【名南経営の人事労務コラム】第25回 職員の長時間労働対策
2023.07.13
「働き方改革」によって今や多くの企業は長時間労働の実態が少なくなっており、いわゆるホワイト化が進んでいます。福祉業界においてもそうした波は確実に押し寄せており、ホワイト化にでもしないと人材が確保できないという現実的な問題もあります。
しかしながら、実態に目を向けてみると、人材不足を背景に恒常的に長時間労働が続いている事業所も少なくなく、そうした働き方に嫌気をさした職員が離職し、残った職員で業務を消化することによって更に長時間労働が加速するといった負のスパイラルへと陥っているケースも散見されます。
こうした状況を断ち切るために、検討会議を開催する施設もありますが、それによって更に通常業務に負荷が掛かり逆効果となってしまうこともあることから、トップダウンで決めた方がよいこともあります。
様々な施設の運用をみてみると、非効率に感じることもあり、例えば、会議や委員会については、「○○部門の職員も必要である」「○○さんにも入ってもらった方がよい」ということで参加人員が膨れ上がることがあります。確かに多くの関係者によって情報を共有することは望ましいことですが、本当に多くの職員が参加をする必要があるのか、最小人員で検討等ができないかという点は見直す必要があるのではないかと思います。それに伴って、会議や委員会等の議事録についても細かくまとめていることもありますが、見返すことがほぼない議事録ももう少しシンプルにまとめることができないか、といった視点も必要かもしれません。
業務の推進方法についても、「今まではこういったやり方であったから」という理由で長年改善もされずに遂行されることもありますが、都市部で開催されている展示会やフェア等に積極的に足を運べば効率化に向けた様々なツールやサービスが紹介されていますので、そうしたツール等をお金を出して使っていくことも必要です。経営者の視点からみれば、そのようなツール等の使用は、余計なお金のように感じるかもしれませんが、中長期的にみれば効率化は進むことが多く、そうしたツール等を利用することによって業務の属人性も排除できることがありますので、業務の標準化に繋がることもあります。
また、業務のアウトソーシングや委託について検討してもよいでしょう。自社で対応すれば業務遂行のノウハウは溜まりますが、業務の属人性を助長させることもありますし、アウトソーシングをすることによって本業に専念することができるのみならず、その業務の人材確保に悩むこともなくなります。
更には、やらない業務を決めていくことも必要です。福祉業界はサービス業でもあることから、○○の対応もした方がよい、とサービス水準が年々上がり、それに呼応すべき業務も膨らむことが常ですので、やらない業務を検討し、それを進めることも視野に入れてもよいでしょう。
いずれにしても、職員の長時間労働は、小手先の改善では本質的な改善に繋がらないことも少なくないことから、発想や視点を変えて進めることが必要ではないかと思います。実際、特に中途採用で入職した職員の中には、「なんでこんな無駄なことをやっているのか」と感じる人がいることもありますので、そういった声に耳を傾け、トップダウンで改善を進めることが結果として改革になるものと考えられます。
服部 英治氏
社会保険労務士法人名南経営 ゼネラルマネージャー
株式会社名南経営コンサルティング 取締役
保有資格:社会保険労務士