【名南経営の人事労務コラム】第12回 職員の身だしなみ対策
2022.12.22
「何だ!あの髪型は!」そんな声を職場の管理者から耳にすることが少なくありません。職場で働く部下である職員の奇抜な髪型や髪の色、その他身だしなみ全般に亘るまで医療機関や福祉施設で働く職員として相応しくない、というわけです。
同様の問題は学校においてもみられ、それは生徒手帳等において学生の身だしなみということで詳細な基準を策定して徹底させるという運用で、学校によっては下着の色まで定められているようなことがマスメディアによって報道されていますが、そうした規制は、生徒の個性を尊重しない、人権無視ではないか、時流に合わない等の理由で「ブラック校則」と表現され、今や管理の方法が変わろうとしています。
本質的な問題は、医療人材・福祉人材にそのような身だしなみは相応しくない、学生としての身だしなみとして相応しくないとまったく同じですが、ではそもそも医療人材・福祉心材に相応しいとはどういった身だしなみなのでしょうか。
かつてある医療機関でベテランの看護部長が若い看護師に対して「何なの、あなたのその髪の色は!」とやや明るい茶色になっていることに対して注意をしたところ、その若い看護師が看護部長に対して「何でいけないのですか。看護部長だって明るい茶色に染めているではありませんか」と反論をしたことがありました。若い看護師はファッション感覚で、ベテランの看護部長は白髪隠しとして、同じように髪色を茶色にしていたのですが、双方対外的な印象を意識して行っていたことであり、個人の主観のぶつかり合いという考え方もできます。
もちろん、個人の主観を排除して無制限に個性を認めると職場の規律は保てませんので一定のルールは必要ですが、それをどのように設定するのかは人権という問題や表現の自由という問題もありますので、とても難しい問題です。特に、最近は、髪色や髪型等の一定の制限を設けたとしても、外国人労働者が医療機関・福祉施設では一定数働いていることがありますので、生まれつき髪の毛の色が違う場合は例外とするのかとか、ルールは日本人だけのものにする、といったようなことはできないというのは誰もが理解できることです。
このような場合においては、職員自身に職場における身だしなみの在り方はどうあるべきかということを考えてもらう場を設けるとよいでしょう。例えば、勤務時間中のピアスをすることはよいのかどうか、という点では介助をする際にピアスに引っかけて怪我をして感染症に罹患する可能性がある、ということで通常は認めません。そういった理由があれば多くの職員は納得をするでしょうが、理由や背景がなく、頭ごなしに「ピアスは禁止です」と伝えれば、納得しない職員もでるのではないでしょうか。
従って、なぜいけないのか、ということまで含めて職員自身に考えてもらう場を設ければ、様々確度で身だしなみの基準が出来上がってきます。もちろん、若年層と中高年層が混じって議論をすれば考え方で対立するかもしれませんが、そのような考え方の対立は相手の考えを理解するという点において決して無駄ではありません。
以上のように、職員の身だしなみについては、型にはめたルールを押し付けるのではなく、職員主体でどうあるべきかという点を検討してもらい、それを身だしなみガイドラインとして運用するとよいでしょう。
服部 英治氏
社会保険労務士法人名南経営 ゼネラルマネージャー
株式会社名南経営コンサルティング 取締役
保有資格:社会保険労務士