【医療業界動向コラム】第29回 医療機関に病床確保料に関する実態調査を要請。令和5年2月10日までの報告を求める

2023.01.31

令和5年1月13日、会計検査院から病床確保料に関する指摘があった。その内容は、交付金を受け取っていながら、看護師などを確保できないことを理由に入院を断った病院が存在した、というもの。そこで、支給された交付金に関する実態調査に乗り出すことが令和5年1月23日に決まり、通知が発出されている(図1、図1-2)。

図1:病床確保料に関する調査依頼①
図1ー2:病床確保料に関する調査依頼②

改めて病床確保料について確認すると、新型コロナ患者を受け入れられるように空床にしておく病床に対する補助。空床である期間に本来は得られたであろう利益を補填する性格のものといえる。なお、病床確保料は医療機関の種類(重点医療機関、協力医療機関、特定機能病院、その他)によって異なる。なお、補助の対象となる病床には2種類あり、都道府県と調整して空床とする「確保病床」、都道府県からの要請に応じて新型コロナ患者受け入れる病床へと1週間程度で転換することが求められる「即応病床」。なお、即応病床使用率に応じて病床確保料が調整される(新型コロナ患者の受け入れ実績が一定水準を満たさなければ、補助が1日当たり30%減額される)ようになっている。

会計検査院からは、病床確保料の交付要件を明確にしていないことについても指摘があった。そこで、通知と同日に改めて事務連絡を発出し、交付要件を明確にしている。一時的に看護師が不足して患者の受け入れができない状況などの場合などは交付は受けられないなど明記されている。今回の報告において、そうした看護師不足等の状況にもあるにも関わらずに交付を受けている事例があった場合についての対応は明確になっていないが、都道府県を通じた国への返還なども考えられるだろう。

つい先日、とある病院で本来は通常の一般病床で申請するべきところを、誤って集中治療室等の高度急性期の病床として申請し、病床確保料を過大受給していた、というニュースが報じられた。昨年11月に、自主点検の求めがあり、その過程でわかったとのこと。過大受給分については返還するとしている。

今回の報告と同じくして、医療機関毎の交付額、病床使用率なども調査することとなっていることから、その結果を踏まえた制度の見直しも検討されることとなる。

ところで、すでに多くのメディアでも報道されているが、本年のゴールデンウィーク明けとなる5月8日に新型コロナウィルスを感染症法上の5類に移行する方針が明らかにされている。発熱者が受診できるのは現在は都道府県が指定する発熱外来だが、移行後は発熱外来を有さない医療機関での受診も可能になる。ただし、準備を進めながら緩やかに移行していく必要があるため、本年2月以降に感染症部会にて意見をとりまとめ、今後のスジュールや入院勧告や行動制限に関する措置などの今後について明らかにしていく方針となっている。名実共にwithコロナの社会が始まろうとしている。平時と緊急時の連携と対応を常に意識した経営を心掛けていくことが必要だ。そのためにも、近隣医療機関とのカンファレンス等を通じた情報共有や、ワクチン接種などを通じた予防に関する啓発活動、速やかな患者情報の把握となるマイナ保険証の提案を地域住民に対して医療機関からも行っていくことを意識したい。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

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