【医療業界動向コラム】第57回 急性期入院医療の患者像の厳格化、看護必要度の見直しの方向性を確認
2023.08.29
※このコラムは2023年8月29日時点の情報をもとにしております。
令和5年8月10日、第5回 入院・外来医療等の調査・評価分科会が開催され、高度急性期~慢性期入院医療の現状について確認された。地域医療構想がスタートしてからは、急性期入院する患者像の厳格化、すなわち「重症度、医療・看護必要度」の途切れない見直し・急性期入院患者像の純化が進み、7対1看護の減少・病床転換が進んできた。しかし、ここ最近を見ると、7対1看護は若干の増加に転じている(図1)。
大きな目でみると高度急性期の医療機能の集約が進められていることもあるが、病床を削減して7対1看護割合を高めていく中小規模病院や院内転棟割合への対策として地域包括ケア病床から7対1看護に戻す200床以上病院があるなどいくつかの複合的な原因が考えられる。また、急性期充実体制加算の新設(地域包括ケア病棟入院料、療養病棟入院基本料の届出があると不可)が影響を与えていることも考えられるだろう。そうした中で、高度急性期領域については、300床未満で急性期充実体制加算の届出のある病院についても議論されている。高度急性期機能が分散することのデメリットや医療費の観点から、今後は地域医療構想調整会議での同意などの要件が課せられることなど検討されていきそうだ。
令和6年度診療報酬改定の本格的議論に向け、とりわけ注目を集めるのは、令和6年度末にゴールを迎える地域医療構想の実現のキーワードともなる急性期入院医療の在り方、具体的に言えば、重症度、医療・看護必要度(以降、看護必要度)の見直しだ。前回の診療報酬改定後、看護必要度の項目別の状況がどうなっているのか明らかにされ、「注射薬剤3種類以上の管理」の項目別該当患者割合が増加していることがわかった(図2)。
今後、注射薬剤に関する内容・回数などの精査が今後行われ、適正化が図られることになる見通しだ。
また、令和6年度診療報酬改定に向けての一連の議論の中では、高齢患者の急性期入院対応について度々話題になっている。看護必要度の見直しの議論においても、看護必要度の「救急搬送後の入院」の該当患者割合が高く、急性期一般入院料1に特に多いことも分かったところ。救急搬送後の入院の対象患者の多くは、入院3日目以降はA項目の評価が下がること、入院期間が長くなる傾向にあることも明らかにされ(図3)、受け入れている高齢患者には尿路感染症や肺炎などが多く、医療資源の投入量は他の入院料と比較しても大きな差異がない。今後の議論としては、A項目の点数を引き下げることや入院日数に応じて点数を段階的に引き下げることが考えられると共に、B項目に関する評価についても今後見直される可能性について注目しておく必要がある。
もともとは、看護必要度のB項目は介護施設や在宅での高齢者ケアプランとの連動(急性期から介護までの患者像の変化等をつかむスムーズな連携)に活かせることが期待されていた。今後については、改めてLIFE(科学的介護情報システム)との連動も見据えて患者・利用者像をつかみやすくするための対応が期待されてくることになるだろう。
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員
1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。