【名南経営の人事労務コラム】第22回 36協定とは何か
2023.05.25
労働基準法では、労働者である職員に対して1日8時間、1週40時間を超えて労働させてはならないと定めています(第32条)。これを法定労働時間といい、法定労働時間を超過して職員に時間外労働を行ってもらうためには労働基準法第36条に基づく労使協定を締結し、それを所轄労働基準監督署長へ届け出ることが求められています。この労使協定を36協定といい、一般的にはサブロク協定と呼ばれています。
そもそも労働基準法という法律は、第1条で「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない」と定めており、その定めの内容にもよりますが、反することがあれば労働基準法違反と扱われることになります。この法定労働時間を超過した時間を働いてもらうことに対して、労使協定の締結と労働基準監督署長への届け出があれば、その内容の範囲内で免罰的効力を有しますので、労働基準法違反にはならないということになり、法定労働時間を超過して働かざるを得ない場合には、この36協定の締結等は必須対応となります。
36協定においては、原則として月45時間、年360時間が時間外労働の上限として定められており、臨時の特別の事情がなければこれを超過することはできません。ところが現実的には様々な理由によってこの時間を超過せざるを得ないことが発生しますので、臨時の特別な場合には、最大で年720時間まで許容されるものの、時間外労働と休日労働を併せて月100時間未満であり、かつ2~6ヵ月平均で80時間以内であることが必要とされています。かつ、原則である月45時間を超過できるのは年6ヵ月までであることから、日常的な労務管理においては、月45時間を超えることがないような管理をしなければなりません。
36協定はその締結にあたっては、労働者の過半数代表者または過半数で組織する労働組合との締結をしなければなりませんが、これは、事業主側が一方的に時間外労働を命じることへの抑止のために求められるものであり、その内容についても合意を得て進めなければなりません。つまり、最大で年間720時間の時間外労働が36協定では認められてはいるものの、事業所内において過半数代表者との間で年間500時間までと定めればその定めた時間内としなければならないということを意味します。過半数代表者の選任にあたっては、管理監督者ではないことに加えて投票や挙手等の方法で民主的で選出することが求められ、事業主が一方的に指名して名前を借りるような行為は36協定の効力そのものが無効とされますので注意しなければなりません。
また、労使の話し合い等によって行うことができる時間外労働の時間数を定めたとしても、事業主には労働者である職員の長時間労働によって健康を害することがないようにしなければならず、これは安全配慮義務(労働契約法第5条)と言われています。つまり、36協定を適正に成立させ、その範囲内で職員に働いてもらったとしても長時間労働によって健康を害するようなことを発生させてはならないことを意味しておりますので、実務的な労務管理面では恒常的に長時間労働とならないように注意を払わなければなりません。
服部 英治氏
社会保険労務士法人名南経営 ゼネラルマネージャー
株式会社名南経営コンサルティング 取締役
保有資格:社会保険労務士