【介護業界動向コラム】第10回 VUCAの時代の介護経営 介護事業者の事業拡大の近年の潮流について⑩「社会福祉連携推進法人と地域医療連携推進法人(2)」 

2023.05.29

前回から「連携推進法人」制度が、今後の法人運営にどのような影響があるのかを見ていきたいと思います。第2回目は、連携推進法人制度のそれぞれの内容についてみていきたいと思います。

連携推進法人制度において実施できること

いくつかの整理の仕方があると思いますが、今回は連携推進法人制度によって出来ることを、「経営資源」の側面から確認していきたいと思います。いわゆる経営資源を整理する上では、様々なフレームワークがあり、代表的なものでは「7S」であったり、「ヒト・モノ・情報・カネ」に分けて整理するもの等が挙げられます。詳説は省きますが、連携推進法人制度による経営上の効果、ということですと「ヒト・モノ・情報・カネ+ブランド、組織力」等といったフレームワークが比較的分かり易いのではないかと思います。

さてそちらに基づきますと、「医療」「社会福祉」の2つの連携推進法人において出来る事は以下のように整理することが出来ます。両者で類似した項目も多いですが、それぞれの特徴としては、まず「地域医療連携推進法人」では、「病床の融通」が可能な事や「参加法人の債務保証」が可能なこと等が特徴として挙げられます。ただし本制度は「地域医療」連携推進法人という名前にもあるように、地域内=地域医療構想の構想圏域内での連携・統合が前提となっています。一方、社会福祉連携推進法人ですが、

多くの機能が、地域医療連携推進法人と類似しているもののベッドの融通等を行うことは出来ません。ただし、社会福祉サービスの実施地域は必ずしも施設所在地に限られるものでないことから、連携は「実施地域の範囲に制約なし」とされています。このため、北海道の法人と沖縄の法人の連携なども制度上は可能ですが、活動区域は指定しておく必要があります。

それぞれに特色がありますが、M&Aには至らないものの、社会福祉協議会を通じた連携を超え、一部の経営機能を統合・連携していく上ではいずれも有効な方法論であると言えるでしょう。

 

■地域医療連携推進法人、社会福祉連携推進法人

実際にはどのような連携が図られているのか?

さて、では「機能」として認められている事を前提として、実際にはこのような連携推進法人制度を利用してどのような連携が図られているのでしょうか?

地域医療連携推進法人では、医療・介護従事者の在籍出向、教育機能の共通化、医療材料の共同購買、医療機器の共同利用などの管理機能の共通化などを中心に連携が進んでいるようです。病床の融通なども特に地方部等を中心にいくつか事例が見らます。

一方、社会福祉連携推進法人については、制度自体が開始したばかりであることから、現段階においては福祉経営における最重要の要素=ヒトの連携を中心に展開が始まっているケースが多いようです。教育機能の共通化や、リクルートチームを生成し広報活動や面談等を共通化することで品質の向上を図るケースなどが見られます。今後、一定の時間が経過してくることで「事業面での連携」(地域福祉事業の協働)なども増加してくるものと見られます。まだまだ始まったばかりではありますが、今後の動向を注視していきたいと思います。次回からは、M&A、統合にも関係する「事業の大規模化」について、考えていきたいと思います。

大日方 光明(おびなた みつあき)氏

株式会社日本経営 介護福祉コンサルティング部 参事

介護・在宅医療の経営コンサルティングを専門。直営訪問看護ステーションの運営本部を兼任。
東京都訪問看護ステーション管理者・指導者育成研修講師。その他看護協会、看護大学等における管理者研修(経営部門)の実績多数。

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