【名南経営の人事労務コラム】第20回 就業規則の存在意義と定め方
2023.04.27
労働基準法では、第89条において「常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない」と定めており、事業所毎にパートタイマー等を入れて10名以上の職員がいる場合には、作成の上、管轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。
就業規則において記載すべき事項は、始業や終業の時刻等、必ず記載が必要な「絶対的記載事項」のほか、運用ルールがあれば定める必要がある「相対的記載事項」等によって構成され、これらの点を中心にまとめていくことになります。
こうした就業規則は、職場におけるルール集であるべきはずですが、多くの医療機関・福祉施設においては難しい文章や表現が並び、あまり活用されていないような印象があります。その証拠に、大雑把な定め方をしていることによって、現場で働く職員の声を拾うとA主任とB主任と運用ルールについて言っていることが違うとか、何かわからないことがあればC事務長に聞けばその都度決定してくれるが聞かないとわからないので、こうした点は何とかして欲しいといった声が上がることがあります。
そもそも就業規則は、一般的に「○○である」といった記載方法で法律用語が多用されていますが、定め方についての法的な制限はありません。先述した絶対的記載事項等を網羅すれば、「○○です」といった記載方法であったり、解釈に困る場合には図等を入れるといったことも違法とはなりませんので、可能な限りわかりやすく職員に浸透できるように定めるべきです。
そして、職員が「困った」ということが生じないように定期的に職員からの声を拾い、それを就業規則であったり、独立させた規程等を定め、または改定し、場合によってはルール決定のプロセスに職員も交ってもらい検討を進めてもよいでしょう。もちろん最終的にルールを決定するのは医療機関・福祉施設側ですが、職員を交えた検討を進めると想定もしていなかった質問や疑義が上がることもあり、こうした点を規程等に網羅すれば、職員の安心感も高まります。
また、就業規則等の諸規程は、その後、「常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付すること(労働基準法第106条)」等によって周知させる必要があります。かつては1人に1冊の就業規則等の諸規程を冊子にして配布していた大企業が少なくありませんでしたが、最近ではデジタル環境で閲覧することができる対応を進めるケースが増えています。
そもそも多くの経営者は、職員に安心して働くことができるような環境を用意したいと考えており、職員も同じように安心して働きたいと考えています。就業規則というのは、その関連規程も含めて職場のルールが詳細に定めてあるものであり、具体的でわかりやすく記載されていれば、判断の迷いもない上、管理職が迷うことも最小限になりますので、そのように定めていくと同時に、時代も刻々と変わってきておりますので、定期的に内容の精査等のメンテナンスを行ってアップデートを重ね、いつでも職員はそれらが把握できるような環境があれば、働く安心感は確実に高まるのは間違いないでしょう
服部 英治氏
社会保険労務士法人名南経営 ゼネラルマネージャー
株式会社名南経営コンサルティング 取締役
保有資格:社会保険労務士