【医療業界動向コラム】第37回 令和4年度診療報酬改定の結果調査より、リフィル処方箋の利用目的、その多くは働き方改革

2023.03.29

令和5年3月22日、中医協総会が開催され、令和4年度診療報酬改定結果検証部会からの報告があった。今回の報告は、特別調査全10項目のうちの「在宅医療、在宅歯科医療、在宅訪問薬剤管理及び訪問看護の実施状況調査 」「精神医療等の実施状況調査」「リフィル処方箋の実施状況調査」「後発医薬品の使用促進策の影響及び実施状況調査」「明細書無料発行に関する実施状況調査 」の5つ。ここでは、リフィル処方箋に関する調査結果についてみていきたい。

調査対象は、全国の病院のうちリフィル処方箋の発行実績の有無に応じて、500 件ずつ、計1000件を無作為に抽出されている(有効回答数:298施設)。 診療所についても、同様に、計1000件を無作為に抽出(有効回答数:306施設 )。そして、保険薬局のうち令和4年リフィル処方箋の受付実績の有無に応じて、250件ずつ、計500件を無作為に抽出されている(有効回答数:223件)。また、郵送とインターネットによる患者調査を実施(有効回答数:1,641件)。調査実施時期は、令和4年12 月から令和5年1月まで。

  • リフィル処方箋を利用する医療機関の傾向からわかる「働き方改革」の一の手段としての利用

病床種・病床規模別にリフィル処方箋の発行の有無を見てみると、200床を超える病院など規模の大きな病院での発行が多いことがわかる。ただ、一口に一般病床と言ってもその範囲は広く、高度急性期から回復期まである。200床を超える病院が多いということは急性期一般及び地域包括ケア病棟を有する病院といったところだろう(図1)。

図1_リフィル処方箋の有無別医療機関の傾向

また、外来医師数及び外来患者数別にリフィル処方箋の状況も調査されているが、外来医師数が多く、さらに患者数も多い医療機関ほどリフィル処方箋を発行していることがわかる(図2)。

図2_リフィル処方箋の発行有無別外来患者数の傾向

外来医師数が多いというのは、規模の大きな病院を意味しているともいえる。重症外来に時間を割くことや働き方改革の一環として、リフィル処方箋を利用する動きが出ているのではないかと考えられる。

  • どういった患者に発行しているのか?

病院と診療所、いずれにおいてもかかりつけの患者に発行するケースが多い(図3)。

図3_リフィル処方箋を発行する患者の傾向

医療機関もしくは医師と患者、双方の信頼関係があってこその利用なのだといえる。関係性のバロメーターなのかもしれない。ただ、あくまでも患者の病状が安定していること、服薬コンプライアンスレベルが高いこと、食事・運動療法など実践できることなどが前提だ。

  • 薬局との連携は低調

先の薬機法改正で「調剤時に限らず、必要に応じて」服薬フォローをすることが薬局薬剤師には義務となっている。また、薬局薬剤師による服薬フォローを評価する「服薬情報等提供料1・2」がある。診療・検査の機会が減るリフィル処方箋を利用する患者は「必要に応じて」に該当する患者だと考えられるが、トレーシングレポートを活用した医療機関への情報提供は残念ながら低調のようだ(図4)。

図4_薬局からのトレーシングレポート

長期処方とリフィル処方の違いを考えると、長期処方は次の診療まで医療従事者と会うことはないが、リフィル処方箋の場合は次の診療までに薬局で薬剤師に最大3回は顔をあわせる。受診勧奨の機会もある。リフィル処方箋を推進していくには、医療機関からの薬局に対する信頼感が重要に感じる。

  • リフィル処方箋を発行した利用・発行しなかった理由

病院では病状が安定していたという理由が最も高い一方で、診療所では患者からの求めがあったからというのが最も高い(図5)。

図5_リフィル処方箋を発行した理由

病院の場合は先にご紹介したように、200床以上病院が多く、逆紹介をしたくとも応じない患者や働き方改革の観点から医師から勧められているのかもしれない。診療所の場合は、ご年配の患者も多めで、より身近で率直に話しやすい関係性にあるからかもしれない。発行しなかった理由は、長期処方で十分と考えていること、そして患者の希望がないといったものが多かった。

今後積極的に推進する多くの医療機関では医師の負担軽減につながることを理由に挙げている(図6)。

図6_リフィル処方箋を積極的に利用する理由

一方で、消極的な医療機関では患者の症状の変化に気づきにくくなることを最も多く挙げている。

医療費適正化計画にもリフィル処方箋の推進は盛り込まれることとなる。今回の調査を見る限りにおいては、現状のルールでは医療機関と薬局との信頼関係を深めるにはまだ弱いものの、大規模病院を中心に働き方改革の推進で処方側として積極的に利用していきたい希望は少なからずある。また、今後はリフィル処方箋に関する認知度が一般社会にも広がっていくことで、幅広く医療機関での対応が求められることも出てくるだろう。そうした対応が求められる時期が来ることを見越した連携体制作りや受診勧奨について今から整備しておきたい。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

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