【医療業界動向コラム】第52回 施設基準の届出状況から読み解く次回改定のトレンド
2023.07.25
※このコラムは2023年7月25日時点の情報をもとにしております。
令和5年7月6日に開催された第548回中央社会保険医療協議会 総会では来年度の診療報酬改定に向けた入院医療に関する議論が行われた。その中で、令和2年から令和4年(各年7月1日時点)までの施設基準の届出状況が資料として提示された。着目したいポイントをご紹介したい。
〇地域医療構想の進展もあってか、病院数は減少傾向に
病院数の減少は、統廃合であったり、小規模な病院が診療所に移行していることが考えられる(図1)。
本年5月に開催された地域医療構想に関するワーキンググループで病床機能報告の速報値が公表されたが、2025年の必要病床数の目標である119万床に対して、119.9万床にまで迫っていることが明らかにされたところ(図2)。
ただ、地域毎や病床機能毎にはばらつきがあるため、今回の診療報酬改定では病床機能の役割分担を促したり、場合によっては急性期充実体制加算を届出る医療機関数に制限をかけるような見直し、具体的には地域医療構想調整会議での合意の必要性を要件に加える可能性など注意しておきたい。
〇実績要件が必要となった機能評価加算は減少も、算定回数は増加
診療報酬上のかかりつけ医機能とは、地域包括診療加算/地域包括診療料/在宅時医学等総合管理料/施設入居時等医学総合管理料/小児かかりつけ診療料などを指し、それを算定している医療機関が初診からでもかかりつけ医機能として評価されるための機能強化加算がある。その機能強化加算は前回の改定で在宅医療に関する実績要件が設けられた。その結果、届出は減少している(図3)。
一方で、地域包括診療加算は増加となっている。200床未満の病院が主に届出る地域包括診療料は横ばい(図4)。
今後注目したいのは、地域包括ケア病棟を有する病院が地域包括診療料をどれだけ届出してくるかということ。
また、在支診/在支病についても見てみると、特に在支病の件数の伸びが顕著にみえる(図5)。
地域によっては、患者だけではなく開業医も高齢化が進み、在宅医療を単独で継続していくには限界がある。病院によるバックアップであったり、病院がかかりつけ医機能を発揮していかざるを得ないケースも目立ってきていると感じている。
〇短期滞在等手術基本料の見直しの影響、次回改定も要注意
前回改定では、短期滞在手術等基本料1の見直しのインパクトは大きかった(図6)。
重症度、医療・看護必要度と平均在院日数の対象から除外され、局所麻酔の手術であれば点数は下がるが麻酔科医はいなくても構わない、となった。要するに、軽微な手術は入院医療ではなく、診療所等の外来手術で、という流れ。本格的外来機能分化の始まりだ。実際に、診療所で一気に件数が増えている。来年からの医療費適正化計画では、白内障手術について、外来での実施を促す取り組みが始まる。ここで注意しておきたいのは、地域包括ケア病床を有する病院での院内転棟割合に影響を与えそうな見直しの可能性だろう。もともとは、在宅や施設からの直接入院が主たる目的の地域包括ケア病床だが、短期滞在手術等基本料で対応している病院は決して少なくない。本来の地域包括ケア病床の役割を先鋭化していくことになれば、直接入院の対象患者など厳格化していく可能性もある。改めて、地域包括ケア病床を有する病院においては直接入院のルートの確認と開拓をしておく必要があるだろう。
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員
1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。