬品の使用割合を全都道府県80%以上などの目標を設定しているが現状ではほぼ達成という状況など確認され、現行のゴールとなる令和3年度には6000億円程度の適正化効果額が見込めるとのことだ(図1)。
先に述べたように、多くの都道府県で数量割合80%を達成しているのが分かっているものの、100%達成ではないため、さらなる推進策を盛り込むことが第4期では検討されている(図2)。
使用実績の低い、小児・高齢者への普及・啓発活動の必要性や、薬効群別に見た割合の低いもの(精神科領域、抗悪性腫瘍剤、外用貼付剤など)への個別の対応の検討など具体的に検討されていきそうだ。また、財務省の春の建議などでもあったように保険者機能を活用した患者への啓発活動、フォーミュラリの推進がうたわれている(図3)。
今回の医療適正化計画に向けた議論では医療と介護にまたがるアプローチの在り方なども検討されることから、病院フォーミュラリだけではなく、地域フォーミュラリまで広げた診療報酬及び保険者努力支援制度での評価が考えられるだろう。
他には、抗菌薬の適正使用についても記載がある。効果的なエヴィデンスがないとされていることや、診療報酬上においても適正使用に関する評価があることもあり、近年は使用量も減少している。こうした効果が乏しいとされているものについても選別し、減少していくことを新たな目標とすることも検討されそうだ(図4)。
もう一つ、注目したいのが医療資源の投入量で地域差があるものとして、白内障手術(図5)と化学療法(図6)。
いずれも、入院から外来への移行を促すものと言え、令和4年度診療報酬改定でもテコ入れがあったところ。
白内障手術については、短期滞在手術等基本料1において、麻酔科医無しでも評価されることとなったことや、病院では平均在院日数及び重症度、医療・看護必要度の対象からは除外されることとなった。その反面、難易度の高い手術については高い評価が得られるようになり、外来手術における役割分担が促進されることとなった。
化学療法については、加算から診療料への格上げとなったところで、さらに、バイオ後続品導入初期加算も可能となった。
いづれも、入院から外来への移行を促すための目標値が設定されると共に、診療報酬上においても支援するような評価が出てくることだろう。
医療費適正化計画では、保険者のかかわりが重要なポイントになってくる。保険者は地域の診療・処方に関する情報を有していることに加え、組合員でもある社員・住民に対して啓発稼働を含めた情報発信能力がある。今後、地域医療連携の場面においても保険者のかかわりや役割に大きな期待が寄せられる。
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員