【医療業界動向コラム】第65回 介護・障害福祉サービスと病院の連携に対する評価の動向

2023.10.31

※このコラムは2023年10月31日時点の情報をもとにしております。

令和5年10月20日、中央社会保険医療協議会 総会(第560回)が開催され、医療・介護・障害福祉サービスの連携と訪問看護について議論されている。ここでは、病院と介護・障害福祉サービスの連携について議論のポイントを確認していく。

高齢者施設と一口に言っても、様々な種類がある。医師が常駐している施設(介護老人保健施設や介護医療院など)もあれば、そうでないもの(介護老人福祉施設など)もあり、医療機関の併設有無で医療的対応力にも差が出てくるといえる。介護老人保健施設と介護医療院の協力医療機関の傾向についてみてみると地域医療支援病院が多く(図1)、介護老人福祉施設も同様の傾向にあることが分かっている。

図1_老健・介護医療院の協力医療機関

また、数は多くないが特定機能病院もある。ここからわかるのは、急性期一般入院料1とのつながりだ。現在、高齢患者の急性期入院や重症度、医療・看護必要度における「救急搬送後の入院」や「注射薬剤3種類以上の管理」等の扱いが議論のポイントになっていることともつながってくる。

退所後の行き先についてみてみると、一般病床が多いことがわかるとともに、理由として肺炎や尿路感染症などがあがっていることも明らかにされている(図2)。

図2_医療機関への退所・退院理由

高齢患者の急性期入院や重症度、医療・看護必要度の今後の見直しにも関連する重要な視点だといえる。また、一般病院への入院が要介護度を悪化させる要因になっていることを示す資料も提示されていることから(図3)、急性期一般入院料の病床ではなく、地域包括ケア病床などを第一優先とするような流れを作ることや、急性期一般入院料の病床での入院期間を短くするための施策が考えられる。

図3_在宅介護高齢者の要介護度悪化要因

とはいえ、地域包括ケア病床も今後はサブアキュート型とポストアキュート型と方向性を明確にしていく流れにあり、すべての地域包括ケア病床を有する病院が万全の対応をできるわけではない。そこで、近年増加傾向にある在宅療養支援病院で地域包括ケア病床を有する病院に期待が集まる。特に、実績のある機能強化型在宅療養支援病院に。施設からの電話対応は当然ながら、緊急時の往診の対応力は同じ在宅療養支援病院でも機能強化型は高いといえる(図4)。

図4_介護施設と連携する医療機関の対応

機能強化型在宅療養支援病院の要件に高齢者施設の協力医療機関となることや、施設側においても優先的に機能強化型在宅療養支援病院を選択するような見直しも考えられるだろう。そのために、機能強化型在宅療養支援病院には診療報酬上の高い評価が期待される一方で、実績なども問われる可能性も出てくるだろう。

障害者施設との連携についても確認しておきたい。障害者施設で度々問題として耳にするのは、障害者自ら訴えを起こすことが少ないことや障害の程度が重度であること。また、強度行動障害などを原因とした強い診療拒否もある。そのため、医療機関との早い段階からの施設の職員等との情報共有・連携が重要だと言える(図5)。

図5_障害者支援施設入所者の医療機関の受診に関する課題

また、障害者施設には医師が配置されていることもあり、訪問診療を行うことができないという課題もあり、医療の対応が遅れがちだ。高齢人口の割合増加はよく知られているが、当然ながら障害者の高齢化も進んでおり、悪性新生物に罹患する入所者の割合も高まってきている。介護老人福祉施設であれば、末期の悪性腫瘍の患者の場合は訪問診療による評価があるが、障害者施設にはない。介護老人福祉施設同様に終末期の対応に対する要件の緩和や評価、または障害者特有の事情を勘案しての医療依存度の高い障害者への医療的サポート介入を評価する可能性が考えられそうだ。

障害者施設からの退所・入院における一連の流れにおいても、情報共有・連携は重要である。入退院支援加算等において、障害者施設との連携についても注目しておきたい。入退院支援加算においては、政府が掲げる「孤独・孤立対策」の視点も合わせて確認しておきたい。新たな法律が成立し、各自治体ごとに取組みが始まる。入院中から退院後を見据えて、行政機関やサービス提供責任者などとの情報共有について求められるのではないだろうか。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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